機種:サターン
メーカー:チュンソフト
ジャンル:サウンドノベル
CD−ROM 2枚組
プレイ時間:約30時間
「弟切草」「かまいたちの夜」を作成し、「サウンドノベル」というゲームの概念を産み出したチュンソフトが送り出した、本家のサウンドノベル第3弾です。
舞台は、渋谷の街。互いに見知らぬキャラクター達が、彼等自身も知らない裡に影響を及ぼしつつ、彼等の人生を歩んでいきます。
システムとして、ザッピングシステムというのを導入しています。これは、あるキャラのシナリオから、同じ時間の他のキャラのシナリオにジャンプしていくという物です。あるキャラでフラグを立てておかないと、他のキャラがバッドエンド確定というのもあって、「痕」みたいにシナリオが色々と分岐していくタイプではなく、2人のキャラを入れ替えてプレイする「EVE -burst error-」のシステムを複雑にかつ、操作性をよくしたシステムだと思った方が良いかも知れません。
ゲーム期間は、10月11日から15日までの5日間。メインキャラ8人全員の一日のシナリオを終わらせないと、次の日には進めない作りになってます。
難易度的には、それほど難しくありません。まだ慣れない一日目は、ヒントもしっかり出ます。それ以降も詰まったら、同じ時間帯で他のキャラに飛んで、色々と試して見れば良いんだし。まあバッドエンドも笑えるのが多いので、一見の価値はあります。
画面は、一部を除いて実写で構成されており、本職の役者さん達が熱演を見せてくれます。実写だからやりたくない、というような意見もあるようですが、こういう話だと、実写の方が合ってるでしょう。個人的には、狂気の世界に陥りかける「市川 文靖」を演じたダンカンの演技が良いです(^^)。
しかし、このゲーム言っちゃ悪いですが、いわゆる「ゲーマー」が多いサターンで出しちゃいけなかったと思います。どちらかというと「普通」の人が多いプレイステーションの方で出すべきでした。なんでかというと、ゲームしかやらない人間より、ドラマとか小説をよく見る人間の方が合っているゲームのような気がするからです。
それに、このソフトが某「せつない」ソフトより、売り上げが下というのはちょっと許せません(爆)。個人的には、サターンを持っている人間で、ある程度、活字を読む人間なら絶対に買え!(笑)。
#はっ、何か暴言を吐いてしまったような気が(爆)。
それでは、シナリオ別の感想を。思いっきりネタばれ編はこちらへ。
「The wrong man 牛」 牛尾 政美
半年前にヤクザから足を洗った牛尾 政美は宝石強盗に巻き込まれて、無実なのに犯人として追われる羽目に。ところが逃げ込んだTVロケ隊では、顔がそっくりの馬部 甚太郎と間違えられ、慣れない役者稼業をやらなくてはならない事になります。
この牛尾と馬部のシナリオは、3日間で終了します。
「The wrong man 馬」 馬部 甚太郎
売れない役者である馬部 甚太郎は、ロケの最中に公園で休んでいると、突如、拳銃を持ったヤクザ風の男に牛尾 政美と間違えられて、強盗事件に巻き込まれます。彼は、温厚で気弱でお人好しで、酒とタバコは全く駄目という牛尾とは正反対の性格。バレたら殺されるという恐怖に駆られた馬部は、生き残るために一世一代の演技を重ねていくのですが(^^;;;・・・。
「オタク刑事、走る!」 雨宮 桂馬
事実上の主人公といっても、差し支えないであろう雨宮 桂馬のシナリオ。
彼は渋谷中央署 少年課の刑事で周囲からは「オタク」だと見られてますが、あくまで自分は「ゲーマー」だと言い張ってる人物です(^^;。
シナリオの雰囲気はミステリータッチで、渋谷を爆破しようとする「シャチテの悪魔」と名乗る犯人を追っていくものになってます。
面白かったけど、ミステリーを少し読んでる人間なら、すぐに犯人わかるような気が(笑)。
「迷える外人部隊」 高峰 隆士
高峰 隆士はフランス外人部隊に所属している傭兵で戦闘のプロフェッショナル。休暇を利用し、3年ぶりに日本に帰国した彼は、平和な渋谷の街に言いしれぬ苛立ちを覚えます。
生きることに不器用な彼は、いったい何に苛立ちを覚えているのか自分でもわからないまま、渋谷で刹那的な行動を繰り返していくのですが・・・。
