2006/03/05 (日)
■[映画] 機動戦士ZガンダムIII そして伝説へ(違 を観る
テーマ曲がオーガス02以来の衝撃。余韻を完膚なきまでに断ち切るあの選曲は、やはり「おまいら、もういい大人なんだからガンダムはこれくらいにして現実にもどりなさい」という御大のメッセージなのであろうか。
……って他に書くことないんかい。
いやまぁ、面白かったですよ。あのドロドロ感といい、あっさりとした人の死に方といいまさにゼータ。三部作の中で一番ゼータらしい話でした。が、あんまり代わり映えしないよなぁ、というのもその一方ではあるんだよなぁ。誰も知らないラストといいながら、それだけかよっ!って感じだし。
ハマーン様の髪型が初っ端から崩れまくっていたので非常に心配したのだが、その後は作画も良好、ストーリー的にも大活躍でこの点に関しては非常に満足。キャラクターの作画が全般的にTV版ゼータに近くなっていたような気もするが、やはり御大と作画監督が揉めた件が関係しているのだろうか。個人的にはIIラストに出てきたハマーン様は目が縦方向に長すぎるのが気になっていたのでこれで良かったと思っているが、作画監督的には不満だろうなぁ。旧作のリメイクはこういうことがあるから難しい。
■[映画] ついでに予告編
問題は、デスノですよデスノ。新刊の帯に書いてあったので知ってはいたが、早くも予告編が。藤原竜也主演で前後編の二部構成とのことで、とりあえず誰だよあんな奴選んだの!……という批判は免れそうではある。まぁ、リアル系とはいえマンガだから許される強引な設定も多いので、それをどこまで映画のリアリティに引き寄せられるかが今作の鍵なんだろうな。
ゲドの予告編もやっていたが悪くなさそう。私の中でのゲド一巻世界のイメージは青・緑系統なのだけど、今回の映画を見る限り赤・茶を基調にしていたのでそういう意味では肩透かしをくらった感もあるけど、イメージは人それぞれだからこれは仕方ない。
そういえば、もうすぐ公開の阿部寛版北斗の拳の予告編でケンシロウがしゃべっていたが、まったく違和感なし(w 個人的には、今更世紀末もねーだろとか思っているのだが世間的には違うのだろうか。女神転生II(FC)を含め私は世紀末ものが大好きなのだが、やはりあれはバブル時代の退廃的な空気があったからこそ成立するのであって、不況の今やられても現実感がないように思うのだ。
■[経済] モラルハザード
中島隆信『大相撲の経済学』流し読み中、がっかりする部分に遭遇。中島にして「モラルハザード」ってことばの意味がわかってない模様。モラルハザードは、このpdf で書いているような「倫理の欠如」ではありません(モラル(道徳)と倫理のちがいは、ここでは本質的ではないので不問。また、別に他人を欺く必要はまったくない。立ちションをする、電車の中で化粧をするなど道徳的によくないとされる行為ならなんでもいい)。モラルに反する行為そのものではなく、そうした行為を推奨するに等しい環境がモラルハザードでございます。 最近の噂 2006/2
銅鑼さんの言うように「専門用語は専門用語なのだから文句はうけつけません!」という立場に結局落ち着こうかな……とも思ったのだが、いやそうでもないかもしれん……と、この文章を見て思うた。
専門家も人の子である以上、たとえ専門用語であったとしても勘違いしやすい言葉は勘違いする可能性がある。それは世間的には専門家の不始末であると考えがちだが、毎日発注を繰り返しているはずの株取引の専門家たるオペレータが桁数を間違えたという事件と似たような事柄であり、むしろ単純に確率の問題と考えるべきである。これはユーザビリティの問題なのだ。
おそらく、このような問題提起に対しては「それは本質的な問題ではない」という反論が返ってくるであろう。しかし、マルクス経済学において「搾取」という言葉が多くの人々を惑わせたことを考えると、それは「本質ではないが重大な影響を及ぼす」問題である可能性はあり得る。
ではどうすべきだろうか。私なりの回答は……機会があれば変えた方がいいかもね、という消極的なものである。私は「専門用語と言えども誤解しやすいことは問題である」という立場を取る(ことにとりあえずしてみる)。しかしそれは多くの場合、優先順位の著しく低い問題である。やはり専門家は比較優位に基づきまずは専門分野の研究でこそ活躍すべきなのである。
……とか書きながら、大学の研究者が抱えている無駄な書類仕事や会議の数々に比べれば、十分有意義なのではないかと思ったのは秘密だ(w
