デート②
デルクールでの鐘といえば、中央広場の大鐘を指す。広場の下でイヴを待っていると、白い綺麗なワンピースを着たイヴが駆け寄ってきた。その姿は貴族の令嬢のように、上品さと美しさを兼ね備えていた。周りに居た男が皆、イヴを見て振り返っており、自分が釣り合っているのか少し不安になった。
「遅れてごめんね!」
「全然、さっき来たとこだよ」
「そう? じゃあ早速行きましょう! とっても美味しいから期待していてね!」
そう言って、イヴに連れられ、大通りから少し離れた小さなお店に辿り着いた。小さなお城のような、白い漆喰で塗られた落ち着いた店だ。イヴにとても似合うだろう。
店に入ると、初老の上品なお爺さんが出迎えてくれた。白い口髭が綺麗に整えられている。
「おや、イヴさん。今日はお連れ様がいらっしゃるようですね」
そう言って、お爺さんがにっこりと笑う。
「はい!」
「こちらへどうぞ。すぐにメニューをお持ちいたします」
そう言って、窓側の席に案内される。店内も綺麗にされており、少し高そうな雰囲気を感じる。
「ここ、とっても美味しいけど、お値段は手ごろなんだよ! おすすめは、このレイン牛の赤ワイン煮込みのランチかな」
お爺さんから差し出されたメニューを見ると、一大銅貨少し程度で食べれそうだ。三大銅貨はしそうな雰囲気だが、確かにお手頃といえる。
「じゃあ、それにしようかな」
「うん。レイン牛のランチ、二つお願いします」
イヴがお爺さんを呼ぶと、てきぱきと注文をこなす。
「楽しみだ」
「楽しみにしてて。とっても美味しいの! ここにきて数か月で露店まで開いちゃうなんてシビルは凄いねー」
「正直、俺は目利きしかできないから販売は頼りきりなんだ。だから、商人としては……」
「けどがんばってるんでしょう? 目利きだけでも凄いよ!」
イヴからの素直な称賛が面映ゆい。
話していると、ウエイターがランチを持ってきた。皿から美味しそうな匂いと湯気が立っている。とても食欲をそそる匂いに喉が鳴った。
赤ワイン煮込みのスープを口に入れると、その濃厚なレイン牛の旨味のしみ込んだ味わいに頬がとろけそうになる。
「う、美味い!」
自然と口から出てしまった。
「でしょう! レイン牛もじっくり煮込まれてとても柔らかくて美味しいよ」
レイン牛を食べてみると、柔らかく、噛むとほろりと溶け旨味が口内に広がった。
「流石、イヴ。良い店を知ってるね」
「そう言われると照れるよー。ここのオーナーさんは元々王都の有名店で修業してたんだって。地元に戻ってきて、この店を建てたみたい」
この美味しさも納得である。
「この綺麗な店も似合ってるね。今日の姿だと、貴族のお嬢様みたいだ。勿論凛々しい騎士団のような格好も似合っているけどね。そう言えば、イヴだけデザインが違うね」
警備している他の騎士と違い、イヴだけ白を基調とした騎士服を着ていた。初めは女性だからかと思っていたが、どうやら他の女性騎士とも恰好が違う。
「そっか、シビルは他国から来たから知らないんだね。この服は帝国騎士団の服装なの」
帝国騎士団ということは、イヴは王都を守る皇帝直属の騎士団である。すなわちエリート。この町にいる他の騎士はデルクールを管理する領主の騎士。違う所属だったのか。
「なるほど。だからあんなに強かったんだね」
「私は実力で入った訳じゃないから……。親が貴族なの」
そう言って、少し悲しそうな顔をする。これは地雷を踏んでしまったのかもしれない。だが、あの魔法を見る限り実力もあるように思える。
「素晴らしい技だったよ! それで俺は救われたし、きっとこれからも色々な人を救える素晴らしい腕だと思う。貴族かどうかなんて関係ない。俺が救われたのは、ここにいるイヴなんだから」
俺の言葉を聞いて、にっこりと笑う。
「優しいね。けど、私じゃ勝てない魔物や、人もいるからねー」
今度は冗談っぽく言う。
「そしたら、今度は俺が助けるよ!」
「ふふ、ありがとう。けど、ならもうちょっと強くならないとね」
と小悪魔のような笑みを浮かべる。とてもかわいいが、痛いところを突かれてしまった。やはりもう少し剣を学ぶべきなのかもしれない。
「が、頑張ります」
「うん。今はここに赴任してるけどここでも精一杯頑張って、領民の方を守れたら、って思う」
それにしても貴族の娘であるなら、なぜイヴはここに赴任しているのだろうか。俺の国でも貴族の息子達も王国騎士団で鍛錬を積み、箔をつけるということはあった。だが、そういうVIP達は通常王都からはあまり出ない。王都の方が安全だからだ。王国では違うのだろうか。
「イヴならきっと守れるよ」
だが、あまり深く聞くのもどうかと思った俺はそれ以上触れなかった。
その後も、イヴに連れられ町の色々な場所に向かった。イヴは色々な人を助けているのだろう。多くの人に声をかけられていた。
「今日はありがとう、イヴ。とても楽しかった」
「良かった! これからもお店頑張ってね」
日が暮れ始める頃、彼女とのお出かけは終わりを迎えた。上手くできたかは分からないが、楽しかった。彼女も少しでも楽しんでくれていればいいな、とそう思った。
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