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訳者あとがき
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訳者あとがき

 本書はH.-D. Hoeltje博士とG. Folkers博士による「分子モデリング―基本原理と応用」の全訳である。

 H.-D. Hoeltje博士は現在Heinrich-Heine大学薬化学研究所長,G. Folkers博士はスイス連邦工科大学薬学部長の職にあり,共に薬学領域における分子モデリング研究の最も有力な推進者の一人である。

 リガンド設計の最近の進歩は,分子モデリング技術の出現やその絶えまない改良と密接に結び付いている。この技術は今日,分子的性質の計算に加え,薬物と受容体の三次元構造の予測や薬物‐受容体相互作用のシミュレーションをも可能にしつつある。

 本書は,小分子からタンパク質に至る近代分子モデリングの現状を,基本原理から説き起こし,常に応用に焦点を合わせつつ紹介した入門書である。本書の主な特徴の一つは,初心者が陥りやすい数多くの落し穴を詳しく取り上げ説明している点である。読者は,著者の深い経験に裏打ちされた貴重な指摘が本書の到る所にちりばめられていることに気付かれることであろう。

 本書で取り上げられた分野は,我が国においても一部の研究室ではかなり以前から行なわれており,また,分子モデリング用ソフトウエアの普及ぶりから判断して,この分野に関心をもつ学生や研究者は現在かなりの数に上ると思われる。しかし本書のように,その基本原理から説き起こし,実際の研究で陥りやすい問題点まで親切に解説した日本語の書物は,訳者の知る限りまだ出版されていない。この点において,本書の翻訳は時宜にかなったものと考えられた。

 翻訳に当たっては,できるかぎり分かりやすい訳文を心掛けたつもりである。しかし本書の場合,原文の一語一句に深い内容が込められていると考えなければならない箇所が多くあり,訳者の語学力や乏しい経験と知識をもってしては,それらを正確につかみとることは容易ではなかった。そのため訳文の中には,訳者が内容を取り違え,著者の意図しない解釈をしている箇所も少なからずあると思われる。本訳書の中に内容上の誤りがあるとすれば,その責任はすべて訳者にある。

 この拙い翻訳が,分子モデリングの手法を,単に美しい分子モデルを表示させるだけではなく,薬物‐受容体相互作用の本質的な解明に応用していきたいと考えておられる学生や研究者の方々に,少しでも役立つところとなるならば,訳者の喜びはこれにすぎるものはない。

訳 者