2005-01-17 偶然の集積
もはや引き返しようもないほど寒い。マイナス10度だと体感気温がマイナス17, 8度になるからね、しゃれはない。一切ない。
日本だとお正月を超えて、2月が最も寒いのだと言いつつもどこかで春を感じることが可能ではある。文化的規制がそういうフレームを身体を通して養成しているのだと言って言えないこともないが、実際なんか時々ポカポカがあり、陽がのびましたねぇ、なんてセリフにも実感価が伴うために、もう春だ、確実に春に向かっているのだというゆるぎない信頼が醸成される。
まぁトロントだって今年も春は来るんだと思うんだが、毎年この時期になるとひょっとして来ないのではないかと一回は考える(多分ウソ)。そうして、昔の人が春の訪れを喜ぶとは今の私たちよりもずっと大きくて大変なことだったのだろうと思い直す。なぜなら、まず第一になぜ私たちが春が来ないわけはないと思えるかと言えば、地球物理学的知見が一般に流布しており、自転も公転もとまりません、とまったら春どころじゃないっすってことを知っているから、日照に変異のあり、今よかもっとお日様と仲良しの時間が来ることを自明であると言える。しかしこの知見が一般に流布されておらず、知る人しか知らない何かであった場合、人びとはなぜ春の来るのを確信できたのか。それは経験によってでしかない。しかし経験は人に安心感をあたえるとは限らない。実際には経験こそが真実を語っているのではないかとさえ思えることも多いという現実がある一方で、経験は偶然の集積でしかないかもしれないからだ(これ自体は反証可能でないだろう)。
それはともかく、フランスの国境なき医師団は継続して物議をかもしているようだ。
http://www.worldtimes.co.jp/news/world/kiji/050115-214839.html
「国境なき医師団」(MSF)のロニー・ブロウマン元会長がフランスのテレビで、
インタビューの中で「実際に現地で救援活動を開始して分かったことは、医療支援を必要とする重病患者や重症者は、予想よりもはるかに少なく、上下水道の整備などのインフラ整備でも、指摘されているような莫大な費用は必要としていない」と語り、国連などが試算する百億ドル規模の復興資金の必要性について、「理解できない」と語った。
のだそうだ。
この話、カナダ人にはまったく聞こえてないと思う。一般に援助は足らないもの、で話は決まりきっている。今後どうなることか。
■ ここからのものの考え方を模索する
ここからのものの考え方を模索する、っつてもいろんなフェーズがあるわけで政治思想系統の混乱の収拾が最も期待されるところではあるが、政治思想って、上澄みは上澄みなんだと思う。多くの人にとっての思考のフレームが若干でも変化し、変化しない人も残り、変化が火急な人もいれば穏やかな人もいて、といったプロセスをこなして、ものの考え方の枠組みに時間的な過去との対比においての変化が顕著となる。この時の現実をとりまとめるのが政治思想の役割だろう。だから、それ以前には捨て駒やぶり返し等々のある種のノイズをも含んだ多様な言論戦が必要となる。
つっても現実に何がどう変化していくのかわからんけど、今ってそのフレーム拡張期なんだろうなと思う。午後に聞いたラジオのある種の文芸番組みたいなもので、「The Next Englitenment」という著書が紹介されていた。この番組は著者にだ〜っとしゃべらつつ、ホスト(ホステスだが)が突っ込む突っ込むでかなりフランクな話を聞けるのが楽しい。(フランクっつっても本の中身に関係ないようなことが話されることはない。多分数少ない例外が、この間書いたスーザン・ソンタグが亡くなった時だったかもしれない。トロントに来た時のインタビューをあまり編集してない様子で放送していたから)
「The Next Englitenment」そのものがここからの、この次の啓蒙なるものになるかどうかはわからないにせよ、こういうタイトルが出るフェーズなんだなとは言える。
(タイトルに惹かれているだけであんまり好感しているってわけではない。もとより今日はじめて知ったので読んでない。ただし、インタビューでもそこに時間がさかれていたが、啓蒙主義の啓蒙じゃないからこそ次の啓蒙だっていう発想はいいなと思った。もっとスキルフルで現実的な本のようだ。買って読んでから言えよ、だが。)
The Next Enlightenment: Integrating East and West in a New Vision of Human Evolution
■ 日韓国交正常化交渉に関する外交文書公開
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/01/17/20050117000014.html
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050117i204.htm
17日に韓国外交通商部が17日午前一般に公開したそうだが、さてどういう読み方が出るんでしょうか。
■ 趙紫陽・元中国共産党総書記が死去、85歳
趙紫陽って名前が女優みたいだと思っていたのだが、 Zhao Ziyangだとただ読みにくい(^.^;;。チャイニーズの英語表記と日本での漢字+よみをマッチさせるのは本当にシンドイ。昔、中国に多大な興味を持っていると自他ともに認めていた私の友人は、チャイナのどこだったか結構奥の方にまで足を伸ばして、そこで会った西洋人組に、詳しいぃ???と大きな疑問符をつけられっぱなしで歯ぎしりをしていたらしい。つまり共通語となるのは高確率で英語なのだが、極端にいえばマオツートンと言われても咄嗟に反応できなかったりして(慣れて以降はともかく)、多いに知見を疑われたということらしかった。彼女はその後広東、北京官話の順で習得していた。語学の才の充実した人なのだな。
Ousted Chinese reformer Zhao Ziyang dies
かなり長いが、人となりというか重要点をさらえるAPの記事。で、まぁ天安門以降そうとしかならないわけだが、好意的に書かれている感じか癲
趙紫陽が共産党をゆるぎなく信じていたことは知れらていたが、彼の社会主義の定義は毛沢東や他の左翼たちとは非常に異なっていた。
1979年に彼は「そうです私たちはもちろん社会主義者としての路線を維持しなければならない。しかしでは社会主義とは何です? 社会主義の特徴とは、生産手段の公有化であり、社会主義の原則は、それぞれが自分の働きに応じて、ということです。」と語っていた。
