第89撃:決意と行き先
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一真は周囲の警戒を怠らずにいながら、これからの行動について思考を巡らせていた。
(まさか紫音と柚葉が、ロイ爺さんの言っていた“オラクル”というエルフと出会っていたとはな。二人の話から察するに、他にも有用な情報を持っているだろう。やはり直接接触して話を聞く必要があるか……。できれば国王からも話を聞きたいところだが、今は難しい。さて、どう動くべきか)
三人を連れて行くにしても、森に残すにしても、それぞれに大きなリスクがある。
一真の見立てでは、今の紫音と柚葉なら連携を組めばロックスネーク程度なら何とかなる。しかし、それ以上のモンスターとなれば二人がかりでも危険だ。
では、エルサリオンに連れて行くのはどうか。
だが、それは別の意味での危険を孕んでいる。紫音と柚葉にはすでに指名手配がかかっており、王女に化けているセレフィーネに洗脳された者が多い今の王都へ連れていくのは、敵陣に飛び込むようなものだ。
(どういうわけか、紫音と柚葉には洗脳が効かなかったらしいが……その理由がわからない以上、次も無事とは限らない。俺が強引に押し通すのも得策じゃない。今の目的は“知る”こと。無用なリスクは避けたい。何より、敵の中に俺より強い相手がいる可能性もある)
魔王軍、空軍の将。奴の魔王軍内での戦闘力や位置づけすら把握できていない。過激派の戦力がはっきりしない現状、三人の命を背負って無茶をするわけにはいかない。
一真は湖の水で身体の汚れを落としながら、結論を出した。
「……ふむ。この森に待機させるのは危険すぎるな。エルサリオンの近くまでは共に行って、身を隠せる場所を探すか」
そう呟くが、すぐに眉を寄せる。
「あの辺りに隠れられそうな場所はあったか? 追放されてすぐ、この森に来てしまったからな。結局、地図すら手に入れていない」
考え込む一真の前に、ルナリスが小さな体で近づいてきた。透明な水流のような光を纏い、湖の汚れを瞬く間に浄化していく。その水は澄み渡り、一真の身体まで綺麗に洗い流した。
「キュキュ!」
「ほう……凄いもんだな。ありがとうよ、ルナリス」
一真が頭を撫でると、ルナリスは目を細め、甘えるように鳴いた。
「キュゥ~」
一真はふと、湖と森を見渡し、感慨深げに口にする。
「それにしても……随分とこの森に馴染んじまったな。最初は仮の拠点のつもりだったんだが」
「キュ?」
不思議そうな鳴き声に、一真は笑みを返し、立ち上がる。
「いや、なんでもない。……そろそろ行くか」
ルナリスを連れて湖を後にし、晶から返してもらったタオルで身体を拭うと、服を着直して三人の待つ焚き火の元へ戻った。
「待たせたな。身体は温まったか?」
一真の問いに、三人はそれぞれ返事をした。
「ちゃんと温まりました。一真さんはもういいんですか?」と晶。
「おう、もう大丈夫だ。芯まで温まったからな」と紫音。
「私も大丈夫です。ありがとうございます」と柚葉。
一真は頷き、本題を切り出す。
「さて、これからだが……皆でエルサリオンへ行こうと思う」
柚葉が不安げに声を上げた。
「エルサリオンですか……? でも、私と紫音は手配されていますし、一真さんと晶くんも追放の身。捕まったら……」
「ああ、確かに見つかるのは避けたい。だが、オラクルという女性にどうしても会っておきたい。そのためにも、お前たちにはエルサリオン近くに身を隠して待機してもらいたい」
それを聞いた紫音が、悔しさを滲ませる。
「オレたち……結局、足手まといか。森で待つことすら出来ないなんて……」
晶もまた、下を向いて小さく呟いた。
「足手まといなら……ボクだよ。紫音や柚葉みたいに戦えないし……ボクには何も……」
一真はそっと晶の頭に手を置き、柔らかい声で言う。
「言っただろ、晶。“何も出来ない奴なんていない”ってな。お前のお陰で助かってる。紫音も柚葉もだ。自分を卑下するな。お前たちが持ってきてくれた情報には、大きな価値がある。何より、お前たちは俺達と合流するまで二人で森を生き延びたんだ。胸を張れ」
一真の言葉に、三人の胸が熱くなる。誰かに認められるということが、こんなにも嬉しいとは。あるいは、それが“一真だからこそ”なのかもしれない。
一真は続けた。
「……で、待機場所の件だ。俺と晶はまっすぐ森に入っちまったから、エルサリオン周辺に隠れられそうな場所を知らない。二人は何か心当たりはあるか?」
答えたのは柚葉だった。
「私達も城から逃げてすぐ森に入ってしまったので詳しくは……ですが」
「ですが?」
「王城からの脱出路、その出口付近なら……しばらく隠れることは出来るかもしれません」
一真は少し考え込み、頷く。
「ふむ……。この森以外…エルサリオン周辺で出るモンスターなら、お前たち二人で問題ないだろう。……よし、とりあえずそこに向かおう。その周辺でより安全な場所が見つかれば、そちらにすればいい」
そして三人を順に見回し、静かに言った。
「問題がないなら……今夜にはエルサリオンに着けるよう、この森を立とうと思う。大丈夫か?」
「「「はい!」」」
三人の声が重なり合う。
その光景を、ルナリスは少し寂しげに見上げていた。
「キュゥ……」
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