50、ロバタージュ 〜ライトのステイタス(F)
僕はいま、ジャックさんと一緒に、ロバタージュの警備隊の建物前にいる。
生首達のワープに、僕はめちゃくちゃ驚いた。突然、行き先の候補リストの映像が頭に浮かんだんだ。
そして、僕が警備隊を選び、生首のクッションを踏んだ瞬間、この場所に移動していた。
一緒にワープしてきたジャックさんは、別に驚いた様子はないんだけど。
目の前を、生首達が嬉しそうな顔で、ヘラヘラと漂っている。僕が驚いていることが嬉しいのかな。変な奴らだ。
生首達は、ヘラヘラしていたけど、スーッと姿を消した。さっき呼んだら、すぐに来たよね。普段は、どこにいるんだろう?
「ライトさん、ここの階段、一段が高いんすけど、大丈夫っすか?」
ジャックさんが、数段上がったところで立ち止まってくれている。僕が、ボーっとしていたからかな。
「前に来たときは、上がれなくて転んだんですけど、さすがに大丈夫だと思います」
僕は、べちゃりと階段に突っ伏したことを思い出した。女神様が、引っ張って転んだんだよね。
ちょっと怖いなと思いながらも、一段一段、上がって行く。5歳児の短い足では、結構ギリギリかもしれない。
(つ、着いた!)
上まで到達した。なんとも言えない達成感だ。生まれ変わってから、まだ2ヶ月も経ってないけど、成長していると実感する。
(いや、こんなことに感動している場合ではない)
ジャックさんは、僕の顔を見て、クスッと笑った。僕が満足げな表情をしていたのかな。
(ちょっと、恥ずかしい……)
ジャックさんが警備隊の扉を開くと、案内の男性が近寄ってきた。
「こんばんは。迷い子ですか?」
(えっ? 僕のこと?)
「あはは、いえ、彼が所長さんに呼び出されてましてね。俺は付き添いっすよ」
ジャックさんがそう言うと、男性の表情は固くなった。えーっと、僕をジーっと見ているんだよね。サーチかな。
「所長は、今日はもう帰宅したのですが、急用でしたか」
「いえ、彼と一緒にギルドミッションを受注したらしいんすけど、ちょっと彼がしばらく街を離れていたので……」
「あぁ、そういうことでしたか。所長は、最近はギルドミッションを積極的に受注しているみたいです。こんな小さな坊やと一緒だったことがあるとは、驚きましたが……」
(まぁ、普通、そう思うよね)
「じゃあ、俺が、彼をギルドに連れて行くっす。所長さんには、チビの終了報告は完了したと伝言をお願いしたいっす」
「はい、かしこまりました。坊やのお名前を伺っても?」
「あー、うーん……記録に残されたくないから、だいぶ前のハデナの終了報告ってことで、お願いするっす」
「ハデナ火山……は、はい、かしこまりました」
ハデナと聞いて、男性は少し表情を変えた。そういえば、あの後は、どうなったのかな。噴火で大変なことになっていたよね。
(ギルドで終了報告をすれば、わかるかな)
「じゃあ、ギルドへ行くっすよ」
僕は頷き、ジャックさんの後ろからついていった。さっきの男性が開けてくれた扉を出ると、そこには下り階段があった。
(まぁ、当たり前だけど)
今度は、階段を下りるのか。リュックくんの不思議な鎧があれば余裕なんだけど、なぜか怖く感じる。
(変なトラウマになってしまったな)
「うん? どうしたっす?」
「な、なんでもないです」
僕は、階段を下りていった。なんだ、こっちの方が余裕じゃないか。ビビって損した。
そしてジャックさんと、ギルドへと歩いて行った。
◇◇◇
「やっぱり混んでるっすね〜。終了報告と受注のピーク時間っすよ」
ギルドの扉を開くと、大勢の冒険者で大混雑していた。
「もう夜なのに、受注するんですか?」
「いま、女神様の落とし物ミッションが多いんすよ。だから、終了報告をしてすぐに、次の受注をするみたいっす」
ジャックさんはそう言うと、僕の手を握った。迷い子になりそうだもんな。
「ちょっと、ズルいことをするっす」
ジャックさんはそう言うと、ギルドカウンターの横から、事務所の方へと勝手に入っていく。
(列には並ばないってこと?)
「ちわっす」
ジャックさんは、顔が知られているみたいだ。ギルドの職員さん達は、忙しそうにしながらも、軽く会釈をしている。
そして、ズンズンと奥へと進んでいく。ジャックさんは、突き当たりの扉の前で、止まった。
コンコン!