# 山形 『すみません、生命保険によって長生きしてしまう、というのがどうしてモラルハザードなんでしょうか? それと、なぜ生命保険によって長生きするんでしょうか? 生命保険に入ると「あんな連中に保険金がいくのは許せーん!」と病人たちが気合いを入れて、ついつい長生きしてしまう、というような現象でもあるんでしょうか。
数年前にアメリカで、保険金だか年金だかの支払額が引き下げになると発表されたら、その直前に死亡率がやたらに上がったという笑えない事態があって、これはモラルハザードの例かもしれませんが、挙げられている話はちょっと理解に苦しむので、ご教示いただければ幸いです。』
# arn 『あっ、失礼。生命保険→年金です。すんません。』
# arn 『> 山形先生
いちおう、論拠は2001年のイグ・ノーベル賞受賞の「もし長生きした場合相続税率が低くなると認められるなら、人々は死ぬことを延期する方法を探すだろう」という研究があります(w
まぁ、それが本当かどうかは否かとして、モラルハザードという「専門用語」は、倫理や道徳とも関係ないと思うので、その解釈は不適切かもと主張してみます。』
# 銅鑼衣紋 『日常言語で済む話なら、日常言語を使えば良い。僕がこの手の誤用が嫌いなのは、
「むずかしげな単語を使って当たり前のことを書く」人が嫌いだということなんです。
「道義心の衰退」って言いたいならそう書けばいい。なのに、わざわざ「もらるはざーど」っ
て書く神経がわからんのよ。で、わざわざ「モラルハザード」って書く場合は、その
非日常言語的意味がそこでは適切だから使うわけでしょう?』
# 山形 『銅鑼様、御意にござります。
さて、相続税率を死亡年齢にしたがって下げたらみんなが長生きの努力をする、というのはぼくの感覚だとモラルハザードではありません。この逆、つまり死亡年齢が上がるほど相続税率を上げるようにしたら、子がどんどん親をぶち殺すようになった、というならモラルハザードが作られた例です。前者のようなモラルハザードの用法ってあるんでしょうか。』
# arn 『> 前者のようなモラルハザードの用法ってあるんでしょうか。
あっ、たしかに。私の勘違いでしょうね。すみません。ロジック自体をモラルハザードと呼ぶのかと勘違いしてました。たしかに正しい方向に働くなら単にインセンティブでいいですもんね(論文によってはそういう用法をする場合もあるのかもしれないので、これまた私の勘違いかもしれませんが……)。』
# arn 『> 銅鑼さん
その見解にはまったく同意なのですが、システム屋の場合「勘違いを促すようなUIを作るのはシステム屋が悪い」という考え方がある(で、実際お客から文句を言われる)なわけで、そのロジックで行けば誤解を助長するような専門用語により生み出された誤解は作った側に問題があるということになる(もちろん、これは経済学の成否には関係のない話)。だから、納得しづらいところがあるんですよね。
今となっては「モラルハザード=道義心の衰退を表すもっとも一般的な日常用語」となっている可能性もあり(……てゆうか私の周りは皆そう思ってたという現実はある)、誤用したからと言って彼らが非日常言語的意味として使っているとは限らないのではないでしょうか(中島さんのは単なる誤用だと思うけど)。』
# arn 『いや、でも「道徳的によくないとされる行為ならなんでもいい」というのはどうなんでしょう。お金を稼ぐことも人によっては道徳的に良くないと思う人もいるわけだから、道徳がどうこうという話はどうでもよくて、リスク回避によってリスク対象自体の確率が高まることが問題なんでは……って重箱の隅ですね(-_-;』
# 銅鑼衣紋 『>arnさん
>勘違いを促すようなUIを作るのはシステム屋が悪い
のは同意。だが、「インタープリターとは、プログラムを一行ずつ機械語に翻訳して
実行する言語処理系」という、大昔(って単に僕が年寄りなだけだがw)の「マイ
コン入門」とかに麗々しく囲み記事かなんかで説明してあった嗤ったのと同じことが
「マラルハザード」なんじゃないですか?で、インタープリターという、いかにも
一行ずつ翻訳するというイメージがけしからんといって、まさか「対応サブルーチン
呼び出しプログラム」とかなんとかいう名前を付けるわけにもいかんでしょう?』
# Yasuyuki-Iida 『中島さんのモラハの定義は変ですが,例としてあげられているものは何れも一応はモラハに相当すると思います.モラハは日常用語に引っ張られやすいので(僕は出来るだけ)Hidden Action Problemと呼ぶようにしていますが,要するに一方が他方の行動を観察・立証できないことからなんか問題が生じることを指すだけですから.まぁ,八百長の話はいずれもモラハだの経済学だの言う必要もない話ですけどね.』
# てらしま 『文章を書いていて「道徳」とも「倫理」ともいえず「モラル」と書かなければならないときというのが、あると思います。なにか少し語彙が違います。モラルハザードでも、「モラル」をふつーに「道徳」と訳しちゃうから誤解されちゃうのでしょう(実際わたしも始めは誤解したし、少なくとも日本人の普通の反応だと思う)
moralと語源が同じ言葉にmoraleがあって、この意味は「士気」とかなので、たぶん日本語の「道徳」よりももう少し、「一般的に人間の意志を方向づけるもの」みたいな方向にはみだしているのだと思います。宗教の違いもあるんだろうな。
