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花の国の年明け
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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

花の国の年明け

作者: ねこ
掲載日:2022/03/05

4000文字なので少し長めです。楽しんで頂けると幸いです。少し百合っぽいですが、よろしくお願いします。

 ここは花の国、人間は冬のうちに年を越すけれどお花の国の年明けは冬の終わりと同時なのだ。


「姫さま。そろそろお目覚め下さい。明日には春の夜明けになりますよ。」

「うーん……あと1日あるじゃん……もう少し寝させてよー」


 見ての通りのぐうたら姫である。そしてそんな国に1人の小人の来訪者が……


「花の国というのはここかしら?」


 女の子である。そして背中からは羽を生やしていた。


「まだ春が来てないから殺風景だわ。そして街にも誰も居ない……折角色とりどりの花が観れると思ったのに残念だわ。」


 女の子は残念そうに呟くときた道を引き返そうとします。


「うーん……でも折角来たんだし、少し待ってみようかしら。」

「おやおや、妖精の旅人さんかね?珍しい。」


 ここに来て初めての住人だ。


「こんにちは、ここは花の国ですか?」

「いかにも、一昨日かの、春を知らせる南風が王城に入ったからの明日か、明後日には新春となるでしょう。」


 おじいさんから情報を聞けたので少し止まる事にする。


「情報ありがとうございます!私の名前はベーゼ。よろしく。」

「ワシはトミーじゃ、よろしくの!」


 一方王城では……


「姫さま!いい加減起きてください!もう日が傾き始めましたよ!」

「うーん……日が沈むまでー……」


「そんな事言って!去年の事を忘れたのですか⁉︎夕方まで寝て結局徹夜で次の日の準備したんですよ!」

「うーん……じゃあ去年間に合ったのなら今年もだいじょーぶ……」


「姫さま!!!!!!!」


 王城内のしかも姫さまの部屋で雷が落ちた。春の嵐になりそうである。


 ところ変わって城下町……


 先程のトミーというおじいさんに城下町を離れて国の西側を案内してもらっていた。


「ここはやけに窪んでますね。しかもどこまでも続いてる……」

「そこは川じゃよ。」


「川?水なんてありませんよ?」

「冬の間は必要ないんじゃ。みんな眠っておるからの。ワシらの分は北にある森の方へ上げてるんじゃ。森の動物達の中には冬眠せず活動しておる者もおるからの。」


「そうなんですね。でも、おじいさんは起きてますよ?」

「ワシは早起きじゃからな。寝る前に釜の中に水を入れておる。そうすれば2週間は持つ。」


「そうなんですね。」

「それに、ぼちぼち皆も目を覚ます頃じゃ。」


 街の方を見ると誰かの話す声が聞こえた。


「南風が来ると自然と国が暖かくなる。だから皆もその頃に目を覚ますんじゃ。」

「なるほどです。」


「さて、皆も起きてきたことじゃし、もう一度街の方へ戻ろうか。」

「はい!」


 そうして2人は街へと引き返して行った。


 その頃王城では……


「あの……姫をゲンコツで起こす家臣ってどうなんですか?不敬じゃないんですか?」

「安心して下さい。王様からの許しは得られてます。」


(王様のバカー!)


