第75話 最悪の暴露
俺の視線を受けて、高瀬はブルブル震えていた。
俺はそこで分かってしまった。真実が。
困惑はあったが
「町の有力者の息子に虐められているところに颯爽と現れた王子様。好きになってもおかしくないよねぇ。でも、告白してもOK貰えると思えないから友達関係を維持したい、だっけ」
「ワーッ! ワーッ!」
高瀬が叫び出した。
高瀬……
その様子が面白かったのか。
男は笑顔になる。
「……ゴタゴタ全部片付いたから、ここから先の展開が見たいからさぁ」
男は嬉しそうだ。
「ここから先の展開……?」
「そう。展開」
男は俺に目を向ける。
そしてこう続ける。
「……2人の少女の口に出来ていない想いを、キミに聞こえる形で暴露したら何が起きるかなぁ、って」
何が起きるか……?
「わ、私は小学校からずっと桜田君が好きだったッ!」
そのとき。
笹谷が大声で叫び出したんだ。
弾かれたように目を向ける。
笹谷は
「ずっと恋人になりたいって思ってたけど、桜田君と仲良くなる機会が掴めなくて!」
必死の形相で
「そして高校に入って、同じクラスになれたから、これは神様がくれたチャンスだって思ったのに、須藤の奴に桜田君が目をつけられて!」
そんな告白をはじめたんだ。
半泣きで。
ええ……?
「そして桜田君の一番大変なときがやってきたのに、私は目を背けた! 須藤の家に目をつけられて、将来就職がダメになったらどうしようって思えてどうしても動けなかった! 情けなかった!」
「……全くだよね。2年で同じクラスになったとき、ノートの隅に桜田理恵なんて書いて喜んでいたくせにさぁ」
男からの更なる暴露。
その途端、笹谷は
真っ赤になって、次の瞬間
「わあああああん!」
……とうとう、泣き出した。
まるで5才の子供みたいに。
てめえ!
俺は反射的に男に飛び掛かり、殴り掛かっていた。
少し遅いかもしれないけど、こいつのやってることの酷さに気づいたんだ。
だけど
「おっと」
男は。
俺の背後に移動していた。
声がすぐ後ろからしたんだ。
……テレポート?
振り向き拳を振るう。
空を切る拳。
……男が5メートルは向こうにいた。
「ボクだって殴られたら痛いんだよ。怒り過ぎだろ、キミ」
やれやれ、とため息を吐くような仕草をして、男は
「もうちょっとさあ、秘めた恋を暴露されて泣いてしまう子から何か摂取しようとかさあ……」
「やかましい!」
俺は男の言葉を遮った。
許せなかった。
別に俺はフェミニストでも何でもないが
こんなの、誰だって許せないと思うだろ。
誰だって、触って欲しく無いこととか、秘めておきたいことがある。
それをこうして晒し物にして、愉しむだと……?
……見過ごせるかよッ!
俺のそんな怒りを。
男はポカンと見つめていたけど。
次の瞬間、笑み崩れた。
俺は
「何が可笑しい!?」
怒りの声をあげたが
男は……
「……後ろを見てみなよ」
笑いを堪える表情で指差す。
……後ろ?
するとそこでは
「大事なときに逃げた人に、桜田君を好きになる資格なんて無いっす!」
「酷い! 好きになるのは自由じゃない!? あなたに私の気持ちが分かるのッ!?」
……笹谷と高瀬が、言い合い……喧嘩をはじめていたんだ。
愉悦部。
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