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指紋の残存期間は長く、40年前の手紙から検出された例がある。
ナチス幹部だったバレリアン・トリファは経歴を偽ってアメリカに移住、教会で大司教をしていた。しかし1982/05,FBIが最新鋭のレーザー照合システムを使用、親衛隊のヒムラーに書いた1942/06の手紙からトリファの指紋が検出されたため、トリファは国外追放になった。
指紋の検出には、金属の粉末(アルミ)を塗布するのが一般的だが、紙・木・発砲スチロールなど検出しづらい材質の場合や付着程度が十分でない場合、化学物質の噴射やレーザーを使う。最近ではコストが安い方法として紫外線の照射などもある。
1982年に米軍が開発したシアノアクリレート法では、強力接着剤に使われる物質シアノアクリレートを、密閉したケースの中に入れた検体に噴射する。他にもヨードガス、ニンヒドリン、ゲンチアナ色素などを使用する方法がある。
付着程度が十分でない場合(潜在指紋)には、蛍光粉末を塗ってアルゴンレーザーを照射する。現在では40種類ほどの指紋採取法がある。
ニンヒドリンは紙、メチルバイオレットは粘着面、ジアミノベンゼンは血痕、マルチメタルは写真、など付着面の材質によってさまざまな方法がある。
指紋は人体からも検出できるが短時間で消えてしまう。タバコの吸殻、マッチ、ティッシュ、使用済み生理用品やコンドームなど珍しいものから検出されたこともある。ただ、布状のものは非常に困難。珍しい事例では、熱したナイフで被害者を拷問した強姦殺人の犯人が、被害者のパンストをナイフに巻いていたところ、パンストが熱で溶けて犯人の指紋がくっきりと焼きついていたことがある。パンストを現場に捨てていった犯人は後日終身刑になった。
指紋は第一関節のみと考えられがちだが、第二関節や手のひらの文様から個人識別が出来た例がある。また、表皮がはがれていても採取はできる。
AFIS(自動指紋照合システム)は世界各国の警察で導入され、データベース化された数百万の指紋から特徴的ポイントが一致するものを短時間に検索できるとされている。しかし、このシステムは、実際には人間の目で同一性を判定するための候補をある程度まで絞り込むことができるだけで、一致する指紋を映画のように瞬時に照合できるわけではない。最終的には人間が判断するわけで、まったく違う指紋を同一だと判定して誤審を招いた事例が多々ある。
日本の場合、指紋は10ヶ所の特徴点が一致すると同一と判定される。国際的には5-15箇所程度の国が多いが、アメリカには何箇所という基準が無く、指紋を鑑定する担当者の判断に委ねられている。そのため、経験の浅い警官が少ない一致点に基づき別人の指紋を同一と判定してしまう例が多数起きている。
ニューヨークのFinger Matrixいう企業が、スキャナーで電子的に指紋を採取・保管するシステムを開発し、一部に導入されている。これによって指紋の全国的一元管理が進み、捜査の効率・精度が飛躍的に向上することが見込まれるが、「警察国家化」を危惧する声もある。
なお、本当かどうかは分からないが、FBIの指紋データベースに登録されているのは、約2億個だという(The
Bureau : Diarmuid Jeffreys 1994)。
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