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やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく - 進展のチャンス
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進展のチャンス

 そういうわけで第二ラウンドのスタートとなった。

 直哉が体ごと振り返ると、小雪は「ひゅっ」と小さく息を呑んだ。

 しかし顔を覆うのはぐっと堪えたらしい。耳の先まで真っ赤に染めて、ぷるぷるしながらタオルを握りしめる。


「じゃ、じゃあ、前も拭くから……」

「無理はするなよ……?」


 今にもぶっ倒れそうなので、トキメキを覚えるより先にちょっとハラハラしてしまった。

 部屋の中には時計の針が進む音と、外から聞こえるかすかな車の音だけが響く。

 小雪は黙々と体を拭いてくれて……当然、ふたりの間に会話はない。


(近い近い近いって……)


 長いまつげを数えられるくらいの距離が心臓に悪い。

 病み上がりの鼻でも分かるほど、女の子特有の甘い香りがふんわり漂う。

 おまけに、なおたちの悪いことがあった。


「あ、あの……」


 しばらくしてから小雪が手を止めて、おずおずと口を開く。

 その顔は枝から落ちる寸前の果実のように真っ赤で、目には薄い涙の膜も張っていた。

 明らかにいっぱいいっぱいのご様子。それでも小雪は震える声を絞り出した。


「あなた……今、私が何を考えているのか……わかる……?」

「…………わかります」


 大人しく首肯する以外の選択肢はなかった。

 小雪が考えていることはこうだ。


「『ひょっとしたら、このままぎゅってされて、それで、それで……ちゅーとか、しちゃう展開なんじゃないの!? どうしよ!?』……かな?」

「ひいっ……!? 一字一句そのままだし……!!」


 淀みなく答えてみせると、小雪が悲鳴を上げて凍り付いた。

 直哉も同じようなことを考えていたのでおあいこだ。


(まあうん、したいっちゃしたいけど……うん)


 先日の遊園地デートでは、小雪から頬にしてもらったので、直哉もまったく同じ事をやり返した。

 つまりお互い、唇同士のキスはいまだに経験がない。


 自室で彼女とふたりきり。完全にそういうムードが出来上がっていると言っても過言ではないし、誰が見ても完全に据え膳というやつだろう。

 しかし直哉は断腸の思いでかぶりを振るのだ。


「でも……今日はやめとこう?」

「えっ……!」


 小雪がまた小さな悲鳴を上げる。ショックが顔から隠しきれていなかった。


「な、なんで……?」

「だってほら、俺……風邪だし……」


 ただでさえ同じ空間にずっといるというのに、この上さらにキスまでしてしまえば、確実に風邪をうつしてしまうだろう。おまけにキスの衝撃でも寝込むだろうし……トータル一週間くらいは回復しないに違いない。

 そう説明すると、小雪はうつむいて小刻みにぷるぷるしながら――。


「…………よ」

「…………はい?」

「だ、だから……!」


 ばっと顔を上げたとき、そこには武士じみた覚悟がにじんでいた。


「いいわよ、って、言ってるの……!」

「いや、聞き取れなかったわけじゃないんだけど……うん」


 直哉は頭を抱えるしかない。

 以前、桐彦の家でふたりきりになった時は『えっちなことするつもりなんでしょ!』とあからさまに警戒されたものの、今日の小雪はひと味もふた味も違っていた。


(小雪も場数を踏んで、成長してるってことかー……)


 どこか場違いな思いでしみじみしてしまう。現実逃避とも言えた。

 そんな直哉の肩をがしっと掴んで小雪は凄む。


「風邪くらい引いたっていいもん! 直哉くんのなら、全部受け止めてみせるわ! ここが千載一遇のチャンスなの!」

「えええ……これから人生長いんだぞ。また他のタイミングがあるって」

「ダメよ! こうなったら意地でも……奪ってやるんだからあ!」

「だあああ!? 引っ込みつかないのは分かるけど、ちょっと落ち着けっての!!」


 かくして混乱した小雪と取っ組み合いとなり、小雪の母と朔夜が迎えにくるまで家の中で不毛な鬼ごっこを繰り広げることとなった。

 その運動が功を奏したのか、一晩寝ると完全に風邪も完治していたという。幸い、小雪にうつることはなかった。

 こうしてふたりは、降って湧いたファーストキスのチャンスをふいにしたのだった。

これにて看病編は終わり。続きは明日更新します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] キスまだだったかw しかし家の中で鬼ごっこはやめなさいw [気になる点] 風邪じゃなかったら・・ そもそも半裸で急接近しないかw [一言] またの機会にw 半年後だったりしてw
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