その頃、ロックウッド領は
シビルを追い出した領主レナード・ロックウッドは優雅にワインを楽しんでいた。
(ハイルが無事に『剣聖』スキルを得た。ロックウッド家の面目も保たれよう)
だが、レナードのこの優雅な時間は部下達によって壊されてしまう。
「レナード様、こちらの農耕事業についてですが」
「レナード様! ドラグラ山の発掘に遅れが生じておりまして……」
「軍備の予算が足りません!」
レナードの元には大量の陳情と書類が溜まっていた。ここ数年は全てシビルにやらせていたので、書類を見せられてもさっぱり分からないのだ。
大量にあった借金がシビルによって完済されていたのが救いだろう。
(それにしてもこんなに我が領で様々なことをやっておったのか。こんなに色々手を広げる暇があるのなら、少しでも剣の腕を磨け)
レナードは心の中でシビルに悪態をつく。
「主な決定は全てシビル様がされておりました。どうなさいますか?」
家宰であるセバスが少し棘のある声色で言う。
まああんな無能でもできるのなら儂でもできるだろう、とレナードは読んでいた書類をデスクの上に放り投げる。
「農耕事業なんてしなくていい。それを辞めて全て軍備に回せ。農耕なんて、領民が各自でやることだ。我々貴族が手伝わなくてもいい。甘やかすな」
それを聞いて、農耕事業に関わっていた文官が大声をあげる。
「お待ちください、レナード様! 今ようやくシビル様が行っていた農耕事業が実を結びそうなのです。これが形になれば、これまで以上に収穫も――」
「くどい! あの臆病者のやっていた事業だと? やつのような臆病者の言う通りにやっていたら、兵士はゼロになってしまうわ!」
レナードの言葉を聞き、文官はしぶしぶと引き下がった。
「英断でございます、レナード様! これにより我がロックウッド軍は更に飛躍出来ましょう!」
軍備担当の男はそれを聞いてレナードを褒めちぎる。
「我らは武によって陛下の信頼をうけてきた。さらに鍛え上げよ。発掘だが、予算はそこには回せん。ある分でなんとかしろ」
(シビルめ。金儲けばかりして、軍備をケチっておったな。儂なら軍も、統治も上手くやれるだろう)
(だが、これからはハイルが次期当主。強く勇猛なロックウッド家の当主として盛り立ててくれるだろう。領地運営について教えてやらねばならん。セバスも儂の華麗な決断に文句のつけようもなかったのか、黙っておるわ)
レナードは心の中でほくそ笑む。
話も終わったのでレナードは全員を部屋から出すと、再度ワインを嗜む。
「美味い」
少しずつ、ロックウッド領に暗雲が立ち込める。
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