2005-09-13 小選挙区制で勝つ
昨日の選挙の後の総括などをいろいろ読んでいてふと、もしかして、実は、数多い評論家の人たちって小選挙の戦い方というのに本質的に見当がついていなかったしないのか? など思ったりもした。
小泉自民、ニューLDPとでもいうべきその党は大きな勝利をしたのだが、このインパクトのかなりの部分は小選挙ならでは、ではないかと思う。といっても、民主党支持者が負け惜しみのようにいう、得票率を比べればこれほその差はついてないんです、という見解を心理的に支持するつもりは全然ない。
finalventさんが、「小選挙区制度だとこれだけの地滑り(Landslide)起こすのだな」と書かれていたが、日本の現在の選挙制度は小選挙区制を導入してはいるものの、比例がくっついているし、たまたま導入以来の選挙で盛り上がった選挙というのもなかったために、実は全体として、選挙というものを小選挙じゃなくて70年代ぐらいに普通だった感じの中選挙区の選挙のつもりで語っていたし、今もいるのかもなど思う。finalventさんみたいに目の効く人でなかったらなかなかそれに気づいていないのかもしれない。
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2005/09/post_cb85.html
と偉そうに言っている私は、自分は偉くないがなんせカナダが、小選挙区制一本槍、比例ついてません、という選挙をやるところなので、自分がだんだんそれが普通のような感じになっていたところもあったのだなと今日になって気が付いた。
(結果的に、どう読んでも自民が勝つとしか思えなかった。)
今さらだが、比例のついてない小選挙区制とは、つまり、小さな選挙区で負けたらそれで終わりという簡単なもの。
だから、議席数と得票率は相関しない。
議席数 得票率
リベラル 135 36.7%
保守 99 29.6%
ケベコワ 54 12.4%
NDP 19 15.7%
その他 1 5.6%
総数308 過半数155
わかるとおり、ものすごい結果における差異をもたらす。得票率がいくら多くても全然結果には反映されない。反映されるのはオフィシャルな党として認められて政治活動上の資金を含む様々な(どんなのかよく知らないけど)ベネフィットを受けられるようになるかならないかと、クエスチョン・タイムの時間配分。
で、おそらくこういう、限りなく地すべり的になりやすい、まるまる政界の図が変わってしまうようなやり方は好ましくない(どういう理由であれ)ということで、日本の場合比例制をつけたのだろう。うわさによると、1993年のカナダの総選挙の与党の敗北というのは、小選挙区の候補者にとっての代表的な悪夢なのだそうだ。この時与党だったPC(急進保守党、現在の保守党)は、なんと2議席しか獲得できず、リベラルに政権を渡した。現有何議席だったのかちょっとデータが手元にない(探すのが面倒くさい。すんません;;)のだが、ここは連立を組む習慣がないので、基本的には過半数150近辺以上だったはず。比例だったらほぼ絶対にこういうことは起こらない。
と、見てきてわかるとおり、なんかものすごく乱暴な仕組みにも見える。しかし、いつもいつもドラマチックな結果を残すというわけでもなく、普通に接戦になることもある。が、何事か起こった時には、なだれを打ったようにボロ勝ちとボロ負けになる可能性の高さは、比例になじんだ人からしたら恐ろしい話だろうと思う。しかも代表者は一人。どれだけ候補者が大事な人だとしても落ちたら終わり。
この制度がもたらす1つの傾向は、私が思うに、選挙戦が、より戦略的になることだろうと思う。普通に考えればすぐにわかる。1社しか受注できないのだとわかったらすることはマーケティング、戦略。それもこれも、いい提案をすればそれでいい、のではなくて、勝たなければならないからだ。素材そものもの話とは別に、戦略が欠かせないものとなる。
