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告発のとき [アメリカ映画(00s)]
In the Valley of Elah
ポール・ハギス。彼は、脚本家としてテレビ業界に入りいくつかのテレビドラマや映画のプロットライターとして活躍していました。彼の企画は一貫したテーマ性の強いもので、興行的な大ヒットや高視聴率を獲得するといった派手な結果は残しませんでしたが、各作品ともにとても力強く見た人からは肯定的な意見がおおい作家でもありました。
ハギスが世界に注目されるようになったのは、2004年に公開された「ミリオンダラー・ベイビー」からです。ハギス脚本、クリント・イーストウッド監督の重いテーマの映画は最優秀作品賞を含む4つのアカデミー賞を受賞します。2005年には、ハギス自身が監督、脚本も担当した「クラッシュ」がアカデミー最優秀作品賞を受賞します。彼は2年連続でテーマ性の強い映画でオスカーを手にすることになりました。
その後も、イーストウッド作品「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」の脚本を担当したり、007シリーズのリニューアル版「カジノ・ロワイヤル」「慰めの報酬」の脚本に参加しました。
地味な作品ですが確実にテーマのある作品を自分なりに作り続けてきたハギスは、このように注目され次回作が待たれる人物になったのです。
そのハギスが次に考えた監督作が「告発のとき」です。
この映画は実際に起こった事件をもとに脚色しています。
2003年、イラク戦争から帰還したある若い軍人リチャード・デイビスが失踪します。そして帰国したジョージア州で彼の遺体が発見されました。元軍警察に勤務していた父親ラニー・デイビスは、自らジョージア州に赴き息子の死の真相をつきとめていきます。この事件を追った書籍は「Murder in Baker Company: How Four American Soldiers Killed One Of Their Own」というタイトルでアメリカで発売されています。CBSテレビの「48 hours」でも取り上げられました。
ハギスは2004年にこの事件に迫ったプレイボーイの記事で初めて事件をしりました。そして、丁寧に事件を検証し、映画のストーリーを構築していきました。
企画当初、主役のハンク・デアフィールド(ラニー・デイビスがモデル)には、クリント・イーストウッドがキャスティングされていました。クリント・イーストウッドが主役をやるということでこの企画にグリーンライトが灯り、サミットやワーナー・インディペンデントが出資を決めます。しかし、イーストウッドは役者としてキャリアを築くつもりがないという理由で降板してしまいます。そこで新たに主役探しが始まり最終的にトミー・リー・ジョーンズがキャスティングされました。一緒に事件を追う刑事役エミリーにはチャーリーズ・セロンが決まりました。彼女がこの映画を支えていると言っていいくらい素晴らしい演技を見せています。セロンのキャリアの中でも一番彼女が光っている作品です。妻役には、スーザン・サランドンがいい味で出演しています。
この映画、面白いのは、同時期に同じ撮影場所(アルバカーキ)で撮影された「ノーカントリー」とキャストやスタッフが被っているということです。撮影はロジャー・ディーケンズ、出演者ではトミー・リー・ジョーンズ、ジョッシュ・ブローリン、バリー・コルビン、キャシー・ラムキンが両作に出演しています。
映画は、ハギスらしい強いテーマ性を持ったすばらしい作品に仕上がっています。子供を亡くした父親の苦悩、元軍人らしいもの静かでしっかりした行動など細かな描写が見事で、地味なストーリーにも関わらず見始めるとグイグイとスクリーンに引き込まれてしまいます。
この作品、アカデミー賞主演男優賞を含む数々の映画賞にノミネートされましたが、ベニス映画祭以外は受賞を逃してしまいました。
ハギスの次回監督作は2011年公開予定の「The Next Three Days」です。主役はラッセル・クロウ。殺人事件の容疑者になってしまった新婚の妻を巡るサスペンスだそうです。
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告発のとき
オリジナル・サウンドトラック「告発のとき」
日本映画の音はなぜ聞き取りにくいのか? [映画技術]
「日本映画の映像はなぜ汚いのか?」の回は、非常におおくのアクセスをいただきました。邦画の画質の悪さを気になっている方が結構いるんだなあと改めて思い私の訴えが伝わったようで嬉しくなりました。皆さんの不満をできるだけ劇場の方や制作者に伝えてください。こういう小さな声がいつか邦画界を変える力になっていくのです。
さて、今回はご依頼のあった映画の「音」についてお話しましょう。映像ほど難しくないのでおつきあいください。
皆さんは、映画の音響についてどのくらいご存知でしょうか?たぶん聞こえているからそれでいいと思っていると思います。しかし、映画の音響は奥深いのです。
そもそも昔の映画には音がありませんでした。サイレント映画と呼ばれていた時代のことです。その頃は映画館では映像にあわせて音楽を流すか、弁士と呼ばれる人がマイクでストーリーを説明していたのです。
その後、録音技術が発達し、ついに映像と音が一緒に上映される時代が来ました。これはトーキーと呼ばれ、たくさんのお客さんが劇場に集まり音の出る映画を楽しんだのです。それから100年近くが経ち、現在では立体音響が主流となっています。
映画館には、スピーカーが10個以上設置されています。映画館に入り上映が始まる前に四方の壁を見てください。スクリーン以外の3つの壁には沢山のスピーカーが並んでいるのを見ることができます。見えませんが、スクリーンの裏には複数の巨大なスピーカーが設置されています。このように観客を囲むようにスピーカーが並んでいるのには、実はちゃんと意味があるのです。
<現代の音響システム>
「5.1チャンネル」という単語を見たことはありますか?現在、世界中の映画のほとんどは「5.1チャンネル」で音声が作られています。
5.1とはいったいなんでしょう?これは音声トラックの数なのです。わかりやすくいうと右/中央/左/右後/左後の5チャンネルと低音の6種類のトラックのことです。各チャンネルには台詞や音響、音楽などが収録されるのですが、低音はただ「ズー」という低音ノイズだけが収録されています。「ズー」という音がある/ない、そして音量が大きいか小さいかという信号のみあればいいので1チャンネル分の帯域を使う必要がなく0.1チャンネル分の容量に低音情報を入れています。なので5.1チャンネルと呼ばれています。要は映画の音声は、6個の別々の音声チャンネルが映像と同時に再生されているのです。
ここまでは理解できましたか?そうなると映画館には6個のスピーカーがあればいいということになります。実際に確認していきましょう。スクリーンの裏には大きなスピーカーが3個あります。左のスピーカーからは左の音声、中央のスピーカーからは中央の音声、右のスピーカーからは右の音声が出ます。大きな音が出るとスクリーンが揺れてしまうのでスクリーンには小さな穴が沢山あいています。
これで3チャンネルですね。車が画面右から左に走ると音も映像に会わせて右から左に移動します。皆さんお気付きの通り3つの音声チャンネルを駆使して車の移動を表現しているのです。
そして、劇場内の左側にある沢山のスピーカーと後ろの左半分のスピーカーからは左後のチャンネルに入っている音が再生されます。そして同様に劇場右側にあるすべてのスピーカーと後ろの壁にある右半分のスピーカーからは右後のチャンネルに入っている音が再生されるのです。
これにより、画面の奥から手前に飛んできた飛行機は、画面から見えなくなった後、音だけが後ろに飛んでいくという臨場感ある音響設計が可能です。スピーカーとスピーカーの間があくと音の空白地帯が生まれます。なので、スピーカーはなるべくおおく劇場に設置してどの席に座ったお客さんでも同じ音響体験ができるようにスクリーン以外の壁にはスピーカーを並べています。
このように映画の音は左右前後に移動するように作られています。
では低音スピーカーはどこにあるのでしょう。実は低音には音の指向性がないのです。なので映画館のどこかに低音を発生させるスピーカーを置いておけば良いのです。おおくの映画館はスクリーンの裏に設置されていますが、時にはスクリーンの手前にバズーカ砲のようなスピーカーを置いてお客さんに見えるようにしている映画館もあります。映画内で大爆発のときなどは、この低音スピーカーから「ズーン」という低音が発せられお腹の奥まで響き映画を盛り上げます。
では、皆さんのご自宅のテレビには何個スピーカーがついていますか?家のテレビは何チャンネル音声ですか?90%以上の方のテレビは2チャンネルのステレオ音声です。テレビからは右と左の2つの音声しか出ていないのです。映画の場合、劇場用に5.1チャンネル音声を作り、テレビ用に2チャンネル音声を作り直しています。なので、映画館でお金を払うのはもったいないからテレビ放送でいいや、とかDVDで見ればいいやと思っている方は、実は大きな勘違いをしていることになります。せっかくお金と時間をかけて作った5.1チャンネル音声を聞かずに映画を評価しているのです。
実はブルーレイやDVDには劇場用の5.1チャンネル音声が収録されています。そしてWOWOWなどのデジタル放送でも5.1チャンネル音声を放送しています。これらの5.1チャンネル音声は、テレビとは別にデコーダーと最低6個のスピーカーを家のテレビの周りに設置しないと再生できません。なので、日本の住環境を考えると家庭で5.1チャンネル再生を楽しんでいる方はとても少ないのです。
さて、音響の制作はどうなっているのでしょう?
