| 社会心理学用語集 |
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私たちはさまざまな場面でいろいろな出来事の原因や理由を考えています。たとえば、テストの点が悪かったり、大事な試合に負けた場合には、「なぜテストの点が悪かったのだろう」とか「なぜ試合に負けたのだろう」といったように、その原因や理由を真剣に考えるます。このような原因や理由を考えるプロセスを、社会心理学では帰属過程と呼んでいます。
このような状況は、意識的に「原因や理由を考えている」ので、そのプロセスは明確になりやすいといえます。そして、テスト前の勉強に仕方について親と話し合ったり、試合後の反省会などをやると、いろいろな原因があるということがわかります。そして、単にいろいろな原因があるというよりは、その中でも特にこれが原因だというような判断、もっといえば1つだけをその原因や理由だと考えてしまうことも多いのではないでしょうか。しかしながら、私たちが行っている原因や理由を考えるプロセスはこのような意識的に行っているものばかりではありません。
さらに、先に述べたような出来事だけではなく、対人関係におけるさまざまな出来事でも原因や理由を判断したりしています。対人関係における出来事の理由として、よく使われるのが「性格」です。しかし、日常的には「原因は性格だ」というような意識はあまりありません。それはごく自然に、帰属のプロセスが働いているからだともいえます。たとえば、電車の中でお年寄りに席を譲る行為を見て優しい人だと判断したり、自分に対してきつい口調で話す人に対して良い印象を持たなかったりします。硬い表現をすると、「優しい性格が原因でお年寄りに席を譲るという行為が起きる」ということであったり、「私に対して非好意的だという理由で、私に対してきつい口調で話す」ということです。
このように考えると、「いつ原因や理由を考えているのか」ということに対する答えは「ほとんどいつも」ということになるのではないでしょうか。そして、それに私たちは気づいていないことも多いということです。
関連事項 帰属過程(その2)
なぜこのような原因や理由をさぐる帰属のプロセスを意識することが大切なるのでしょうか。1つの例を考えてみましょう。あるクラスの話し合いで進行役になったA君は、話し合いがなかなかうまく進まないので困っていました。A君は、クラス全体を見回しその原因を探し出します。そして、隣の席の友だちと騒いでいるB君をみつけたとします。A君はクラスの話し合いがうまく進まない原因として、情報収集の結果B君というものにたどり着いたことになります。これが帰属過程の第一歩です。が、これだけでは終わりません。次には、なぜB君は騒がしいのだろうかという原因の推測を行うことになります。B君がいつもそうした行動をしているから騒がしいということがA君の頭に浮かぶと、「B君は落ち着きのない子だ」という「B君の特性」に原因を求めることになります。そうではなく、「運動会や文化祭の前後だからみんな浮ついている」というようなことがA君の頭の中に浮かぶと、「この時期だから」というような状況に原因を求めることになるかもしれません。
ここで、2つの点に注目してみたいと思います。1つは、「B君の特性」というような原因にたどり着くまでの過程です。これは、あくまでもA君が情報を収集したり、過去のB君の行動を思い出した結果だということです。たとえば、その様子を別な立場で観察していたC君は、話し合いがうまく進まない原因を「司会の下手なA君」に求めるという可能性もないわけではありません。このことは、立場によって得られる情報が違ったり、ゆがめて情報を収集している可能性があるということを示しています。また、同じようにB君の特性という原因を推測する場合にも、「いつも騒がしいか」というような「普段のB君の行動」に関する情報や「他の生徒たちはどうか」というような情報によって異なってくると考えられます。つまり、手にする情報によって推測した原因や理由が異なっているということです。
もう1つの注目点は、その後のA君の行動です。「B君の特性」という安定した特徴に原因があると判断した場合と、「その時の状況」というような変化する可能性がある原因を帰属した場合では、A君がその後にとる行動はおそらく異なってくると考えられます。いつも騒がしいB君の特性が原因だと思った場合は、「注意しても無駄かな」というようなあきらめの気持ちを持つかもしれません。そうでなければ、もう少し注意をするというような行動にでるということも考えられます。つまり、どのような原因や理由に帰属をしたかということによってその後のA君の行動に影響を与えるということです。
