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加工食品
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「買ってはいけない」・・・か?


 最近,食品添加物を毒物のように書いた書物がなぜかよく売れしているようで,この「MOTTO!食品衛生」にもいくつか問い合わせがきています。「どこどこのパンは恐くて買えません。」,「いったい何を食べればよいのですか?最近食べるのが恐くて何もたべられません。」など社会的な影響も大きいようです。しかたなく話題の本を買って,見せていただきましたがかなりデータの読み違い(ここまで読み違えると悪質になってしまいますが)があります。また,9月11日付の神戸新聞にも取り上げられており,少し問題が大きそうなので,「MOTTO!食品衛生」で新たなページを立ち上げることとしました。

 加工食品が出回り,食生活が便利に,美味しくなった今,「加工食品には食品添加物が入っているから買わないように!」といわれたら,確かに「何を食べたら良いのでしょう。」という質問がくるのは当然のことでしょう。なぜなら,スーパーの食品売り場から加工食品を除くと60%以上の食品が消えてなくなるでしょうから。食品添加物は化学物質だから危険と思い込みながら食べても美味しくないし,かえって身体(精神的に)に悪い影響を与えかねません。加工食品を良く知り,食品添加物をよく理解して上手に食べるのが,豊かで便利な食生活を送るうえで大切なことなのです。

 そこで,ここではベストセラー「買っては・・・・」の内容を「食品添加物公定書解説書1999」のデータをもとに検証し,加工食品との上手なつきあいかたについて,厚生省が1995年に発表した食品添加物摂取量のデータをもとにご紹介してゆきたいと思います。なお,消費者の方々が簡単に見分けられるよう,製品に表示されている食品添加物を中心にお示しいたします。

1. 検証!「買っては・・・・」

 今,ベストセラーになっている「買っては・・・・」についての問い合わせが私のところに寄せられています。読み物としては面白いと思いますが,学術的にはまったく論外なのでここで取り上げたくはなかったのですが,質問がこちらに寄せられてきますので重い腰をあげたわけです。なかには「恐くて何も食べられなくなってしまいました。」などという深刻なものもありましたので,とりあえず少しずつコメントをしてゆきます。

「▲崎クリームパン」

イーストフードの塩化アンモニウム

「買っては・・・・」からの抜粋
塩化アンモニウムは毒性が強く,イヌに6〜8g経口投与すると1時間以内に死んでしまう。人間が大量に摂取すると,吐き気や嘔吐,さらには昏睡を起こすことがある。熱で容易に分解されるが,有毒なアンモニアと塩化水素が発生する。

「MOTTO!食品衛生」からのコメント

1:「イヌに6〜8g経口投与すると1時間以内に死んでしまう。」について
 これは急性毒性試験の結果を引用しています。急性毒性試験はどのくらいの量の物質を一度に投与すれば動物が死に至るかということを目的とした実験で,医薬品のように一度に大量に使用する場合の指標とはなるのですが,食品添加物のように少量を続けて摂取するような場合にはこの試験結果はあまり参考にはなりません。それで,平成7年の食品衛生法の改定で,食品添加物の指定を受ける場合は急性毒性試験の資料は不必要となりました。


2:「人間が大量に摂取すると・・・」について
 食品添加物として大量に摂取することはありません。


3:「熱で容易に分解されるが,有毒なアンモニアと塩化水素が発生する。」について
 塩化アンモニウムを食べても有毒なアンモニアと塩化水素は発生しません。塩化アンモニウムは,生体内でアンモニウムイオンと塩素イオンになり,アンモニウムイオンは肝臓で尿素となって尿中に排泄されます。このような代謝は,通常行われています。

保存料のソルビン酸カリウム

「買っては・・・・」からの抜粋
ソルビン酸カリウムと性質や毒性がほぼ同じ保存料のソルビン酸を,落花生油あるいは水に溶かして,ラットに皮下投与したところ,がんが発生したとの報告がある。

「MOTTO!食品衛生」からのコメント
ソルビン酸カリウムとソルビン酸は,構造はよく似ていますが,性質や毒性は全く違います。ソルビン酸カリウムは水に極めてよく溶けますが,ソルビン酸は水に溶けにくい性質をもっています。毒性も急性毒性を比較すると,ソルビン酸カリウムはLD50が4.2g/kg(ラット,経口)であるのに対し,ソルビン酸は10.5g/kg(ラット,経口)で全く違います。また,この文からはソルビン酸を投与するとがんを生じ,ソルビン酸カリウムも同じ毒性をもつと読み取れますが,実際にはソルビン酸カリウムで同じ実験をしても腫瘍は発生しなかったと記述されています。

発色剤の亜硝酸ナトリウム

「買っては・・・・」からの抜粋
胃の中で魚肉や食肉に含まれるアミンという物質と結びついて,ニトロソアミンという強発がん性物質に変化する。

「MOTTO!食品衛生」からのコメント
「そんなに危険?食品添加物」のページの6.検証!発色剤をみてください。


シュガーレスチョコレート「●ロ」

ラクチトール,ポリデキストロース

「買っては・・・・」からの抜粋
糖アルコールは,人の消化酵素ではほとんど消化されない。カロリーが少ないからパクパクやっていると,トイレにかけこむことにもなるわけだ。

