聖女3.これはもう切るしかないんじゃない?
「あっ、ちなみにボクもスラッドのパーティに合流したから」
「……は?」
あんまりシーチャがあっさり言うものだから、アレスは言葉を失っていたわ。
でも、しばらくすると笑い出したの。
「なんだてめぇら、そういうことかよ」
アレスが舌なめずりしながらこう言ったのよ。
「そんなに良かったのかぁ? そのスラッドの粗●ンはよぉ!」
えっ、スラッドどうしたの?
よく言えたなって?
どういう意味かわからないけど、何か酷い罵倒なんでしょう?
ああ、それでね……アレスが下品な、蛇みたいな視線をシーチャとレメリの体に這わせたわ。
「どうせ、夜によがらせられたんだろ。まったく、サボるだけじゃなくてパーティメンバーの寝取りまでかましてやがったとはなあ」
これは信仰職のわたしでもさすがに何を言っているのかわかったわ。
本当に酷い侮辱よね。
でも、そんなことがどうでもよくなるぐらいスッとすることがあったの。
アレスがさらに何かを言おうとしたときに――
「もう黙れ。スラッドをお前ごときと一緒にするな」
シーチャが、いつの間にか距離を詰めてアレスに短剣を突きつけたのよ!
普段からは想像できないような、すっごくドスの利いた低い声で脅しながらね!
あれ正直、すごくかっこ良かったわよ。
あらシーチャったら、何を照れてるの?
わたしは褒めてるのよ。
ほら、みんなだって言ってるじゃない。
って……なんでシーチャはダッシュで部屋を出てったのかしら?
まあいいわ。
さすがのアレスもいったん大人しくなって、夜も遅いから野営をすることになったのよ。
さあ、ここで問題よ。アレスは何をやらかしたと思う?
えっ、まだ何かあるのかって。それはそうよ、アレスだもの。
わからない? 正解はね――
「キャァーッ!!」
「グワァーッ!!」
深夜にエチカの悲鳴と、アレスがノームのアッパーカットで吹っ飛ばされる声が響いたわ。
そう……アレスはエチカに夜這いをかけようとしたのよ。
信じられる? 昨日の今日どころか、さっきの今でね。
「同じパーティじゃねえんだから、何も問題ないじゃねーか! 恋愛は自由だろ!」
っていうのが、アレスの主張だったわね。
「ここまで下半身馬鹿とはね~。これはもう切るしかないんじゃない?」
「チョッキンするのです」
シーチャとレメリの主張には、さすがにアレスも青くなってたわ。
そこで唯一、パーティに残ってるわたしに泣きついてきたんだけど……。
「勇者としての性能は維持できるし、別に問題ないわね」
「お、おい! お前は俺の味方じゃないのかよ!」
「アンタ、わたしに潰されるほうがいいの?」
さすがのアレスもエチカに全面謝罪して、二度と手出ししないことを誓ったわ。
で、エチカが切るのはかわいそうだから全員が一回ずつ殴るので許すって言ったの。
ここでようやく全員が大義名分を得て、アレスを一回ずつ殴ることができたってわけ。
「そ~れ!」
「あいてっ!」
シーチャのパンチは体格的にもそんなに痛くはなさそうだったわね。
「えいっ!」
「ぶべらっ!」
エチカ、なかなかいいビンタだったわよ!
「さぁて……歯ァ食いしばんなさい? アレス」
「おいおい、まさか本気で殴るわけじゃブベバアァッ!!!!」
聖女になってから人をがっつり殴るのは初めてだったけど、最高の気分だったわね。
《二の打ちいらず》?
使うわけないじゃない。
あなたのスキルと違って任意発動なんだから。
「くたばれアレス、なのでぇす!」
「イギャアアアアアァァァァァァァァァァッ!!!!!!」
ちなみに一番ダメージを与えてたのはレメリね。
吹っ飛んでいったアレスの捜索にはそこそこの時間を要したわ。
さすがは《怪力》って感じかしら。