「ハイリスク、ハイリターン」
相手のことを聞いておいて、自分のことを何も言っていないことに気づいて小さく唸ってから改めて自分のことを話す。といっても感情が色で見えることは言わない。言ったところで信じる人はいないし、冷たい目で見られる未来が見える。というかそれで問題になって、裏切られた過去があるから、言えるはずもない。
「僕は水上誠。PNはミカミ。職業はハイランダーで、種族はスピリッツレイド」
「ハイランダーにスピリッツレイド……!? 上位職業に上級者向けの種族……なんちゅう組み合わせや……ほんまに初心者かいな……でも魔法耐性があるのはわかった。道理で軽減されてたわけや」
「そ、そんなにスピリッツレイドって評判悪いんだ……」
「悪いもいいもないんよ……このゲームにおいて少民派。魔法と属性補正が高い代わりに消費魔力高いし、スキル値も高いからソロじゃあ使われないんよ。ましてパーティー組むにしても手練れとなら足手まといになるし、初心者同士もお勧めできん。少年のはそういう種族なんや。まあトーカと一緒ならなんてことはないんやろうけどな」
すらすらと話してもらったけど、初めてにしてはありえないチョイスだという。そもそも初めて。それも何も聞かないでならば種族の評価も何もないのだけれど。とりあえず何も教えてくれなかった先輩に冷たい目線を送ってやれば、申し訳なさそうな顔をして頬をかいていた。
直後、話を逸らすように。
「そ、そういえば! 葵達が勝ったら何を頼むつもりだったの?」
「んん? ああ、二つ頼みがあったんやけど、一つはクリアしたな。たった今」
「え?」
「いや、一つはトーカを探すことやったんよ。長いこと行方不明状態やったからな、ここに来たらわかるかと思てたらまさか本人だとはっていうのが今やな」
前からの知り合いならば、音沙汰もなく急に消えれば心配になる。消えてから暫く経っているのならばなおさらだ。
――先輩は幸せ者だな。
話を聞く限り、葵さん達はここに住んでいるわけではなく、別のところから足を運んでいる。知り合いが急に消えた心配がここまでの行動力を生んでいることに、頬が緩む。
「なんや急ににこにこして。気持ち悪いやっちゃな」
「酷いですね!?」
「本当のことやろ。んで、話を戻すけど、もう一つの頼みっちゅうのは、これや」
弁解の隙すら貰うことなく、話が進む。正直、誤解されていては気まずいわけだけど葵さんの口ぶり、色から冗談であることは簡単に理解できた。
少し呆れに浸っていると、机の上にタブレットが静かに置かれる。映し出しているのは宇宙人ともいえる見た目を持つ何か。他に移っているHP、MP表示からしてフィクロの魔物であることが高い。
「こ、これは。星喰らいのアルカディック・デリーター……討伐、解放条件」
「新しく追加された奴だね」
「攻略、大変。ダンジョン最難関。一緒、戦う……だめ?」
「んー……戦力としては申し分ないけど、だめ。情報足りないし、なにより『デリーター』種は、負けると損害激しいからね。もしも経験値食べられたら……」
「重々承知、してる。でも、対策、ある」
――また置いてけぼりにされている。初心者でもわかるように話して欲しいなあ。
なんて思っていると、茜さんと先輩の話に入らないでいた葵さんが声をかけてきた。
「少年、なにかわからん時はちゃんと聞くもんやで。でも今回は教えたる。『デリーター』ってつく魔物はな、定期的に追加されるハイリスクハイリターンのボスの一つなんや。少年も不思議に思わんか? フィクロで使うフィギュアがどこから来ているのか」
「それは、まあ」
ゲーム内に反映されるフィギュアがどこから来ているか。そう聞かれ、ふとゲーセンやグッズショップのことを思い出し考えてみる。
ゲーセンにあるUFOキャッチャーにはフィギュアが置いてあるが、手のひらサイズのものは少なく、フィクロに使える的な商売文句は見たことない。
普通に考えれば商品化されているとしか考えられないが、グッズショップにもフィクロに関しての情報は一切なかったと記憶している。
あとは手のひらサイズであることから、ガシャポン商品である可能性。僕が知る限りでは
USBがついたフィギュアがカプセルの中に入っていたことはまずない。
そもそも仮にも日本で商品化しているのならば少しくらいは名前を聞いていてもおかしくはない。フィクロ自体も先輩から教えてもらうまでは知らないゲーム止まり。
結果、どこから来てるという問いに外国からとしか答えられず、直後葵さんは小さく笑って真実を語った。
「フィクロの一部フィギュアは隠された公式サイトでのみ扱っとる。ただ少年のハイランダーや、茜のエンチャンターみたいな上位フィギュアはな。ゲーム内ドロップ品……今回で言う『デリーター』種が討伐された時にドロップするんや。ドロップ制限はボスによって異なるけどな」