買い占め
移動時間に、羽が暴騰するピークの具体的な日付をメーティスに尋ねたが、三週間程先の話のようだ。
ヘニングに辿り着くと、すぐさまクラリオンバードの羽を求めて店を歩き回る。露店に置いてある羽を買い占め回る。
「こんなに買ってどうするんだい?」
買い占め回っているためか店主に尋ねられた。
「商売を二人で始めたんだけどね。うちは目玉商品がまだないのよ。クラリオンバードの羽って綺麗でしょう? それを服にでも付けて売ろうと思うのよ! きっと売れるわ」
まるで世間知らずな少女のような口調で、ネオンが答える。
「ほう。嬢ちゃんも中々商売上手だ! きっと売れるさ。兄ちゃんもいい奥さん貰ったねえ。大事にしなよ」
その返答に、若い女の子が何か始めた程度にしか思わなかったのだろう、割引までして気持ち良く売ってくれた。
「いえ、別に私は奥さんって訳じゃ……」
とネオンは顔を真っ赤にして答える。
「ハハハ、そうか! 頑張りなよ!」
店主に見送られ、店を去った後、俺が尋ねる。
「その謎の演技必要なの?」
勿論、クラリオンバードの羽を使った商売をする少女の演技についてである。
「演技……うん。全て演技よ。だって買い占め回っていたら怪しいでしょう? けど、若い女の子が、商売を始めるために買うっていうなら筋も通っているじゃない」
「まあ、そうか」
「まだまだ店回るわよ」
交渉はネオンの得意分野だ。俺はひたすら後ろにくっついていた。ネオンは少しでも値下げ交渉をして町中のクラリオンバードの羽を買い占める勢いで買い続けた。金が先に無くなったけど。
ヘニングで一日中買い回り、合計四百五十本の羽を購入することができた。ネオンは満足気に笑っている。
「やりきったわね」
「殆ど残金ないけど大丈夫?」
「そんな生活費かからないから大丈夫よ。シビルの予想が当たるなら、これからも徐々に値上がりしていくと思う。今安いうちに買わないと」
確かにこれからもどんどん上がっていくだろう。俺達は達成感に包まれながらヘニングを後にした。
その後デルクールでいつも通り商売を続けた。そうはいっても、商品を新規で買う金も無いので商品は減る一方だ。それを見て、ネオンビル雑貨店がつぶれるのでは?と考える客も出たくらい。
「私達が買い占めて以来、デルクールでクラリオンバードの羽は出回ってない。やっぱり値上がりしそうね」
「だな。追加で購入できないのは残念だが」
「元々そんな現金は殆どないわ」
現状露店の売り上げも殆ど生活費である。
「今は待ちの時期か」
日に日にすかすかになっていく店を見て、イヴも不安になったのか、会うたびに大丈夫か聞いてくるようになった。
「本当に大丈夫なの? 商品も並べられないなんてまずいんじゃ? 何か手伝えることない?」
「イヴ、ありがとう。でも大丈夫だよ。心配しないで?」
「ならいいんだけど……。だって商売初めてなんでしょう?」
その気持ちは嬉しいが、まさか売れると思った商品を買い占めて金が無いとも言えない。イヴが誰かに喋るとは全く思わないが、これはネオンとの共同事業だ。それをペラペラしゃべる訳にもいくまい。
「大丈夫だって。俺を信じて」
「うん。ごめんね」
イヴは心配なのか商品を一つ買って去っていった。本当に優しい人だ。また必ずお礼をしなければ。
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