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やさぐれ読書録
最近のツッコミ:
9月26日の日記で「レ ボリューション・イン・ザ・バレー」の紹介を書いているときに、妙なことに気がついた。最初は大した問題ではないと思っていたのだが、その後事態は予想外の方向に展開していくこととなる。
■ 何かちょっとヘン
NerdTVのインタビューでは「レボリューション・イン・ザ・バレー」の原著に当たる"Revolution in The Valley"の発売時期に関して、
Andy: ついこの間1冊受け取ったんだ。まだ出回ってはいない。イタリアで印刷されているんだけどね。年末までには書店に並ぶはずだよ。
(NerdTV 翻訳/1-Andy Hertzfeld)
と語られているのだが、もしこれが正しいとすると、「年末までには書店に並ぶはず」という英語版よりも、9月26日に発売された日本語版の方が先に登場している、 という話になる。そういう可能性がゼロであるとは言わないが、どうもおかしい。
■ 1年ズレているよ
気になったのでamazon.com の"Revolution in The Valley"の紹介ページを見てみると、発行日は(December 6, 2004)となっている。「年末」というのは2004年の年末のことなのか、ということは …まさかあのインタビューは今年で はなく2004年に収録され たものなの?
あわててイ ンタビューのトランスクリプトをもう一度よく見ると、「NerdTV から:クヌースに「ソースコード見せてよ」と頼まれたら…」の冒頭、「今年の1月にComputer History Museumというところで…」 にあたる部分の英文が"In January, 2004, the Computer History Museum had a little presentation about..."となっている。
…やられた。インタビュー音声ではこの部分は"In January of this year, ..."となっており、 僕もそのまま、これが2005年に起きた出来事だと思いながら訳していたのであった。ひどいよ、NerdTV。映像版にも音声版にも、インタビューの収録 日がいつだったかなんて記録は入っていなかったじゃないか…と言っても、僕も最終的なチェックと仕上げはトランスクリプトを見なが ら行なっていたのは確かであるし、そこで見落としていたオマエが悪いと言われればそれまでである。(ちなみにNerdTV 第三話からは、収録された日が冒頭のナレーションに入るようになった)
■ MacPaintは一体どこに?
このインタビューは昨年の8月(AppleがMacPaintを寄贈した月)からその年末("Revolution in The Valley"が書店に並ぶ)までの間に収録されたものと推測されるので、MacPaintのソースが公開予定だとAndy Hertzfeldが語ってから、ほぼ1年が経っているということになる。もしかしたら既にComputer History Museumで公開されているのだろうか、と、同サイトを改めて探してみたが見つからない。Folklore.orgも見たが、やはり公開に関する情報は見つからない。 WikipediaのMacPaintのエントリについても同様であった。
かくなる上はと、Googleで試行錯誤の上"Computer history museum" macpaint source codeというキーワードで検索したところ、Handbook of Software Architecture (Blog)とい うページが見つかった。でもこのサイト、ホスト名がwww.booch.comなんだけど、もしかしてあのBoochなの? まさか?
■ Grady Boochの登場
そう、あのGrady Booch、"Object-Oriented Analysis and Design"の著者であり、Jacobson, Rumbaughと共にUMLを作り上げたその人のblogにMacPaintのソースコードに関する話が出ていたのだ。
先日の記事で述べたように、私はComputer History Museumの協力の下、古典的ソフトウェアを保存するプロジェクトを始めている。Tim O'Raillyの協力により、数週間前にMacPaintのソースコードが私の手元に転がり込んで来た(fell into my lap)。 明日は私にとってのヒーロー達、Bill AtkinsonとAndy Hertzfeldに、MacPaintに関する話をしてもらう予定になっている。
MacPaintのソースコード(Object Pascalで書かれている)を読むのはとても楽しい作業だ(is a delight)。Don Knuthは、MacPaintは彼が今まで読んだ中で最も美しいソフトウェアの一つであると言っている。不思議なことであるが、他の分野では大抵、達人 の作り上げた作品を調べて学ぶ、というのが当たり前であるにもかかわらず、私はコンピュータサイエンスの授業で、「ソフトウェア(コード)読解」という名 前がついたものを未だに見たことがない…
("Handbook of Software Architecture (Blog)"June 7, 2004 by Grady Booch)
まさか、Computer History Museumのソフトウェア収集プロジェクトを立ち上げたのがGrady Boochだったとは…だがBooch氏によるこの2004年6月7日の記述を最後に、以後のMacPaintのソースコードの足 どりは再び見えなくなる。
■ 推測するくらいなら聞いてしまえ、そして
ここまで調べたところで僕の頭に浮かんだ推測は二通り:
だがあれこれ勝手に憶測をめぐらせても答えがでるはずもない。ならばやることは一つ。
Grady Booch本人に聞いてしまえ。
ということでこんな 文面のメールをBooch氏に直接送ったのが昨夜(27日)のこと(書いたメールを今読み返すと、少々表現が大げさな気もする が、真っ赤なウソというワケでもないし、まぁいいか)。驚いたことに、約1時間半後に返事がやってきた。いわく、現在のSoftware Collections Committeeのリーダー(返信されたメールのCC:欄に追加されていた)が詳細を教えてくれるはずとのこと。そして、
I'm happy to hear that the presence of the MacPaint source resonated so well with the Japanese community.
MacPaintのソースの存在が日本のコミュニティに大きな反響を起こしていると聞き、嬉しく思います
との Booch氏のメッセージが添えられていた。
以上、いろいろと紆余曲折があったが、MacPaintのソースコード公開の時期などについて、現状はSoftware Collections Committeeからの回答待ちというステータスである。新しい情報が入り次第、またお伝えすることにしたい。
http://fukumori.org/diary/20050928.html#p01 例のMacPaintのソースコード公開の件ですが、とにかく登場人物が豪華です。アンディ・ハーツフェルド、クヌース先生、ビル・アトキンソンからブーチ氏登場。皆ソフトウェア業界の偉人だけど、ジャンルがちょっとずつ違ってい..
NerdTV 4回目来ました。まだ半分しか聞いていませんが、今回はかなりラディカルな内容で面白いですよ。
聞き終わりました。後半はさらにラディカルさが増してますね。面白い。 :)
Nerdy/Juicy Bitsでない部分で面白いところがあったので、日記ではそこを紹介しようと思います。仕上がったらhirさんのところにも持っていく予定でいます。