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Girl Meets The War.
3/29 ガール・ミーツ・ウォー





ジャネットという名の少女


 ずっと昔、いまでは幻となった、奇跡や神秘が日常のこととしてとらえられていた時代。その少女は確かにそこに居た。

 彼女はある日神の信託を受け、神は彼女にこう告げたのだ。「少女よ、フランスを救え」と。

 無論、いくらそんな時代であっても、農夫の娘でしかない少女が、そのようなだいそれた信託を鵜呑みにするはずもなく、少女はそれを奇妙な白昼夢として片づけたがった。

 しかし信託は「フランスを救え」という漠然としたものから、次第に「シャルル王子を即位させよ」という脅迫じみた強く具体的な命令へと代わり、何年も続いたという。少女は悩んだ末、叔父にうちあけた。

 叔父は半信半疑ながら、少女のいうとおり彼女をシャルル王子と謁見させた。

 当時のパリはイギリス国王ヘンリー6世によって支配され、フランスではヘンリーに近いブルゴーニュ派と、シャルル王子を正統とする王太子派の闘いが続いていたが、王太子派は敗走に次ぐ敗走で劣勢は明らかだった。

 このようなとき、シャルル王子を即位させよとの信託を受けた少女が、軍を率いて次々と勝利をもたらした。

 驚くべきことに、これは史実なのである。

 ジャンヌ・ダルクという名前は聞いたことがある方も多いかもしれないが、彼女と彼女の起した歴史的大逆転撃について、日本では文系の方でも無い限りあまりよくは知られていないのではなかろうか。

 無論、当の僕も、世界史を選択してはいたものの、完全に授業を聞いていないので、その存在を知っていることすら危うかった。

 ただ、あるときこの少女の存在を耳にし、強烈に興味が沸いてきたのである。

 当時、ジャンヌことジャネットは若干16歳。この年端もいかない少女によって、フランスはヘンリー6世の圧政から救われたのである。これに燃えずになにに燃えるというのだ。

 彼女と彼女の軍勢は白百合の旗を掲げ、適地に赴いたという。この白百合の旗は、実は白百合女子大学の校章にもなっているほどポピュラーである。

 繰り返しになるが、なにより感心せざるをえないのは、とにかくこの話が紛れも無い史実であることだろう。

 ジャンヌは「乙女ことジャンヌ」の名で呼ばれ、次々と闘いに勝利していったが、では勝因はジャンヌの采配にあったかというと、とてもそうではないようだ。というのも、さまざまな資料が、彼女の主張よりも彼女の副官の立案した作戦がことごとく採用されていたことを物語っている。

 ただ、彼女達を勝利に導いたのは、まさに神の加護を受けし者の奇跡としか言いようのないものだったのだ。彼女が歌えば風向きが変わり、「攻撃せよ」との信託を受ければ彼女の軍勢が一斉に攻め込み、大勝利を手にする。まさに奇跡なのである。

 僕はジャンヌについて深く知る事で、自分の中にあったなにかがコトリと音を立てて少しずつ変化していくのを感じた。





プログラマは占いを信じるか


 以前、ある雑誌にお世話になっているときに、そこのベテランライターの方がこんな発言をしたことがある。

「プログラマは論理的で合理的な人間なのだから、占いなんて信じるわけがないでしょう」

 この発言を読んだとき、僕は正直言ってショックだったのだ。

 その人は文章もうまく、ネタの切り方や着眼点など、あらゆる面で規範となる優秀なライターで、僕の密かな目標であった。その彼が、言うことなのだから、たぶん正論なのだろう。

 ところが僕ときたら、占いどころかオマジナイも白魔術も黒魔術も、たとえコックリさんであってもX-DAYでも、とことん信じてしまうタチなのだ(さすがに最近はX-DAYは信じないけど)。

 僕は科学を信仰しているし、非合理主義者でもなんでもないつもりだが、同時に偏執狂でもある。
 たとえ他人が理解しないといっても自分の好きなものは好きだと、そしていくら馬鹿げていると言われても、ついつい金と時間を使ってしまうのだ。

 そのような生き方こそが非合理的なのだと批判されてしまいそうだけれど、僕は固執するために生きているようなものだから、偏執狂としての満足を得るという目的に於いてそれは極めて合理的なことなのである。