と、なにか新しいうわっついたことを書いているように見えるかもしれないが、最強の作戦は結局、その上で選挙区に近づくこと、張り付くこと、言うところのどぶ板というやつを展開することだろうと思うので、結局長年地道にやってきたことと実際にはそれほど変わりはないのではないか、などとも見える。北海道5区のマッチー町村外務大臣がかなり選挙区に張り付いていたらしく見えたのだが、普通に考えるとなんでこの大物がビール箱の上で・・・だが、やっぱこう、手堅い三世(二世?)政治家だよなぁなど私は感心した。
ただ、日本の場合は比例との混合だから、ここで求められるイメージによった従来の代理店の仕事みたいなのと、おそらく二本立てで考えないとならないのだろう。でも基本の分量はあくまで小選挙区対応にしないとなんにもならない。
こう書くと、野田聖子型というか亀ちゃん型というか、なにしろ地域住民になんでもいいから訴えるみたいな(失礼なのは承知だが)型、つまり従来型を志向しているかのように聞こえるだろう。それはそれで嘘でもない。が、もしその選挙区民が、具体策を聞き分ける能力を持っていたとしたら(再度言うが亀ちゃんの選挙区の人がそうではないとは言っていない。候補者がそうしたかっただけかもしれない)、ビール箱の上に立つ人は、とにかく、彼らとの間に一定の理解をもたらし得るなにものかを持参しなければ、とても投票行動には結びつかない。そして選びえる選択肢を提示できていなかったら、人は選べない。
[14日訂正:亀ちゃんは住民が選ぶものを持っていったから勝ったのだろう。従って亀ちゃんの例はこの文脈ではふさわしくないので、亀ちゃんごめんなさい。]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000017-san-pol
民主は平成十二年の衆院選で十七、十五年は十九と1区で確実に議席を増やしてきた。だが今回の衆院選では、自民が1区で三十二勝を挙げ、十三勝の民主に大きく水をあけた。つまり浮動票を確実に取り込んでいったのだ。その傾向は1区にとどまらず東京、千葉、埼玉、神奈川の首都圏でも、自民、民主の逆転現象が起きた。
(中略)
前三重県知事の北川正恭・早稲田大大学院教授は「無党派層とは、次にどんな政権を選ぶのかという点に重点を置く人たち。前回の衆院選は民主に期待したが、今回は自民への期待に変わった。都市部ではその振幅度が大きかった」と話す。
無党派層というのをどう定義したらいいのかは様々な文脈によって恣意的に使われているような気もするが、党に密着していない人々、党と死活的な運命一体行動を取らない人と定義してみると、この人たちこそ、現代の世界では圧倒的なマジョリティというべきだろう。民主党の“基盤”などではない。それはたまたま一時期においてそうだったように見える以上のものではない。
彼らは一義的にA党、B党支持者ではないのだから、選ぶメニューがなければ行為できない。
小泉純ちゃんには、郵政を改革するんですよ、NOW、という明確なお題があった。さらには、外交についてもここからは少し変わりますよ、という示唆を提示し続けている。そして、それでいいですか?と尋ねているのだから、選択メニューはとても簡単。
その上、各地で自民党の候補者になっている人は、そもそもこの選択メニューに反意を翻す人は切られている以上、同じメニューの上にあることが前提だから、おそらくとても戦いやすかったのではないかと思う。戦いやすかったのを小泉人気のせいと思っているかもしれないが、そうではなく構造的に政党のプラットフォームと一体化していたからだ(今までそうではなかった方が驚きなわけだが)。
*この点から考えた時野田聖子氏を復党させるのは完全な誤りだ。彼女はそれを理解していない代表例として使うべきだ。
こう考えてくると民主党が取った行動が投票に結びつかなかったとしても何も不思議はない。党としてのプラットフォームがない。何をしようとしているのか誰にもよくわからない。マニュフェストなるものを出しているが、個別の議員という、プラットフォームを住民に説明する役割を担う人々がそのマニュフェストにどこまでコミットできるのか、候補者も不安だったろうが、もっとまずいことには選挙民にそれを見通されている。つまり実効値がN/Aであるこ提案をしてきたのだ。これでプレゼンに勝てたらその方がどうかしている。