<アメリカの場合>
映画の撮影現場にマイクを複数置いて音の移動を収録するのは不可能です。画面にマイクが写ってしまいますし、いろいろな音が撮影中にでてしまい後で使い物になりません。なので、現場では現場音を収録しています。わかりやすくいうと台詞のみ収録しています。
台詞は、ブームマイクかワイヤレスマイクで収録します。それでもうまく行かない場合はアフレコになります。インディ・ジョーンズなどは、ほとんどのセリフがアフレコです。映画を見ているとハリソン・フォードは、きちんと撮影現場でセリフを言っているように見えますが実は撮影後にスタジオでマイクの前でアフレコしています。フォードは、素晴らしい俳優というだけでなく素晴らしい声優でもあるのです。
セリフはリレコという作業で、きれいにクリーニングされ聞き取りやすい音域に調整されます。これでセリフの音声素材は完成です。
サウンドデザイナーとは、すべての音を統括するスタッフです。アメリカのアカデミー賞では音響賞を受賞する立場にある人です。サウンドデザイナーは、撮影前に映画監督やプロデューサーと映画で何を伝えたいのかについて何度も打ち合わせを行います。これが後で非常に重要になります。
そして、映画に必要な音を作って音響制作の準備をします。例えば「スターウォーズ」のライトセイバーの音は、長い電線を棒で叩いた音を録音し、それをコンピュータで加工しています。「カーズ」の車の音は、ナスカーレースに出向いて実際の車の走る音を録音しておきます。このように沢山の音のライブラリーを準備しておくのです。世界中で一番進んでいる音響制作会社はルーカスフィルムの1部門であるスカイウォーカーランチです。ここには30年以上もためてきた膨大な音声ライブラリーがあります。コンピュータ上で「Benz E 550 door」と入力すると、ベンツEシリーズのドアを閉める音がリストアップされます。そこには各年式がでてきますので、映画の中で使われている車が1996年式Eクラスの場合は、その音を選択するのです。こうやってかなり細かく音を再現します。もし、必要な音がライブラリーにない場合は、ライトセイバーの音のように新たに収録します。
サウンドデザイナーは、映画の映像にあわせひとつひとつ音をつけていくのです。これは膨大な時間が必要です。そして音楽家は、映像に会わせ音楽を作曲し、5.1チャンネルで収録します。ほとんどがオーケストラなので、大きなスタジオを借りオーケストラを入れてレコーディングを行います。
これら「セリフ」「効果音」「音楽」をひとつにまとめるのがミックス作業です。まずは、小さな部屋で音をひとつにまとめていきます。すると、セリフと音楽がぶつかってセリフが聞こえない箇所がみつかります。その場合、監督の意図に沿ってセリフを立たせたり音楽を変えたりします。このように映画全体を通して観客がストーリーを追えるように調整します。これをプリ・ミックスといい約1
ヶ月作業を行います。
次に、データを大きなスタジオに移してファイナル・ミックスを行います。このスタジオは、映画館と同じ大きさで、スクリーンも映画館と同じです。その真ん中に大きな調整卓が置いてあり、監督やプロデューサー立ち会いのもと、プリ・ミックスで作った音声を聞きながらさらに直していくのです。大きな劇場で5.1チャンネルを再生すると、小さな部屋では気づかなかった問題点が見えてきます。そして監督やプロデューサーの考えがうまく反映されていない箇所もここで直されていきます。ファイナル・ミックスにはだいたい10日ほど費やします。アメリカでは9時から5時まで働き、週末はオフです。なので、常にスタッフはリラックスして作業を行います。
完成したら、日を変えてメインスタッフで試写します。ここで問題なければ音は完成します。もしここで問題があれば、ファイナル・ミックスに戻って再調整します。
プリ・ミックスの小さな部屋、ファイナル・ミックスを行うスタジオ、最後に試写をする映画館は、どこもTHXという基準に則った仕様になっています。どこの部屋も使われている機材やスクリーン、壁の反響版、映写機などすべて企画統一されています。なので、基本的に大きさこそ違いますが同じ再生環境で行われています。
最近日本の映画館にもTHXマークがつき始めました。これは、映画制作者が制作を行った環境と同じ状態で映画を見ることができる映画館だということです。なので、同じお金を払うなら是非THXマークのついている映画館で映画を見るべきです。アメリカでは、同じ映画でもTHX映画館とそうでない映画館ではお客さんの数がかなり違います。それは、アメリカの映画ファンは音響のことを知っていてきちんと映画館を選んでいるということなのです。
<日本の場合>
さて、がっかりする日本の現状です。ここ数年で日本の録音に関しては飛躍的な進歩がありました。それは長年使ってきた6mmからDAT、そしてデータ録音にメディアがアップグレードされたのです。今から10年ほど前は、皆が6mmのオープンリールテープを使ったアナログ録音を行っていました。それが、現在ではアメリカと同じデータ録音に進化したのです。この機材の急速な進歩はあたりまえなのですが、保守的な邦画制作現場ではある意味画期的な出来事です。
しかし、収録方法は相変わらずブームマイクが主流です。勿論進歩的な録音チームは、ワイヤレスを使ったシステムを導入していますが、徒弟制度でのし上がった古いスタッフはマイク一本での集音という伝統芸に酔っています。
そして、できるだけ現場の音を収録することに命をかけています。よって、セリフと現場の音が同時に録音されてしまうためあとで音の調整ができません。
これら現場で録音した音を、整音し、音声トラックにしていきます。最近ではこのプロセスもコンピュータで行われるようになってきました。しかし、音を調整する部屋はスタジオと呼べるものではなく、昔の駅前映画館といった感じです。音はこもり、スピーカーは何十年も使い続けノイズがでたりするしろものです。
さらに驚くのは、録音技師が整音を行っているのです。日本の音響を司っているのは録音技師なのでした。録音技師は、録音に長けているはずです。しかしサウンドデザインや音の演出にも秀でているのでしょうか?勿論、2つの才能を持つ人もいるでしょう。しかし、日本の映画ではサウンドデザインという職種がないのです。録音さんが、録音した音のなかからOKテイクを揃えて、映像にあわせるのが主な仕事です。そこには映像をさらに魅力的にする魔術師がいないのです。テレビ局主導の映画などは、ここに効果さんを呼んで派手な効果音を足したりします。そして音楽は音楽で独自に作られはめられていきます。
ダビングと呼ばれる作業で、これら音の素材が一緒になります。ただ、数日という短時間の中で監督は、音の調整に試行錯誤することになり、当然満足のいく音作業は望めないのです。
そして映画は完成します。なぜか完成した映画はTHXシアターで全スタッフにお披露目されますが、完成までには、統一した基準となるスタジオを介さないのです。だから、日本映画の音はバラバラですし、クオリティはハリウッドに比べ劣ると言わざるを得ません。でも、この映画業界の古いシステムの中では、スタッフはがんばっています。あり得ないほど少ない予算と時間、そして劣悪な労働環境、古いスタジオの中で、よくも今のレベルまで音を作っているなあと感心します。きっとアメリカ人のスタッフが見たら作業をする前に帰ってしまうでしょう。
そんな悲しい現実が続いていますが、最近邦画の音響制作に光がさし始めてきました。ある音響制作会社が渋谷にTHX基準と同等のスタジオをオープンしました。そしてスタッフもアメリカで勉強してきた若者が集まっています。そしてサウンドデザイナーがいるのです。現在では主にアニメで使われていますが、このスタジオを利用したアニメはどの作品も素晴らしい音に仕上がっています。東宝も重い腰をあげて現在ポストプロダクション・スタジオを建設中です。果たしてアメリカ基準の音響スタジオが完成するのでしょうか?楽しみです。
長くなりましたが、映画の音について皆さんも少しは興味がわいたのではないでしょうか。
映画を音響で見るのも楽しいと思います。今度、映画館に行ったらスピーカーの位置や、そこから出てくる音のエレメントに気をつけてみてください。きっと、録音スタッフやサウンドデザイナーの心が伝わってきます。
アメリカを売った男 [アメリカ映画(00s)]
Breach (2007)
皆さんは、ロバート・ハンセンという人物をご存じですか?
ハンセンは、アメリカFBIのロシア担当エージョントでした。アメリカきってのロシア通であり、アメリカにとって国防のために重要な人物です。
この映画は、ハンセンにまつわる1997年に起こった事件を事実に忠実に追いかけたとても面白いスパイドラマです。
スパイものというと、007シリーズやボーン・シリーズのように派手なアクション映画を想像しますが、実は本物のスパイはもっと地味に活動しています。しかし扱う情報は国家の存亡がかかわる重要なもので、アクション映画よりもっどダイナミックです。
主人公は、ハンセンではなく彼のアシスタントを務めるエリック・オニールという若者です。彼は、情報収集係でしたがいずれはFBIのエージェントになるという夢を持っていました。そんな彼がFBI本部に引っ張られ変人として有名だったハンセンのアシスタントに着任するところからドラマが始まります。
オニールは、変人だと思っていたハンセンがとても良い人柄で、心神深く家族思いであることを知ります。しかし、FBIの内部調査チームは、ハンセンの身辺整理を行っているのです。FBI本部からは、ハンセンのアシスタントとハンセンの身辺調査を行うよう指示されオニールは混乱します 。
物語は、一気に緊迫していきます。実はハンソンには、アメリカの情報をロシア側に売った疑いがあるのです。オニールの知らないところで50人もの捜査チームが組織されFBIは、オニールの裏切りの事実を暴いていきます。オニールも活躍し遂にハンセンはロシア側とコンタクトするところを見つかり捕らえられてしまいます。
アメリカの情報は、相当数ロシア側に流れていてハンソンの情報により数十名のFBI捜査官が命の危機にさらされ少なくとも2名はKGBにより殺されています。ハンソンによる犯罪は、過去のアメリカの歴史で最も大きな反逆罪として当時大きなニュースになったので記憶にある人もいるのではないでしょうか。
映画は、アメリカでは有名な事件をただ追いかけるだけではなく、実際にアシスタントとしてハンソンの逮捕に尽力したオニールの視点で、アメリカ・FBIの問題点、FBI職員の苦悩、宗教など様々な問題を浮き彫りにしながら、面白いストーリーに仕立て上げられています。
原題のBreachとは、情報が漏洩するという意味。制作はアウトロー・プロダクションが行っています。 アウトローは、事件が起こった91年、そして場所をリサーチしてまるでドキュメンタリーのように事実に忠実に映像化しています。撮影はタク・フジモト。「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミや「シックス・センス」のシャマラン監督の作品を撮影した日系人です。
ハンセン役には、私の大好きなクリス・クーパー。彼が見事な演技を披露しています。オニール役には、若手のライアン・フィリップが抜擢、彼はこれから有名になるでしょう。
世界的には40億円の興業成績をあげたのですが、日本では、配給会社のやる気のない宣伝とシャンテ・シネ系での小規模公開だったため、ほとんど誰にも知られず公開が終了しました。
さらに日本では原題表記されておらず、DVDには「Agent Double」という変なタイトルが記載されています。当然DVDも売れませんでした。
ハンソンは、現在、終身刑で刑務所に入っています。オニールはFBIを辞め弁護士として活躍しています。
トランスフォーマー [アメリカ映画(00s)]
Transformers
タラカトミーが80年代に開発したおもちゃ「トランスフォーマー」。このおもちゃはHasbro社によってアメリカで発売され、「トランスフォーマー」というアニメによって爆発的にヒットしました。1986年にはアニメ映画が公開され子供達は興奮して映画を見て玩具を買いました。
そんな、日本初の子供のおもちゃが150億円もかけてハリウッド映画化されるというニュースを聞いたとき、本気でやるのかとほとんどの人が疑問を持ちました。
今回はそんな無謀な企画を成功に導いた人たちのお話です。
