21.まるで孫をかわいがる長老様なのだわ
「ふぅ……これでようやく路銀ができた」
まとまったお金が手に入ったので、いろいろと必需品を買い揃えられる。
買い物が終わったら、いよいよこの街を出発だ。
「臭い消しポーション! 絶対買うのだわ!」
「うんうん、わかってるよ」
ゴブリン臭のトラウマが残っているのか、エチカはやけに気合が入っている。
あ、そうだ。忘れないうちに言っておかないと。
「ねえ、エチカ。さっき言ってくれたこと、すごく嬉しかった。ありがとう」
エチカは俺のことをランクとは関係ないって言ってくれた。
ランク目当てだろうってミティエさんに言われてたから、そうじゃないとわかって本当によかったよ。
「別にお礼を言われるようなことではないのだわ! あの人が非常識なだけ!」
未だにぷんすかしているエチカ。
受付嬢さん、だいぶ切迫した雰囲気だったし……そんなに怒らないであげてもいいんじゃないかな。
ミティエさんの前例があったせいで、俺がそう思うだけかもしれないけど。
「それとも人間の街だと、あんなのが当たり前なのかしら?」
「いや、さすがにそれはないよ」
「それなら安心ね。ああいう手合いが他にも出てくると思うと気が気でないのだわ。いきなり結婚とか……」
むむっ、このタイミングなら聞ける気がする。
えーっと、どう言えば。
「エチカは俺と結婚したい?」
「ス、スラッド! 急に何を言い出すの!?」
「あ、ごめん今のなし」
「それはさすがに無理があるのだわっ!!」
しまったな、聞き方を間違えた。
こういうときに、もっとうまく言葉を選べる人間になりたい。
「い、いや。エチカって俺に森の名前まで教えてくれたでしょ? エルフがそれを伝えるのは、ほら……そういう意味だし」
「うっ……スラッドは知ってたのね」
ぜんぜん知らなかったです。
昨晩、寝物語に聞いたばかりです。
「うーん……恩は感じてるし、家族同然で迎えるとは言ったけど……スラッドの方にあたしと結婚する理由がないと思うのだわ」
エチカが悩みながら言葉を絞り出してくれた。
「逆に言うと、俺がよければいいの?」
「う、ううっ……! いや! そこは、あたしのことをちゃんと見極めて、いいなって思ってくれたら改めて言ってほしいのだわ。さすがに昨日今日会ったばかりで結婚してって言われても、なんだか困るもの……」
顔を赤らめてもじもじしているエチカは、とってもかわいらしい。
「それはそうだよね。よかった」
「なにがよかったの!? その笑顔の意味が知りたいのだわ!」
「なんでもないよ~」
よしよし、とエチカを撫でているとホンワカした気持ちになる。
「なんであたし撫でられてるの!?」
「エチカはかわいいねえ」
「ちょっ、かわいいって、やめて! それにその顔! まるで孫をかわいがる長老様なのだわ~!」
大通りのど真ん中で、周囲に人が集まってきてるのにギャースカギャーと騒ぐエチカ。
まるで子供だ。
いや、実際にまだ子供なんだと思う。
歳は聞いてないけど、エチカは友達の精霊に囲まれてすくすくと育った純真な子じゃないかな。
こんないい子の純情を弄ぶのは、かわいそうすぎる。
いっしょに旅を続けて、俺がそういう気持ちになっていたら改めて聞くことにしよう。
「さあ、人が集まってきたし。早いところ買い物に行こうか!」
「ひ~ん……!」
エチカの手を引いて走り出す。
俺たちの冒険はここからだ!