| 著名な米人ミステリー作家パトリシア・コーンウェル(Patricia
Cornwell http://www.patriciacornwell.com/ 45歳)がウォルター・シッカート(Walter
Sickert)
という画家がジャック・ザ・リッパーであると断定した。
コーンウェルはジャック・ザ・リッパー事件の調査に400万ドル(約5億円)を投じ、その結果、「ウォルター・シッカートは100%犯人であると確信している」と断言。ウォルター・シッカートは、事件の20年後に娼婦の殺害をテーマにした一連の絵画the Camden Town Murders(上記)を描いている。彼が犯人であるという説は1960年代から出されていた。
コーンウェルはシッカートの絵画を7万ドルかけて30枚買収、絵を切り裂いて犯罪捜査の専門家に依頼して手がかりを探した。絵の内容は、裸の娼婦(死体含む)が男性と部屋の中にいるものが含まれるが、通常の人物画が多い。中でも犠牲者メアリー・ケリーの殺害現場に酷似している作品が一枚含まれている。またメアリー・ケリーが生前に使用していた赤いハンカチを、絵を描く際にインスピレーションを得るためにアトリエに保管していたと言う。
シッカートの父親は暴力的で虐待をしており、おかげで強迫神経症となり手を洗う回数が異常に多かったという。また、子供の時、フィステルやその他先天的奇形を治療するための外科手術を数回受けている。その内の1箇所は男性器で、そのために無精子症になっていた可能性が高いという。シッカートは3回結婚しているが子供は1人もできなかった。コーンウェルは、1888年当時28歳だったシッカートが性的不能のために娼婦に怒りをぶつけたと結論付けている。
コーンウェルは英国政府から許可を得て、公文書館に保管されているジャック・ザ・リッパーが書いた手紙を鑑定した。DNA鑑定の専門家を自費で雇い、鑑定に当たったがDNAを採取することはできなかった。保存のための熱処理が原因らしい。
そこでスコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)に長らく保管されていた手紙も鑑定したが、同様にDNAは発見できなかった。便箋に当時の高級文具店Perry & Sonsの透かしが入っていたことを発見できたにとどまった。
諦めきれなかったコーンウェルは膨大な費用と時間がかかる「ミトコンドリアDNA鑑定」で、封筒や切手に付着した唾液を検査することにした。
その結果、1888年11月22日にジャック・ザ・リッパーがマンチェスターから出した手紙とシッカートが妻に書いた手紙からDNAを採取することに成功。シッカートの手紙からは複数のDNAが検出された。そのうちの一つがシャック・ザ・リッパーのもの一致。
ジャック・ザ・リッパー研究家の間では、コーンウェルの説について意見が分かれている。「あり得る」というものから「金の浪費」という意見も出ている。研究家のStewart
Evansは、コーンウェルの説を「意図的なでっち上げ」で、彼女の「キャリアをぶち壊す妄想」だとまで言っている。The
Guardian: December 8, 2001
コーンウェルは一連の調査が、「犯人のためでなく犠牲者のため」だと力説、「もし犯人が別の人物だったら、私のキャリアは致命的打撃を受ける」とテレビなどで発言している。
113年たった今でも犠牲者達は法の正義に浴す権利があります。犯人のことなど考えず、犠牲者のことだけを一度でも考える誰かがいなければ犠牲者は浮かばれません。ジャック・ザ・リッパーは神格化されたり、映画のヒーローになる資格などないのです。
"They have a right to have justice after 113 years. They have a right for someone to care about them for once and not to care about him. ... He doesn't deserve to be mythologized and turned into some hero played by movie stars. "
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