30代の若いプロデューサーであるドン・マーフィーは、2000年代初頭「G.I.ジョー」の実写映画化を模索していました。権利を持つHasbro社と一緒に企画を開発していたとき、不運な出来事が起こってしまいます。アメリカ軍がイラク攻撃を開始し、映画への撮影協力ができなくなってしまいました。そんなときHasbro社はマーフィーに「トランスフォーマー」の映画化について提案してきました。マーフィーは「トランスフォーマー」の映画化に関し動き出します。すると「トランスフォーマー」の熱狂的なファンであるトム・デサントが参加したいと手を挙げてきました。彼はブライアン・シンガーと組んで「Xメン」シリーズをヒットさせた人物です。若い二人は、アニメ版や漫画版の「トランスフォーマー」を作ってきたスタッフと何度も会い、ストーリーを考えました。その結果、アニメに登場するロボット達が映画版にも登場すること、映画のトーンはリアリティのあるもので子供っぽい作風にはしないことなど最終的に映画に反映されることになるいくつかの重要な決めごとを作りました。
「トランスフォーマー」の大ファンであったスティーブン・スピルバーグが2004年にプロジェクトに参加します。スピルバーグはエクゼクティブ・プロデューサーというポジションです。要は自身の経営する映画スタジオ・ドリームワークスが資金を拠出するということです。スピルバーグの参加により企画は一気に動き出しました。そして当初、言葉を発しなかったロボット達は話すように変更されました。戦いの場はグランドキャニオン、映画のスケールはどんどん大きくなっていったのです。
2005年6月、スピルバーグはマイケル・ベイに監督の依頼をしました。「アルマゲドン」「バッド・ボーイズ」などで知られるベイは、子供っぽい映画だと言うことでこの依頼を断ります。しかし、スピルバーグと仕事をしたいという思いとHasbro社の熱心なスタッフを見て心を動かされます。それでもベイにとって脚本はとても幼稚だったので、ベイなりに本を書き直すことを条件にこのプロジェクトに参加することにしました。これにより子供っぽい映画になる可能性をはらんだ企画が、ベイの力により見事にハリウッド・アクション大作として制作されようとしていました。
脚本ができあがり、予算を算出すると、とてつもない金額となりました。そこでベイは、報酬の30%をカットし、その分を制作費に回しました。映画の見所はトラックや車がトランスフォームし巨大ロボットになるシークエンスです。これにはCGIが使われることになりました。2005年4月からソフトウェアの開発、アニマティクスがスタートしていました。新しい映像をクリエイトするのはジョージ・ルーカスが率いるILM。残りをデジタル・ドメインが担当しました。6ヶ月かけてILMが作り上げた変形シーンは、T2のリキッドメタルのようでした。ベイはこれを好きになれず、もっとガチガチと鉄のブロックが変形するようなイメージで作り直して欲しいと依頼します。日本人を含むチームがソフトウェアを開発し、ベイの期待に応えます。ロボットの数が増え、変形に要するアニメーターやスタッフの増員でILMは規模を大きくして作業に対応しました。
撮影はロサンゼルス周辺で進められました。撮影期間は83日。オーストラリア、カナダなどにも出向き撮影を行い撮影は順調に進みました。皮肉なことにストーリーには軍隊が大きく関与します。結局、アメリカ軍がいくつかの基地を撮影に貸してくれました。撮影は、ロボットがいないというだけで爆発やアクションなどはほぼ実際に撮影されました。週末のロサンゼルスダウンタウンは、ブロックが封鎖され激しい爆破シーンが何度も収録されました。沢山のカメラ、沢山のスタッフキャストを動かし、事故の内容に撮影を終了するという監督本来の指揮統率能力を持っている映画監督が現在何人いるでしょうか?スティーブン・スピルバーグ、ジェームス・キャメロン、トニー・スコットくらいではないでしょうか。マイケル・ベイはその中のひとりです。ある時は頑固に、ある時は強力なリーダーシップを示し撮影する姿は、この映画の成功を信じているとしか映らなかったでしょう。
映画の宣伝は、派手に行われました。登場するロボット達がアニメ版と一緒であること、声優までもが同じであることから、子供の頃見ていた世代に向けてのパブリシティが始まりました。同時に、映画版のおもちゃが大量に製造され、子供達の人気となりました。マイケル・ベイは、パナソニック、バーガーキング、ペプシのタイアップCMを制作します。CM業界出身のベイならではのかっこいいCMです。
驚いたことに試写を見た映画評論家の評価がおおむね好評だったことです。映画は、ドリームワークスとパラマウント・ピクチャーズの共同配給で世界公開されました。子供っぽさを排除し大人が見ても満足できるストーリー、ILM主導の素晴らしいCGI、マイケル・ベイの演出、沢山のスタッフの努力により映画は大ヒットします。2007年の世界で一番稼いだ映画となり、その金額は700億円を超えました。
ベイは、この映画で約10億円の成功報酬を受け取ることになりました。撮影時に映画のクオリティを上げるため自分の報酬を30%カットしましたが、それをはるかに上回る収入を得たのです。ベイは、この収入を会社の買収に投資します。CGIを手伝ってきたデジタル・ドメイン社を買収してしまったのです。このニュースに、映画業界は驚きました。ベイは、映画産業に投資するような人物ではないと思われていたのですが、自分の利益を映画業界の発展のために投資してしまったこと、そしてその投資先が、ジェームス・キャメロンがかつて社長を務めた「ターミネーター」「タイタニック」を作り上げたデジタル・ドメインだということにです。
デジタル・ドメインは、すぐにベイから新しい仕事の依頼を受けます。それは「トランスフォーマー」の続編制作です。続編はさらに規模が大きくなります。そのCGI開発から制作を引き受けるのです。
そして完成したのが「トランスフォーマー リベンジ」です。内容は、1に比べると幼稚になっていますが、デジタル・ドメインによるCGIはとても素晴らしい出来映えでした。
現在、ベイは様々なプロジェクトで活躍しています。映画のプロデューサー、監督、俳優、CMディレクター、会社経営などです。映画監督としては「トランスフォーマー」の第3作目とかつての盟友ジェリー・ブラッカイマーとの新作が控えています。デジタル・ドメインは、この先どうなるのでしょう?「トランスフォーマー」で会社の価値を上げ会社を売って利益を上げる投資物件として終わるのか?ルーカスフィルムのように、大切に育てていくのか?今後のベイとデジタル・ドメインの動向に注目です。
企画当初からがんばっていたマーフィーとデサントは、「トランスフォーマー リベンジ」でもプロデューサーとして活躍しました。スピルバーグは無報酬で、「トランスフォーマー リベンジ」のエクゼクティブ・プロデューサーを務めました。
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日本映画の映像はなぜ汚いか? [映画技術]
今回は、映画技術についてのお話です。内容は難しいので読むのはやめようと思った方も、是非おつきあい下さい(笑)。
日本映画の画質が汚いと思っている人が結構います。何故邦画はハリウッド映画のように輝いて見えないのかを疑問に思う方もおおいでしょう。この不思議な疑問について、できるだけわかりやすく説明しようと思います。
ちょっと過激なタイトルを付けましたが、結論から言うと実は邦画の映像が汚いわけではありません。
映画の画質は、様々な要因によって決まるのですが、日本のカメラマン、監督、制作チームは、自分たちで満足のいく映像を作り出しているのです。
それなのにおおくの人が邦画の画質が悪いと感じるのは何故なのでしょう?
その不思議を解明するのが今回のテーマです。
まずは、映画が撮影されてからどのような過程を進んで映画になるのかを簡単に説明します。
<撮影>
ほとんどの映画は35mmフィルムで撮影されます。フィルムで撮影するメリットは、ビデオやデジタルカメラに比べ遙かにおおくのデータを収録することができることです。ハリウッドのあるポストプロダクション会社のデータによると、35mmフィルムのデータ量は6Kといわれています。HDテレビの画質は、約2K、最新の時たるカメラが2K~4K程度です。よって今現在、撮影で一番データ量が優れているのは35mmフィルムということになります。ハリウッド映画やCMなどが撮影に35mmフィルムを使うのはこのような理由があるからなのです。
現在、スチルカメラ市場では、デジタル化が進み、35mmフィルムの撮影は激減しています。ポスターや雑誌、写真集の大きさであればデジタルカメラでも十分な画質が得られます。しかし、大スクリーンに投影する映画(動画)となると、35mmフィルムの活躍の場はまだまだあるわけです。
<現像>
フィルムは、あたりまえですが現像しないといけません。撮影済みのフィルム(ネガ)を現像して映像が見える状態のフィルムにします。これは、日本ではIMAGICAやSony PCLなどの現像所が行います。ハリウッドだとテクニカラーとかデラックスが大手として有名です。
<編集>
撮影した映像を編集するのには、フィルムを切って貼るという作業を長年行ってきました。現在でもこの作業を行っています。しかし、マスターフィルムを切ったり貼ったりするのはフィルムを傷つける可能性があるので、最近はデジタル化の波が押し寄せています。
撮影されたフィルムは、一度1K程度の軽いデジタルデータにスキャンされ、それをコンピュータに取り込んで編集します。編集ソフトはAVIDやAppleのファイナルカット・プロです。映画の編集が確定した時点で、コンピュータ上の映像通りにネガフィルムを手作業でつなぎ合わせるのです。
<劇場上映>
編集が終わり、完成したネガフィルムは、色が反転しています。なので、それをポジフィルムにする作業があります。このポジフィルムが0号プリントと呼ばれます。スタッフは、劇場で0号を上映して見て、色の問題を議論します。そして、このカットはもう少し明るく、とか、ここはもっと青くなど指示します。それを受けて、現像所は現像をやり直し、色を整えます。この作業をカラータイミングといいます。色が正しくなったフィルムを初号プリントと呼び、これを大量に複製して全国の劇場に納品し、各劇場で上映が行われます。
<ビデオ>
劇場で上映されるフィルムは1秒24コマです。テレビは1秒30コマです。よって、テレビやDVDで映画を見られるようにするためには、テレシネという変換作業が行われます。マスターモニターを見ながら監督とカメラマンが、自分の意図した画質になるよう丁寧に作業を進めます。それが完成するとHDビデオ原板が完成し、テレビで放送されたり、DVDやBDとなって家庭で映画が見られるわけです。
このように沢山の行程を得て、映画ができあがっていくのです。この全ての過程で画質が変化する可能性があります。さらに何度かの現像行程では、フィルムの世代が落ちていきます。これはアナログの宿命です。なのでフィルムの管理や現像行程の繊細さで映像は大きく左右されていきます。
では、それぞれの行程での画質に関わる問題についてお話しましょう。
<撮影>
ハリウッド映画は、撮影に大きなセットを組んだり大規模なロケーションを敢行します。その際は、巨大な照明を用意して撮影場所を照らします。フィルムは光に反応するので、光があればあるほど映像は綺麗に映ります。そのため撮影監督制度が確立されていて、カメラマンがカメラとレンズ、照明を指揮して自分の作りたい映像を撮影していきます。
日本ではどうでしょう。まず予算の関係で、ハリウッドほど沢山の照明を用意できないことがおおいです。よってフィルムに収録される映像には撮影時点でハリウッドと差が出ています。
しかし、最近のフィルムは技術革新が進み、高感度化されています。なので、かつてのように照明で映像の差が出にくくなりました。クリント・イーストウッドなどはほとんどノー・ライトで撮影していますが、毎作品素晴らしい映像を見せてくれます。実は、照明のあて方やレンズの使い方などでも画質におおきな差が出ることがわかっています。この辺りはカメラマンや照明技師のスキルの差になってしまうのです。
