59.おっ、ハーフエルフ誕生か?
「そんなことないのです!」
「そうね……スラッドがいなかったら、パーティはもっと早くに瓦解してたと思うわ」
「たぶん、ボクも速攻で見限ってたよ」
みんなに一斉に食って掛かられてカシウは少し驚いていた。
「お前、相変わらず女に好かれるなぁ」
「俺が天然の女たらしみたいな言い方はやめてよ……」
俺がげんなりすると、みんなが一斉に喋り始める。
「そうよ、わたしはスラッドのことをそういう目では見てないわ!」
「ディシアは信仰職だからでしょ。ちなみにボクもいい感じのビジネスパートナーって感じ~」
「レメリにとっては大好きなおじちゃんなのです!」
うーん、男女混合の冒険者パーティとしては実に理想的な関係値なんだけどねー。
ハーレム状態なのに、誰にも男として見てもらえないのはちょっと悲しい。
「あ、あたしはその……スラッドさえ良ければいいと思っているのだわ」
「おっ、ハーフエルフ誕生か?」
「そ、そんなんじゃないのだわーっ!」
カシウにからかわれて顔を真っ赤にするエチカ。
それを見たシーチャはニヤニヤしてるし、レメリは興味津々の様子で目を輝かせてる。
ディシアに至っては「結婚するなら、わたし自らが祝福を与えるわよ?」とか言ってる始末だ。
「エルフの森でスローライフかぁ……ありかな」
「スラッドー!? ひーんっ、もうっ、アレスに話を戻すのだわ!」
「ははは、じゃあもっとアレスを酒の肴にしてやろう」
カシウ、本当に楽しそうだ。
普段、王様としてだいぶ苦労してるんだろうなー。
「さぁて、どこまで話したか……一度パーティメンバー選定の話に戻すか。お前ら聞きたそうだし」
グビグビとカシウが杯をあおる。
こんな真昼間から国王が飲んでて、この国は大丈夫なのかな?
飲まなきゃやってられないんだろうけど。
「メンバーを集めるにあたって、いろいろと条件があったんだが。まずアレスは男とは組まんと言った。だから、スラッドだけは荷物持ちとして妥協させて、他は女で揃えたんだ」
「私は志願したのです」
レメリが挙手した。
「そうだったな。お前さんは動機の面でもばっちりだったし、何よりスキルがよかった」
「スキルです? 《怪力》です?」
「そうそう、それだ。パーティメンバーは女じゃなきゃいけないが、アレスに手籠めにされては気の毒だからな。それができないようなのを集めたんだ」
それを聞いたレメリがドヤ顔で細い腕に力こぶを作った。
「……それは聖女のわたしも?」
「それもあるが、神殿側からどうしても入れろというのでな。最初に決まったのがディシア、お前さんだ」
「ひょっとしてさ~、ボクが勇者パーティに呼ばれたのって、小人族でそういう対象としては見られないからとかだったわけ?」
「アレスに幼女嗜好はなかったからな!」
カシウがガハハと笑うのを見て、シーチャがげんなりした。
いや、実際は《才盗り》を見込んだんだろうけど。
「実際、お前さんらの活躍を聞いてこいつはいけるかもって思ってたんだが……歯止めの利かなくなったアレスはどんどん問題を起こして、俺のところに送られてくる陳情書は増える一方だった」
「喧嘩とか盗みはやめるよう言ったんだけど」
「スラッドが口で言って聞くような奴じゃないからな」
カシウが肩をすくめた。
「あとはお前さんらの知っての通りだ。あらゆる意味で勇者パーティの中心になっていたスラッドを追い出したことで、アレスは一瞬で破滅した。半年は割ともったほうだと思うが、最後はあっけないもんだな」
なるほど……カシウの動機は充分にわかった。
だけど、結局は解決策が示されてない。
他のみんなも同じことを考えているのか、カシウの次の言葉を待った。