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【冬の魔女ア合同】強襲!暗黒料理人邪苦!奪われた氷結包丁!(初稿) - 第九十八話(その2の17~18の途中まで)
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第九十八話(その2の17~18の途中まで)

「え?」


思わず変な声が出てしまう。


〈お前さんは、まだ死ぬつもりみてえだからな。

それをあきらめるまでは、ここから出すわけにはいかねえ。

というか、そもそも出られやしねえよ、そんな心のままじゃな〉


「そ、そんな!

じゃあ、どうしろって言うんですか!?」


必死に呼びかけるが、返ってきた答えは冷たいものだった。


〈甘えてんじゃねえ、自分で考えるんだよ。

羊のお嬢ちゃんは、いつまでも母ちゃんのマネをしていなければ生きられないのか?〉


「そ、それは…」


それは、言われてみれば確かにその通りだった。


「で、ですが、」


〈ですがもデーツもねえ。

お前さんは、さっさと帰って、真っ当に生きるんだよ。

残りの家族はそうしてるんだろ?〉


「…それは、出来ません」


〈どうしてだ?

見栄張って出てきたせいで、故郷に帰りづらいからか?〉


「確かに、それもあります。

けど、今の私が故郷に帰っても、それが何になるんですか…結婚して子供を産めとでも言うんですか!?

それで、何事も無かったように…亡くなった大切なヒトたちのことを忘れて、馬鹿みたいにニコニコ笑って暮らせと!?」


〈…そうまでは言わねえさ。

言わねえけどさ… お前さんは、まだ生きているじゃねえか〉


「…それはその通りです。

だから、ここでただうずくまっていても、何にもならない、ですか?

けれど、それでもマシです!

自分を偽って、死んだように生きるよりはずっとマシなんです!」


それが礼儀に反する行為だということは分かっていた。

無意味だとも思う。

しかしそれでも私は、こうして叫ばずにはいられなかった。


〈じゃあ、どうしてあがく?

お前さんは、一体、何がどうなれば満足なんだ?〉


その問いかけは、やはり私の本質を突いていた。


「それは…」


そして私は、やはりそれに答えることが出来なかった。


無礼にも黙り込む私に向かって、テツモリさんーー正確には、その人格を再現した記憶の泡ーーがたまらないように叫ぶ。


〈オレも他人ヒトのこたぁ言えた義理じゃあねえが…お前さんも相当だぜ。

なぜ、これだけ思われているのに、生をあきらめようとする?

なぜ、自分の身体と心が生きようとしていることに、気づこうとしない!〉


その非難は、確かに正しい。


死者のことはとっとと忘れるべきであり、時代に置いて行かれた古い伝統や使命なんて、あっさり捨てて、新しい生き方や喜びと交換するべきだ。

だってそれらは、これからの人生にはきっと邪魔だから。


生は正しく、それをさまたげるモノは悪である。


それは、あらゆる文化圏に共通する不動の真理ルール


だって、それが逆ならみんな生きてはいけないのだから。

けれど、正しいはずのその忠告に…やっぱり私は上手く従うことが出来なかったのだ。


〈仕方ねえ。

ジジイの退屈な思い出話で悪いが、もう少しだけ付き合ってもらうぜ〉


そしてまた、彼の痛々しい思い出話が再開される。


痛みと失敗と後悔しか、そこには無いはずなのに….それでも私は、その思い出に引き込まれてしまっていた。


それは、今のところ他にやれることが見つからなかったからでもあるが…同時に、少し気になることがあったからでもある。


実をいうと、さっきの回想の終わり際に、納屋から飛び出そうとするテツモリさんを引き止めようとする誰かがいた。


正確には、誰かの手の感触を感じたのだ。

これからどうするかは、とりあえずあの手の主やその事情を全部知ってからでも遅くはないだろう。


私は、思い出が再生されるのを待ち構えた。


失われた過去が再び蘇って、生を得るそのときを。

なぜなら、既に私の身体には、あの誰のものかも分からない手のぬくもりが、生き生きとした印象を残していたのだから……



ーー飛び出そうとしたところで、突然、オレは後ろから誰かに手をつかまれた。


「だ、誰だ!?」


ナギサだった。

まあ、つかまれた時点で気がつくべきだったな。


いくらこっちが『主』狩りの準備に夢中だったとはいえ、オレの後ろをあっさり取れるヤツなんて、ここいらじゃコイツくらいしかいねえんだから。


とはいえ、オレももうガキじゃねえ。


「離せ。

ちょっくら漁に行ってくる。

少しばかり家を空けるから、その間は親父おやじさんたちのとこに帰ってろよ。

今回は、長くなりそうだからな」


「『北辺海の主』が、最近新しいアクセサリーをつけたらしいわね。

それでしょう、アンタの漁とやらのお目当ては」

「…ああ、そうだ」


「死ぬわよ、アンタ」



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