そういうわけで、ざっと考えただけでも、小泉自民は小選挙区制をよくわかった上で戦ったからよく勝った、といえるんじゃないかと思う。で、新聞がまず第一にそうだし、民主の選対もそうかもしれないが、小泉という強いリーダーに国民が幻惑されたぐらいに思っているように見えるのだが、そうではない。自民党の方が、人々がコンセントを与えることが可能な(反対でも)提案をしているからだ。そして、人気とかイメージに寄せて何かをしようとしたのはむしろ民主党の方だ(日本をあきらめない、などという失敗キャッチコピーを出して)。
民主党がまず行うべきは、俺たちってどういうプラットフォームを持とうとしているのか、を俺たちの間で合意可能な状態にまで書き込むことだ。誰が強いリーダーか、なんていうのでもめるのはその後だ。これは選挙なのだ。
ただ、多分、これってトリッキーなのかなぁと思ったのは、社会主義系統が強い国々では基本的に小選挙区制というのは不評なのかもしれず、そこにあっては、正しい政策さえ提示すれば国民はついてくる、といった理解が支配的なのかもしれない。つまり、国民が選ぶ主体だという理解があまりない、のかも・・・。民主党の選挙戦を支ええる組織といえば労組系しかないのだ、と言う話を聞くが、もしそうだとすれば、そこにこそ問題があるのかもしれない(別に労組を抱き込むことがいけないのではなくて、それは小選挙区制を戦う戦力としては不適格かもしれない、ということ)。
逆の方面からのトリッキー要素もあるかもしれない。日本の場合政治経済にかかわる知識ある人々、取り分け若い人々は、アメリカでの知識を武器にするか持ち込むかしている傾向が高い。しかし、アメリカは議員内閣制ではない。議員が不信任を突きつけて、あるいは逆に首相がcall an electionをするというタイミングはない。総選挙は大統領選挙ではない。
どういう点から考えても民主党が小選挙区制及び国民とは選ぶ主体なのだ、というのを理解して選挙をしていたとはほぼ思えない。
■ 議席数と得票率 
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050912k0000e010020000c.html
民主党 52 36.4%
同紙によれば、「得票率以上に議席数に差がつく小選挙区制度の傾向をまざまざと映し出した形だ。」と・・・。別にいつ言ってもいいが、4回目でようやく理解したのだろうかなどと皮肉を言ってみたい気はするが、あけてみてとにかく5割近い得票だったということで、あらためて自民の強さを見てしまったような気はする。
で、東京都のケースはもっとドラスチックな小選挙的状況があらわれていて、
民主党 1 約36%
だそうだ。
■ 「北朝鮮ファンド」 
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=67584&servcode=500§code=500
英フィナンシャルタイムズ(FT)紙は12日、英国系ファンドのアングロ−シノ・キャピタルが5000万ドル規模の「朝鮮(Chosun)開発投資ファンド」を設立することにした、と報じた。
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=67568&servcode=100§code=110
韓日関係がこれまでような水面下交渉には頼れない状況だ。日本政府を合理的に説得し、日本内の世論を友好的に引き入れる一次元高い対日外交家が切実に望まれる。
水面下交渉ってなんでしょうかと思わずつっこみを入れたいものはあるが、とりあえず、だったらなでんで親日家あぶり出し騒動なんかしていたのだと、今さらだがそう思う。
社説自体は国内数紙などよりよっぽど冷静(部分的には、あれだが)に事態を理解しているなぁと思った。朝日と取り替えたい。
■ TBSの電波について 
し、知らなかった。このような事態を人々はテレビの前で耐え忍んでいたのですね。
「日本を出て行く決心をしました」
http://blog.livedoor.jp/mumur/archives/50082174.html
murmurさんのところを見たら、TBSの選挙報道中に流れたテロップの件が話題になっていた。テレビ画面の上にこんなのがずらずらと並んでいたわけ??