あまり使いたくない例ですが、時代劇と「ラスト・サムライ」を見比べると、同じ日本を描いているのに映像のクオリティがかなり違うのに気がつくでしょう。これは、様々な行程が関係してくるのは間違いありませんが、撮影時のカメラマンと照明技師のセンスの違いによることが大きいのです。「ラスト・サムライ」は、日本でも撮影しているけど、海外でも撮影しているから色が違うんだという方がいます。では、邦画と「ロスト・イン・トランスレーション」を比較してください。全編東京で撮影したハリウッド映画(しかも、ほとんどキーライトのみ)の「ロスト・イン・トランスレーション」は、とても美しく感動します。それに引き替え邦画は、あそこまで美しい映像はあまりありません。
<現像>
ハリウッドのスタッフも認めていますが、日本の現像はとても優秀で綺麗に現像してくれるそうです。ただ、カメラマンの要求は聞き入れてくれないようで、技術者として、自分たちの優れていると思いこんだ現像を行ってしまうそうです。これは現像という作業だけでなくおおくの日本産業に言えることですが、自分たちの技術力に固執するあまり、マーケット全体のニーズを見失う傾向があるということの一例です。
なので邦画は、どの映画もそれほど差がなく現像されてしまいます。これにより邦画全体の画一化が起こっています。ハリウッドでは、カメラマンの意図通り現像液の濃度が調合され現像されます。日本で撮影されたハリウッド映画のおおくは、日本での現像を避けて未現像のままフィルムを抱えアメリカに持ち帰り、アメリカで現像が行われています。これは、アメリカの現像所のほうがカメラマンの自由な発想に対応してくれるからだそうです。
<編集>
ハリウッドでは、編集の技術が発展しています。デジタル・インターミディエート(DI)という技術です。撮影済みのフィルムを現像したら、すぐに6Kでデジタルデータに変換します。35mmフィルムのデータを全てデジタルに置き換えるわけです。その重いデータを4Kにして編集作業を行い、デジタルで色補正やCG合成を行います。すると4Kのデジタルマスターが完成します。このデジタルマスターをフィルムに戻すと4K解像度の劇場用フィルムになるのです。
この作業の最大のメリットは、フィルムで撮影したデータをコンピュータ上で自由にいじれることです。現像ですらコンピュータで設定変更できるのです。これによりとても美しい映像を作り出すことに成功しています。さらにネガフィルムを手で切ったり貼ったりする作業がなくなりました。映画の完成版はデジタルで完成し、それをフィルムにする(レーザーライターでフィルムに書き込みます)、世代が落ちません。
<劇場上映>
日本では、初号プリントをコピーして劇場に配送します。字幕作業が入るとさらに1世代画質が落ちます。ハリウッド映画は、各国語字幕版のデジタルマスターを作り、それをフィルムにします。なので「ハリー・ポッター」の日本語字幕版のマスターは、もっとも画質の良い状態のデータをフィルムにして日本に送られてくるのです。
<ビデオ>
DIの映画は、デジタルマスターがそのままビデオマスターになります。なので、とても綺麗です。デジタルマスターの最終調整はプロデューサーが行います。お客さんの方向を向いたプロデューサーがきれいなマスターを作るのです。
日本では、監督とカメラマンが自分の好きな画質に調整してビデオマスターが完成します。ビデオマスターに使うフィルムはローコンポジといわれるフィルムです。このフィルムには撮影時のデータが残っていないので、色の補正はあまりできません。ハリウッド映画の場合、DIでなかったら、マスターフィルムを使ってビデオマスターの制作作業をプロデューサーが行います。日本でもマスターフィルムを使ってビデオマスターを作ればいいのですが、手間がかかるという理由でローコンポジを使うのです。
ハリウッドのビデオメーカーは、ローコンポジを使ったビデオマスター素材を受け付けません。理由は画質が悪いからです。なのに、日本のDVDのパッケージを見ると「ローコンポジからのテレシネを敢行!」など自慢していたりします。おそらく日本のビデオメーカーのスタッフも、フィルムの知識がないのでしょう。とても恥ずかしいです。
だんだん見えてきたと思いますが、実はハリウッド映画と邦画の画質の違いは、技術やお金が大きな要因ではないのです。そこに関わる人の考え方の違い、もっというとセンスの違いなのです。使われている機材はハリウッドも日本もそれほど変わりません。ただ各工程で、映像に対する感覚や執着の仕方が違うだけなのです。
これは、実は深刻な問題です。日本で映画を制作しているスタッフは、自分達の作った映画の画質に満足しこれでいいと思っています。一般の人から何故邦画の画質が悪いのかを聞かれても誰も明確な答えが出せないのです。
<今後の課題>
まずは、日本の映画スタッフは世界のスタンダードと世界の技術を知るべきです。一時、SonyやPanasonicが映画マーケットに進出しましたが、どれもうまくいきませんでした。技術会社も同様です。結局日本的なテレビ文化をベースにハードもソフトも独自進化を遂げてしまいました。これは携帯電話と同じです。世界から見たら日本の映像産業はガラパゴス化しているのです。
携帯電話と違うのは、我々は日本以外の映画を見ることができるという点です。島の外と中はなんか違うぞと気づける点なのです。携帯電話も今までは海外からのメーカーは排除し、我々日本人は海外の携帯マーケットがどう動いているのかなかなか知ることができませんでした。しかしiPhoneなど海外の優れた形態が入ってきてやっと自分たちのガラパゴス化に気づいて現在大きな方向転換を行っています。これまでの形態産業における損失は計りしれません。
同様に映像産業は、現在岐路に立たされています。今までのようにテレビ文化に根付いた独自路線で今後も進むのか、それとも海外の産業と同じようにスタンダード化していくのかを模索しなければいけない局面になってきました。
今後は、邦画でも日本の会社を使わずハリウッドでポストプロダクションを行うプロデューサーが出てくるかもしれません。あるいは日本の映画産業自体が大変革を起こし、ハリウッドスタイルを導入するかもしれません。どうなるかは誰もわかりませんが、私としては、少しでもお客さんが満足する画質を追求していってほしいなあと思います。
チャーリー・ウィルソンズ・ウォー [アメリカ映画(00s)]
Charlie Wilson's War(2007)
皆さんは、チャールズ・ネスビット・ウィルソンという人物をご存じですか?
通称チャーリー・ウィルソンは、アメリカの政治家ですが、ニュースに取り上げられることも少なくアメリカ国内でもそれほど知られていない地味な存在でした。
そんなチャーリー・ウィルソンが、実は陰で歴史に残る大仕事をしていたのです。ジョージ・クライルという作家が書いたノンフィクション小説が2003年にアメリカで発表され、一躍時の人となりました。その小説をベースに作られた映画が、今回紹介する「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」です。
民主党の下院議員としてテキサス州から出てきたチャーリー・ウィルソンは、3期を務めたのですが、特に目立った活躍はせず、議員としての経歴も特になにもありませんでした。事務所には美人ばかりを揃え、典型的なテキサスの田舎者議員の印象でした。そんな彼は、地元の有力者からの依頼でパキスタンを訪れます。1980年代後半は、旧ソ連がアフガニスタンに侵攻し、アフガニスタンで生活する普通の住人達を虐殺していました。それを逃れるため多数のアフガニスタン人は、国から逃げ出したのです。彼ら難民はパキスタンにも押し寄せていました。
チャーリー・ウィルソンは、難民の悲劇を目の当たりにして直ぐに活動を開始します。表では、アメリカとソ連は闘うことはしません。アメリカは裏で資金を武器に変え、アフガニスタン人たちに供給しようと考えたのです。チャーリー・ウィルソンは、CIAと協力し、議会を説得、資金を拠出します。そして、本来ならば敵対国の関係にあるイスラエル、エジプト、パキスタンを協力させ、武器をアフガニスタンに送るのです。
この裏での活動は当時全く知られていませんでした。もし発覚していたらアメリカとソ連の戦争に発展したかもしれません。この陰の活動は功を奏し、ソ連はアフガニスタンから撤退、その後、ソ連は崩壊してしまうのは皆さんもご存じのはずです。
こんな大それた政治活動を行うチャーリー・ウィルソンは、どんな人物なのでしょう。いくつかの文献によるとやはりテキサスの田舎者のイメージなのです。そんな彼がひとりで歴史を変える程の仕事をしたのでしょうか?実は彼の周りには沢山のブレインがいました。ブレイン達がチャーリーを支え、歴史に隠されたミッションを遂行したのです。
映画は、この実際にあった物語を描いています。映画でチャーリー・ウィルソンを演じるのはトム・ハンクス。彼は実物を研究して見事に田舎者を表現しています。周りの参謀にはフィリップ・シーモア・ホフマンやジュリア・ロバーツが参加、映画はとても素晴らしい作品に仕上がっています。
映画の最後にチャーリー・ウィルソンが実際に語った文章が出てきます。実はこの映画のメッセージはここに込められていると思いました。何故、この映画が作られたのか、それは歴史的に大きな意義があったのです。このメッセージは皆さん、映画をご覧になって実感してください。今、この時代に生きる者として、心にガツンとくるお話です。
映画は、アメリカではヒットし原作や実際に起こった事実を知らない米国国民にインパクトを与えました。そして第65回ゴールデン・グローブ賞では5部門、第80回アカデミー賞ではフィリップ・シーモア・ホフマンが助演男優賞にノミネートされました。
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J.J. エイブラムス [スタッフ&キャスト]
J.J. Abrams
今回は、現在、最も注目されている映像業界の若手、J.J.エイブラムスを紹介します。
J.J. エイブラムスは、エミー賞を受賞したこともある有名なテレビプロデューサーの息子としてニューヨークで生まれました。その後父親の転勤でロサンゼルスに引っ越し、子供時代を過ごします。学生時代から友達と自主映画を制作し、早くから企画の才能を開花します。
J.J.が13才の時、ニューヨークから引っ越してきていたマット・リーブスと仲良くなります。二人は数人の友達と共に映画制作のまねごとを始めました。
J.J.は、サラ・ローレンス大学に進学します。彼は大学で友人といくつかの映画企画を作りました。そのうちの1つがタッチストーン・ピクチャーズの目にとまり、企画はスタジオに売れてしまうのでした。この企画は見事映画化されます。タイトルは"Taking Care of Business" (1990)。邦題は「ファイロファックス/トラブル手帳で大逆転」。日本ではヒットさせる気が全くない宣伝で静かに公開は終了しました。しかし、アメリカではJ.J.の才能をきちんと評価していました。続いて1991年にハリソン・フォード主演の "Regarding Henry" (邦題:心の旅)で脚本を担当、1992年にはメル・ギブソン主演の "Forever Young" (邦題:フォーエヴァー・ヤング/時を越えた告白)では、脚本に加えエクゼクティブ・プロデューサーのクレジットも手にします。
映画界で脚本家として努力している時期、彼はテレビ界でもステップアップしていました。学生時代の友達であるマトッ・リーブスと作り上げたニューヨーク(大学名は違いますが、明らかにニューヨーク大学)の学生を描いた "Felicity" (邦題:フェリシティの青春)というテレビシリーズのパイロット版を制作します。ドラマは、テレビ局に認められ放送されます。そして大ヒットしました。
彼は、映画業界で徐々に力を付け、テレビでは一気にヒットプロデューサーとして名前を知られるようになりました。
テレビ界と映画界の両方でオファーがかかるようになった30代の映像オタクには、映像業界から様々な誘惑がありましたが、「アルマゲドン」の脚本を手伝うくらいで自分の企画に集中します。「フェリシティの青春」で4年のシリーズに終止符を打つと、新作ドラマ「エイリアス」を手がけます。「エイリアス」は、エミー賞やゴールデン・グローブ賞などを受賞、テレビ界の中心人物として認められました。「エイリアス」は、シーズン5まで続きました。そして直ぐに次のドラマに着手します。今度はSF映画です。
そんな時、「ミッション・インポッシブル」シリーズの新作に行き詰まっていたトム・クルーズからオファーが来ます。是非パート3の脚本と監督をお願いしたい、と。J.J.は、悩んだ末、この仕事を引き受けます。新作ドラマ「LOST」と「MI3」の掛け持ちです。