ここで重要な点は、あくまでも「私たちは原因を推測している」ということです。さまざまな情報を得てさまざまな原因を推測するという現実は、ある意味で「本当の原因はなかなかわからない」ということを暗示しています。特に、人間関係や社会での出来事はそうした可能性が大きいと考えられます。そして、原因を推測するのに利用しやすい情報を求めてしまったり、その後も利用しやすいような原因に帰属をゆがめてしまうという可能性もあるのです。
関連事項 帰属過程(その1)
「彼を説得した?」
「それがねぇ… やっぱりだめだって。」
「なぁんだ。あなたなら説得できると思ったのに…」
さて、「説得」という言葉についてです。日常的には、先のような会話も不自然ではありません。社会心理学では、その意味合いがほんの少しだけ広いようです。辞書的な定義をすると、「説得とは、主として言語的手段を用いて、態度や行動を特定の方向に変容させようとする行為のことである」となります。そうだとすると、先ほどの会話も社会心理学的には、説得していることになるわけです。ただし、説得によって態度(または行動)の変容はおきなかったということです。
社会心理学の実験演習などで、学生が「説得的コミュニケーション」の実験を行い、レポートを書くと上のような混同を目にすることがあります。つまり、「説得=態度変容」という図式が頭の中にあるのです。しかも、「態度変容=反態度的変容」と考えてしまう場合が多いようです。「反態度的変容」とは「賛成」が「反対」に変わる(またはその逆)ことです。でも、それだけが態度変容ではありません。
説得的コミュニケーションの効果を測る場合、理想的には、「初期態度の測定」を行い「説得的コミュニケーション後の態度測定」の結果と比較することになります。したがって、必ずしも「賛成」から「反対」に変わる場合とは限りません。「どちらかといえば賛成」から「やや賛成」に変わった場合でも(統計的に意味があれば)効果があったと結論づけられる場合があります。
どのように態度を測定するのかということや、説得的コミュニケーションの効果を規定する要因については、また、別の機会に述べることにします。
関連事項 態度
「態度が悪い!」なんて叱られたことはありませんか? 授業中に居眠りをしたり、飲食をしたり、友だちと話をしたり… いけませんねぇ。さて、この「態度」ですが、社会心理学では、日常と少し異なった意味を持っています。日常的には「態度が悪い」の中には、「行動や振る舞いが悪い」という意味と「心構えが悪い」というような意味を持っていると思いますが、社会心理学では後者の意味にのみ使います。もう少し詳しくいうと「○○に対するこころの姿勢」っていうところでしょうか。
「性格」や「知能」という言葉も日常語と心理学用語の両方にみられますが、これらが「見えない」ものであることはわかります。いわゆる「構成概念」というものです。「態度」もそれと同じレベルなのです。上の例でいうと「授業に対してネガティブ(否定的)な態度」を持っている学生は「居眠り」や「飲食」や「私語」という行動をとることが予想されます。つまり、社会心理学では「行動」とその準備状態である「態度」を明確に区別しているのです。
ですから、「幸せなら手をたたこう、幸せなら態度で示そうよ、ほらみんなで手をたたこう」という表現は、社会心理学ではマズイのです。「態度で示す」ことはできません。「手をたたくという行動で示す」ことになります。また、「幸せ」も態度とは違いますね。先にも「○○に対する」と表現したように、態度には対象があると考えています。態度対象にもさまざまなレベルのものが考えられます。モノに対する態度(たとえば、たばこに対する態度)、人に対する態度(親や友だちに対する態度)、社会的事象に対する態度(政治に対する態度)などです。こうした「態度」を想定することによって「行動の予測」を目指しているのですが… もう少し詳しい話はまたの機会に。ここでは、「態度と行動は区別する」と「態度には対象がある」の2つの特徴を述べるにとどめます。
関連事項 説得的コミュニケーション
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