第58撃:『月城姫咲』
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少しの沈黙が場を包む。
その静寂を破ったのは紫音だった。
「闘神童子……月城姫咲さん、か。名前は綺麗だけど……肩書? が、随分ゴツいな」
茶化すようでいて、紫音の声音には興味と警戒が半分ずつ混じっていた。
その言葉に、一真は笑みを浮かべて答える。
「ははっ、そう思うよな。でも『闘神童子』ってのは、封神拳の正統継承者が代々受け継ぐ字名なんだ。男女関係なく、継承者はすべてその名を背負うらしい」
晶が遠慮がちに問いかける。
「その姫咲さんが八代目なら……一真さんは九代目闘神童子、なんですか?」
一真は苦笑を浮かべ、首を振った。
「いや、俺は正式に継いじゃいない。今も継承者は姫咲さんのままだ」
その答えに、今度は柚葉が少し申し訳なさそうに口を開いた。
「もし答えたくなかったら謝ります……。でも、一真さんはどうして闘神童子を継がなかったんですか? 何か事情があるんですか?」
一真は笑顔を崩さず、穏やかに言葉を返す。
「気にするな。……姫咲さんからは『継げ』と言われたんだ。でも、俺は辞退した。ガラじゃないし、何より俺じゃまだ姫咲さんに及ばない。今の俺には務まらないんだよ」
そう語りながら、一真はどこか嬉しそうに微笑む。
だが、三人は同じように笑えなかった。
「……え? ちょっと待ってくれよ、一真さん。『及ばない』って……冗談だろ?」
紫音は声を震わせた。彼女が一真の戦いを見たのは先ほどが初めてだった。
だが、その異常さは誰の目にも明らかだった。そんな男が「及ばない」と言ったのだ。信じる方が難しい。
晶も柚葉も同じで、二人とも言葉を失っていた。
一真はそんな彼女らを見て、静かに笑い返す。
「冗談じゃないさ。あの人は、本当に強い。……あの人の元で修行してた頃よりは、俺も成長した自負はある。けどな、それでも敵うイメージが浮かばないんだ」
その笑顔には、親愛、敬意、そして深い情が滲んでいた。
三人の胸に、それぞれ同じ「痛み」が走る。
(……ボク、どうしてこんなにモヤモヤするんだろう……)
(なんだよ、今の胸の痛み……? オレ、どうしちまったんだ?)
(ウソ……この気持ち……やだ。まだ一真さんと出会って間もないのに……)
柚葉だけは、その違和感の正体にうすうす気づいていたが、言葉にすることはなかった。
一真は空気を変えるように、肉をひっくり返しながら言った。
「ほら、お前たち。手が止まってるぞ。まだ肉は山ほどある。どんどん食え」
そう言って自分の皿へ焼き過ぎた肉を放り込み、新しい肉を網に置く。
柚葉が場を繋ごうと、話題を変えた。
「か、一真さんは……どうやって姫咲さんに出会ったんですか? それに、どういう経緯で封神拳を学ぶことになったんですか?」
紫音も、胸のざわつきを振り払うように声を重ねる。
「そ、そうだよ! オレも気になる! それに、姫咲さんって綺麗だったんだろ? どんな人なのかも知りたい!」
晶も小さく手を膝の上で握りしめながら、二人に続いた。
「ボクも……知りたいです」
一真は少し遠い目をして、答え始めた。
「ふーむ……そうだな。まず見た目は、腰まで伸びた長い黒髪。身長は紫音より低かった。だいたい百六十センチ前半から半ばってところか。スタイルもかなり良かった。特に胸がな――」
「「「一真さん!!」」」
三人の怒声が重なった。
一真は咳払いをして言い直す。
「ゴホン……まあ、外見年齢は二十代後半くらいだな。実年齢は――結局最後まで詳しくは教えてくれなかったが、百歳は軽く超えてるらしい」
驚愕の声が上がる。
「ひゃ、百歳!? ウソだろ!? 外見二十代で実年齢が百歳以上って……聞き間違いじゃねえのか!?」と紫音。
「そ、それ……本当なんですか? 信じられません……」は柚葉。
晶が恐る恐る尋ねる。
「そう言えば……一真さんはおいくつなんですか? まだ聞いたことなかった……」
「ん? 俺か? 三十代後半だ」
「「「えっ!!?」」」
三人の声が重なった。
紫音が「ウソだろ……もっと若いと思ってた……」と。
柚葉が「てっきり三十そこそこかと……」と言った。
一真は肩をすくめ、苦笑する。
「さっきまで『おじさん』って言ってたくせに」
紫音は視線を泳がせて、気まずそうに呟いた。
「だって……なあ。オレたちの歳じゃ、どう呼んでいいかわかんなくて……」
一真はそれを聞いて、心の底から楽しそうに笑った。
その笑顔を見た三人の胸に、また小さな痛みが走る。
だが、その痛みを含んだ感情が何なのか――まだ彼女たちは言葉にできなかった。
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