 占星術であるとか易学であるとか、精霊や天使目撃現象など、おそよ考えうる限りのすべてのオカルティズムを、完全に鵜呑みにしているわけではない。

 残念なことだが、オカルトというのは特に読者を馬鹿にしているとしか思えない粗悪な捏造も目に付く分野なのだ。

 たとえばUFO研究の大家である矢追順一氏のある番組では、さまざまなUFOが写真付きで説明されていたが、写真自体もさることながら、テロップが最悪だった。「ペルセウス星から来たUFO」「こと座のベガから来たUFO」「ワシ座のアルタイルから来たUFO」ってな具合である。

 少しでも天文学に明るければ、「ペルセウス星」なる珍妙な星からUFOが飛来するなんていう話はにわかには信じられないし、ベガとアルタイルに至っては織姫と彦星である。ちなみにもう少し考証がマシな例では、UFOは太陽系の近距離恒星圏にある星のいずれかから来たさされているし、例えば太陽系に最も近いアルファ・ケンタウリ系であるとか惑星存在の可能性が高いといわれるバーナード系であるとか、少なくともそれっぽいところを指すものである。

 それをペルセウスだのベガだの、アルタイルだの、距離も方位もテンでバラバラなところからそう都合よくやってくるわけがない。

 最も、矢追順一氏の著作すべてが捏造かというと真偽のほどは明らかではなく、ただいくつかの矛盾点を残すのみとなっている。

 UFO番組があのような馬鹿馬鹿しさをもっているのは、実はある意味恐怖でもある。
 というのも、UFO番組が取り上げる怪しい情報は、全て米空軍の秘密兵器開発と直結しており、誘拐やらなんやらというのはあくまでもオマケ的な情報なのではにないかとすら思えるのだ。

 たいていのUFO番組で取り上げられる「目撃されたUFO」のシルエットというのは、実は当時の米軍が秘密基地で実験していた最新鋭戦闘機だったりするのはよくしられた事実である。

 たとえば、あるUFO映像では、編隊を組んで飛行していたUFO(その映像では光る点にしかみえない))が、突然空中で真横に曲がったり、逆方向に曲がったりするものがあるが、これはCCV技術やポスト・ストール・マニューバーの実験だったと思えば説明もつく。

 これはUFO番組によって、米軍の秘密開発する新鋭機の性能や形状が明らかにされてしまうという重大な機密漏洩の危機である。

 しかしそれでもなお僕が神秘や奇跡、UFOを信じるのは、昨日のテーマとも関わるのだが、とにかく見たと言い張る人がいて、それは嘘なのかもしれないが、嘘でない可能性も否定できないのである。

 UFO情報の全てが考慮すべき材料だと言っているのではない。しかし、そのいくつかは詐欺的な情報ではなく、真実かもしれないのだ。

 大切なのはうわべの情報に惑わされることなく本質を見抜くことだとおもう。

 つまり報道の中から主観の部分を取り除き、純粋な事実のみを理解するのだ。

 たとえば、もう忘れ去られた話だが、ずっと前にAP通信が「ロシアの公園にUFOが着陸」という報道をしたことがあった。AP通信がこのような報道をしたために話題になったが、その後その真偽についてなんら問われることなく人々の記憶から消えていったという。

 これはエイプリル・フールの冗談だったのか、はたまた本気だったのかは知らないが、天下のAP通信が嘘と解っている情報を流すというのはどんなもんだろう。

 まぁしかしUFOといっても宇宙人の乗り物とは限らず、未確認飛行物体というそのままの意味で考えれば、ありうる話かもしれない。

 アメリカや日本の迷ったパイロットが、偶然ロシアに不時着したとしても不思議はない(不幸な話ではあるけれども)

 余談になってしまったが、とにかく僕はたとえ限りなくガセに近い情報といえど、そこらへんのスキマを狙って妄想を繰り広げるのが大好きなのだ。

 まったくなんの根拠も効能もなくて、占いや黒魔術がこれほど長い歴史を持っているというのは、どうにもヘンじゃないの。たとえそれが気休めとか単なる心の変化とかであっても構わない。それでもそれに効果があると信じたい。

 かといって、やはり全ての黒魔術や占いを正当化するということではなくて、事実の中から真実を見極める目が大切。雑多で莫大な事実をひとつひとつ検証し、その論理的整合性を考える、ほら、占いだってやっぱり科学じゃないの。