(川上試訳)
といった文章がなんとなく、今のチャイナにはとても皮肉だし、当時でも結局そうだったのだろうが、このへんの80年代で公式なとこから姿を消した人びとは、当時でもホントウにそれがその地で成り立つと思っていたのか、それとも、それは多くの建前の1つだと思っていたのか。そこらへんを知りたくはあったな。
天安門の後しばらく経って、あまり世界の政治状況などに興味のない、あるいはあまり知識のない友人の一人が、トーショーヘイの、いわゆる「先富論」というのか、豊かになれる人は先に豊かになれ、という語についてもの凄く腹を立てていたのを思いだす。彼女が言うには、こんなことは政治家の言うことではないでしょ、だって! 先に豊かになれじゃなくて、先に考えろとか、みんなのことを考える余裕を使えとか、そういうことじゃないのか、ということだった。彼女自身が覚えているかどうか知らないが(今度聞いてみよう)、私は彼女の勢いに、かなり目を覚まされたような気がした。
資本主義世界の政府はむしろこんなことを言うわけにはいかない。この皮肉をどうするよ、でもあるしここにある錯誤が整理できていないことがこの皮肉を皮肉にしない訳のわからない言論の元なのではないか。そもそも資本主義の世界とか社会主義の世界という分け方は政治的な文脈のみでしかないのに、それを政治、経済、文化すべてにあてはまるかのように言い散らかすことは、20世紀最大の錯誤ではないのかと私は思う。もう一つの世界などない。あるのは同一地平面での試行錯誤だけだ。
■ 妥協案を検討しているのか
KEDO使い重油供給 米、北朝鮮に妥協案検討
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=MRO&PG=STORY&NGID=main&NWID=2005011701003723
17日付けの共同によれば、
【ワシントン17日共同】米国がこう着状態の6カ国協議打開を狙い、北朝鮮による「完全核放棄」確約を前提に、休眠状態にある日米韓や欧州連合(EU)が理事国の朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を使って重油を供給する妥協案を検討していることが17日、分かった。米政府関係者が明らかにした。
政府関係者がそう言う一方で、昨日だったはどこかのシンクタンクのアナリストが、北朝鮮はチャイナに飲まれるとかなんとか示唆していたらしいじゃん・・・。両極端あっていいんだが、なんとなくひっかかる。
15日のワシントンポストで読んだ感じでは、アメリカの代表団が先週北朝鮮を訪れた際、北朝鮮が、アメリカが好戦的な態度を止めれば核についての対話再開の用意があると言っている、とあって、記事内容的にはでもアメリカも穏やかな感じではあるかなと見えた。ただ、代表団に北が述べたことが本当に立場を変えたものなのかどうかはわからない、なんせこれまでもあやふやな約束をして交渉を引っくり返してきたから云々という釘のようなものはさされていたが。
N. Korea Says It's Ready to Resume Nuclear Talks
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A8752-2005Jan14.html
もしKEDO時代に戻るんだろうか? ってか戻れるのか?
一方、北をめぐっては南の朝鮮がかなりぶっちゃけた記事を書いていた。
■ 「北朝鮮のように政治レベル低い国に支援するな」
http://japanese.joins.com/html/2005/0117/20050117170900500.html
北朝鮮のように政治がメチャクチャな貧困国家には、国際社会が援助を行なってはならない、という内容を盛り込んだ国連の報告書が17日に発表された。
が、これはちょっと、それこそメチャクチャだ。しかもパラグラフ2つで何でそんな報告書があるのかも一切わからない記事だったりする。血気にはやってないか、と気になる。
これはミレニアム・プロジェクトとかいう貧困と開発についてのグローバルな調査で、2年以上やってて、この名前自体は何度か目にしているとも思うが、ともあれその大きなプロジェクトが3000ページだかの膨大な報告書を出して、あわせて勧告などを行なったのだそうだ。
今現在読みごたえのある記事になっていたのはScotsman.comにあったので拝借。
それによれば、
It recommended that the international community designate a significant number of well-governed low-income countries for “fast-track status” to receive the massive increase in development aid this year to implement a national poverty-reduction plan.
Poorly governed poverty-stricken countries such as Belarus, Burma, North Korea and Zimbabwe, which are accused of wide-scale human rights abuses, should not get large-scale aid, the report said.
ざっと言えば、よく統治されていて、かつ低収入の国ってのがたくさんあるわけで、国際社会はそっちに発展が大きくなるような優先順位を割り当てた。一方で、貧困にみまわれている、poorly governed、統治がうまくいってない国、たとえばベラルーシ、ビルマ、ジンバブエなどの大規模な人権侵害について糾弾されているところは、大規模な援助を受けるべきではない、と報告書は言っている、ということらしい。
北のことがあるから、思わずそうだな、とか言いたくもなるんだが、冷静に考えればすごいことを言っている。気の毒な人はさらに気の毒に、になっちゃいそうなわけで、なんだかなぁ・・・だ。国連、なにしてますか?って感じか。おそらく明日あたりにもっと記事が出るか? その前に時間があれば、国連のその報告書のサマリーでも読もう。(と一応思ってる)。
なんにしても、私は別にいいんだが、南の朝鮮半島の人、なんかこう、すごいっす。そして、国連もすごいかもしれない(一応まだ誤読か言葉足らずの可能性を考えておく)。