Tessie's Cozy Room presents
通勤電車 「読書室化」 計画
1999年4月24日更新
1:どこで読むか
快適な読書を実現するにあたり、車内のどこに立つかは非常に重要な要素である。詰め込まれた乗客に押されて身体が斜めになったり、目の前に文庫本を広げるほどのスペースも確保できないのでは事実上読書は不可能である。また雨の日は、隣の人の濡れた傘がズボンに当たったりすると読書になかなか集中できない。
下図は私が独断で作成した「通勤電車内でどこに立てば快適に読書できるか」をランキング形式で図示してみたものである。
通勤電車(ロングシート車)を上から見た図。こげ茶色は座席を表わす。また丸印は乗客の位置を表わし、アルファベットは快適度の指数。指数の定義は下表の通り。
| A | 申し分の無い読書環境。ウォークマンなどで騒音を遮断すれば、自宅並みに集中可能。 |
| B | 余程のすし詰め状態でない限り、快適な読書が可能。 |
| C | ラッシュ時の読書はかなり厳しいが、文庫・新書なら辛うじて読める。 |
| D | ラッシュ時の読書は不可能。 |
上図の示す通り、ラッシュ時に本を読みたければ、各車両の端がベストポジションといえる。ただし、運転室のある先頭・末尾車両の車端は例外である。理由は下記の通り。
また、意外な盲点が直射日光の存在。朝夕は日光の入射角が小さいため、路線の方角や座る位置によっては強い直射日光が後頭部に当たり、ボーとして読書どころではなくなる場合がある。この様な場合に読書を強行すると、最悪乗り物酔いに陥る事もあり、仕事に差し障ってしまう。この様な「読書の思わぬ障害」を避ける意味で、あなたがもし始発駅から乗車できる幸運な方で、座る席を選べる場合には日光の当たらない方の席を選ぶ事をお勧めする。
上図で連結部にBの表示が出ているが、これは連結部にドアの無い車両に限る事を申し添えたい。ドアがあると大きなモーター音などがその「個室」にこもって鳴り響き、とても読書どころではないし、第一危険である。警告:連結部に立ち止まる事は大きな危険を伴います。すし詰め状態でやむを得ず押し出された場合を除いて決して連結部には立たない様にしましょう。特に渡し板には絶対に足を乗せない様に注意して下さい!重大な傷害を負いかねません。
2:何を読むか
本のジャンルは個人の趣味なのでここでは触れないが、物理的な意味で通勤電車で読みやすい本とそうでない本がある。電車内での読みやすさを決定付ける3大要素は「表紙の硬さ」と「紙質」「重さ」である。
ラッシュの車内では往々にして片手で本を読まざるを得ない場合が多い。そう、掌の運命線の辺りに本の背を乗せ、親指と小指で器用にページをめくるのである(この場合「めくる」という表現は必ずしも正確ではないかもしれない。閉じようとするページを親指で押さえた状態から、微妙な指先使いで1ページ分だけを解放してページを進めるのである)。特に雨の日で片手に傘を持っている時にこの芸当は威力を発揮するのだが、これはいわゆるソフトカバーの本、つまり文庫・新書の類でしか行えない。また紙質も重要な要素である。新書と比べて文庫本は心持ち紙が薄い様で、片手ではページをめくりにくい(一度に数ページめくってしまう)。傘を持っている等の理由でもう片方の手を上げにくい場合が予想される場合には、片手で読みやすい新書類を出来るだけ持参しよう。
また重さも重要である。人間の身体は同じ姿勢を維持すると疲れるように出来ているので、立った状態で重いハードカバーを目の前に掲げ続けると思いの外疲れる。私は15分程度に一度は手を下ろして休憩する必要を感じる。その意味でもソフトカバーがラッシュ時には向いている。
それでは重いハードカバーの本を通勤途中に立って読めないか?というと、もちろん読める。ただしそれには幾つかの条件がある。
まあ、座れれはどんな本でも問題なく読めるのだが......
3:どう読むか
上記2で述べた通り「通勤電車での読書には新書や文庫が向いている」というのが私の考えであるが、これには他の理由もある。
私は新書や文庫は精読するよりも寧ろあらゆる分野を乱読するための物であると考えている。興味をもったさまざまな事柄に関してまず新書や文庫でその概要を掴み、その結果更に深い興味を抱いた事柄に関してはハードカバーの専門書を精読する。 無論ここで挙げた「乱読」と「精読」という2つの言葉は必ずしも対になった言葉ではないが、読書の形態としては一種の相対する言葉といえないだろうか。「いろんな分野に関して"広く浅く"読む」乱読と、「ある分野に関して一行一行丹念に読み込む」精読。
私は、通勤電車で毎日過ごす時間こそこの「乱読」に最適ではないかと考えている。時間が限られているためダラダラ読み進める事もなく、集中力も養われる。目の前でグーグー寝ているサラリーマンよりもちょっと賢くなった気もがしたりして、得した気分も味わえる。そして何よりも、ニッチと呼べる通勤時間を利用してあらゆる分野へ視野を広げることが出来るのである。
もちろん私もボーと車窓の風景を眺めたり、グーグー寝たりする日もある。それはそれでいいと思う。自分の意思を縛ってまで本を読む必要はない。読みたい日に読む。読みたい本を読む。義務感で本を読んだって全然楽しくないのだから。
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