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異界管理官メイの出張報告書、には書けないコト! 〜観光したり、グルメしたり、ときどき他の女のコと遊んだり?〜 - 彩生
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彩生

「……驚きです、まさか殉職者を蘇生させようとは。しかも……既に、成功例がある……ということですか?」

 霊長(ヒト)での成功例なしに、いきなり局長で試行するとは考えにくい。もし蘇生研究の進捗と今回の大爆発のタイミングがたまたま重なって、そうなってしまったのなら……処置が終わっていない段階で成功の目処が立った、と判断するのは難しいように思える。

 メイはそう考えて、ペドロへ問いかけた。


「さすがですナ……そこまでご理解いただけたとは恐縮ですゾ」

「いえ、たまたま仮定が合っていただけです」

 あまり持ち上げられても後で困るかもな……と、メイは少し失敗したように感じた。


「成功例は既に二件ありますゾ、ただし……蘇生にあたってはまだまだクリアすべき条件が厳しいのとですナ、今回の処置についてはもう少し、三叉の調和……死亡直後に回収した霊体、精体とこのクローナル体……肉体との和合調整に時間が必要ですがナ」

 ペドロが話し続けながら壁際へ離れていき、シリンダー内を照らす灯りを消す。


「現在の進捗は四割ほど……このまま成功すれば、局長は肉体だけを新しくして、再び生を受けることになりますナ」

「もし……もし局長が蘇るのなら、そのときは……」


 管理局を、局での権限を局長に返せる……いやそれよりも、それ以上に……三人で、一緒に暮らせるようになる…………


「代行と呼ばれるのもその時まで、ですね」

 メイはあくまでも、局長代行として発言した。つもりだった。


「そ、そうですナ……いずれはそうなると考えてよいでしょうナ」

 が、きっと顔に出ていたのだろう。

 また恋人に逢えるのだと、これからは家族として暮らせるのだと実感した……個人としての喜びが。

 ペドロはそれを感じたらしく、どこかぎこちない笑顔をして……丸眼鏡の奥の目も、あまり笑ってはいないように見えた。

 だが、それはそれとして。


「せめて、それまでは……トラブルなく務めなければ」


 ならばそのときには、何の苦労も心配も要らないように……してやりたい。

 局長としても、もちろんタムの母親としても。


 メイは局長代行としての今後に、少し……前向きになれた気がした。



「と言っても復活直後は、局長の体調とも相談ですがナ……また局長の意向にも配慮すべきですナ」

 と、一方でペドロが妙なことを口にしていた。


「局長の意向?」

 なぜペドロが局長の意向を気にするのか……メイには納得がいかない。


 そんなもの、考える必要があるのだろうか?

 普通に考えたら、局へ復帰できるように……不慮の事態があっても局へ復帰するために、蘇生の研究を進めていたんじゃないのか?

 そういう理由を公にしていなければ、研究に協力的な人員が十分に集まらないのではないか? 普通に考えたら……


 どうにも引っかかるが……ひとまずメイはタムを探し出し、家へ連れて帰ることにした。

 二人で小一時間ほど、セキュリティエリアの隅々を入念に探し回って……しかしタムの姿は見当たらない。


「これで一周、エリア内をくまなく探せたはず……」

 メイたちは局長のクローナル体が浮かぶシリンダーの前に戻ってきていた。


「まさか、誰かがタムを……」

 つい不安な予想をしてしまい、メイは額に冷や汗を浮かべる。


「ご心配なく、このエリアに繋がる通用口が開いた時には……必ずワタシに通知が届きますゾ。なので人の出入りがすぐに分かるのですがナ、ワタシ達の入室後に通知は来ていませんゾ。つまり誰もこのエリアから出入りしていないわけですナ」

 ペドロによると、連れ去られたという心配はしなくていいらしい。

 それなら、もう一度室内を探せば大丈夫だろう。


 ハッキングツールを持たず、専門教育を受けてもいないタムに扉のセキュリティを突破する技術など無いはずだ。

 もしかしたら、物理的に壊してしまう可能性は……まったく無いとは言えないが。まだ子供とはいえ、メイの娘なのだから。

 ただそれならば、警報の一つくらい鳴るだろう。


「なるほど……どこか、子供が入りこみそうな場所があったり……しますか?」

「機材の隙間に座りこんで寝てしまった……という可能性はありますナ……あっ」

 ペドロが室内に点在する機材の隙間を再確認しようと振り向いて扉を開けた、ところで何かを見つけたらしい。


「あっあおおじさんだー」

「タム!?」

 探し求めていた娘の声に、メイは思わず飛びついてしまった。


「わっ!? とっあたっ!」

 扉の前……メイとタムとの間にいたペドロを軽く突き飛ばして。


「良かっ……あ、すみませんペドロ課長……うっかり……」

 数歩先に娘が立っていた、それは良かったのだが……間に小太りの(ペドロ)が倒れている。


「ま、まあこの際は仕方がありませんナ……」

 と、ペドロはそのまま身体を横に一回転半させて道を空けた。その先で上体を起こし、眼鏡を取ってその外観を確かめている。


「良かった、押された肩が少し痛むのですが眼鏡は無事でしたゾ」

「ごめんなさい……」

 深々と頭を下げるメイ。


「ととさま〜おなかすいたよー」

 タムはそんなメイに駆け寄って、スカートの裾を引く。


「そっか、じゃあおうち帰ろっか」

 メイは笑顔を作って、引かれた側へ向けてから……手を差し出した。



「今夜と明日の分とがお住まいに届いているはずですゾ、では、さらばですナ」

 ペドロは研究施設の出入口まで同行して、メイたちを見送ってくれた。


「今日もありがとうございました、これで失礼します」

「明日からもよろしくですゾ、代行どの」

 ペドロへ一礼したあと、二人は手を繋いで仮設司令部へと歩き始めた……がほんの数歩で、タムは立ち止まっていた。


「あるけな〜い」

「どうしたのタム? どこか痛いの?」

「わかんない〜つかれた〜」

 どこか痛めてしまったわけではないらしい。研究施設のなかを走り回って疲れただけ、それなら心配は要らないか。


 タムが再び歩きだすかどうか、メイは少し様子を見ることにした。


「う〜……ん……」

 タムは歩きだすどころか……(うつむ)き、座り込んでしまった。


「おうち帰りたくないの? しょうがない子ね」

 メイは小さく溜息を吐いて、タムを抱き上げる。

 抱き上げると、何故か笑みがこぼれていた。


「フフ、このまま帰ろっか」

「……うん」

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