でもこれを見事にこなし、「MI3」は大ヒット、「LOST」は大人気で高視聴率をキープしました。
さらにもうひとつ作ることになったテレビドラマ「Six Degrees」は視聴率低迷により番組途中で終了しています。
ヒットプロデューサー、ヒット脚本家、そしてヒット映画監督というタイトルを手にしたJ.J.エイブラムス、さらなる大作を手がけると思っていたら、アッと驚く映画を制作しました。それが「クローバーフィールド」です。子供の頃からの友人マット・リーブスと共に新しい映像制作技術を模索し完成させたのです。いままでとは全く異なるカラーの作品ですが、実は彼のキャリアの中で作る必要があったのです(詳しくは「クローバーフィールド」の回を参照)。
そして、遂にJ.J.は、大作に挑みます。それは「スタートレック」かつての古くさいシリーズをリコンストラクションするという大胆な企画です。今までのシリーズには世界中におおくの熱狂的なファン、トレッキーが存在します。パラマウント・ピクチャーズは、過去のイメージを引きずることなく新しい「スタートレック」を作って欲しいとオファーしてきました。見たことはあるけれど、それほど熱狂的ではなかったJJは、キャストを一新し、「スタートレック」のオリジナルをリメイクすることにしました。撮影前からネットで流された予告編は傑作です。溶接工が鉄の壁を溶接しています。カメラは、だんだん引いていきます。すると、その壁はエンタープライズ号の壁なのです。そしてエンタープライズ号の全景が見えたところで、あの「スタートレック」のメインテーマが静かに流れるのです。
このプロデューサー感覚にたけた予告にファンは熱狂しました。
私は、偶然「スタートレック」の撮影スタジオに行く機会があったのですが、現場は淡々と作業が進んでいました。キャストは皆無名です。制作費を抑え、「クローバーフィールド」で学んだ新しいCG技術を盛り込んでいます。
「スタートレック」は、アメリカで公開され、空前の大ヒットとなっています。
さて、まだ43才のJ.J.。今後、どんな作品を仕掛けてくるのかとても楽しみです。
第81回アカデミー賞 授賞式 3/3 [映画賞・映画祭]
The 81st Annual Academy Awards
1回、2回に続き、81回を迎えたアカデミー賞の3回目レポートです。いよいよ主要賞の発表です。受賞作だけにフォーカスすることなく、アカデミー賞の本当の面白さ、素晴らしさが伝わると嬉しいです。
ヒュー・ジャックマンの登場です。ここからは映画音楽に関わる賞の発表となります。指揮者マイケル・ジアッキーノを紹介すると音楽が始まりました。
この音楽は、実際にオーケストラによって舞台上で演奏されました。印象的なメロディーの『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』。静かな“Defiance”。心に訴えかける 『ミルク』は、Danny Elfmanによる作曲です。『ウォーリー』は、ピクサー映画らしい音楽でした。『スラムドッグ$ミリオネア』はインドっぽい音楽です。
<作曲賞:Original Score>
アリシア・キーズとザック・エフロンの登場です。音楽賞はこの二人がプレゼンターです。ノミネートは、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のアレクサンドル・デプラ、“Defiance”のジェームス・ニュートン・ハワード、 『ミルク』のダニー・エルフマン、『スラムドッグ$ミリオネア』のA.R. ラーマン、『ウォーリー』のトーマス・ニューマンです。
受賞は、『スラムドッグ$ミリオネア』のA.R. ラーマンでした。これも、作品に対する賞です。音楽的には他のノミネート者のほうがクオリティは上です。
●●●歌曲賞メドレー●●●
歌曲賞にノミネートされている音楽が舞台上で披露されました。今年は3曲で、そのうち2曲が『スラムドッグ$ミリオネア』からのものだったのでインド色が強い華やかなショーとなりました。
<歌曲賞:Original Song>
引き続きアリシア・キーズとザック・エフロンが発表を続けます。
ノミネートは、“Down to Earth”(『ウォーリー』)、“Jai Ho”(『スラムドッグ$ミリオネア』) 、“O Saya”(『スラムドッグ$ミリオネア』) です。
受賞は、“Jai Ho”でした。マサラ・ムービーっぽい音楽がアカデミー賞を受賞するとは、面白い時代になりました。
<外国語映画賞:Foreign Language Film of the year>
プレゼンターは、リーアム・ニーソンと『スラムドッグ$ミリオネア』のフリーダ・ピントです。イギリス人とインド人が登場し、第一声は「ボン・ソワー」(笑)。そう、外国語映画賞にふさわしい二人なのです。
今年は、ドイツ語、フランス語、ヘブライ語、日本語、オーストリア語の映画がノミネートされました。どれもアメリカではなかなか作られないタイプの映画です。“The Baader Meinhof Complex”(ドイツ)は、テロリストがどうしてできあがっていくのかを描く作品です。日本では「テロリスト」という"悪"というくくりで話される彼らも、実は人間であることを知らされる素晴らしい映画です。日本での公開を強く望みます。“The Class”(フランス)は、学校の教師が様々な文化からやってきた生徒の多様性に苦しめられる映画です。排他的な日本では、このような多様性のある学校がなかなか存在しません。これらからの時代を見事に描いた作品です。下馬評ではこの作品が受賞するという話題でした。『おくりびと』は、日本の葬儀を取り上げました。この作品の英語タイトルが素晴らしいです" Departures"。タイトルだけで投票した人もいるのではないでしょうか。“Revanche”(オーストリア)は、強盗事件がきっかけで起こる報復事件を描いた作品です。『バシールとワルツを』(イスラエル)は、イスラエルがパレスチナで行った軍事作戦の酷さをイスラエル人が描いた作品です。授賞式までは、この作品が受賞すると思われていました。
受賞は『おくりびと』でした。外国語映画賞は、非常に限られた人々により投票されます。今年は“The Class”と『バシールとワルツを』の票が割れ、結果3番手に付けていた『おくりびと』が受賞したわけです。日本人としては嬉しい誤算でした。
●●●追悼●●●
クイーン・ラティファの登場です。彼女は「I'll Be Seeing You」を唄います。今年亡くなられた映画人の映像がスクリーンに映し出されました。Cyd Charisse、Bernie Mac、Bud Stone(スタジオ・エクゼクティブ)、Ollie Johnston(アニメーター)、Van Johnson、J. Paul Huntsman(音響)、Michael Crichton(プロデューサー、脚本、原作、監督、「ジュラシック・パーク」の原作者としても有名)、Nina Foch、Pat Hingle、Harold Pinter(作家)、Charles H. Joffe(「アニー・ホール」などのプロデューサー)、市川昆(写真が違っていたのが残念です)、Charles H. Schneer(SF名作映画のプロデューサー)、Abby Mann(脚本家)、Roy Schider(名優がまたひとり亡くなりました)、David Watkin(撮影監督)、Robert Mulligan(監督)、Evelyn Keyes、Richard Widmark、Claude Berri(監督)、Maila Nurmi(ヴァンパイラ、あー!)、Isaac Hayes、Leonard Rosenman(作曲家)、Ricardo Montalban、Manny Farber(評論家)、Robert Doqui、Jules Dassin(監督)、Paul Scofield、John Michael Hayes(「裏窓」などの脚本家)、Warren Cowan(パブリシスト)、Joseph M. Caracciolo(プロデューサー)、Stan Winston(特殊効果、彼がいなかったら今のハリウッド映画はなかったでしょう「エイリアン」「ターミネーター」どれも彼がいたからできたのです)、Ned Tanen(プロデューサー)、James Whitmore、Charlton Heston(「ベン・ハー」「猿の惑星」最後は全米ライフル協会会長と常に話題の人でした)、Anthony Minghella(監督)、Sydney Pollack(監督、プロデューサー、俳優、ハリウッド映画を築いた功労者)、Paul Newman(アメリカン・ニューシネマの牽引者、素晴らしい俳優、そして父親でした)。
司会のヒュー・ジャックマンの登場です。「アメリカでは、4年間務めた大統領が任期を終えました。そしてアカデミーでも4年間会長を務めたシド・ガニスが任期を満了します。」シド・ガニスが客席で立ち上がり挨拶をしました。
<監督賞:Best Director>
プレゼンターはリース・ウィザー・スプーンです。「監督は、映画のCEOでもあり、現場ではセラピストにもなります。時にはトレーラーに閉じこもった俳優を説得する交渉人にもなります。私のことではありません。ベン・スティラーのことです(笑)。監督は映画を制作する上であるベクトルを示します。大きい意味で言うと作品のテイストを決めるのです。しかし目の前には解決しなければならない問題が山積しています。これらをひとつひとつこなしながら遠い先にある完成作品を目指すのです。とても大変な作業です。脚本に書かれていることを具現化し、カメラマンにはどんな映像がほしいか適切に説明します。全ての俳優が役の内面に入れるように尽力します。きちんと物語が伝えられるよう、全てのシーンをつなぎ合わせます。」
ノミネートは、ダニー・ボイル(『スラムドッグ$ミリオネア』)、デヴィッド・フィンチャー(『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)、ガス・ヴァン・サント(『ミルク』)、ロン・ハワード(『フロスト×ニクソン』)、スティーヴン・ダルドリー(『愛を読むひと』)。誰が受賞しても納得のいくノミネートです。
受賞は、『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイルでした。アメリカでは公開されない可能性が高かったこの企画を見事に映画化した彼の手腕は受賞に十分匹敵します。ボイルのスピーチは長く、沢山の関係者に感謝の意を述べていました。
<主演女優賞:An Actress in a Leading Role>
過去の主演女優賞の受賞場面が一気に上映されました。どの年も印象的でその時を思い出させられました。
今年の恒例、スクリーンが5つに別れ、過去に主演女優賞を受賞した5人の女優が受賞したときの発表シーンがスチルで上映されました。「受賞は、ソフィア・ローレン、シャーリー・マクレーン、ハリー・ベリー、ニコール・コッドマン、マリオン・コティアール!」スクリーンが上がると、それぞれの写真から5人のアカデミー女優が登場です!会場は当然スタンディング・オベーションとなりました。なんと豪華なんでしょう。凄すぎます。目の前にハリウッド映画の歴史が佇んでいるのです。スタンディング・オベーションは鳴りやみませんでした。
この5人が5人のノミネートを発表していきます:
シャーリー・マクレーンがアン・ハサウェイについて語り始めます。は差ウェイは目に涙を溜め、手を胸に当て聞き入っていました。「あなたは若い女優さんのお手本だと思います。明るさだけでなく自分の闇の部分を表に出す勇気がありますね。候補になったのは初めてですが、これから何度も名前があがるでしょう。貴方はとても素敵な声を持っているんですね。歌い続けてください。」ハサウェイは投げキッスで返しました。
マリオン・コティアールは、ケイト・ウィンスレットを紹介しました。「貴方は新しい作品で役の幅を広げました。『愛を読むひと』では情熱、愛情、奥深さを演じ分け、愛を経験すると変化する感情を見事に演じていました。貴方は、インスピレーションを与え素晴らしい女優です。」
ハリー・ベリーは、メリッサ・レオを紹介しました。「私は幸運にもインディー映画に出演して女優としての成功の道を歩むことが出来ました。今年、私と同じ事がまた起こりました。メリッサ・レオです。」