「MOTTO!食品衛生」からのコメント
ラクチトールは,皆さんご存じのキシリトールなどと同じ糖アルコールの仲間,ポリデキストロースもこれまた皆さんご存じのファイブミニに含まれる食物繊維のひとつです。いずれもお腹の調子を整える働きがある糖質としてよく知られています。難消化性の糖質で,消化酵素によって分解されることなく大腸までとどき,腸内細菌叢を改善する働きをもちます。便秘などに効果がありますが,残念ながらそんなに強い効果はありません。トイレに駆け込むほどの利き目があるわけではありません。下剤ではありませんので・・・。

甘味料のアスパルテーム

「買っては・・・・」からの抜粋
アスパルテームを有害とする指摘はあまりにも多い。脳神経異常,発がん性,ポリープ発生,目に奇形,生殖障害,体重の減少,血液異常などなど。

「MOTTO!食品衛生」からのコメント
体重の減少と書かれていますが,正確には体重の増加抑制です。アスパルテームをラットに0,1,2および4g/kgを毎日毎日投与すると,投与量が多くなると体重の増加が抑えられます。人に換算して考えれば,アスパルテームの0g,60g,120g,240gを毎日食べると体重がのびませんよということです。当たり前です。アスパルテームでなくても食塩でもこれだけ食べれば体重は増加しません。毒性試験ではこのように多量の食品添加物や医薬品を長期にわたって投与するので実際の摂取量ではあらわれないような症状が出てくるわけです。
 さらに,脳神経異常,発がん性,ポリープ発生,目に奇形,生殖障害,血液異常などが並べられていますが,信頼性の高い報告ではアスパルテームでこれらの毒性が出ているという報告は見当たりません。ポリープの発生というのは,ひょっとしてアスパルテームの分解物であるジケトピペラジンをラットに1.5g〜3g/kg投与した時にみられた結果を書いているのではないでしょうか?これも追試の結果,腫瘍との関連が認められていません。


★清ラ王

調味料のグルタミン酸ナトリウム

「買っては・・・・」からの抜粋
食品添加物による化学物質過敏症は,古くから知られている。30年ほど前,アメリカ・ボストン近郊の中華料理店で食事を摂った人たちが,10〜20分後に,首から腕にかけてしびれと熱感を持ち,それは胸まで広がり,全身の倦怠感や緊縛感に襲われた。・・・中略・・・。私も,カップめんやインスタントラーメンを食べると,胃が重苦しくなり,下痢をすることもある。いずれも添加物が原因の化学物質過敏症にかかっているのだ。

「MOTTO!食品衛生」からのコメント

患者が摂取したワンタン・スープにグルタミン酸ナトリウムが多量に使われていたため,グルタミン酸ナトリウムが中華料理店症候群の原因ではないかと疑われました。そこで,臨床試験が行われましたが,一部の過敏な人に上記のような症状が現れますが,約1時間で治まるという結果が得られています。

 グルタミン酸は,アミノ酸の一つで食品や私たちの組織や血液中に広く存在しています。体内のアミノ酸は常に一定のバランスで維持されているのですが,多量のグルタミン酸ナトリウムを摂取すると,体内のグルタミン酸濃度が一時的に上昇し,正常なアミノ酸バランスが崩れ,一部の人では上記のような症状が出るものと考えられます。その後,グルタミン酸は,徐々に代謝され,正常な値にもどるとこれらの症状がなくなります。これは別にグルタミン酸に限ったことではなく,他のアミノ酸や食塩など何でも一時的に多量に食べれば気持ちが悪くなるのは当たり前です。

 カップめんインスタントラーメンを食べると胃が重くなり,下痢をするのは,これを食べる時間帯に問題があるのではないでしょうか?夜中に食べて,朝胃の調子がバッチリという人はいません。化学物質過敏症であると決めつける根拠となる報告はありません。

2. 食品添加物の一日摂取量

 食品添加物を正しく理解し,安心で安全で豊かな食生活を送りましょう。まず。食品添加物の一日摂取量を見てみましょう。私達は一日に約10gの食品添加物を摂取していますが,そのほとんどは天然にも存在するもので,一般の食品からも通常摂取しているもので,私達の身体の中にも存在するものです。

 ただ,やはり化学的合成品は,安全性がチェックされているからといっても大量に摂取するのには抵抗があるでしょう。そこで,どんな加工食品にどのような食品添加物がどのくらい入っているのかを知り,食品添加物の摂取量を必要最小限に抑える工夫をしてみましょう。また,摂取量より不安だとうわさされているものは極力食べたくないという方のために,不安な?食品添加物をたべないためにはどうしたらよいのかをご説明いたします。

