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密度行列繰り込み群の方法
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密度行列繰り込み群の方法

全系の波動関数を各部分の波動関数等から組み立てる方法


理論化学の現状と課題 

これまでは物質を単純なモデルで近似し、その性質を調べていたが、電子計算機の発達により、原子核と電子からなる物質の真の姿が理論的に解析できるようになった。全ての物質が従う量子力学以外に、何の仮定も使わない第一原理計算法は、密度汎関数理論を用いることで、固体や表面の構造や性質を明らかにした。また小分子の定量的解析理論もほぼ完成し、大分子、例えば一次元高分子の基底状態を、密度汎関数理論で解析する方法も確立された。しかし電子が強い相関を持つ時、その電子基底、励起状態を決定し、巨視的な性質を予言する方法はまだ知られていない。

これまでの理論計算法は系が倍になると計算時間は8倍程度に増加するため、解析できる大きさは限られていた。計算時間が系の大きさに比例する方法が提案されたが、適用範囲に限界がある。現存の方法は原子核と電子からなる多体ハミルトニアンから、系全体の波動関数を求めるため、大規模系では系の自由度が爆発的に増加し、扱える大きさが限られるためである。


基本的なアイデア 

Wilsonによって開発された繰り込み群は、物理学分野で数々の成果を生んでいる。この理論では極めて大きな系の性質を予言するために、系を大きくすると共に、不要な高エネルギー過程を消去し、系の自由度を一定に保ったまま巨視的なハミルトニアンの解を求める。またそれはハミルトニアン自体を次々に新しいハミルトニアンに写像して、低エネルギーの有効ハミルトニアンを導こうとする。

大きな系では遠い部分は互いに独立であるが、量子化学はこれまでこの性質に注意を払わなかった。繰り込み群の方法は、全波動関数を各部分の波動関数から組み立てる方法にあたる。、この繰り込み群の方法は、理論化学の直面する問題を解決できる。それは強電子相関系等の基底状態や低い励起状態を求めることができ、また系が大きくなっても自由度を一定に保つことができる。全体を部分から作るこの方法は、分子を官能基から組み立てる化学者の考え方に似ている。


研究内容

この研究では実空間繰り込み群の方法により、一次元高分子の基底、励起状態の波動関数を求める方法を確立し、一次元導電性高分子や有機磁性体等に応用する。一次元導電性高分子(ポリアセチレン)や有機磁性体(ポリカルベン)の基底、励起状態の波動関数を求め、固定点解析を行い、その性質を実験と比較する。置換基を変えた分子を調べ、分子構造と有効ハミルトニアンの関係を考察する。実空間繰り込み群は鎖状分子には適用し易いが、一般の分子には困難である。そこでこれらの分子はエネルギー空間の繰り込み群を用いる。

予備研究の結果、水やフッ化水素分子の基底状態、結合解離過程が非常に正確に記述できた。ポリアセチレンでは極めて少数の自由度を考慮するだけで、相関エネルギーの95%以上が得られた。この方法の有望さを示す。


その可能性

この方法により、今まで極端に簡単化されてきた、生体分子等の大きな分子の反応や電子移動等の素過程の解明できる。また実在の機能性高分子の物性の解明や設計が可能になる。

繰り込み群の方法は新しい正確な計算法を与えるが、その価値はこれだけに留まらない。繰り込みの結果系の低エネルギー状態を表す有効ハミルトニアンが得られる。普遍的な性質を示す系では、低エネルギー状態を表す普遍的な有効ハミルトニアンが得られる。分子を構成する官能基は異なる分子中でもほぼ同じ性質を示すが、これは個々の官能基を表す普遍的な有効ハミルトニアンの存在を暗示する。繰り込み群に基づいて分子のハミルトニアンを原子核と電子から作らずに個々の官能基から組み立てる、新しい概念を提案したい。


専門家のための解説

分子構造総合討論会1997から


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物質情報論

人間情報学研究科

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