爆弾の構造が「男根期(フロイト)」を思わせること、「W」の文字が女性の乳房のような形をしていること、映画館の座席に仕掛けられたパイプ爆弾は、シートを刃物で切って刺さっていたが、その形態が女性器への男根挿入のように見えることなども、博士は指摘したが、警察官達には、博士の結論は、「こじつけ」にしか見えなかった。しかし博士は自らの結論に自信を持っていた。
警察はこのプロファイルに基づいて具体的に何をしたらいいかを博士に尋ねた。博士は
このプロファイルをメディアに公開し、捜査状況も全部公開すべきでしょう。…うまく操れば犯人は自分から出てきます。彼は警察に捕まりたいと考えているはずです
"I think you ought to publicize the description I've given you. Publicize the whole Bomber investigation………I think there's a chance he'll come forward by himself if we handle him right. I think he wants to be found out,"
ブラッセル博士は、犯人が有名になることを望んでおり、犯行に対する評価を待ち望んでいて、メディアが間違っていれば必ず連絡してくると考えていた。
犯人でもないのに犯人だと名乗る輩を警察はすべて調べるわけには行かず、博士の助言に従った。
ニューヨクタイムスなどの新聞がマッドボマーのプロファイルを掲載した直後、警察が予測したとおり、「オレがマッドボマーだ」という自首や手紙が相次いだ。しかし、爆弾の製造法は公開していなかったため、嘘であることはすぐに分かった。
またプロファイルに合致しているとする通報が次々と寄せられ、無実の逮捕者も出た。
アッパーウエストサイドのポーランド系男性は、叔母と同居、趣味で金属の加工をしており、夜になって包みを抱えて外出するということで通報・逮捕されたが、単に工芸品の露店を出しに行っているだけだった。
また、元Con Edisonの社員で、妄想症(パラノイア)の病歴があり、熟練機械工、年上の配偶者がいる男性が最有力容疑者として浮上した。彼は頻繁にニューヨークに出かけ、その時は必ず青いカバンをもっているという通報が寄せられた。しかし、警察が逮捕して調べたところ、カバンには売春婦に履かせるためのハイヒールが入っていた。
捜査が難航している最中、犯行はエスカレートし、手紙の数も増えた。そしてある日、秘匿されているはずのブラッセル博士の電話番号に直接電話がかかってきた。
●もしもし?
精神科医のブラッセル博士でいらっしゃいますか?
●はい。私がブラッセルですが。
私はF.P.です。この件からは手を引いてください。でないと後悔することになりますよ。
Con Edison社は大規模な元従業員探しを始めた。しかし、同社は小さい会社と何度も合併を繰り返していたため、社員の記録がずさんで、記録内容もバラバラだった。
そしてついにAlice Kellyという社員が、ジョージ・メテスキーという男がCon Edisonが合併する前の会社(United Electric & Power Company)に勤務していたことを突き止めた。
ジョージ・メテスキーは、工場内で事故にあい、その後結核にかかったことがその事故のせいだと主張したが認められず、何度も苦情を訴えていた。 |