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 カセットテープからMP3へ変換してみようだれでも昔録りためたカセットテープが山のようにあるはず。テープの多くは、すでに廃盤になってしまったレコードからのダビングだったり、来日したアーティストのライブ放送をエアチェックしたものだったりして、なかなか捨てられない。ここではテープからMP3データへ変換して保存版のデジタルデータを作ることにチャレンジしてみる。
 カセットテープからMP3データに変換する手順って?カセットテープは、時間がたつにつれてしだいに音質が劣化してくるのをご存知だろうか。何年もたってくると、とくに高音部が“ヘタ”ってくるし、全体的にモアーっとした力のない音になってきてしまう。何度も繰り返して聴いているうちにテープ自体が片伸びすることもあるし、保管状態が悪いと、ワカメのように変形してしまうことすらある。こうならないうちに、MP3のように音質がよくファイルサイズが小さいデジタルデータに変換して保存しておこう。
 カセットテープからMP3に変換するに必要なものは意外に少ない。機材としてはパソコン側のサウンドカード、そしてサウンドカードとカセットデッキとを結線するケーブルがあればいい。あとはパソコンに録音するためのソフトウェアと、録音データをMP3に変換するソフトウェアをそろえておこう。ざっとカセットテープから音楽データをパソコンに録音し、MP3ファイルに変換するまでの手順をまとめてみよう。 
(1)カセットデッキの出力端子とパソコンのサウンドカードを結線する(2)ノイズリダクションの確認、音量の設定をする
 (3)Windowsのソフトウェアでハードディスクに録音する
 (4)録音したWAVEファイルをMP3エンコーダソフトでMP3に変換する
 
 手順としてはたったこれだけだ。(3)の録音は“ハードディスクレコーディング”とも呼ばれるように、テープのアナログデータをWindows標準の音声ファイル形式のWAVE(拡張子は「.WAV」)に変換してハードディスクにダビング(録音)する作業だ。WAVEファイルは音質はいいのだがファイルサイズが大きい。これを高音質でファイルサイズの小さいMP3データに変換しておけばCD−Rに焼いたりシリコンオーディオプレーヤーにコピーしたりできる。とりあえず、順にやっていこう。 
 手順1 カセットデッキとサウンドカードをつなげようここの目的はシンプルだ。カセットデッキの出力をパソコンに取り込むための設定をする。アナログオーディオ機器であるカセットデッキの出力をパソコンに取り込むには、パソコンのサウンドカードの入力端子に接続する。具体的には、カセットデッキの出力端子(R/L)とパソコンのサウンドカードのLINE−INとを結線することになる。このときには写真1のような接続ケーブルが必要になる。
 
 
| 写真1 カセットデッキとサウンドカードをつなぐためのケーブル。ステレオ音声(2ピン)とステレオミニピンジャックが付いている |  
 パソコンの拡張スロットにサウンドカードが装着されていない場合には、別途サウンドカードを購入しなければならないが、最近のパソコンの多くは、あらかじめサウンドチップがマザーボード上に搭載している。この場合には、パソコンの背面を見て、サウンドの入力端子があることを確認して結線しよう。 
 まず接続ケーブルのピンプラグ2本をカセットデッキの出力端子にそれぞれ接続する(写真2)。ステレオの右/左を間違えないように。普通、赤が右(RIGHT)、白あるいは黒が左(LEFT)だ。次に、接続ケーブルのステレオミニプラグをサウンドカードのLINE−INにつなぐ(写真3)。 
 