なので、英語圏では日本よりは誤解されにくい用語なのでは? それでも誤解されてそうな気はしますけれど。』
# てらしま 『ちょっと意味わからないこと書いたかもですね。
つまり、けっきょく英語圏で通用するのなら日本だけ用語をおきかえるのは難しいなと感じたのです。
それでもなんとかいい訳語をあてられればいいけど、たぶんこの語彙の違いの根本は宗教の違いで、基本的に日本語にはない言葉だと思います。「職業倫理」とか「道徳」とか誤解しやすい言葉を使ったらダメだし、「モラルハザード」のいいやすさ(笑)に勝つのは難しそうだなあと。ちょっと考えてみて思いました。』
# arn 『> てらしまさん
そういう面はあるんだろうなぁ。ヴァリアンの入門ミクロとか読むと「いくぶん奇妙な用語ではあるが」とか書いてあるので、向こうの人にとっても多少は違和感があるのかもしれませんが。』
# arn 『> 飯田先生
Hidden Action Problemですか。そういう言い換えができるなら、それを使うべきなのかもしれませんね。
例の国立国語研究所の「外来語」言い換え提案を読むと、手引きに「本来は保険用語で,保険をかけてあるからと故意や不注意で事故を起こしてしまう危険性をいった。経済全般での倫理の欠如による行為に広がり,さらに経済以外の領域にも拡大して,使われている。」と明確に書かれているので、もはや専門用語としての意味を第一義として使うべきとは言えない状況なのかも。
http://www.kokken.go.jp/public/gairaigo/Teian2/Words/moral_hazard.gen.html』
# arn 『> 銅鑼さん
コンピュータの文脈でインタープリタの意味を勘違いする人は見たことないので、その例は無効です(^_^;
モラハの問題は、誤用の方が自然すぎて間違えても誰も気づかないことにあるのではないかと。銅鑼さんの見解に納得しかけてたのは「専門家どうしのコミュニケーションでは問題なく利用できる」から問題ないという点だったわけですが、中島さんのような経済学インナーの人でさえも勘違いがある場合、二人の専門家が専門用語を使って議論しているのに実はまったくかみ合ってない可能性があるわけで。世間一般では違う意味で使われ、玄人の議論にも使えない専門用語の価値ってなんだろうとか思うわけですが、いかがでしょう。』
# 銅鑼衣紋 『「インタープリタ方式は同時通訳のように、プログラム言語で書かれたファイルを読み
取りながら、インタープリタというプログラムが逐次機械語に翻訳し実行を行う。」
>逐次機械語に翻訳し実行を行う
出所:http://www.microsoft.com/japan/security/square/s_keyword/ss_yogo_030303.asp
ちなみに、ぐぐると最初のこれが出てくるんだけどねぇ(笑)』
# arn 『むむ、銅鑼さんの言う誤用部分を勘違いしてたかも。
まずいのは機械語に翻訳しての部分ですか。たしかにインタプリタ実行するときは対応ロジック呼び出しするのが普通だから機械語に翻訳という表現はまずいかも(サブルーチンを通じて機械語を実行していると言う意味で間違いとも言い切れないので私は別に構わないと思うけど)。
モラルハザードと違ってこのことを問題視する人を今まで見たことないんだよなぁ。インタプリタという用語が逐次実行に重きが置かれて、その結果がサブルーチンだろうが機械語だろうが概念的にはどうでもいいからかも。』
# 偽cloudy 『銅鑼さんの指摘は真摯に受け止めつつも、一応トリビア的話題を書いときますと、
JavaではソースをコンパイルしてVMのコードに置き換え、それを後でインタプリットして実行するのですが、最近はJITと言ってそのVM(仮想機械)の命令語を動的に機械語に変換しつつ走らせるという、まさにその解説通りのことをやっております。』
# 偽cloudy 『で本題にもどると「ムードのある音楽」の意味で「ムーディー(憂鬱)な音楽」と言ってしまう人がいることをもって「英語というUIが悪い」とは言えないでしょうね。
そういう人には「ちゃんと英語を勉強しろ、さもなきゃ知ったかぶりで英単語使うな」と言うほかないのでは?』
# 銅鑼衣紋 『>偽cloudyさん
へぇ、そういうのできてきたんですか。昔から、32ビットもあるとマクロアセンブ