で、視聴者コメントを並べるのはまぁいいのだが、その内容たるや。なんじゃらほい。
(もし、いいえ、半々で小泉政権万歳でした、バランス取ってました、という方がいたら教えてください。私は見てないので、上のサイトとそのリンク先を見て、ルサンチマン傾向が多数だったという前提で言ってます。違ってたらTBSにごめんしないとならない。)
これはまさに開戦前夜である
こんな結果で生きる望みが無くなった
17歳ですけど投票したかった
これほど多数が独裁者を選ぶとは
なんで、開戦前夜なんだって。もう泣きそう。
息子を戦争に行かせたくない
みなさん、よく耐えましたね、こういうの。いやぁ、たまげる。インターネット上で見たTBSのサイトはよくできていたので、今回は一番よ、と思っていたのだけど、テレビが爆発だったわけね。すごいわぁ。
で驚くのは、筑紫哲也が、なんと開票速報に出ていたのね。そういえばサイトに顔があったような気もしてましたが、目が拒否していた模様。ということは、あのおじいさんにとって拷問になることを、わざとしたのか、それとも民主は勝つと踏んでいたのか? 驚く。
きっと、
民主主義は死にました
日本は死にました
私たちの敗北です
私たちの声は今回も届きませんでした
などと言ったに違いないと思っているんだけど、どうだったでしょう? こっそり教えてほしいです。
書いてみて思うんだけど、これって広く浅くの普通波じゃなくて、過激派専門チャンネル、「オール過激」とか、なんなら「オール平和」「オール9条」とか作ってケーブルでやればいいんじゃないだろうか。そうすれば、同じ気分を共有したいと思うお客は一定数確実に存在するんだから、安心して、「我々は」と言ってもいいんだし、どこからも苦情が来ない。好きなだけやれる。
副次的効果として、聞きたくなかった人が火病にならずにすむ→無用な反発は避けられる、と良い結果が続く。
■ 勝谷氏はまだテレビに出てるのか? 
東北アジアは支那の共産党と北朝鮮の労働党そして日本国の自民党という三大独裁政権が統治するとても楽しい風景となった。番組の中でアメリカ事情に精通した小西克哉さんが「先の大統領選挙に似ている」と言ったのは至言だ。政策から言ってもイラク侵略をめぐる世界の世論から言ってもケリーが勝つことは当たり前のようであった。しかし実際に票を入れたのは今回ニューオリンズで佃煮になっている太った黒い人たちである。
勝谷誠彦の××な日々
http://www.diary.ne.jp/user/31174/
いくら悔しくても、これは本当に開いた口がふさがらない。
勝谷氏を出しているテレビはどこだ? ちょっと限界を超えてるし、まったくシャレになってない。[捕捉:すみません、その前に物書きさんなんですってね。失礼しました。]
ちなみに、ルイジアナ州はブッシュ、ケリーが拮抗していた州ではなかったか?