 
| 写真2 カセットデッキの出力ピンプラグ(右/左)にケーブルをつなぐ |  
 
 
| 写真3 ケーブルのステレオミニプラグをサウンドカードのLINE-INに差し込む |  
 手順2 ノイズリダクションと音量の設定をしておこうパソコンのハードディスクに録音を始める前に、押さえておきたいポイントがふたつほどある。ひとつはカセットテープの録音時のノイズリダクションを確認しておくこと(写真5)、そしてもうひとつは録音時の音量調整をすることだ。
 カセットに録音したときには、カセットデッキ側でなんらかのノイズリダクションシステムを設定したはずだ。よっぽど旧世代のデッキでないかぎり、たいがいがDOLBYだろう。DOLBYなし、DOLBY B、DOLBY Cの3パターンで再生して確認しておこう。できるだけヘッドフォンで確認しておきたい。テープの種類や保存状態によって高音部の劣化が激しいときには、DOLBY BやDOLBYなしで再生してみて妥協点を見つける。 
 もうひとつは音量の設定だ。カセットデッキの再生音量はライン出力の場合変更できない。問題なのは録音するWindows側の音量の設定だ。音量はやや大きめに設定しておくのが原則。小さな音量だとノイズが強調されてしまう。もっともメタルテープやクロームテープのようにダイナミックレンジの広いテープに大きな音量で録音したのなら、録音音量は上げすぎないほうがいい。 
 Windows側の音量の設定は次のようにする。タスクバーにあるスピーカーのアイコンをダブルクリックするか[スタートメニュー]→[プログラム]→[アクセサリ]→[エンターテイメント]→[サウンドボリューム]と操作する。続いて[サウンドボリューム]のメニューから[オプション]→[プロパティ]→音量の調整の[録音]→[OK]と操作して「ライン入力」の「選択」をチェックしておく。ここで「音量」と「ライン入力」のボリュームをできるだけ上げておくのがコツ(画面1)。どのくらい上げたらいいかはテープに記録されたボリュームレベルとの兼ね合いで決めるが、最大ボリュームの8割程度にしておくとうまくいく。“スピーカーで再生するとかなりうるさいが、音割れしない程度”の設定と覚えておくといい。 
 なお、パソコンのサウンドカードによって「3Dサラウンド」効果を設定できる場合もある。音楽データのデジタルダビングをするときには無用の長物なので、これはオフにしておこう。 
 
 
 
 
| 写真5 録音時のノイズリダクションをカセットデッキ側で確認する |  
 
 
| 画面1 Windowsのボリュームコントロールを設定する。「ライン入力」のボリュームをやや上げておこう |  
 
| カセットデッキがないときにどうするの? 
カセットデッキはジャマだからすでに処分してしまった。家にあるのはポータブルカセットプレーヤーだけというときにはどうしたらいいのだろう。ポータブルカセットプレーヤーにはライン出力の端子がない場合がほとんど。あるのはヘッドホン用のステレオミニジャックだけだ。この場合は、両側にステレオミニジャックが付いているオーディオケーブルを購入しよう。1本で千円程度と安い。このケーブルでプレーヤーのヘッドホン端子とサウンドカードのLINE−IN端子をつなぐわけだ。ただし、このオーディオケーブルには2種類ある点に注意しよう。プラグに抵抗が内蔵されているタイプとそうでないタイプだ。ハードディスク録音に使うなら抵抗内蔵のオーディオケーブルだ。そうでないと音量が上がりすぎて音割れがしてしまう。ケーブルを購入するときには要注意だ。 |  
 手順3 Windows上でWAVEファイルに録音するいよいよ録音を開始する。カセットデッキにテープを入れて再生しながら、Windows用の録音用のソフトウェアでハードディスクに録音していく。録音にはWindows標準の「サウンドレコーダー」は使えない。録音時間が60秒という制限があるからだ。録音は市販の波形編集ソフトからでも行なえるし、オンラインソフトをダウンロードして使う手もある。たとえばベクターのサイト(http://www.vector.co.jp/vpack/filearea/win95/art/sound/index.html)にはいろいろなソフトウェアがある。
 ここではフリーソフトウェア「A−RECORDER」を使ってみる(画面2)。操作は非常に簡単だ。「Sound Quarity」を「CD」にしておく。CDの音質はサンプリングレート44.1KHz、量子化数16ビット/ステレオの設定だ(画面2b)。音楽テープの録音ならこの設定にしよう。波形編集ソフトから録音する場合もこの設定にしておきたい。サンプリングレートやビット数を下げると録音時のファイルサイズは小さくなるが、音質は当然悪くなるから注意しよう。 
 あとはテープを再生しながら「RECORD」をクリックし、録音が終了すれば「STOP」ボタンをクリックする(画面3)。あとは録音したWAVEデータを保存しよう(画面4)。 
 少々困ったこともある。ハードディスクに録音したのはいいけれど、この手順でいくとだとテープ片面で1ファイルという、見てくれのあまりよろしくないWAVEファイルができてしまう。そこで、波形編集ソフトを使って巨大なWAVEファイルを曲ごとに分割していくことにしよう。操作方法は単純で、録音したWAVEファイルを波形編集ソフトに読み込み、曲ごとに別のウィンドウにカット&ペーストしていく(画面5)。 
 もっとも、1曲ごとに再生→録音→保存をしていく方法もある。つい次の曲のイントロまで録音してしまったりするが、その場合にはやはり波形編集ソフトで余分な部分をカットしていく作業が必要となる。録音開始時点でよく発生するプチノイズも波形編集ソフトで取り除いておくといい。なお、ライブ録音のように曲間に拍手などが入っていて分割しにくいときには、曲の終わりはフェードアウト、次の曲の始まりはフェードインというふうに編集しておくと、曲同士がうまくつながる。 
 
