急増するブロガーは選挙に影響を及ぼすのか。ネット世論は実際の投票行動に結びつくのか。「2ちゃんねる」など巨大掲示板やブロゴスフィアが組み立てるネット世論は現実の政治を変える力を持つのか。毎日新聞社は「ネットは政治・社会を変えるのか」の問題意識で連続討論を行います。(後略)
(Mainichi Interactive 2005年10月17日)
ざっと読んだけど、結論として「個人ブログはあんまり選挙結果に影響をもたらしていない」というのがほぼ一致した見解みたい。
調べてみたら幸い過去のアクセスログの分析結果が幾つか残っていたので、当ブログのアクセスログを元に個人blogと選挙の関りについて調べてみよう。
解析の方法だが、当blogを運営しているサーバーでは毎週日曜~土曜の1週間単位でアクセスログを保存している。それをanalogというアクセス解析ソフトを利用して解析、分析してみた。
先ず、アクセス数だが、当ブログは検索エンジンからのアクセスが非常に多い。故に、検索エンジンから個別エントリーへ直接アクセスする一時的な読者からのアクセスを省いて、恒常的な読者が利用するブックマークやRSSリーダーからのアクセスを把握する為にIndexページ、RSSフィード(Atom.xmlを含む)、携帯用Indexページ(2005年5月から開設)に対するアクセス数を先ず集計してみた。
集計期間は、2003年の衆院選挙前、2004年の参院選挙前、2005年1月(朝日新聞捏造事件の頃)、2005年8月7日の週(郵政解散)、8月28日の週(衆院選公示)、9月4日の週(衆院選終盤)、9月11日の週(開票日以降)、10月16-18日(選挙後一ヶ月)。
2003年と2004年の国政選挙時との比較は、当blog自体の基本的なアクセス数が増えてているために分析不能。
8月8日の郵政解散後のアクセスは約38,000~40,000/日で安定しているが、選挙戦が終わった9月11日の週が一気に46,290/日まで増えている。選挙後一月経った現在アクセスは36,556/日に戻っている。この流れだけ見ていると、投票日直後のアクセス数増加にはなんらかの一時的要因が有ったと考えられるが、選挙戦中のアクセス数は選挙後一ヶ月現在のアクセス数と比較しても極端な変化は見て取れない。
一方、RSSフィードへのアクセス数は郵政解散時は12,990/日だったものが徐々に増えていき最大17,504/日になった。選挙後ちょっと減ってはいるもののRSSフィードのアクセス数は波の荒いIndexへのアクセス数と違って基本的に蓄積されていくようだ。従い選挙をきっかけに固定読者を増やしたという点で、このblogは選挙の影響を受けていたと思われる。
次に前回の総選挙において、他blogからのリンクや2ちゃんねる・Yahoo掲示板での紹介で、Indexページを経由しない直接アクセスが多かった郵政総選挙に関係の深い4つの個別エントリーがある
8月9日:やはりマスコミがひた隠しにする郵政解散の理由と争点
8月12日:「郵政民営化で350兆円が米国に奪い取られる」というデマ
8月15日:民主党の郵政改革案のデタラメっぷりを検証
8月23日:「過疎地の郵便局が無くなる」という脅しに騙されるな!
実はこの4つのエントリーは書いた側からしても非常に思い入れが深い。選挙の争点になるであろう郵政民営化についてマスコミやら一部評論家が印象操作みたいな事ばっかやってたんで、選挙戦におけるWEB上の議論の一助になればと思いリンクされる事を想定して書いたエントリーだ。
この4つの個別エントリーへのアクセス数の推移と、検索エンジン(google・Yahoo)からのアクセス数及び2ちゃんねる・Yahoo掲示板の書き込み経由のアクセス数の推移を1週間単位で纏めてみた(10月16日の週については3日間分のデータを元に算出した予測値)
特筆すべきは解散直後に書いた8月9日付のエントリーへのアクセス数。調べて自分でも驚いたが8月9~13日の1週間で9万4千近くのアクセスがある。
また普通個別エントリーへのアクセスは更新から日が経つにつれ減っていくものだけど、8月9日付と12日付けのエントリーには投票日までコンスタントなアクセスが有った。その後投票から一月経った現在では10分の一に減っている(これが普通)。
ここから読み取れるのは、郵政解散直後の有権者の関心の高さと、劇的な解散劇から投票日まで1ヶ月という長丁場の選挙戦で失速が危惧されていたが、郵政民営化問題は投票日までネタの鮮度が持続したという事。
また、2ちゃんねる経由のアクセスは解散直後に激増してその後減ってまた投票日に向けて増えて投票日後に減っている(6900→1806→2270→1932)が、Yahoo掲示板経由のアクセスは徐々に増加し選挙戦終盤に最も増えて投票日後に激減している(837→2328→3676→1235)。この事から2ちゃんねるは話題の瞬発力に優れ情報の即時伝播に威力を持っており、Yahoo掲示板は速報性はあまり無いが持続的な議論がなされているのではないかと思う。尚、2ちゃんねる・Yahoo掲示板共に投票日後は経由アクセスは減少している点からネット掲示板における投票前の議論に当blogのエントリーが何らかの形で使われていたと言えるだろう。
一方で検索エンジン(google・Yahoo)経由のアクセス数は解散から選挙戦への流れでは余り影響を受けず、投票日直後に一時的に激増している。恐らく選挙に関して検索エンジンを利用して広くWEBから情報収集しようとする人は、投票前の情報収集より投票結果の情報収集の方が多いと推測できる。
って事で話は最初に戻って、「ブログは選挙を変えるのか」ですが、個人サイトを運営している立場からの結論は普段から2ちゃんねるなんかで議論している政治談義が趣味の人は別として、検索エンジン経由で新規に政治系サイトに訪問するような人は投票前の情報収集ではなく、投票結果の情報収集が主流。故に、普段あまり政治に関心の無い人の投票動向に一般人のblogが影響を与える事は少ないと考える。
ただ、政治の話はまだまだ現実世界では話題にし辛い。こうやって選挙を重ねる度に潜在的政治好きがネットでの政治談義に目覚めて、政治系サイトサークルのパイが広がるという形で「blog」の選挙に対する影響力が増すという可能性はあるかもね。
だから「blogが選挙を変える」というより「選挙がblogを変える」というほうがオレ的にはしっくりくる。