ソフィア・ローレンが、メリル・ストリープについて語り始めます。「この人についてはどこから話し始めればいいのか分かりません。名前を聞くだけで素晴らしい女優であることは誰もが分かります。ですからここでお伝えしましょう・メリル・ストリープ。今回は15回目のノミネーションです。」
ニコール・コッドマンは、アンジェリーナ・ジョリーです。「『チェンジリング』で、ジョリーは我々に母親の愛の深さを教えてくれました。」
豪華です。この部分だけで十分視聴率がとれるでしょう。こういう長い年月をかけて築いてきた映画文化があるのが羨ましいです。
受賞は、ケイト・ウィンスレット(『愛を読むひと』)でした。スタンディング・オベーションです。ウィンスレットは舞台で5人の受賞者と抱き合いました。「スピーチを用意していないというとウソになります。家でシャンプーボトルを持ち練習しました。今、それが本物になりました。」とオスカー像を握りしめるウィンスレットは、とても美しかったです。
<主演男優賞:An Actor in a Leading Role>
過去の主演男優賞の受賞場面が一気に上映されました。この映像も贅沢なものです。出てくる俳優は誰もが知っているわけで、彼らの笑顔が次々に出てくるのです。そして5人の受賞者の登場です。「プリーズ・ウェルカム!ロバート・デ・ニーロ、ベン・キングスレー、アンソニー・ホプキンス、エイドリアン・ブロディ、マイケル・ダグラス」よくぞ、ここまで名俳優を集めたものです。アカデミーは凄いですね。会場は勿論スタンディング・オベーションです。
マイケル・ダグラスはフランク・ランジェラ(『フロスト×ニクソン』)を紹介しました。「ランジェラは、新しいアプローチでニクソンを演じました。映画が始まると実際のニクソンとの比較をすることを忘れてしまいます。落ちぶれた指導者がなんとか自分を歴史に残そうともがく姿に引き込まれていくのです。貴方の演技は他に類のないものです。敬意を表したいと思います。」
ロバート・デ・ニーロが続きます。「ショーン・ペンの成功の鍵は何でしょう?貴方は真の演技派です。そしてプライベートでも彼は献身的です。人権問題、パパラッチ問題でも活躍しています(笑)。これが私の友、ション・ペンです。」
エイドリアン・ブロディは、リチャード・ジェンキンスを紹介します。「私はグーグルで自分の名前を検索するのは好きではないのですが、リチャード・ジェンキンスを検索すると過去20年間に60本の映画に出演していたことがわかります。“The Visitor”では、経験に裏打ちされた見事な演技で作品に魅力を与えています。」
アンソニー・ホプキンスは語り出します。「みんなの好きなブラッド・ピット。彼は『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』で2/3が過ぎた頃登場します。そこまでいつもと違う演技で観客を魅了してくれます。ノミネートおめでとう!」
ベン・キングスレーは、ミッキー・ロークを紹介しました。「『ザ・レスラー』で、主人公は、人生における第2回目のチャンスが与えられます。人はこの話に魅了されます。それはミッキー・ロークのおかげです。帰ってきたチャンピオンです。」
受賞は、ショーン・ペンでした。スタンディング・オベーションです。誰も着席せずペンに拍手を送りました。「共産主義の同性愛者です(笑)。」勿論違いますが、こういうユーモアで応えるのがペン流なのでしょう。「私を支えてくれた人、サト・マツザワ、ブライアン・ベリー・・・」授賞式後、アメリカのネット上ではマツザワとは誰なのか話題騒然となりました。どのサイトでのこの話題持ちきりでした。結果マツザワさんは、ショーン・ペンのマネージャーであることがわかりました。
最後に「同性愛者結婚に反対した人たちは反省すべきです。全ての人が平等な権利を持っているはずです。」と堂々と言ったショーン・ペンに拍手です。
もうひとつ「アメリカで、エレガントな男を大統領に選んだことを誇りに思っています。」という歴史に残る名スピーチをしました。
<作品賞・Best Motion Picture of the year>
プレゼンターはスティーブン・スピルバーグです。「今年のノミネート作品を振り返りながら過去の作品賞作品を見ていきましょう。」と始まった映像は、今年の映像集の中で最も秀逸でした。普通だったら使用するための許諾すら降りない名作品から名シーンを切り出し、今年のノミネート作品に重ね合わせていく編集は、非常に巧みでセンスがありました。この映像集は2度と公に出てこない貴重なものです。この映像を見ることができてとても幸せでした。
ノミネートは:
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 『フロスト×ニクソン』 『ミルク』 『愛を読むひと』 『スラムドッグ$ミリオネア』
受賞は、『スラムドッグ$ミリオネア』でした。
いかがでしたか?終わってみると『スラムドッグ$ミリオネア』の圧勝でしたが、実はノミネート作品どれもが第一級作品であること、必ずしも一番優れた作品やスタッフが受賞するものではないことを理解できたと思います。是非、受賞作だけでなく、ノミネートされた作品を見てください。自分の映画を見る目が肥えるだけでなく、様々なことを感じるはずです。
<関連リンク>
第81回アカデミー賞授賞式 1/3
第81回アカデミー賞授賞式 2/3
第80回アカデミー賞授賞式 3/3
第80回アカデミー賞授賞式 2/3
第80回アカデミー賞授賞式 1/3
第79回アカデミー賞授賞式 2/2
第79回アカデミー賞授賞式 1/2
第81回アカデミー賞 授賞式 2/3 [映画賞・映画祭]
The 81st Annual Academy Awards
前回に続き、81回を迎えたアカデミー賞のレポートです。受賞作だけにフォーカスすることなく、アカデミー賞の本当の面白さ、素晴らしさが伝わると嬉しいです。
●●●特集:ロマンス 2008●●●
「トワイライト」のロバート・パティンソンとアマンダ・セイフライドの登場です。この二人はアメリカでとても人気のある若手俳優です。二人は「愛」について話し始めました。といっても映画の中で描かれるロマンスについてです。そして2008年度に公開されたロマンス映画のダイジェストが上映されました。『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』、『ウォーリー』、『スラムドッグ$ミリオネア』、『レスラー』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』、『オーストラリア』、『アイアンマン』、『トワイライト』、『セックス・アンド・ザ・シティ』・・・。それぞれの映画のロマンスに関するシーンが抜き出されU2の音楽に乗って表現されました。そして、最後は各映画のキスシーンを繋いだ見事な映像です。「ニュー・シネマ・パラダイス」のエンディングのような素晴らしい編集に感動でした。
一見、ロマンス映画には見えなくても、実はどんな映画にもロマンスという要素が入っているんだということがよく分かる映像でした。
<撮影賞:Best Cinematography>
アメリカでは、撮影するスタッフを「ディレクター・オブ・フォトグラフィー (通称DP)」と呼びます。彼らは、レンズ、カメラ、照明を司り、素晴らしい映像を作り出すのです。日本では、撮影と照明はわかれていることがおおいですが、この違いは映像におおきく影響していると思います。そんなDP、機材を選ぶ力も必要ですが一番の要は自身の「目」です。DPは、脚本やロケ場所を熟知し映画らしい映像、ストーリーを伝える映像を目だけで構築していきます。
プレゼンターは、ベン・スティラーとナタリー・ポートマンです。ベン・スティラーは、サングラスをかけ、付け髭をつけての登場です。
ナタリー「撮影監督は、映像を司り、光と影を操ります・・・ちょっと、ガム咬んでいない?」
ベン「ごめん」とガムを口からだし、テーブルにおきました。
ナタリー「素晴らしい映像を作る映画の素晴らしい裏方達、彼らは巨大なアイマックス・カメラや小さなデジタルカメラを駆使して映像を撮影しています。貴方の番ですよ。」
ベン「えー、スラムドッグは携帯のカメラで撮影されたと聞いています・・・」
ナタリー「貴方、何をしたいの?どうしたの?」
ベン「別に・・・、DPにでもなろうかな・・・」
このシークエンスは、日本の視聴者にどう映ったのでしょう?ベンは日本であまり人気がないので、こういう変人だと思ってしまう人もいると思いますが、実は、ベンはホワキン・フェニックスの物まねをしていたんですね。会場の観客やアメリカの視聴者は大爆笑でした。
ノミネートは、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のクライディオ・ミランダ。この映画では全編ヴァイパーというデジタルカメラで撮影されました。このカメラは、撮影時にフィルムと同等のデータをハードディスクに取り込み、後でデジタル現像処理を施します。これによりフィルムに迫る高解像度の映像を狙い通りに現像することが可能です。今回は、そこに複雑な合成処理が施され、フィルムのインプットによる映像劣化なしにとても美しい絵を作っています。『スラムドッグ$ミリオネア』のアンソニー・ドッド・マントルは、インドでフィルム撮影を行い、この映画らしい映像を作り出しています。『ダークナイト』のウォーリー・フィスターは、監督の希望通り殆どのショットをIMAXで撮影しています。アイマックスのフィルムは巨大で、カメラも大きく、映画撮影には不向きでしたが、これを長編映画で初めて成し遂げたのです。この功績は映画史に残る偉業です。『チェンジリング』のトム・スターンは、小さな光と大きな影を操ります。基本ノーライトでの撮影は、太陽光におおきく影響されます。その気ままな太陽光をコントロールしての敏速な撮影技法は評価されるべきものです。『愛を読むひと』のクリス・メンゲスとロジャー・ディーキンスは、ハリウッド映画らしいビビッドな撮影が素晴らしかったです。
受賞は、『スラムドッグ$ミリオネア』のアンソニー・ドッド・マントルでした。この受賞は作品に対する評価でしょう。実際は、『ダークナイト』のウォーリー・フィスターや『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のクライディオ・ミランダのほうが、評価に値する仕事をしていたのです。
<ゴードン・E・ソーヤ賞>
ジェシカ・ビールがプレゼンターです。この賞は、映画技術賞で映画の撮影技術や上映技術など、映画をとりまく技術に貢献した人に与えられる賞です。こういう裏方さんがきちんと表彰されるのもアカデミー賞の特徴です。しかし、技術賞はあまりに地味なためテレビ放送には向きません。よって、毎回アカデミー賞よりも前に別会場で表彰式が行われます。今年は、ジェシカ・ビールがその会場で授賞式に参加し、アカデミー賞では、簡単に報告をしました。
今年の受賞者は、エド・キャットムルです。ジェシカ・ビールも「エド・キャットムルって誰?と思っている方がおおいのではないでしょうか」とスピーチしていましたが、彼はCG界ではとても有名な人物です。今までアカデミー賞を受賞していなかったことが不思議なくらいです。彼はCGアニメやCGIを使った実写のCG合成を開発した人です。みなさんにわかりやすく説明すると、現在彼はピクサーの社長です。「トイ・ストーリー」「ウォーリー」などピクサーのアニメは彼の開発した技術により作られているんです。彼は、現在ディズニーの社長も兼務しています。今後のピクサーとディズニーの新作CGアニメにも彼の技術が使われていきます。
●●●特集:コメディ 2008●●●
スクリーンが降りてきて、コメディに関する映像が上映されました。
セス・ローゲンとジェームス・フランコがどこにでもありそうなアメリカの家のリビングでビデオを見ています。
2人が見ているテレビ画面には「スラムドッグ$ミリオネア」「アイ・ラブ・グル」「トロピック・サンダー」など08年度に公開されたコメディ映画が次々に映し出されます。それを茶化す二人。勿論コメディ映画だけでなく真面目な映画までを取り上げ笑うハリウッドの懐の深さには感心させられました。沢山の映画を見ているとオスカー像を持ったカメラマンが登場します。フランコが「こっちにきなよ」と呼びかけるとそのカメラマンがリビングにやってきて2人と一緒に映像を見るのです。オスカーを持ってリビングにやってきたカメラマンはヤヌス・カミンスキーです!
