読書好き上白石萌音さんが世界を近くに感じる本と映画5選。「何を読みたいと思ったかを大切に」ノンノ世代へのアドバイスも

一作の本や映画を通じて、遠かった世界が身近に。読書や映画を愛する人たちのおすすめ作品から、あの場所の知らなかった一面をのぞいてみよう。

上白石萌音さん

「作品を通じて、新たな知識を得られるワクワク感は格別」

トップス￥44000・スカート￥48400／S&T（バウム・ウンド・ヘルガーテン）　イヤリング￥33000・リング￥16500／ete

＂何を読みたいと思ったか＂を
大事にしてみてください

　幼い頃からずっと読書は好きですが、実はたくさん読みたい時とそうではない時のムラがかなりあるほうで、2週間ぐらいまったく本を手に取らない時期も。読みたい波が来たら、その波に乗って一気に読み進めるのが最近の私の読書との関わり方です。それは映画でも同じかもしれません。どちらも＂読まなきゃ！ 見なくちゃ！＂と思っていると内容が頭に入ってこない気がして。モチベーションが高い時にときめくものを摂取しています。

　世の中には本がたくさんありますし、映画も配信の恩恵もあって見たいものはどんどん増えるばかり。そんななかで私が作品を選ぶ際、特に多いキッカケが＂人からの紹介＂です。『キムズビデオ』は映画好きの友人からの紹介。ミニシアター上映作なので予告で流れる作品にも他にはない出会いがありました。自分の好みで選ぶ作品とはまた違う新しい興味が広がるのが紹介のいいところ。＂ナショナル・シアター・ライブ＂はよく一緒に観劇に行く先輩から教えてもらったのですが＂もっと早く知りたかった！＂と思ったほど贅沢なコンテンツ。海外に行きたいと思ったらまずは＂ナショナル・シアター・ライブ＂に行くのをおすすめしたいくらい現地の空気を身近に感じられます。

　私にとって読書や映画鑑賞は、知らなかった世界を知ることのできる大切な時間です。『ガウディの伝言』を読んで、スペインのサグラダ・ファミリアについて多くの知識を得たことで、いつかまた本物を見に行った時に＂この石像の表情の意味、分かる？＂と自信ありげに言える気がしています（笑）。新たな知識に出会えた時の喜びがクセになって、また別の作品を読みたいと思えるんです。ただ、ノンノ読者世代の方は、人生の中で今とても忙しい時期ですよね。課題に追われていたり、将来について考えなければいけなかったり……たくさん頭を使う日々なはず。本や映画は他とは代え難い経験を授けてくれますが、今無理をしてまでたくさんの作品に触れる必要はないと私は思っています。それよりも＂何を読みたい、見たいと思ったか＂のほうが大事な気がするんです。自分の興味関心に気づけますし、今後レポートや就活に役立つこともあるかも（笑）。数にこだわらず、＂気になるな＂と思う作品を心にとどめておいて、少し余裕がある時に思い出せるようにしておくのがいいのかなと思います。

『ある小さなスズメの記録
人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』

クレア・キップス／著　梨木香歩／訳　文春文庫

「第二次世界大戦中のイギリスで一羽のスズメと暮らした女性の実話。誇張のない戦時下の日々が描かれています。大変な生活の中で楽しいことを見つけようとする人々の姿から、感じ取れることもあるはず。本を読む醍醐味の一つ＂比喩表現＂も素晴らしい作品」

『ガウディの伝言』

外尾悦郎／著　光文社新書

「スペインのサグラダ・ファミリアで石工をされている外尾さんが、建築家・ガウディの意思をくみ取っていく過程が記されています。外尾さんの単身でヨーロッパに渡るバイタリティやコツコツと仕事を続ける様子は、自分自身が苦しい時に思い出せる光となりました」

＂ナショナル・シアター・ライブ＂
での上映作品

「世界の傑作舞台を映画館で見られるプロジェクト。演劇ファンにはたまらないコンテンツですが、あまり演劇に触れたことがない方にこそおすすめしたい！ 現地の観客のざわめきや笑い声もそのまま収録されているので日本にいながら海外の雰囲気が味わえます」

『キムズビデオ』

配給：ラビットハウス/ミュート

「NYに実在したレンタルビデオ店にあった貴重なビデオコレクションの行方を追うドキュメンタリー。途中からフィクションが入ってくるのですが＂どこからどこまでを現実と捉えるのか＂や最後の展開など、メディアリテラシーを問われる作品だなと思っています」

Profile

●かみしらいし　もね　1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。2011年より俳優として活動開始。ドラマ、映画、ミュージカルと幅広く活躍中。テレビ番組『世界くらべてみたら』ではMCを担当している。12月には舞台『ダディ・ロング・レッグズ』の公演を控える。

2025年12月号掲載

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