Deprecated : The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
石田波郷
石田波郷
ふりそそぐ日の戯れて朱欒もぐ
篁の鉾ゐならべり冬構
枇杷の花 暁けそむるより憩らはず
葉牡丹やわが想ふ顔みな笑まふ
寒卵薔薇色させる朝ありぬ
檻の鷲さびしくなれば羽搏つかも
スチームにともに凭るひと母に似し
バス来らず嶺 の冬雲 累なり来
枯澄みし天城 を縫ひてバスの揺れ
坂をゆき風邪 かすかなり昼ふかし
風邪 ごころ坂は電車もしづかなる
枯芝 に学生ぞ黄なる寝顔せり
霜 の樹々一樹歪みて崖に向く
霜の樹々影のながれの崖に向く
霜の崖一刷毛の日がさしてゐる
霜の崖徹夜の仕事抱きて攀づ
聖誕祭 蹌踉の犬を蹴りて路地
スケート場芝区の街路海に出づ
スケート場海光の青の窓を篏め
スケートの渦を一人の服を見る
スケートの渦のゆるめり楽やすめり
スケートの父と子ワルツ疑はず
月食は駅の時刻にたがはざる
スキー列車月食の野を曲るなく
スキー列車あさき睡を歪み寝る
雪降れり月食の汽車山に入り
雪の嶺且つ褐色の木を蔽ふ
外套を黝くぞみたるのみに寝る
あをあをと雪の温泉は日を失へり
闇を来て覗きし室に朱の壁炉
書の白さ外套を脱ぎ痩身なる
物語壁炉 が照らす卓の脚
礫敷き朱欒ころがれり樹に照れり
海の鳥来て木隠りぬ朱欒の木
犬若し一瞬朱欒園を抜け
さぶき空朱欒園裡を溝はしり
雪嶺よ女ひらりと船に乗る
冬霧のしろし相見る彼ぞ憂き
雪嶺の発破を眉のへに聞けり
硫黄精錬所見えず雪原うち匂ひ
昼餐どき毛皮の狐憂き睡り
人黒く二重廻しの蹲り食ふ
マネキンぞ冬 の羅見られつつ食へり