凄いハードボイルドなストーリーです。格好良すぎ! ちょっと暗めだけどね。
「七曜会」 篠田 正志
大学4年生で、来年には大企業に就職が内定している篠田 正志。彼は”日曜日”と名乗る謎の美女に、昔の学生運動のことで脅迫を受けます。
選択肢は3つ。破滅か、300万円払うか、一万円払って組織の一員”金曜日”となって脅迫を行うか。
正志は謎の組織「七曜会」の7つの曜日の一つ”金曜日”となって、訳も分からないまま、一万円だけ相手からもらう、珍妙な脅迫を行っていくことになります。ノルマの7人を果たせば、「七曜会」についての秘密を教えてくれるという”日曜日”の約束を信じて。
シナリオ量も相当多い方で、かなり重要なキャラといえるでしょう。雰囲気はシリアスな筈なのに、どこか滑稽な感じがしてgood。私は一番このシナリオが気に入ってます。
「シュレディンガーの手」 市川 文靖
市川 文靖は、中島 哲雄というペンネームで「俗悪的」なシナリオを書く、売れっ子のTVプロットライター。しかし、それらのシナリオは、自分の意志に反した「眠り」の中で「小人たち」が書いている作品でした。
夢の中の「誰か」とは現実か、妄想なのか。悪夢から逃れるために、睡眠薬や酒を常用し、何が現実か妄想なのかもよくわからない状況の中で、彼は戦い続けます。
「街」の中で、一番幻想的なシナリオです。しかし、このシナリオ、脚本家の現在のTV界に対する恨み辛みが、凄く表に出ているような気が(笑)。
「やせるおもい」 細井 美子
ポッチャリしたタイプの彼女は、食べることに生き甲斐を感じている女の子。しかし、その大食いぶりに閉口した、恋人の高田洋一に
「5日間で17kg減らさなくては、別れる。」
と宣言されてしまいます。
愛する恋人のために、決死のダイエット作戦を敢行する佳子でしたが、ちょっとやそっとじゃ減量できるはずもなく、方法もだんだん過激になっていきます・・・。
雰囲気も変で、かなり笑えるシナリオです(^^)。
「で・き・ちゃっ・た」 飛沢 陽平
高校3年生で、プレイボーイの飛沢 陽平。彼は2ヶ月前に一晩だけ付き合った女の子から突然呼び出されます。余裕たっぷりに構えていると、彼女から衝撃の一言。
「赤ちゃん・・・、出来ました」
さらに2年前に付き合っていた彼女で、突然、田舎に帰ってしまった女性が、一歳になる、陽平の子供とともに上京、陽平の家に居着いてしまいます。
陽平、本人としては大会社の社長のお嬢様と、つき合いを続けていきたいところ。ところが、彼女の伯父が、ヤクザの白峰組の組長で、彼の肝いりでとんとん拍子で縁談が進んでいく有様。
天性ともいえる素早い判断力で、女の子同士が鉢合わせしたときも、何とか巧みにかわしていく陽平ですが、それにも限度があります。彼はどこまでごまかし通すことができるのでしょうか(笑)。
一番、笑えたシナリオでした(^^)。まあ要するに自業自得なんですけれど、それを苦しい言い訳でごまかしていく姿が、大笑いで。
「青ムシ抄」 青井 則生
上記の8人をクリアして「ピンクのしおり」が出た後、プレイ可能になる隠しシナリオです。他のシナリオが実写で構成されているのに対して、このシナリオだけアニメで構成されています。
アニメなどのパロディが爆発しまくってます(笑)。「機動戦士ガンダム」「サイボーグ009」「フランダースの犬」「Dr.スランプ」「タイムボカンシリーズ」「カーレンジャー」「ウルトラマン」等々・・・。とても、私のレベルでは全部わからないほど散りばめられてます。
脚本を書いた人の名前を説明書で読んで見ると、「平松 正樹」。恐るべき人物です(爆)。他に担当してる脚本は「オタク刑事走る!」をメインライターの長坂 秀佳と共同で。私の想像では恐らく、オタクネタの補完役でしょう(^^;;;;。
「花火」 ????
「青ムシ抄」と同じく、8人のキャラをクリアした後に出てくるシナリオ。ただし完全な隠しシナリオで、シナリオ選択時、あるキャラの上で3〜5秒放っておいてから、十字ボタンをある向きに押すと出現します。
しかし、どうやって見つけるんだ?こんなの。私は、ネット上で情報を入手するまで、発見出来ませんでした。
短いシナリオですが、泣けるかも。これをやらずして「街」をプレイしたことにはなりません。