長年、スタートアップへの投資や講演を行ってきたPeter Cohan氏が、うまいプレゼンの方法を教えてくれました。その名も「ロケットピッチ」。今回の記事は主に起業家へ向けて書かれたものですが、3分間で3つのスライドを使うこの方法は、起業家ならずとも応用できるヒントが詰まっています。
Inc. :投資家であるわたしは、過去20~30年間にわたってアイデアをプレゼンテーションする起業家を見てきました。その中で、1つわかったことがあります。3分も話を聞けば、その話は無視するに値するか、より詳細を知るべき内容かを判断できる。よく言われるのは、この最初の3分間のプレゼンで、投資家の関心を引き付けることができなければ、また別の投資家にアプローチし続けなければならないということです。
もちろん、ある特定の投資家に対するプレゼンが成功するか否かを決める要因は、多数あります。たとえば、起業家と投資家の両者がターゲットとしている市場に関する専門知識を共有しているか、また投資家が起業家を信頼しているかという点などです。
投資家の心をつかむのに必要なポイントをすべてカバーできなくても、うまいプレゼンの仕方は身につけられます。わたしが起業精神と戦略についてバブソン大学で教えているプレゼン方法、「ロケットピッチ」です。
ロケットピッチは3分、3枚、3つのポイントで成り立つ
ロケットピッチとは、3分間かつ3枚のスライドを使ったプレゼンです。プレゼンでは、そのスタートアップが解決しようとしている主な問題に焦点を当てつつ、投資家のチェックリスト上にあるライバルのスタートアップよりも、いかに事業のアイデアが優れているかを伝えなければなりません。
起業家は、プレゼン相手の投資家が、投資先として他にどのような事業のアイデアを検討しているかはわかりませんが、ロケットピッチを行えば、以下の3つのポイントをうまく押さえたアピールができるはずです。
1.事業の機会はどこにあるか? 解決すべき問題はなにか?
ロケットピッチでまず説明すべきなのは、事業の機会がどこにあるか、つまり「解決すべき問題は何か」という点です。なぜ、それをやるべきだと思うのか。そしてどのように顧客の購買意欲を上げるかのかを説明しなければなりません。そのためには、ロケットピッチのスライド1枚目には、以下の問いに対する答えを含めましょう。
- どのような問題、または機会を見つけたか?
- その問題に対する解決法はなにか? その機会をどのようにつかむのか?
- その事業によって、どのような層の顧客の問題が解決されるのか?
- ビジネスのビジョンはどのようなものか? なぜそれをやりたいのか?
2.市場の大きさ・ターゲットの顧客は誰か?
投資家に対して、あなたの事業が現実の問題または機会に基づいていることを納得してもらえたら、次にやるべきことは、その事業が賭けるに値すると思ってもらうことです。そのためには、2枚目のスライドに以下の問いに対する答えを書きましょう。
- ターゲットの顧客グループはどこか?
- 潜在的市場の大きさはどれほどか? またその市場はどれほどの速さで成長しているか?
- 競争相手は誰か? また、自分たちはその競争相手よりもどのように秀でているのか?
3.いかに収益を生むビジネスモデルか?
ロケットピッチの最後のスライドでは、どのようにスタートアップ事業が収益を生むかについて説明しなければなりません。そこでは、いかに売上を生むかだけでなく、事業にかかる費用、そしてどれほどの利益を出すかという点も説明する必要があります。そのためには、以下の問いに対する答えをスライドに含めましょう。
- 顧客が製品に支払う金額はどれほどか? またなぜその金額を顧客が支払ってくれると思うか?
- 事業にかかる変動的また固定的な費用はどれほどか? どれほどの収益を生むか?
- どれほどの顧客を獲得できると思うか? なぜ、それほどの顧客が製品を買ってくれると思うか?
ロケットピッチでは、投資家の全ての質問に答えることはできませんが、もしプレゼンがうまくいけば、投資家はさらに多くの質問をしたいと思うでしょう。
事業を立ち上げる業界の専門知識を持ち合わせた投資家にロケットピッチをすることで、あなた自身、そして投資家両者の時間を大幅に節約することができます。もしうまくいかなければ、業界の専門知識のない投資家にもロケットピッチを試してみる価値はありますが、投資を得られる確率は低くなるでしょう。
最後にお伝えしておきたいのは、実際に投資家の前でロケットピッチを行う前に、投資を得る目的のプレゼンを受けたことのある友人知人で、最低でも5回は練習をすることです。練習のたびに、プレゼン相手からの質問や心配事項にうまく答えられるように、内容を改善していきましょう。
この練習を終えれば、もう実際に投資家候補に対してロケットピッチを行う準備が整っているはずです。
How to Sell Your Idea in Less Than 3 Minutes | Inc.
Peter Cohan(訳:佐藤ゆき)
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