<短編実写映画賞:Live Action Short Film>
上映が終わり、スクリーンがあがると、プレゼンターが登場しました。映像に出演していたセス・ローゲン、ジェームス・フランコ、そしてヤヌス・カミンスキーの3人です。3人が登場すると客席にいるスピルバーグが映し出されました。スピルバーグ映画のDPは、カミンスキーです。こういう映画ファンが喜ぶ放送、気が利いていますね。
ノミネートは、“Auf der Strecke (On the Line)”、“Manon on the Asphalt" 、『新入生』 、“The Pig”、“Spielzeugland (Toyland)” でした。
受賞は、“Spielzeugland (Toyland)” のヨハン・アレクサンダー・フライダンクでした。フライダンクは、東ドイツ出身だそうで、そこから西ドイツを経由してハリウッドまで来るのはとても遠かったとスピーチしました。これは、実際に遠いということだけでなく、彼が地味に4年をかけて14分の短編を作り上げ、この晴れ舞台に上がることが出来た時間が長かったということでもあります。
●●●パフォーマンス: Musical is BACK ! ●●●
ジャックマンが登場。「皆さん、ミュージカルの復活です!イギリスでは『マンマ・ミア!』のチケットセールスが『タイタニック』を抜きました。そして、ジャックマンは唄い出しました。まるでブロードウェイ、いやウエストエンドのミュージカルを見ているような歌い出しです。『雨に唄えば』のメロディを歌い出したところで「何か足りないなあ」とつぶやきます。すると、舞台の奥に女性のシルエットが映し出されます。スポットライトが当たると赤い衣装を着たビヨンセでした。ここからは、見事なパフォーマンスでした。今まで作られてきたミュージカル映画の音楽のオンパレードでした。文字で感動がお伝えできないのが残念です。
後で、このパフォーマンスが口パクだったと報道されましたが、これはあたりまえです。あれほど動き回り踊る場合、2つの要因から実際は歌を唄えません。まず、大きな舞台を動き回るのですから、演奏がちゃんと聞き取れないのです。コンサートなどでは「かえし」と呼ばれるスピーカーが歌手の側に置かれているので、演奏を聴きながら音楽に合わせ唄うことが出来ます。しかし、アカデミーの舞台に「かえし」を置くスペースはありませんでした。次にビヨンセほど激しく踊る場合は、息継ぎができずうまく唄うことが出来ないのです。ミュージカル舞台の場合、オーケストラピットに指揮者がいて、舞台役者は唄う場合、指揮者の指揮棒を見てタイミングを合わせています。コンサートの場合は、必ず「かえし」が置かれています。アカデミー賞のように沢山の賞を発表するように設計されている舞台では、派手なパフォーマンスを行うことが想定されていないので、必然的に口パクになるのです。
ですから、今後、「かえし」がない、あるいは指揮者がいない派手なパフォーマンスの場合は、口パクと考えてほぼ間違いないです。日本の某人気グループやパフォーマンス集団もコンサートや音楽番組では口パクなんです。
<助演男優賞:An Actor in a Supporting Role>
スクリーンに過去の受賞シーンが映し出されました。味のある役者が受賞していたんだなあと改めて感じました。スクリーンが5分割され1つに1人つづ受賞シーンが映し出されます。クリストファー・ウォーケン、ケビン・クライン、キューバ・グッディング・Jr.、アラン・アーキン、ジョエル・グレイです。5つのスクリーンが上がると、そこから本人が登場しました。なんと豪華な顔ぶれでしょう。
5人がノミネートの5人を紹介していきます。ケビン・クラインは、寡黙だが緻密な芝居をすることにより映画に力を与えているフィリップ・シーモア・ホフマンを紹介しました。アラン・アーキンは、『ミルク』で難しい芝居をこなしたジョシュ・ブローリンを紹介しました。キューバ・グッディング・Jr.は、『トロピック・サンダー』のロバート・ダウニーJr.を紹介しました。この受賞は、アカデミー史上かなり奇妙な選出です。ダウニー・Jr.は、『アイアンマン』『トロピック・サンダー』で最も大胆な役者に返り咲きました。白人なのに黒人を演じるオーストラリア人という変人を演じきった彼に「黒人の仕事を奪ったと怒るグッディング・Jr.に会場は大爆笑となりました。クリストファー・ウォーケンは、マイケル・シャノンを紹介、地味な芝居ですがシャノンのような役者はとても重要です。ジョエル・グレイは、『ダークナイト』のヒース・レジャーを紹介しました。ご存じのように彼は『ダークナイト』の撮影後急死してしまったので、会場には家族が代理で参加していました。
受賞は、予想通りヒース・レジャーでした。両親と姉の3人が舞台に上がると、観客席は総立ちで拍手を送りました。ヒース・レジャーの父親がスピーチを始めると、多くの役者が目に涙を溜めているのが映し出されました。今回のアカデミー賞で一番印象に残る受賞シーンでした。
●●●特集:ドキュメンタリー 2008●●●
08年に公開されたドキュメンタリー映画についての映像が上映されました。ドキュメンタリー映画がただ上映されるのではなく、この映像自体がドキュメンタリーとなっており、ドキュメンタリー作家に「ドキュメンタリー」についてインタビューしていくというものでした。作家の話は一言一言に重みがあり、考えさせられる映像となりました。
<長編ドキュメンタリー賞:Best Documentary>
プレゼンターは、ビル・マーです。ノミネートは、“The Betrayal (Nerakhoon)”、『世界の果ての出会い』、“The Garden”、“Man on Wire” 、“Trouble the Water”でした。
受賞は、“Man on Wire” のジェームス・マーシュとサイモン・チンでした。
<短編ドキュメンタリー賞: Documentary Short Subject>
引き続きビル・マーがプレゼンターです。ノミネートは、“The Conscience of Nhem En”、“The Final Inch”、“Smile Pinki”、“The Witness - From the Balcony of Room 306”でした。
受賞は、“Smile Pinki”のミーガン・マイランでした。 “The Conscience of Nhem En”のスティーブン・オカザキは受賞を逃しました。
ヒュー・ジャックマンが話します。「映画製作というのは旅行のようなものです。始めた楽しいのだけれど、最後は目的地に着くことだけで一杯一杯になるのです。映画は撮影が終わり編集段階にはいると、なんとか良い映画にしないといけないという恐怖観念から必死に音響効果を付けたり加工を施して閑静に向かいます」これは映画制作の過程をよく表している比喩です。映画は、脚本が素晴らしくても撮影して編集するととても酷い映画になっていたりします。それを挽回するのがポストプロダクションなのです。ここからは暫くポストプロダクションの授賞式となります。
●●●特集:アクション 2008●●●
08年に公開された映画の中からアクションシーンを集めた特別映像が上映されました。『007 慰めの報酬』『ダークナイト』『アイアンマン』『インクレディブル・ハルク』『ハンコック』『インディ・ジョーンズ』・・・今回の特別映像は、Appleの映像を作っているチームによるものです。なんだか、Appe TVのデモ映像を見ているような心地よさを感じました。
<視覚効果賞:Visual Effects>
ウィル・スミスの登場です。アクション映画が大好きなのでプレゼンターに立候補したそうです。「アクション映画は過小評価されがちです。でもアクション映画は面白く、完成までには特殊効果の技術が必要です。今年の視覚効果賞のノミネート作品でスタッフは素晴らしい作業をしてくれました。」
ノミネートは、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 のE.バーバ、S.プリーグ、B.ダルトン、C.バロン。このチームは、ブラッド・ピットの顔をCGIで合成しています。ブルーバックの撮影はほとんどなかったはずで、実際にヴァイパーで撮影された映像をマスキングし、まるで人間が演じているような表情を作り出しています。この技術は今まで不可能とされてきました。
『ダークナイト』のN.デービス、C.コーボールド、T.ウェバー、P.フランクリンは、IMAXという巨大なフィルムで撮影した映像に合成を施しました。35mmフィルムの7倍近くある大きな映像に合成作業を行うには、コンピュータのパワーが7倍以上必要になります。この膨大な作業をコツコツ行った努力には感心させられます。
『アイアンマン』のJ.ネルソン、B.スノー、D.サディック、S.マハンは、アイアンマンという主人公を3Dモデル化し、まるでそこにいるかのような映像を作り上げました。アイアンマンは金属でできているという設定なので、周囲の景色を映しこんでしまいます。このリフレクションをきちんと完成させるのはとても面倒だったでしょう。
受賞は、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 のE.バーバ、S.プリーグ、B.ダルトン、C.バロンでした。納得の受賞です。代表してスピーチしたのはE.バーバです。デジタル・ドメインがこの複雑な処理を行ったそうで、同社に対して感謝の意を述べていました。
<音響効果賞: Sound Editing>
続いてウィル・スミスがプレゼンターです。日本では録音技師が、音響効果、音響編集まで行います。これは、トーキー映画の頃の名残です。要はとても古いシステムなのです。欧米の映画制作では、音響は録音、編集、ミックスと作業が細分化され、それぞれにプロが存在します。アカデミー賞では、音に関する賞はSound Editing とMixingの2つのパートにわけて賞を授与します。
音響効果賞のノミネートは、『ダークナイト』のリチャード・キング、『アイアンマン』のフランク・ユルナー、『スラムドッグ$ミリオネア』のトム・セイヤーズ、『ウォーリー』のベン・バートとマシュー・ウッド、『ウォンテッド』のウェリー・ステートマンです。
受賞は、『ダークナイト』のリチャード・キングでした。キングは、低音を効かせた素晴らしい音響を作り上げました。音響効果部門を作るきっかけになったベン・バートが受賞できなかったのは残念でした。
<録音賞: Sound Mixing >
引き続きウィル・スミスがプレゼンターです。ノミネートは、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のD.パーカー、M.セマニック、R.グライス、M.ウェインガーデン、『ダークナイト』のL.ハーシュバーグ、G.リゾ、E.ノビック、『スラムドッグ$ミリオネア』のI.タップ、R.プライク、R.プークテイ、『ウォーリー』のT.マイヤーズ、M.シマニック、B.バート、『ウォンテッド』のC.ジェンキンス、P.フォレ、F.A.モンダーニョでした。
受賞は、『スラムドッグ$ミリオネア』のI.タップ、R.プライク、R.プークテイでした。この受賞も作品に対するものです。純粋な仕事に対する評価と異なってしまい残念です。「スラムドッグ」以外の作品ならどの作品が受賞してもおかしくないノミネートでした。
<編集賞: Film Editing >
スミス「まだまだ僕の番です。ポストプロダクションには、もうひとつ重要な仕事があります。それが編集です。編集マンはこんな技を使います。」スクリーンでは、編集によく使われる編集効果を実際の映像を使って説明しました。
ノミネートは、『フロスト×ニクソン』のマイク・ヒルとダン・ハンレー、『ダークナイト』のリー・スミス、『ミルク』のエリオット・グレハム、『スラムドッグ$ミリオネア』のクリス・ディケンズ、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のカーク・バクスターとアンガス・ウォールでした。
受賞は、『スラムドッグ$ミリオネア』のクリス・ディケンズでした。巧みな編集が光った作品だったので受賞の理由は十分に理解できます。この映画が成功した要素のひとつは、編集なのです。
<ジェーン・ハーシェルト友愛賞>
プレゼンターは『ナッティ・プロフェッサー』のエディ・マーフィーです。今年の受賞はオリジナル『ナッティ・プロフェッサー』のジュリー・ルイスです。彼は、長年ハリウッド映画で人気を博したコメディアンです。ルイスは、コメディアンとしてトップを走ってきましたが、実は難病の患者を支援するためにおおくのお金を寄付していました。そして基金を設立しこれまで20億ドルものお金を集め、患者や病院を支えていたのです。
久しぶりに姿を見せたジェリー・ルイスは、全く変わらない姿でした。会場はスタンディング・オベーションで彼を迎え入れました。拍手が鳴りやみません。ジェリーは、スピーチをはじめました。「私は人のために何かをしても、それが評価されるとは思っていませんでした。なので、今回の受賞は私を感動させました。アカデミーに感謝します。」
第2回、どうでしたか?今年は全体的に質素ですが、見応えは十分です。次回はいよいよ主要賞の発表となります。お楽しみに!
<関連リンク>
第81回アカデミー賞授賞式 1/3
第81回アカデミー賞授賞式 3/3
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第81回アカデミー賞 授賞式 1/3 [映画賞・映画祭]
The 81st Annual Academy Awards
今年もロサンゼルスのコダックシアターで映画の祭典アカデミー賞が行われました。アカデミー賞の素晴らしさは舞台の演出にあります。報道ではどうしても受賞作品にフォーカスしてしまいますが、実は授賞式自体が素晴らしいエンターテイメントとなっています。昨年の第80回アカデミー賞授賞式に続き、今年も授賞式の模様を時間軸通りにレポートしアカデミー賞の面白さを再発見します。
<オープニング>
今回の司会は、なんと俳優のヒュー・ジャックマンです。勿論彼にとって、アカデミーの司会は初めてです。ここ数年は、ずっとコメディアンが司会だったので、今年はかなり真面目な授賞式になるような感じがしました。
いつもは、オープニングと共に派手なショーが行われるか派手な映像が上映されるのですが、今年は予算削減と言うことでジャックマンが舞台で歌を唄いました。ブロードウェイの舞台にも立つジャックマンらしく、今回のノミネート作品を楽しく紹介していきました。
このオープニングパートは、確かに費用はかかっていませんがとても見事でした。いきなり客席からアン・ハサウェイを引っ張り上げ二人でデュエット(勿論仕込み)したのは、今までにない演出です。
ジャックマンが歌い終わると、客席はスタンディング・オベーション!