 心の中で盛大罵る姫さま……これはこれで不敬である。


「さぁ、ドレスのサイズはどうですか?」


 姿見でお姫様は確認すると頷く。


「ええ、良さそうよ。」

「ふぅー……今回は仕立てずに済みました。去年はサイズが合わなかったので苦労しましたから。」


「だから今年は大丈夫って言ったじゃない。」

「そうは言われましても常に万が一を考えるのが家臣の務めですので。」


「家臣は姫にゲンコツなんてしないと思うけど?」

「あら?もう一つ貰いたいのかしら?」


「ごめんなさい……」


 相当痛かったのか、姫さまは素直に謝るのでした。


 夜になって……


「月明かりが綺麗ですね。」

「ああ〜。この時期はよく見えるからの。」


 今は花の国の住人とお月見しているベーゼ。


「あ、赤い星がある。」

「おお〜おお〜それが見えるとはお嬢ちゃんは目がいいの。あれが見える頃に春が来るんじゃよ。」


「そうなんですね。」

「明日はこの国の東側に行こうかの。姫さまが魔法をかければこの国1番の絶景が見れるんじゃぞ。」


「それは凄く楽しみです!」

「ほっほっほ。それじゃあ今晩はワシの家に泊まって行きなさい。春とて夜は寒いからの。」


「えっ、いいんですか?ありがとうございます!」


 一晩テントで過ごす予定だったのでこれは嬉しい知らせである。そして一晩おじいさんの家に泊まる事になったのだった。


 翌朝……ベーゼが起きると今までに見たことのない様な青空だった。


「凄い……こんなに晴れた空見たことないよ!」

「王様が天気を操れるからの。花の国の年明けはいつも快晴じゃよ。」


 いつのまにか後ろにいたトミーおじいさんに驚きつつも理由を聞いて納得した。何はともあれ快晴の中で春の訪れを祝えるのだから良いことだ。


「さぁ、花の国のお姫様が春を宣言されますぞ。特等席へ参りましょう。」


 トミーおじいさんはそう言うと王城とは反対側へと向かった。


「あれ?お城は逆ですよ?」

「良いんじゃよ。こっちへおいで下さいな。」


 ベーゼは違和感を抱えながらもトミーおじいさんについて行く事にした。


 その頃王城の姫の部屋にて……


「姫さま!起きてください!もう数刻で開会式ですよ!」

「もぉーすこしー……」

「ひ〜め〜さ〜ま〜!」


 こちらはてんやわんやである。流石に式典前の姫さまにゲンコツは出来ないので布団をひっぺがえした。


「うわー!」

「姫さまには後でたっぷりと説教するとして!早く着替えさせます!皆さん手伝って下さい!」


「「はい!」」


 後ろで控えてた家臣達総出で姫さまの着替えなど身支度を整えるのであった。


 そしてベーゼ達はというと……


「ここは?」

「何もないじゃろ?」


「そうですね。土しかありませんね……」

「じゃがここが今から絶景に変わるんじゃ。」


 ベーゼは小首を傾げていた。


「あの……お姫様が今からお言葉を告げられるのでは?」

「ああ、ええんじゃええんじゃ、毎年同じことを言っておるんじゃからな。」


(私は初めて聞くんだけどなー……)


 そうして2人でその時を待っていた。王城の方では……


「はぁ……はぁ……ま、間に合いました。」

「だから焦らなくて良いって言ったじゃん!心配症なんだから。」


 悪びれる様子もない姫に後で覚えておけよと思う家臣達。そして、お城の外へゆっくりと歩みを進めた。


 春の日差しに姫さまは目が眩んだ。


(うっ……毎年この時期の太陽は眩しいわねー。でも、春が今年も来てくれた。)


 そして再び目を開けるとそこには民衆が姫さまを待ち侘びていたかのように歓声が上がった。

 そして姫さまはゆっくりと壇上に上がって祝いの言葉を述べた。


「皆様!今年も温かな春が参りました。花の国は今年も平和である事を私は望んでおります。」


 そこまで言うと姫は懐から花の杖を取り出した。


僭越(せんえつ)ながら私からも花の国に春を届けます。花の咲き乱れよ。スプリングギフト!」


 姫さまの呪文を受け杖からは春の温かな日差しのような光が出てくる。そして王城から草が生え始め、たちまち国中に緑が戻った。そして次に花が咲き始めた。色とりどりの花々が咲き先程までの荒れ果てた土地の姿はどこにも無かった。


「凄い……」


 ベーゼは今目の前の光景に絶句していた。


「これが花の国の本当の姿ですぞ。ベーゼさん。」

「本当に凄いです……これが花の国なのですね。」


 自然とベーゼも笑顔になる。そして昨日見てきた西の窪地(くぼち)辺りにも水が流れていた。


「さて、そろそろあの方も来られる頃だ。」

「えっ?」


 トミーおじいさんがそう言うと空を見上げた。そして空からは白いドレスを着た誰かが飛んでいた。


「ふぅー……危なかった!」

「姫さま今年も素晴らしいご活躍でしたな。」


「ありがとう。あー!疲れたー!」

「ひ、姫さま⁉︎」


 ベーゼはトミーおじいさんが話してるのが姫さまということに驚いた。それもそのはず。まだ式典の最中だからだ。


「あら、今年はお客さんもいるのね。どなたかしら?」

「ああ、妖精のベーゼさんじゃよ。花の国に寄ってくれたらしいぞ。」


「まぁ、こんな最果ての国にどうもありがとう!」

「い、いえ、とても素敵な国です……じゃなくて式典はよろしいんですか?」


「なーに、毎年の事じゃよ。」

「毎年⁉︎」


 トミーおじいさんの毎年という言葉にベーゼは驚いてしまう。


「だって毎年毎年同じ事やってるんだもん。飽きちゃってさーそれよりもさこの花畑でこうして寝転がって昼寝してた方が時間の有効利用じゃん。」


「昔から姫さまは嫌な事があるとここに来ていたんですぞ。」

「そうなんですか?」


「ああ、魔法に失敗したり、叱られたりしたらここに来てこうして寝ていられるんですじゃ。」

「へぇー……」


「ねぇ、ベーゼさん?」

「は、はい何でしょうか?」


「折角ならあなたもここで一緒に昼寝しない?」

「えっ?」


「あなたも何かあったからここまで癒しを求めてきたんでしょ?」


(このお姫さまは私の心の中が見えてるのかしら……?)


 核心を突かれて言い淀んでしまうベーゼ。


「良いわよ。話さなくても。ここは花に囲まれて癒されて、また旅立つ場所だもの。さぁ、こっちにいらっしゃいな。」


「そ、それでは失礼します。」


 ベーゼは姫さまの隣で寝転がってみた。すると辺りの花の香りが鼻を通って行き凄くリラックス出来た。


「ここは春から秋までは絶えず花が咲いてるから少し休んで行くといいわ。そしてまた疲れたらまた戻って来なさい。花の国は冬以外いつでも歓迎よ。」


 姫さまはベーゼの手を取りウインクして言ってくれた。それから春の陽気に包まれてベーゼと姫さまは一緒に花畑で眠るのでした。


 その後姫さまは家臣達に見つかりお城に連れて行かれてたっぷりと油を絞られた。しかしそれでも次の日にはベーゼに会いに来ていた。ベーゼは結局その年の秋、みんなが冬眠するまで花の国に居ました。


 そしてお別れの時……姫さまは眠たげな目で見送りに来ていた。


「じゃあまた春に。姫さま!」

「姫はやめてよベーゼ。名前で呼んで。友達でしょ?」

「そうね。じゃあまたね。カリナ。」


 こうしてベーゼは再び旅に立つのでした。

3月最初の童話でした。今月も何本か書きたいのでよろしくお願いします。

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