「ジャックっす〜」
彼がそう言うと、すぐに扉が開かれた。中には、妙に色っぽい女性と、10代前半くらいの女の子、そして、なぜか警備隊のレンフォードさんもいた。
「ジャックさん、珍しいわね。そちらの坊やは……」
扉が閉まると、ブワンと何かの起動音が聞こえた。バリアなのかな。
「ちわっす。ライトさんの終了報告に来たんすけど、混んでるから、こっちに来たんですよ〜。レンさん、ここに居たんすね〜」
すると、三人が驚いたように僕を見た。
「あら、うふっ、こんなに可愛くなっちゃったの?」
「うっそ、ライトさん? シャインくんかと思ったぁ」
「えーっ! もうこんなに大きくなったのか」
レンフォードさんの言葉に、女性二人が首を傾げた。この二人は、僕の知り合いらしいけど……。
「ライトさんは、赤ん坊だったんすよ。まだ、あまり記憶が戻ってないから、変なことは言わないでくださいっす」
ジャックさんがそう言うと、二人の女性は互いに顔を見合わせ、妙にニコニコしている。
「ライトの終了報告だね。マリーさん、ライトは、ランクも上がっているはずだよ」
レンフォードさんがそう言うと、10代前半の女の子が立ち上がった。
「ライトさん、ギルドカードを持ってるよね?」
「あ、はい」
僕は、魔法袋から取り出し、女の子にカードを渡した。
「えっ? この国のギルドカード? あー、新たに作り直したんだ。ふぅん、ちょっと待っててね〜」
そう言うと、女の子は部屋から出て行った。
「私達のこと、わかってないわよね? 街長さん」
色っぽい女性がそう言ったのを、ジャックさんが慌てて制している。街長? 僕が?
僕は、こくりと頷いた。
「そういえば、魔族の国で、興味深い噂を聞いたわぁ。うふふ、大魔王の座を、神族のライトさんが狙ってるってね」
「えーっと……あの、失礼ですが、貴女は?」
「ダメっすよ。ライトさんの記憶が……」
ジャックさんは、慌てている。だけど、もう、そんなことはいいんだ。
「ジャックさん、気にしないでください。カースさんの術なら大丈夫らしいですよ」
僕がそう言うと、女性は意外そうな表情を浮かべた。
「あら、カースさんに、さん付けなのね。ライトさんの配下なのに? うふふ」
ジャックさんは、ヒヤヒヤしているみたいだけど、もうそのことは知っている。記憶は戻ってないけど。
「あの、貴女は……」
そう尋ねかけたときに、女の子が戻ってきた。
「ライトさん、ランクが上がってるから、測定してカードを更新してもらうよ。こっちに来て」
「あ、はい」
僕は、女の子に連れられて、能力の測定に行った。あちこちから、ピカピカと光を当てられた。以前と同じだね。
彼女は、カードができたら、部屋に持ってくるようにと、職員さんに話している。
職員さんは、女の子を怖れているのか、めちゃくちゃ緊張しているようだ。
さっきの部屋に戻ると、ジャックさんが、レンフォードさんと色っぽい女性に、何かを話していた。
(たぶん、僕のことだよね)
「えー、あたしに内緒って、ひどぉい」
「ふふっ、ライトさん、おかえりなさい。なんだか、さらに面白いことになっているわね。私も、参加しちゃおうかしら」
(参加? まさか、あの作戦?)
ジャックさんの方を見ると、軽く頷いている。この人達に話したんだ。レンフォードさんは魔族の血が濃いハーフだって言ってたけど……。
「ライトさん、私はマーテルよ。ドラゴン族の魔王だったの」
「ええっ!?」
「ふふっ、そして、この子が、私の娘のマリーよ。戦乱が休戦になったときに、私と役割を交代したの。それまでは、マリーが、ライトさんの街の学生寮の管理人をしていたんだけどね〜」
(僕が住んでいた街の学校の寮?)
ジャックさんが、慌てている。マーテルさんは、そんなジャックさんをからかって遊んでいるのかな。
(ドラゴン族の魔王……)
コンコン!
「ライトさんのカードができました。こちらがミッションの報酬です」
ガチガチに緊張した職員さんが、カードを持って来てくれた。ドラゴン族の魔王なら、当然だ。
(でも、なぜ、ここに魔王がいるんだ?)
僕がカードと麻袋を受け取ると、職員さんはすぐに出て行った。
カードの顔写真は、かなり成長している。と言っても、5〜6歳って感じだけど。
ステイタスを見てみると……うん?
[名前]ライト
[ランク]F
[HP:体力] 900
[MP:魔力] 17,200
[物理攻撃力]6,200
[物理防御力]1,800
[魔法攻撃力]5,500
[魔法防御力]5,800
[回復魔法力]3,200
[補助魔法力]2,200
[魔法適性]火 水 風 土 他
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先週、お知らせしておりましたが、今月から、金土お休み、日曜から木曜の週5更新に変更させていただきます。
次回は、9月5日(日)に更新予定です。
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