地味ながら印象に残るオープニングでした。
いよいよ第81回アカデミー賞授賞式のはじまりです!
<助演女優賞:Best Supporting Actress>
15回ノミネートされているメリル・ストリープを引き合いに出し、過去の助演女優賞のスピーチが映像で紹介されました。どの年も心に残る女優さん達が受賞してきたんだなとわかる見事な編集でした。そして映像が終わると、画面が5つに分割され、過去に受賞した女優の顔が映し出されました。エヴァ・マリー・セイント、アンジェリカ・ヒューストン、ウーピー・ゴールドバーグ、ゴールディ・ホーン、チルダ・スウィントンです。するとスクリーンがスルスルと上がり、スクリーンの裏から本人が登場しました。この演出にはかなり驚かされました。まさか歴代の有名女優が揃って舞台に並ぶとは!当然客席はスタンディング・オベーションとなりました。実はこの5人が今年の助演女優賞のプレゼンターです。
出演時間が少ない中で見事に役を演じきる、そして作品に厚みを持たせる。この難しい役回りをこなしたノミニーは、エイミー・アダムス(『ダウト -あるカトリック学校で-』)、マリサ・トメイ(『ザ・レスラー(原題)』)、ペネロペ・クルス(『それでも恋するバルセロナ』)、タラジ・P・ヘンソン(『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)、ヴァイオラ・デイヴィス(『ダウト -あるカトリック学校で-』)の5名です。
エヴァ・マリー・セイントがヴァイオラ・デイヴィスを紹介、アンジェリカ・ヒューストンがペネロペ・クルスを紹介、ウーピー・ゴールドバーグは、コメディアンらしく修道女を演じることの難しさを面白くそして真面目にエイミー・アダムスを紹介しました。ゴールディ・ホーンは、タラジ・P・ヘンソンを紹介、チルダ・スウィントンは、マリサ・トメイを紹介しました。
個人的には、デビュー以来応援しているマリサ・トメイが数年ぶりにアカデミー賞に戻ってきたことに感銘を受けました。とても難しい役をこの年で見事に演じきったトメイは、デビューの頃のブルックリンなまりのヤンキーではなくしっとりとした大人の女優に変貌していました。
受賞は、ペネロペ・クルスでした。彼女は、舞台の上で45秒では足りないといいつつ、感謝したい人の名を一気に読み上げていました。そして最後にはスペイン語で挨拶をしていました。
<オリジナル脚本賞:Original screenplay>
ジャックマンが、映画を作るときの一番始めについて話し始めます。「そこにはセットもなければ役者さんもいません。画面に向かって文字を打つところから映画が始まるのです。」
プレゼンターはスティーブ・マーチンとティナ・フェイ。二人は脚本について掛け合い漫才を始めました。
ノミネートは、“Frozen River”のコートニー・ハント、 “Happy-Go-Lucky”のマイク・リー、“In Bruges”のマーティン・マクドナー、『ミルク』のダスティン・ランス・ブラック、『ウォーリー』のアンドリュー・スタントンとジム・リードンです。
ここで、各作品ごとに、映像を一部上映し実際の脚本をその映像にあてました。こういう行為は普段見ることができないので新鮮でした。映画は、セリフのない部分でもきちんと脚本に書かれていることが分かりました。そうです、脚本家というのは、ストーリーを構築して、かなり細かな部分まで脚本にト書きとして書き込んでいるのです。監督が勝手に決めていると思われる部分まできちんと脚本家が決めていることがよくわかる紹介の仕方でした。
受賞は、『ミルク』のダスティン・ランス・ブラックでした。見事な脚本を作り上げたブラックは納得の受賞です。
スピーチでは、同姓愛者のことを率直に語り、観客から盛大な拍手を受けました。これが中西部や南部アメリカで行われていたらこうはいかなかったでしょう。進歩的なハリウッドらしい気持ちの良い時間でした。
<脚色賞:Adapted screenplay>
引き続きプレゼンターはスティーブ・マーチンとティナ・フェイです。脚色賞とは、原作のある脚本賞です。原作があるかないかで、その労力はおおきく異なります。よって、アカデミーではこれら2つを分けて評価しています。
ノミネートは、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のエリック・ロス、『ダウト –あるカトリック学校で-』のジョン・パトリック・シャンレイ、『フロスト×ニクソン』のピーター・モーガン、『愛を読むひと』のデイヴィッド・ヘアー、『スラムドッグ$ミリオネア』のサイモン・ボフォイです。オリジナル脚本賞と同じく、実際の映像に脚本を読み上げる方式でノミネート作品が紹介されました。どれも見事な脚本です。
受賞は、『スラムドッグ$ミリオネア』のサイモン・ボフォイでした。ボフォイは、まず原作者に感謝し、その後家族やエージェント、スタッフ、キャストに感謝しました。
<長編アニメ映画賞:Best animated feature film of the year>
プレゼンターはジェニファー・アニストンとジャック・ブラックです。08年のアニメに関する映像が上映されました。
ウォーリーがビデオテープをテレビにセットすると映像が流れました。「カンフー・パンダ」「スターウォーズ:クローン・ウォーズ」「ホートン」「マダガスカル2」"Space Chimps" "Tales of Despereaux" 「ボルト」のダイジェストがテレビに映り、それをウォーリーが楽しげに見ています。最後に、ウォーリーが振り返ると、そこには、見ていたアニメのキャラが結集していました。
この映像、結構凄いです。ウォーリーを新たに動かしているのに驚きですが、最後にはクオリティの異なるキャラがきちんと1つのフレームに収まっているのです。アカデミー賞で1回だけ上映されるために作られた映像なのですが、制作会社もスタジオも異なる作品を1つに融合させるスタッフの努力に拍手です。いったいどこの制作会社が作ったのでしょう?
ノミネートは、『ボルト』、『カンフー・パンダ』、『ウォーリー』の3本です。
受賞は『ウォーリー』のアンドリュー・スタントン。納得の受賞です。圧倒的なクオリティ、素晴らしいストーリーライン、音楽、キャラクター、どれをとっても歴史に残る映画です。ピクサーは、常に保守的にならず名作を新しい技術と共に提供してくれる素晴らしい制作会社です。スタントンは、スティーブ・ジョブスに感謝の意を伝えていました。ジョブスは、ご存じの通りAppleを立ち上げ、同時にピクサーを作り上げた人です。現在闘病中のジョブスはきっとテレビでこの受賞を喜んだことでしょう。
<短編アニメ映画賞:Best animated short film>
引き続きプレゼンターはジェニファー・アニストンとジャック・ブラックです。「短編は短いから作るのが簡単だと思ったら大間違いです。短いながらきちんと情報を視聴者に伝えないと行けないのだから・・・」というわかりやすい説明がありました。
ノミネートされているのは、日本から『つみきのいえ』、“Lavatory – Lovestory”、 “Oktapodi”、 “Presto” 、 “This Way Up”。
受賞は、唯一CG作品ではない『つみきのいえ』の加藤久仁生でした。加藤さんはROBOTの社員で、ひとりでコツコツとこのアニメを作ってきました。一枚一枚手で絵を描いて15分の映像にしたのです。とても素晴らしく暖かみのある作品です。受賞の瞬間、加藤さんを見守ってきたROBOT阿部社長の嬉しそうな表情が印象的でした。儲からないのに、才能を見いだし給料を払い続けるという行為を最近の日本人の経営者は出来なくなってしまいました。会社の収入が減ると、悪くない社員をカットする無能経営者がおおいなか、阿部さんは、長い期間加藤さんを支えてここまできました。実は「おくりびと」よりも「つみきのいえ」の受賞のほうが、素晴らしいことだと私は思います。
加藤さんは、とても緊張していました。日本人訛りのスピーチの最後は「どうもありがと、MR. ROBOT」でした。
<美術賞:Art Direction>
他の映画賞ではあまり見かけない美術賞です。プレゼンターは、サラ・ジェシカ・パーカーとダニエル・グレイグです。「Sex and the City」と「007」の共演とはなんとも豪華です。
ハリウッド映画では、美術はプロダクション・デザインという部門が統括します。かつてはセットをデザインしていたのですが、近年は、ロケ場所を飾り付けたり、実際にあるものとCGを合成したり多岐にわたる作業を行います。これらは全て映画のイメージに基づき計算され生み出されます。ゴッザム・シティは、シカゴの町にCGを足して表現しています。この大規模な部門を司るスタッフに与えられるのが美術賞なのです。
ノミネートは、『チェンジリング』の美術監督ジェームス・J・ムラカミと装置ゲイリー・フェティス、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の美術監督ドナルド・グレアム・バートと装置のビクター・J・ゾルフォ、『ダークナイト』の美術監督ネイサン・クローリーと装置ピーター・ランドー、『ある公爵夫人の生涯』の美術監督マイケル・カーリンと装置レベッカ・アルウェイ、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』の美術監督クリスティー・ズィーと装置デブラ・シャット。
受賞は『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』でした。このプロデューサーはフランク・マーシャルとキャサリン・ケネディという名プロデューサーです。そして世界一細かいデビッド・フィンチャー監督と一緒に美術の仕事をするのはとても大変なはずです。厳しく監理された予算の中、妥協を許さない監督の要望に応え、さらに気の遠くなるような合成を頭に描きながらセットをデザインしたチームは、本当に素晴らしいと思います。
<衣装デザイン賞:Costume Design>
サラ・ジェシカ・パーカーとダニエル・グレイグが引き続きプレゼンターです。ハリウッド映画では、既製服を使うことはあまりありません。ほとんどの衣装は映画のイメージに合わせオリジナルで制作されるのです。毎年この部門ではコスチュームものと呼ばれる歴史映画がおおくノミネートされてきました。今年のノミネートは、『オーストラリア』のキャサリン・マーチン、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のジャクリーン・ウエスト、『ある公爵夫人の生涯』のマイケル・オコナー、『ミルク』のダニ・グリッカー、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』のアルバート・ウォルスキーです。
受賞は『ある公爵夫人の生涯』のマイケル・オコナー。やはり今年も歴史物が受賞です。
<メイクアップ賞: Make Up>
サラ・ジェシカ・パーカーとダニエル・グレイグが、まだプレゼンターを続けます。メイクアップは、かつては化粧を意味していましたが、現在ではかなり加工を施すメイクになってしまいました。よってノミネート作品も奇妙なキャラクターが登場する作品に偏ってしまいました。ノミネートは、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のグレッグ・キャノン、ブラッド・ピットの老けメイクはメイクとCGで見事に表現されていました。今までの映画技術ではできなかった領域まで研究開発したキャノンは歴史に名を残す偉業を成し遂げています。『ダークナイト』のジョン・ギャグリオーネとコナー・オサリバンは、漫画っぽくなるバットマンの世界をリアリティあるイメージに変更し、見事に成功しています。『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』のマイク・エリザルトとトム・フロウツは、漫画の世界をうまくデフォルメして監督の意向を具現化しています。
受賞は、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のグレッグ・キャノンでした。
今年のアカデミー賞は、特に華やかなショーもなく淡々と進んでいきました。こういう授賞式も好感が持てます。序盤が終了し、ほぼ予想通りの受賞となっています。さて、この後どうなっていくのでしょうか。
次回も引き続き受賞作にフォーカスするのではなく、授賞式の中身に注目してレポートしようと思います。
<関連リンク>
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