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黒く伸びた髪
恐ろしい瞳
真っ赤な唇
上下する喉
痙攣する右腕
隠された左腕
熱を帯びている胸
清らかな下腹部
見つからない右足
寂しげな左足
そして心と呼ばれるもの
そして意識と名づけられたもの
そして感情と囁かれるもの
そして精神と指をさされるもの
つまりは不完全な貴方
思い描けるまぼろしの身体
僕の恋慕の正体
つまりは抜け殻の宇宙
つまりはカタワな愛情
「嘘みたい」
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僕の心がアメリカンコーヒーで
溶け残る砂糖がきっと貴方
そう考えるとこの恋の終わりも
少しは詩的に見えるのかしら
貴方は美しいから縛られることはない
心の移ろいはきっと一つの芸術
僕の恋は信仰に似ている
だって今でもまだ貴方が最後の星に見える
貴方は砂糖細工で固めた羽をはばたいて
沢山の太陽に向かって飛び立っていく
僕には届かない空に身体を滑らせ
涙で濡らす水面にて喉を潤す
貴方の胸にある甘い聖書の
忘れられた一節がきっと僕
そう考えるとこの恋の終わりさえ
いつかは素敵に忘れられるかしら
「清らかな砂糖」