 
| 画面2 Windowsの録音ソフトで録音していく。フリーソフトの「A-RECORDER」を使ってみた |  
 
 
| 画面2b 「A-RECORDER」での音質設定例。「CONFIG」ボタン→「CD音質の設定」で録音時の音質を決める |  
 
 
| 画面3 カセットテープの再生が終了したら「STOP」ボタンで録音を終了する |  
 
 
| 画面4 録音データを保存しよう。WAVEファイルで録音される |  
 
 
| 画面5 波形編集ソフトで録音したWAVEデータを曲ごとに分割していく |  
 
| 録音中はじっと我慢の子で!! 
ハードディスクに録音しているときには、ほかのアプリケーションを起動するのは“御法度”だ。パソコン側はテープのアナログデータをデジタルデータに変換しながら、大量のデータを保存している。CDの音質で録音しているときには44.1KHz、16ビットステレオで1秒間録音すると44.1×1000×16×2=1411200。これはビット表記なのでバイト換算(8で割る)にすると176400バイト、つまり176KB/秒のデータを記録している。WAVEファイルは非圧縮の音声データなので、60分のテープを録音すると176KB/秒×3600秒、つまり約600MBもの巨大なWAVEファイルができる。こういった忙しいときにアプリケーションやファイルのコピーなどほかの操作をすると、音飛びしたり、レコード針の飛んだときのようなプチプチという音(プチノイズ)が入ることが入ってしまう。スクリーンセーバーの起動も止めておき、余計な作業は一切やめて静かに録音に専念しよう。 |  
 WAVEファイルをMP3エンコーダソフトでMP3に変換するこうしてテープからハードディスクに録音したWAVEファイルをいよいよMP3ファイルに変換しよう。ここではフリーソフトのSCMPXを使ってみる。「CONVERT」ボタン→「Multiple files」→「Encoding MPx」と操作すると、WAVEファイルの読み込み用のウィンドウが表示される。録音したWAVEファイルを指定してあとは「開始」ボタンをクリックするだけだ(画面6)。MP3への変換中も、できるだけパソコンでの作業はしないほうが安全だ。
 MP3ファイルに変換する際に注意したいのは、音質を決定するビットレートの設定だ。ビットレートは1秒間に何ビット使用するかということ。この数値を大きくすれば音の歪みは小さくなるがファイルサイズは大きくなる。44.1KHz、16ビットステレオで録音した音楽データなら128Kbps以上は確保したいところだ(画面7)。 
 
 
| 画面6 WAVEファイルからMP3ファイルへの変換例1。フリーソフトのSCMPXで変換メニューを選ぶ |  
 
 
| 画面7 WAVEファイルからMP3ファイルへ変換しているところ。ビットレートはあまり小さくしないようにしたい |  
 (C)Akira Kawasaki、HyperDyne inc.
 
 
 
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