あと、当たり前だという論調はあまりなかったと思う。ケリーも明確さを欠いていたんだから。結局なんか、アメリカ事情よくわかってなさげ。
[捕捉:ニューオリンズに限っていえば民主党得票の方が多い地帯とのこと。]
小西氏が何を考えてそうおっしゃったかしらないが、確かにケリー、ブッシュの選挙と似ている。ケリー支持だった民主党員たちがブッシュを支持した人々をコテンパンにバカ扱いしていたから。ただ勝っちんみたいなことを言ったら、謝罪では決してすまない。
みなさん興味がおありだようで膨大な同様な指摘を頂戴しましたが、もちろん私が検閲を受諾して訂正などするわけはありません。
「佃煮」にしたのが誰かという姿をそこで思い浮かべる批判的想像力を持たない方々に媚びて文章を書くつもりはありませんし、いかなる解説を自分の文章に加えるつもりもありません。
というわけで歴史的な選挙の結果を書いた勝谷誠彦の9月12日の日記がさるさる日記から削除されることを、私は承諾しました。
検閲というのがどういうものかを知る言い機会でしょう。
明日からもちゃんと書くからね。
かっちん、終わったな。差別の問題じゃない。従って検閲の問題ではない。それは死者や被害を受けた人への最低限の思いやり、敬意、リスペクトの問題だ。従って、それは著者の人としての、社会問題を語る上での姿勢の問題である。
# kagami 『小泉首相が今度は派閥政治をぶっ壊そうとしていますね…。小泉首相は私達の予想より、ずっと優れた宰相であることが次々と明らかに…。
http://news.www.infoseek.co.jp/topics/society/koizumi.html?d=12yomiuri20050912it15&cat;=35&typ;=t
歴史に残る英雄、名宰相が、今のボロボロの日本から生まれたということに、喜びと、日本の力を感じます。』
# Soreda 『お久しぶりです。いやほんとに、私もうれしいです。私は議院内閣制+君主制は歴史ある連続体にとって最も効率的だと思っているので、純ちゃんの志向は基本的にとても歓迎。個々の議員を政党のプラットフォームに乗せるためには派閥という党内党派は邪魔ですから、これも彼とすれば当然でしょう。その意味では今後の政党政治のために冷戦構造化の特殊事情を解消しているとも言えるでしょう。
自分も日本人なのでこういう言い方はへんといえばへんですが、kagamiさんが感じられている通り日本の底力を感じました。』
# 阪 『これは、自民党が自民党でなくなってしまうということなんじゃないでしょうか。そこを正しく理解していない国民が多かったように思います。新党を作るべきだったのはむしろ小泉だった。』
# nami-a 『>朝日と取り替えたい
昨日の天声人語なんて最悪でしたね。一瞬、どこかのフラれた男が女がバカで俺の言う事が理解できなかったと友達にグチってる私信かと思っちゃいました(笑』
# Soreda 『nami-aさん、はじめまして。私もあれは驚いた。どういう頭の構造なんだろう?やっぱりケーブル案がいいのじゃないかと思う今日この頃。貴サイト読ませていただきました。プロの方のお話、これからも読ませてくださいませ。』
# Baatarism 『あのTBS選挙特番のコメントは、「マスコミが小泉びいきだったから民主党は負けだ」などとグチる人たちに対する最高の反証ですよね。w
これほどまでに反小泉、反自民の放送局があるのに、どこか小泉びいきなのかと。(ry』
# Soreda 『Baatarismさん、どうも。仕事を先延ばしにしちゃってまで私は今日はこの「場外乱闘」を求めてすっかりネットオタになってました。なんだったんだぁああというほど凄い。酷い。おっしゃる通り、これほどまでして、ここまで己のクォリティをぶちこわしながらも反小泉を貫いて、どこがマスコミがあおった小泉なんでしょう?』
# なぜ? 『>あのTBS選挙特番のコメント
だってその番組は選挙「後」の放映でしょ?なんでその番組の存在が
選挙「前」のマスコミの小泉びいきの否定になるの?』
