48年間FBIの長官を勤める。

本部のビルの名前にもなっている伝説的人物で、29歳で長官に就任して以来48年にわたってFBI長官を勤めた

彼の就任当時のFBIは予算も少なく実績もなく、腐敗した弱小官庁に過ぎなかったが、厳格な規律・過酷な訓練・莫大な仕事量を要求し、世界的に有名な組織を作り上げた

不倫・同性愛・借金などを理由に職員を飛ばすなど、過剰とも言われる保守的な態度には一部に批判がある

FBI（Federal Bureau of Investigation：連邦捜査局）が正式に連邦警察組織として発足したのは1934/05、それまでは銃の携帯や逮捕権などは認められていなかった。当時は職員650人、捜査官450人という小規模な組織だった。 

エドガー・フーバーは本部のビルの名前にもなっている伝説的人物で、29歳で長官に就任して以来48年にわたってFBI長官を勤めた（1924-72）。彼の就任当時のFBIは予算も少なく実績もなく、腐敗した弱小官庁に過ぎなかった。しかし、厳格な規律、過酷な訓練、莫大な仕事を要求し、強固な組織を作っていった。不倫・同性愛・借金などの問題を抱えた職員を次々に飛ばしていくなど、過剰とも言われる保守的な組織運営には、今では批判的に見られることが多い。

 フーバー長官がPR（Public Relations）に心血を注いだ伝統を受け継ぎ、それが映画の中で描かれるような「完璧さ」幻想の源泉になっている。

特別捜査官(special agent)は約1万人で最近は人数があまり変化していない。

職員は中流階級出身の白人男性がほとんどだが、女性10％、黒人5％、ヒスパニック5％、アジア系1％、インディアン0.5％となっている。
人種差別の裁判が度々起きており、実際にFBIは毎年巨額の賠償金を払い続けている。500人のヒスパニックが昇進を阻まれたとして集団訴訟を起こしたこともある。

ほとんど全員が大卒、しかも弁護士・会計士などの資格保持者で、軍隊・警察出身の者が多い。

バージニア州クワンティコにあるFBIアカデミーは、新人研修や警官の訓練を行う。ここには行動科学課（BSU）や人質救出部隊の本拠地がある。ここに送り込まれた新人たちは、海兵隊流の肉体教練、射撃、法律の講習、など様々な研修を受ける。ここでは協調性・団結心・忍耐力・忠誠心・遵法精神などを叩き込まれる。

プロファイリングを専門に行っているのは10人程度、オフィスはFBI長官や幹部用の地下核シェルターだった場所にある。勤務は他の職員たちより、肉体的・精神的に輪をかけて過酷で、「羊たちの沈黙」でクラリスの上司クロフォードのモデルとなったジョン・ダグラスはこう言っている。

数十件の事件を抱えて毎日残業、家族を犠牲にしながら働かなければならない環境で、6歳の少女をレイプして殺した犯人の開き直ってニヤけた態度に毎日さらされても、怒らず冷静でいられる人は捜査官に向いている。

J. Edgar Hoover

FBIの活動範囲は連邦法の適用範囲すべてに及ぶ。

アメリカは州という独立国の集まりなので、原則として犯罪は全て州警察が担当するが、270種の連邦犯罪（組織・知能・麻薬・凶悪・テロ・諜報）や犯行が州境をまたいだ場合はFBIの管轄になる。

FBIの人権侵害は数多くの事例が確たる証拠と共に明らかになっている。例えば、反政府的団体の盗聴などがあるが、スパイ容疑になると無制限で、しかも情報が公開されない。キング牧師やジョン・レノンの暗殺にFBIが荷担していたという説を信じている人は多い。

1980年代レーガン時代には、中南米に設立したアメリカの傀儡政権に反対する団体などを組織的に監視・盗聴していた。

FBIの犯罪科学研究所に送られてくる証拠の数は年間およそ100万、中には230ｋｇの岩、戦車の破片、「未知の生命体」の毛髪なども含まれる。また、ケンタキーフライドチキンの容器に入った右手という例もあった。

なお、日本でも使われている「Gメン」という言葉は、Government Menの略で、ギャングか使っていたのを新聞が取り上げてから定着した。

「マフィア」という言葉はイタリア語が語源で、シチリア島の秘密結社の名前。「フランス人に死を。それがわれらの願い」という文章の単語の頭文字をとったもの。シチリア島をフランス軍が占領していた際、婚約者を強姦・惨殺された青年がフランスに抵抗したことから。