ラが高級言語なみになりかねんとかいう話をしてる友人がいたので、VMのコードを
直接機械語に変換して実行もできるのかもしれませんね。
でも(と、相変わらず粘着ですがw)、ふつーはオブジェクトコードを一行分だけ
生成しては実行し、次の行に進むなんて処理系ないでしょう?いや、大昔に計量用
にコマンド言語インタープリタを作ったもんで、マシン語生成とか言われると異常に
違和感があるんだけど、やっぱり古いだけかな?だったら前言撤回します>ARN氏』
# 偽cloudy 『いえ、一般にインタプリタといえば機械語を生成せずにプログラムを解釈実行するもののことであり、銅鑼さんの指摘どおりそのMSの解説は誤解を招く表現だと思います。』
# arn 『> cloudyさん
インタプリタの高速化技法とはいえ JIT ”compiler” だから用語としては微妙ですね……
> 銅鑼さん
インタプリタの定義としては銅鑼さんの言うのが今でも正しいですよ(ただ、普通使い方として逐次実行に重きが置かれる……最近は使う人ばかりで作る人はほとんどいないので……そういう意味での誤解はないんじゃないかと)。
しかし、見て回ったらコンピュータ辞典系のサイトを確認したらことごとく「機械語に翻訳」と書いてあるのは何だかなぁ。たしかに銅鑼さんが文句を言うのもごもっともで。
> 「ムードのある音楽」の意味で「ムーディー(憂鬱)な音楽」
英語というUIが悪いとは言わないけど、誤解を招くような状況・場所があればそのような表現はできるだけ避けるべきだと考えます。問題は(本質的ではない単なる用語によって)誤解が発生することで、もしモラルハザードが実際に誤解を誘発しないのであれば問題視する必要はないわけで(だから経済学の論文で使う分には構わないと思うし、経済学者どうしなら……と考えていたら、あれれとなったわけです)。
もっと直接的に言ってしまえば銅鑼さんやcloudyさんの言っていることは正論だとは思うけど、現に誤用が一般化しているという事実がある以上、「モラルハザードは経済学の専門用語だから諦めろ」という立場は説得力がないんじゃないかと考えているわけです。それを認めたら今後どんなひどい専門用語や専門訳語が出てきても認めざるを得ないし、注釈で説明を補足する必要性もなくなってしまう。ですので、問題は問題として認めたうえで、変える価値があるならやった方がいい……多分やる価値ないけど(w という立場を取る方がよいのではないかと主張しているわけです(私も相変わらず粘着ですみません……そろそろ粘着やめようと思ってはいるんですが(w)。』
# 銅鑼衣紋 『元祖大粘着爺でつ>ARN氏
いやさ、計算機工学みたいにシンボル操作だけど「動く」とか「論理が見える」はず
の世界(インタープリタが機械語吐くのか、ごらぁ)であっても、専門家(もどき)
の書いた「辞典」「辞書」が、基本的に嘘書いていて誰も気にしないわけです。まし
て、経済学の概念においてをや(専門家でもいい加減なことを書くことがある)。』
# arn 『> 専門家でもいい加減なことを書くことがある
中島さんのあの記事に関して言えばどう読んでも経済学用語のモラルハザードを誤用(というか適切でない定義)しているので、銅鑼さんの見解には同意しますが、モラルハザードが倫理観の崩壊という意味で日常用語化するにつれて専門家が日常用語として使用する場合も当然出てくるし、経済学の隣接分野、例えば政治学の人は日常用語としての意味でモラルハザードを使用してくるでしょう。国語辞典もこんな感じだし。
http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%A5%E2%A5%E9%A5%EB%A5%CF%A5%B6%A1%BC%A5%C9&kind;=jn&mode;=0&base;=1&row;=1
事実として誤用が正しい用法として認知されつつある以上、「モラルハザードは専門用語としてしか使うべきでない」とはもはや言えないのではないかと。逆に無理にモラルハザードという言葉の原義での使用にこだわることによって、逆に誤解を招きかねないわけですし(実際問題として「情けは人のためならず」などは原義で使用しても通用しないし、独擅場のように誤用が正しい用法になるというのも珍しいことではない)。
インタプリタに関して間違いが書いてあっても、現にインタプリタと呼ばれているものの実装がその定義に沿っていない以上それが間違いであることは担保できますが、概念の場合にはそういった担保もないですしね。』
# 銅鑼衣紋 『>ARN氏
ようやく、何が言いたいかわかった。それなら了解。もはやモラハは彼らの言葉と
あきらめてE田せんせい提案みたいに別の言葉使うしかないな。』
# arn 『うぅ、わかりにくい説明で申し訳ない。精進しまっす。』