ラミの覚悟
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回想(ラミ視点)
ラミはかつて、ガーディスに問いかけた。
「隊長、ドルドス陛下は本当に国のことを考え、国政を行っているのでしょうか。
ゴードン様とは大きく違う……あのやり方に、私は……」
「ラミ。」
ガーディスは静かに言う。
「ゴードン様がドルドス様をお選びになられたのは事実だ。
ならばドルドス様の手腕は、ゴードン様もお認めになられてのことだ。
私達は武力でこの国を守る“ミルズの剣”だ。余計なことは考える必要はない。」
「……はい。」
そう答えるガーディスの横顔は――
まるで自分自身に言い聞かせているように、ラミには見えた。
だが、迷うことはない。
私は幼い頃、故郷で戦争に巻き込まれた。
命の危機に瀕した私を救ってくれたのが、戦士だったガーディス様だった。
両親を失い、独りになった私に、あの人は手を差し伸べてくれた。
「ラミ。君は膨大な魔力と、それを操る優れた制御力を持っている。
その力で――私を助けてくれ。」
あの時の温かい手を、私は忘れない。
〈回想終了〉
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「私は……あの方の優しい手に救われた。」
ラミの瞳が揺らぐ。
「だから、私には関係ない。
たとえ彼の進む道が、正しいものでなかったとしても……!」
その瞬間――
ラミの刀が爆発的に増殖を始める。
しかしその刃は、カミルやクレディアだけを狙ってはいない。
無秩序に、部屋全体を覆い尽くすように広がっていく。
空間そのものを埋め尽くす殺意。
カミルは息を呑む。
「この気配……!魔力暴走だ!」
ラミはカミルと同じく、生まれつき異常な魔力量を持っていた。
だが違ったのは、その制御力だった。
彼女は一度も暴走させたことがない。
だが今――
ラミは自らの意思で、その枷を外した。
「逃げようにも、扉はあの刀の向こう側よ……!」
クレディアの声が震える。
退路はない。
迫りくる刃が、天井も床も視界も塗り潰していく。
「なら……あの刀の隙間を縫って攻撃を当てる。
奴の意識を刈り取るしかない。」
「あの数の刀を!?」
「やるしかない……!」
「くそっ!」
カミルは弓を限界まで引き絞る。
クレディアは氷の矢を生み出し、照準を合わせる。
刃が、部屋のすべてを飲み込もうとする。
そして――
カミルとクレディアは、同時に矢を放った。