# Soreda 『
たしかに、上記は選挙後開票時の行動ですね。この件に関しては誤解を招く会話であったでしょう。しかしながら、選挙前親小泉、開票、ルサンチマン炸裂という行動様式をもしTBSが取っていたのならそれはそれで不思議なもののようには思います。』
# 高橋 『1988年総選挙は進歩保守党169、自由党83、NDP43でした。その前1984年は進歩保守党211、自由党40、NDP30、その他1と、進歩保守党が定数282議席の75%を獲得する地滑り的大勝利を収めています。しかし思えば、これが進歩保守党の「終わりの始まり」だったように思います。
圧倒的多数を背景に、選挙の論功行賞として多数の無任所大臣の任命、「戦後最大の不景気」のさなかに連邦消費税の導入、ミーチレイクとシャーロットタウンの2つの憲法改正協定が破綻し、マルローニ内閣は総辞職に追いこます。しかも、ライバルのクラーク元首相を憲法担当大臣に任命して、憲法改正できなかった場合は責任を押し付けるという汚い手を使い、マルローニ自身が退陣した後の党首選にクラークが出馬できないようにしました。次の総選挙は大敗するのが目に見えているため、党首選にマクドゥーガル外相、ウィルソン蔵相など党内の実力者は出馬せず政界を引退、マルローニは金髪の女キャンベル国防相を立て、クラークは30代の青年シャレー環境相を立てて両元首相による代理戦争が行われ、金髪女が勝利して首相の地位に就きましたが、当選回数わずか2回で選挙公約の説明もできないあり様で、わずか2議席と歴史的大敗を喫しました。1998年には党首のシャレーがケベック自由党に移籍するという事件が起き、進歩保守党は2003年カナダ同盟に吸収され、歴史的使命を終えたのです。
中選挙区時代は地方の議席配分が多く、自民党に有利な選挙制度になっていましたが、小選挙区制になるとき選挙区の区割りを変更したため、都市部の議席が増えると自民党は過半数を獲れなくなります。都市部の無党派は民主党に投票することが多いため、「無党派は宝の山」と称して、無党派層を民主党から奪えば選挙に勝てると見た小泉総裁の慧眼には驚かされますが、巧みなメディア戦略で無党派層を取り込んだところで、彼らは結局は民主党に帰って行くのではないでしょうか。しかし一度切り捨てた郵政票はもう二度と自民党には戻っては来ないのです。都市型政党に変わりつつある自民党の未来はどうなるのでしょうか。これは「終わりの始まり」なのでしょうか?
1986年、中曽根政権時代にも自民党は300議席で大勝利しています。このとき、自民党が7年後に野党転落することを誰が想像したでしょうか? 慢心した自民党は消費税導入、リクルート事件、佐川疑惑、ゼネコン疑惑、共和事件、金丸脱税事件と突っ走って行ったのです。』
# Soreda 『
どうも、長々とご説明をいただきましてありがとうございます。私は別に旧PCのファンでも支持者でもないですし彼らの杜撰さに問題のあることもある程度は承知しています。ただ、そうして勝利してきたリベラルも同様に、別にたいしてきれいなものではないのだな、そろそろ交替しないとな、というのが今日的なカナダであるように思います。つまり、何を持って貴殿が「終わりの始まり」という意図の不明なことをお書きになっているのかよくわかりません。歴史的使命ですか・・・。トーリーは長いわけですが。とりあえず仮にあったとしても、現在から向こうの生活のためにどうしたらいいだろうか、と考えて政党を選んでいるのがカナダ人らしいあり方ではないかと私は見ていますが。
保守と名がつけば金権汚職、リベラル(または日本の民主党でもその他の左勢力でも)ならきれいだ、などと今日信じる人はいないでしょう。カナダのリベラルはまさにそのスキャンダルで苦しんでいるわけですし。
ついでにいえば、巧みなメディア戦略が功を奏し続けていると評価のあるのはカナダでは保守ではなく、リベラルです。カナダで最も部数の多いそして影響力のある新聞トロント・スターが圧倒的にリベラルを援護しているのは別に誰も隠してはいませんし本人たちの承知です。さらに国営放送もそれに準じます。ですので常にこのメディアの牙城に対しての危惧と批判はあります。
そういうわけで、結局貴殿が今回の自民党の大勝というタイミングでこの項を起こされたのか私にはよくわかりません。おっしゃりたいことがあるのなら、知見を利用してご自分でブログでも起こされたらどうでしょうか? どうぞそうしてください。』
