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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜 - 切創と謀略と、不運な天使
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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで

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切創と謀略と、不運な天使

【※注意】怪我するシーン有り(軽症です!)

 楽しかった打ち上げも終わり、帰り道――。


「バイバイ! 部長にサラちゃん。俺たちは買い物して帰るからー!」

「シロくん、クロくん、じゃあねー!」


 シロくんとクロくんは買い物の予定があるらしく、途中で別れることになった。

 なので、今のぼくはダン先輩と二人きり。

 

 これから、ダン先輩はご両親のもとへ、ぼくは男子寮に戻る予定だ。だから途中まで一緒に、帰ることにした。

 いつものダン先輩なら、気さくに話しかけてくれるのに、今日は大人しい。それが逆に……不安だ。

 

 そう思ったとき、ふと我に返った。


(あっ、ちゃんとお礼を言わないと……! 忙しい合間を縫って、打ち上げを開いてくれたのだから)


「ダン先輩、今日はありがとうございました! 打ち上げ、すっごく楽しかったです! ごちそうさまでした!」

「あぁ、こちらこそ。君と話せて、楽しかったよ。プレゼントもありがとう。それより、さっきは……怖がらせてしまって、すまなかった」

「えっ……?」


 急に謝られて、戸惑ってしまう。

 すると、ダン先輩は目を細めながら、語り始めた。


「実は……最近、ウェディングドレスを着た、とても綺麗で可愛らしいお嬢さんに会ったんだ」


(それって、あの日の……!)


 まさか、自分の話が出てくるとは思っていなかったため、驚いてドキドキする。

 一方の先輩は、ゆっくりと思い出すように、話を続けた。


「彼女が震えていて、心配だったから……顔色を確認しようと思って、つい、ベール越しに触れてしまったんだ。了承も得ずに……。結果、彼女をより怖がらせてしまったのに、わたしは……。そのお嬢さんにちゃんと謝れなかった。そのことが心残りで、本当に申し訳ないことをしたと思っている」


(あぁ、その()()()()は、ぼくのことだ……)


 確かに、あのときは怖かった。

 でも……ダン先輩はあの出来事をしっかり覚えていて、しかも、きちんと反省している。

 前とは違って、今回は、ちゃんと謝ってくれた。


(そうだ。ぼくは知ってる。ダン先輩って、鬼族の中でも、とても体が大きくて、周りからは怖がられることが多いけど……。誰よりも優しくて、まっすぐで、立派な人物だってことを……)


「その、気にしないで――」


『ください』まで言いかけた、そのとき。


 ――ゴンッ!


 突然、遠くから飛んできた石が、ダン先輩の右頬に直撃した。


「ッ! おっと……!」


 ダン先輩が、一瞬、よろける。


「えっ! ダン先輩?!」

 

 ぼくはすぐに駆け寄り、その体を支える。


(誰が、こんなひどいことをッ……!)


 すぐにでも犯人を追いたいけれど、今は……ダン先輩の治療が最優先だ。

 

 ぼくは先輩の手を引いて、近くの公園のベンチまで走る。

 先輩を座らせて、頬をよく見ると――うっすらと傷があり、そこから血がにじんでいた。


「サラ、大丈夫だ。どうなってるかわからないが、これくらいすぐに治る。大したことないさ」

「ダメです! これから、お母様やお父様に会うのに……大切なお顔に傷があるのを見たら、きっと悲しみます!」


 ぼくは迷いなくポケットに手を入れ、小さくたたまれたうさぎ柄のハンカチを取り出す。

 そして、そっと、けれどしっかりとダン先輩の傷口にあてがう。


(誰もいないし……今は、とにかく、ダン先輩を助けたい……!)


 周りに誰もいないことを確認してから、心の中で唱える。

 簡単な回復魔法――ただ、ただ、先輩の傷が癒えるように願いながら。


(……傷が、消えますように!)


 そう唱えてすぐに、そっとハンカチを外してみる。

 すると、ダン先輩の頬から、傷跡がすっかり消えていた。


(うわっ……ぼくの魔力、強すぎ……? 魔力をそんなに出したつもりなかったのに! でも、焼肉をご馳走してもらったし……いいよね?)

 

 そんなふうに、心の中で自分のことを正当化していたところ、ダン先輩に声をかけられた。


「……サラ?」

「あっ、ご安心を。早めに処置できたので! それより、お父様とお母様のところへ。帰り道、気をつけて……!」

「ありがとう、サラ。本当にすまないな……」

「いえっ! 今日は本当にありがとうございました!」


 ペコリと頭を下げて、ハンカチをポケットに戻そうとしたところ、なぜか、ダン先輩が回収してしまった。


「ダン先輩?」

「このハンカチ、わたしが預かってもいいか? 今度、必ず返すから」

「あっ、そんな……気にしないでください。大丈――」

「いや、ちゃんとお礼がしたいんだ」

「わかりました……」


 ダン先輩は礼儀正しい。こういう時、ダン先輩が引かないことを、ぼくは知っている。


「じゃあ……お父様とお母様と、楽しい時間を」

「あぁ!」


 そう言って、ぼくはダン先輩と別れた。

 先輩の背中を見送ってから男子寮へ戻ろうと思い、公園のベンチでおとなしく様子を見ていたけど、気がかりなことがあった。


(どうして、ダン先輩が狙われたんだろう? 王子様同士で何か争いでもあるのかな? それにしても、あんな酷いことをするなんて! 確か……石を投げた人が乗っていた車、青色だったような……?)


 いろんな考えを巡らせているうちに、ダン先輩の後ろ姿は、もう見えなくなっていた。


(王族の内情には、関わりたくない。だから……今のことは、忘れよう)


 そう思い直して、公園の入り口へ向かおうとしたら、さっきの()()の車が、停まっていた。


(あぁ……息が、できなくなりそう)

 

 あの車の中に、ダン先輩を傷つけた人物がいる……。

 

 許せない。本当は誰なのか知りたい。


 なのに、なぜだろう――とても嫌な予感がする。


 ……そんな予感は、今回()当たる。

 

 考え込んでいたぼくの目の前で、車のドアが開いた。

 暗闇の中から、一人の人物が降りてくる。


 顔は影になってよく見えない。けれど、どこか不敵な雰囲気をまとっている。

 そしてその男は、ぼくの方に向かって歩み寄りながら、妖艶な笑みを浮かべて――こう言った。


「これは……面白いものを見つけたな」


 ぼくは警戒して、公園の中へ逃げようとした。

 でも、彼のほうが一歩早く、左手首を掴まれてしまった。


 一気に、距離が縮まる。

 すると、彼の体から、ふわりとアーモンドチョコレートの香りがした。


「あなたは……!」

「やぁ。君はこの前の……前回は、君の学ランを汚してしまって、すまなかったね。弁償もできず、心苦しかった。だから、お詫びに男子寮まで送ろうと思って」

「あ、あぁっ……!」


(最悪だ……!)


 目の前にいたのは、ぼくが今、一番関わりたくなかった王子様だった。

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