3. 食品添加物別1日摂取量

 それでは,どんな種類の食品からどんな食品添加物を摂取しているのかを調べてみましょう。まず,天然に存在しない化学的合成食品添加物でたくさん摂取しているものは,保存料のソルビン酸(35.1mg),品質保持剤のプロピレングリコール(23.6mg),糊料のカルボキシメチルセルロースナトリウム(5.76mg),結着剤のリン酸塩(リンとして7.88mg)などで,合成着色料や酸化防止剤などは比較的微量です。

 次に,天然にも存在する食品添加物を見てみると,最も多いのが乳酸,酢酸,クエン酸などの酸味料(1873mg),次いで溶剤として用いられるグリセリン(1167.7mg),調味料のグルタミン酸(1116mg),甘味料のD-ソルビトール(998mg),そしての順になっています。ただし,酸味料の1873mgのうち乳酸(683mg)とクエン酸(446mg)については生鮮食品にも多く含まれることから,ここで検出されたほとんどは加工食品の原材料由来のものと考えられます。したがって,食品添加物である酸味料の摂取量は実際には酢酸(470mg)+αということになると思われます。

4. 化学合成食品添加物の摂取量を減らすためには・・・

 それでは,化学合成食品添加物の摂取量を減らすために1日摂取量の多い食品添加物について食品別にみてみましょう。

 嗜好飲料・調味料の項目で多く含まれるのは,溶剤として用いられるグリセリン,調味料のグルタミン酸(ナトリウム),酸味料のクエン酸です。グリセリンは,粘度が高い,吸湿性,保湿性がある,無毒で甘味がある,透明であるなどの性質をもつため,用途は多岐にわたり,チューインガム軟化剤,着色料,着香料の溶剤,冷菓類の分散や結晶化防止,和菓子,ゼリー菓子の新鮮味の保持などです。嗜好飲料・調味料からの摂取量が多いのは,グリセリンが溶剤や増粘剤として使用されているためです。

グルタミン酸ナトリウムは,昆布の旨味をもつアミノ酸で,「味の素」の主成分です。多くの加工食品に使われていて,たとえばそうめんやそばのつゆ,焼肉のたれ,チャーハンやスープなど中華料理用調味料,だしの素,お好み焼きや焼そばのソース,インスタントカレーなどに使われています。クエン酸など酸味料は,清涼飲料水に酸味をつけるために使われます。たとえば,100%以外の果汁入り清涼飲料水,サイダー,ジンジャーエール,コーラなど炭酸飲料水などに使用されています。

 水産・畜産,砂糖・菓子類,野菜・果実・海草類の製品に多く含まれる食品添加物は,甘味料のD-ソルビトールと調味料のグルタミン酸(ナトリウム)です。甘味料のD-ソルビトールは,甘味度が砂糖の60%ですが,加熱によるかっ変がない,タンパク質の変性防止作用,優れた保質性など砂糖にはない性質をもってますのでさきいか,蒸しかまぼこ,ハム,ソーセージ,カステラ類,焼き菓子,キャンディー,キャラメル,グミ,チョコレート,漬け物などに利用されています。調味料のグルタミン酸ナトリウムは,魚介類の味付け,蒲焼き,照焼き,スープ,魚肉ハム,魚肉ソーセージ,佃煮,いかの塩辛,いかのくんせい,豚肉しょうが焼き,牛肉大和煮,ロースハム,ソーセージ,焼き菓子,米やじゃがいものスナック,プリッツ類,調味梅干しなどあらゆるものに使用されています。

 以上,ご紹介したような加工食品の摂取を控えた場合,食品添加物の摂取量が1日あたり3g減るということになります。化学物質の摂取量が気になる方は,ぜひやっていただければと思いますが,ひじょうに不便で,大変なことだと思います。ドレッシングや清涼飲料水の使用を控えるだけでもかなりの効果があると思います。

5 不安のある?食品添加物の摂取量を減らすためには・・・

 とにかくどこにでも不安な添加物として顔を出すのが,合成着色料(酸性タール色素)です。食品別に1日摂取量を見てみますと,水産・畜産食品,菓子類,飲料水・調味料,野菜・果物などからの摂取量が多いようです(多いといっても先ほどの食品添加物に比べれば,1万分の1ぐらいですが・・・)。子供向けの魚肉ソーセージやハム,かき氷のシロップ,たくあんなどの漬け物などに使われています。「合成着色料は食べたくない」という方は,これらの食品を購入する時,表示をチェックし赤色106,黄色4・・・などと表示されているものを避ければよいわけです。

 次によく危険といわれるのが保存料です。ハムやソーセージによく使われていまして,これも基本的には表示されていますので,嫌だと思う人は表示を見て保存料無添加のものを選ぶとよいでしょう。なお,ここでお示ししました保存料については,塩も含みます。たとえば,ソルビン酸として摂取量を出していますが,実際にはソルビン酸とソルビン酸カリウムを合わせた量です。

 以上のようなデータをもとに,皆さんは毎日食べる食品に興味をもち,食品添加物に関心をもち,ご自身でご自身の身体を守れる知識をつけることが大切です。世の中には,おもしろ半分で,あるいはお金のためにつまらない情報を流すものもいますが,これに惑わされないよう,正しい知識をつけましょう。