# kei44 『soredaさんは勝ち過ぎへの不安はないのでしょうか?ぼくの友達の
小泉支持者は、ここまで勝つとは思わなかった、少し不安と言ってますが。』
# Soreda 『心配してみても何かはじまるわけでなし、など思うわけです。たいていのことについて。あと選挙のある国で、可能的に反自民となり得る人数が相応に確保され、という状況がある限り、変化は常にあるわけで不安になるなら次の変化のために自分も動け、と、もし誰かに尋ねられたらそう申し上げたいと思ってます。』
# 高橋 『ウォルフレンらは、田中・鈴木・竹下・森など戦後の首相は地方出身者が多いと指摘しています。中選挙区時代は1票の格差があって地方に議席配分が多く、候補者は地方では都市部より少数の支持で当選することができ、自民党に有利な選挙制度になっていました。また自民党は国から貧しい地方に金をバラくことで政権を維持してきたのです。
しかし今回の衆議院選挙では、自民党は従来弱いとされていた都市部で無党派層の支持を取り込み、兵庫選挙区(12区)で全勝したほか、大阪選挙区(19区)のうち17区、東京選挙区(25区)のうち24区、神奈川選挙区(18区)のうち17区、千葉選挙区(13区)のうち12区で与党が勝利しました。
元々親英派だった進歩保守党は、カナダ建国以来1984年まで、総選挙でケベック州の過半数を制したのはただ一度しかなく、1980年にも1議席しか獲得していません。ところがケベック人マルローニを党首に据えた進歩保守党は1984年、苦手としていたケベック州でも75議席中58議席を獲得したほか、カナダ全州で過半数を制し完全勝利しました。しかしこれは所詮一時の大勝利であり、ケベックやカナダ全土において進歩保守党の支持基盤が拡大したことを全く意味してはいなかったのです。
マルローニは大勝に奢って好き放題なことをやりました。自分の後任にライバルが就くのを妨害し、わざわざ扱いやすい無能な者を就けるという、支持者を虚仮にするような真似をすれば選挙で負けるのは当たり前です。後任のキャンベル党首は選挙敗北の責任をとって離党、進歩保守党も消滅し、党内に影響力を残そうとしたマルローニの思惑は粉砕されました。
それは単に一つの党が消滅したにとどまらず、政権交代の受け皿を失うことで自由党一党独裁を許し、「カナダのリベラルはまさにそのスキャンダルで苦しんでいる」と言いながら、汚職が発覚したにもかかわらず政権交代ができないという状況を許したという点で、マルローニの罪は甚だ大きいと言わざるをえません。彼は進歩保守党を大勝利に導いた功労者であると同時に、初代首相を輩出した伝統ある進歩保守党を破壊した張本人でもあるのです。
自民党は巧みなメディア戦略で今回の選挙は勝利しましたが、いつもこんなにうまくいくという保証はないし、次の選挙が小泉総裁だとも限りません。自民党は郵政票という従来の支持基盤を破壊して、今後の選挙は大丈夫だと言えるのかという疑問を提示しているのですよ。それを「カナダのリベラルもマスコミ操作をしている」などと指摘したところで、論点がずれています。次の自民党総裁が「カナダ自由党も汚職をやってる」と言えば民主党に勝てるのでしょうか?
「おっしゃりたいことがあるのなら、知見を利用してご自分でブログでも起こされたらどうでしょうか? どうぞそうしてください」とはまた、自分の賛同者には愛想がいいのに、こりゃずいぶんと逆ギレですな。ご自分のブログで質問されたら、ご自分で答えるのが筋ではないでしょうか。
お手数ですが、以下の質問に答えていただけないでしょうか。
============
1.1993年以降、自民党は長期低落傾向にあります。今回の勝利で長期低落は終わったのでしょうか? それとも一時的なものでしょうか?
2.自民党は今後も都市部の無党派をターゲットとした選挙を行うでしょうか? 都市部で今回獲得した支持は、今後も続くものでしょうか? 道路改革、郵政改革と来て、次は農協とも噂されていますが、従来の支持基盤だった地方を切り捨てて自民党に展望はあるのでしょうか?』