22 sideアメリア
寮の部屋に戻ってすぐ、私はワンピースの裾をふわりと揺らして、くるりと一回転した。
胸の奥にぽっと灯ったままの幸福感が、まだ消えずに残っていたから、身体が自然と動いてしまった。
「……楽しかったなぁ」
あんなにいろいろなものを食べて、見て、お兄ちゃんと笑って。まるで夢みたいな放課後だった。でも、もうすぐ夕食の時間。今度は寮の大食堂に出かけなきゃいけない。
「さあ、お嬢様。今夜はどれをお召しになりますか?」
柔らかな声とともに、マリーが衣装部屋を開け放つ。
中にはぎっしりと詰め込まれた、色とりどりのドレスが並んでいた。
これ、全部オルディアーク公爵夫人が用意してくれたもの。
深紅、ラベンダー、アイスブルー、ミントグリーン……
生地の光沢やレースの繊細さは、見ているだけで胸が高鳴る。
寮での夕食は、正装で臨むのが通例だった。制服のまま来る生徒もいなくはないけれど、多くの貴族子女は、それぞれの家の誇りを映すようなドレスを身につけていた。休学前の私が大食堂に行く時は制服のままだったけれど――今日は、違う。
「こちらのピンクなど、お嬢様の愛らしさをいっそう引き立てるかと……ですが、紺も捨てがたいですね。公爵令嬢らしい品格がございますし」
マリーが腕に数着抱えて私に当ててみせる。どれも素敵で、迷ってしまう。
「うーん、どれがいいかな……」
悩んでいると、机の上でうたた寝していたピコルがのそのそと起き上がって、私とドレスを交互に見つめた。
「それよりもこっちの、青いやつのほうが似合うにゃ。さわやかで、きれいにゃ」
その顔はとても真剣そうで、なにかのコンテストの審査員みたい。思わず笑ってしまった。
「ふふ、ありがとうピコル。じゃあ今夜はこの青のドレスにするわね」
「お目が高いですね、ピコル様。さすがでございます」
マリーがピコルに小さく頭を下げると、満足げに「当たり前ニャン」と言った。
そんな光景にまた笑いがこぼれる。
──お兄ちゃん、今夜の私を見てどう思うかな?
そんなことを想像しながら、私はドレスをマリーに着せてもらった。
さぁ、これから大食堂……緊張するけど大丈夫。だってお兄ちゃんがいるもの!