カルテID#008 倉河みおり様
たこす様企画「だーれだ企画」で、よつ葉の作品を当ててくださった副賞作品です。
「今日は、倉河みおり様の検査入院が予定されています。外来受診して入院許可が出たら連絡がきますから担当は菜須さん対応お願いします」
「はい」
申し送りをして夜勤ナースから日勤ナースに引き継ぎが行われ1日が始まる。
入院予定の倉河さんの入院準備を進めておく。比較的落ち着いている病棟。それでもナースは、バタバタ忙しく動き回っている。内線が鳴り近くにいた先輩看護師が電話を受けた。
「よつ葉、外来から倉河さんの入院許可だって」
「はい。迎えに行ってきます」
「よつ葉、迷子にならないでね」
「いやいや、外来棟に行ってくるだけですよ」
「新人の頃、迎えに行って内線してきたので誰だっけ?」
「そんなことありましたっけ?可愛らしいですね」
「年数重ねるとつまらなくなるわねぇ」
「……」
そんな会話をして、病棟を後にして外来棟へ向かう。以前は、年配のボランティアの方々が検査室や病棟の案内、その他雑務を担ってくれていたがコロナ禍においてボランティア活動が無くなり看護師が自ら行うことに変更された。
「内科病棟の菜須です」
「内科外来の鴻上です」
内科外来から病棟看護師へと引き継ぎを行う。引き継ぎが終わると鴻上看護師が倉河さんに声をかけた。
「倉河さん、こちら病棟でお世話をしてくださる菜須さんです」
鴻上看護師に続き、私も声をかける。
「内科病棟の菜須です。わからないことや不安なことは遠慮なく聞いてくださいね」
「よろしくお願いします」
「それでは病棟にご案内しますね」
軽く挨拶を交わして病棟へ向かう。その途中で同期の紺野君とすれ違う。
「よつ葉、小野の件なんだけど」
「案内中だから日勤終わったらで良かったら連絡する」
「おぉ、内線して迎えにいくわ」
「わかった」
「後からな」
紺野君は、ICUへと戻っていくようだった。
「彼氏さんですか?」
「えっ? 紺野君がですか?」
「今の紺野さんって仰るんですか」
「大学からの同期なんですよ」
「そして、今は大切な人!?」
倉河さんからの突っ込みは続く。
「大切な友人ですかね」
「そこから進展は?」
「ないですよ。きっと」
「菜須さん可愛らしいからお声がかかるでしょ」
ふふっと笑って、質問をしてくる倉河さん。これがきっかけで病棟でも女子トークが繰り広げられるとは思ってもいなかった。
「1005号室の奥の右側が倉河様のベッドになります」
同室の患者さん達にも声をかける。
「今日から入院になります倉河さんです。みなさん、仲良くしてあげてくださいね」
「よろしくお願いします」
倉河さんも同室の方と挨拶を交わしてベッドへ向かう。
「病棟の説明や医師からのお話はお声かけしますね」
「はい、わかりました」
「ゆっくりなさっててくださいね。何かありましたらナースコールしてくださいね」
「はい。よろしくお願いします」
私が病室を出ると患者同士で話に花が咲く。
「よつ葉ちゃんが担当なんですね」
「そうみたいです」
「からかい甲斐があるわよ」
「そうなんですか?」
「でも最近は逃げ足が早いのよ。慣れてきたわね」
「可愛らしい方ですね」
「色んな意味でね」
「同期の方と楽しそうな会話されてましたし、明るい方ですね」
「同期!? 男? 女?」
「男性でしたよ。しかもかなりイケメンな」
よつ葉の話題で盛り上がるこの病室。入室する度にあれこれ質問責めを受ける。よつ葉が苦手とする病室でもあった。
◆◇◆◇
「倉河さん、検査結果ですが異常なしですよ。免疫力が下がっていて倦怠感が強く感じられたかと思います。内服薬と点滴処置で数値も改善させてますし問題ないと思います。退院で大丈夫だと思います」
「ありがとうございます」
無事退院が決まった倉河さん。退院まで病室の方とよつ葉の話題で盛り上がることを忘れなかった。
それでは、倉河さま専用の診察券をお作りしました。
【カルテID#008 倉河みおり】診察券お渡ししておきますね。いつでも、なろう大学附属病院に来院してください。