関東大会の兄弟達
『試合終了ー! 石立中学9ー0と千葉代表の山尾中学を相手に大差での勝利! 天才ゲームメーカー社海斗、早くも2ゴール3アシストと初戦からエンジン全開の活躍です!』
優勝候補筆頭と言われ、最も注目が集まる石立中学。
その名に恥じない強さで相手を終始圧倒し、相手の山尾は関東王者を前に決定的チャンスを作り出す事も出来なかった。
「やっぱり石立中学の強さ凄いですね〜。中盤の高速パス回しといい個人技といい、全員が高いレベルを行ってますよ」
石立の試合を撮っていた泉は、そのレベルの高さに驚かされる。
試合は大人と子供ぐらいの差があると思うぐらいのワンサイドゲームとなり、石立は今年も関東大会を制するだろうと、周囲に思わせるには充分なサッカーを見せつけた。
「ああ、山尾を相手に9点なんて普通じゃない。昔から続く石立の強さは今年も健在か……」
試合を泉と共に見た村田が記事や見出しを頭の中で考えていた時、スマホに他の記者からの連絡が入る。
「ん? ……桜見が島岡に10ー0だってぇ!?」
「へ!?」
たった今、石立が大差の試合をしたかと思えば、桜見が1点上回る2桁得点で勝利したと聞けば村田、泉の記者2人は驚きを隠せない。
「ああもう、何で今日に限って桜見の試合じゃなかったんだよ!?」
思わず頭を掻く村田は桜見の試合を見ておくんだったと、強く後悔していた。
あの驚異の双子が一体どんなサッカーを見せたのかと。
☆
『神奈川代表の風元中学と山梨代表の桜木岡中学の一戦、風元中学が2点のリードを保ち、おっと更に攻撃へと出るか!?』
オレンジのユニフォームを着た風元の選手達が縦横無尽に走ると、それぞれが相手ゴールを目指す。
「うぉわっ!?」
左サイドを走る風元の小柄な選手がボールを持つと、迫り来る相手を身軽な動きで躱し、抜き去って左足でゴール前にパスを送る。
グラウンダーの速いボールが来ると、ウェーブの黒い髪をした選手が左足で合わせ、ゴールに向けてダイレクトでシュートを放つ。
速いスピードのパスをトラップせず撃った球に、DFとGKいずれも反応しきれず大きくゴールネットを揺らしていた。
『ダメ押しの4点目ー! 止まらない風元の野本兄弟!』
「兄ちゃんやったー!」
「おう、お前のパスのおかげだぞー!」
アシストをした小柄な選手がゴールを決めた彼に飛びつく。
この2人は兄弟で小さい黒髪短髪の方が1年の野本智、ウェーブの黒い髪が3年の野本新太。
彼らが高い得点力を誇る風元の攻撃を支える要だ。
☆
「──ご覧の通り風元中学は得点力が高い。特に左の野本智、右の野本新太の両サイドの動きに要注意となります」
今日の試合を終えて会場から学校へ戻って来た桜見イレブン。
次の試合で当たる風元中学の要注意選手について、部室で神奈がタブレット画面を見せながら説明している。
作戦会議も大事だが、部室のエアコンによる冷風で涼みたいからと集まってる者も多数居た。
画面には今日行われた風元の初戦が流れ、試合は5ー2で風元が相手の桜木岡中学を下す。
「得点力は高いけど結構失点もしてるよねー」
「確かに5点取ってる反面、2失点は守備が甘めかなー」
高い攻撃力よりも、与一と輝羅は揃って2失点の方が気になっていた。
無失点に拘る2人からすれば守備が甘いと強く感じる。
「これだけ見れば典型的な攻撃型のチームだよな。取られたら取り返す、失点を気にせず突き進むサッカーって感じで」
「点を取るチャンスは充分ありそうですね。攻撃を凌がれた後の速攻で両サイドが空いて、そこから得点されてましたから」
扇子をパタパタと仰ぎながら霧林は室岡と風元の弱点を話し合い、カウンターからのサイド攻撃が効果的と、タブレット画面を何度か確認。
「神奈川予選でも点の取り合い多かったのかな? あそこも東京と同じくらい激戦って聞いてるし」
「確認しましたけど6戦を戦って総失点は3でした」
「ん? あんま取られてないなそれ」
予選でも失点が多いと予想していたが、下調べ済みの神奈から神奈川予選について聞かされ、そこまで点を取られていない事に楽斗は意外だなと思った。
「野本兄弟にはもう1人、2年のDF宗二という人がいます。エースキラーとして活躍したおかげで神奈川予選を最少失点で突破してるんです」
「エースキラーか。2年でそいつは結構強そうだ」
神奈がタブレット画面をスライドさせ、竜斗が画面を確認する先には黒髪のヘアバンドを着けた少年が、DFとして相手を止める姿が映し出される。
彼が野本兄弟の3人目、野本宗二だ。
「それが関東大会で欠場って何で──あ」
相手のエースを封じる頼もしいDFが何故この関東大会で欠場していたのか、理由を考えていた与一はハッと気づく。
「僕達を油断させる為にわざと出なかったとかー? それで守備が弱いと思わせて不用意な攻撃を仕掛けさせたり〜」
「一発勝負のトーナメントでリスクでけぇだろ」
「そもそも彼の欠場は夏風邪の為って理由もう説明されてるし」
サッカー漫画のような展開で欠場は策略がある、と考えていた与一だが神奈と竜斗からダブルでツッコミを受ける。
「という事は僕達の試合の時、夏風邪が治って出場なんて事があるかもしれないねー」
そう言った後、輝羅は途中で買ったオレンジジュースを飲み干して缶を空にさせた。
自分達の時は体調万全で、エースキラーのDFとして立ち塞がる可能性があるだろうと。
「守備が弱いって考えは捨てた方が良さそうだな。その宗二って奴が戻るんだとしたら、神奈川予選を制した本来の風元と思って挑むべきだ」
「じゃあ初戦より神奈川予選の方をチェックした方が良いかな」
「分かりました」
竜斗と楽斗で本来の風元を見ておいた方が良いと決まり、神奈はタブレットを操作して神奈川予選を調べる。
「1年だけど神奈ちゃん、すっかりマネージャーらしくなってきたよな」
「……元からしっかりしてて頼もしい感じだったけど、仕事出来る感が増したかも……」
霧林と影二の視線の先には調べ物をする神奈の姿。
マネージャーとして入部してから数ヶ月が経ち、敏腕と言っても過言ではないぐらいの働きを見せていた。
「落ち着いてて、そんで可愛いし男子から言い寄られてもおかしくないよなぁ」
「確かに……小柄で可愛いから……」
「(もう言い寄られる寸前まで来てるんだけどねぇ〜)」
「(石立のでっかい悪い虫にねぇ〜)」
2人の話が全部与一、輝羅の耳に入ると改めて自分の妹が魅力的で、男を惹きつけやすいと理解する。
まだまだ妹離れの出来ない双子はゴールを守ると共に、悪い男からも妹を守り続けていく。
与一「神奈が人気かのは分かるよー、しっかりしてて可愛いしクールビューティーな所もあるからねー♪」
神奈「本当、自慢の妹だよー♪」
霧林「じゃあ、そんな妹に彼氏とか出来たら?」
与一&輝羅「「は?」」
霧林「!?じょ、冗談だからな!?」
影二「一瞬……今、殺気が凄かった……!」
輝羅「おっと次回予告ー、次回は関東大会で風元中学と激突!」
与一「そして……まさかの、うちから夏風邪で欠場する人が出ちゃう!?」