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紫煙伝‐清雲高校怪氣事件簿‐ -   六十四服目 Play Back(10)
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  六十四服目 Play Back(10)


 私は別に、戦う事が嫌いなワケではない。

 (むし)ろお互いの力量を確かめ合う試合は好きだ。弱い者イジメを始めとする暴力は嫌いだけど。


 しかしだからと言って。

 非合法な大会に出たいとは思わない。


 そういう大会は悪の組織の資金源だし、正規の大会よりも危険は多いし……もし()()()()()()警察がここを突き止めた場合、私までもが悪の組織の一員として誤認されてしまう可能性が高い!!


 というか関わった以上は、見つかる前に逃げないと確実に誤認される!!


 でも、ここに連れてきたのは爺ちゃんだ。

 爺ちゃんが、この明らかに非合法だと思われる大会の関係者とはとても思えないけれど……今ここで勝手に帰ったりしたら、真実は一生分からなくなる。


 だから私は。


 戦う事に決めた!!


 まずは生き残るって決めたんだ!!


「ウラァアアアアアアッッッッ!!!!」


 タルカスが大振りで拳を振るう。

 見ているだけで圧倒的なプレッシャーを覚える凄まじい拳だ。そしてその印象に(たが)わず、その拳が当たった箇所……この大会で採用された試合形式『球形金網デスマッチ』の舞台である金網がヘコんだ。


 一度でも当たればアバラが折れるかもしれない。

 いや、拳だけじゃない。蹴りの方も油断はできない。当たり前だが、腕力よりも脚力の方が強いのだ。それにリーチも長い。食らったなら確実に……タルカスとの試合の場合は死ぬ事もあり得る。


 というか身長や体重の時点で不利なのだ。

 勝つためには、工夫を()らさなきゃいけないかもしれない。

 ちなみに、金的などの、通常は反則とみなされる行為もこの大会では許容されているみたいだけど……それを容易(たやす)く通せるとは思えない。


 さすがは喧嘩野郎。

 百回以上の喧嘩をこなしただけはある。


 ――まったく、反則できるだけの(すき)がない。


「チィ! ちょこまかとぉ!」


 だが、そう簡単にやられないのはこちらも同じ。

 確かに相手の拳の放つプレッシャーは凄まじい。


 しかしその程度で私が動揺し、素直に拳を受けると思ったら大間違いだ。稽古の先生の拳のおかげで、この程度のプレッシャーは受け慣れている。一般人であれば確実に戦闘不能にできるかもしれないが、少なくとも、私は普通に戦える。


 そしてその私が使うのは、ルチャ・リブレ。

 別名をメキシカン・プロレスという、私の故郷の代表的な格闘技。

 空中殺法を始めとする戦法を使う……身軽な私、そしてこの球形金網デスマッチと非常に相性が良い格闘技!!


 私は時に自力で、時にはタルカスの体の勢いまでも利用し、前後左右上下の金網へと高速で移動。プロレスのリングに張られたロープのような弾性がないのが少々残念だけど、贅沢(ぜいたく)は言っていられない。


 とにかくこれで、お互いにダメージを与えられない状況にはなった。

 ここからはどのように工夫し、相手へとダメージを与えるかが重要になる。


 打撃は論外。

 当たり所が良ければ問題ないけど、そんな奇跡を起こせるとは限らないし、相手はおそらく打たれ慣れている。そう簡単にダメージが入るとは限らない。


 関節技や投げ技は、おそらく通用しない。

 ルチャ・リブレの投げ技には『コルバタ』などがあるが、身長体重の差のせいでせいぜい腰などが、地味に痛い程度のダメージしか入らない可能性が高い。主に、投げる際の遠心力に耐えるための踏ん張りのせいで。関節技も、今の私の体力では簡単に逃げられる。


 ならば()め技。

 カンダード(ヘッドロック)を始めとする技。

 ダメだ。相手のあの筋力……落とすまで時間が掛かるかもしれない。


 ならどうするか。

 私はタルカスの攻撃を避けながら考え……ついに思い付く。


 うん、これしかない。

 関節技だけど、これなら一瞬で決まる。


 しかし、それをするにはさすがに条件が――。


「ハッハァ!! ようやく(とら)えたぜぇ!!」


 ――どうやら、思考に没入し過ぎたらしい。


 マルチタスク、と稽古の先生が言っていた技術を(もち)いて、考えるのと避けるのを同時にこなしていた私の腹を……タルカスのガムシャラな拳が(とら)えた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハ───ッ
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