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モブ顔高校生とTS魔女の現代ダンジョン - 第二章 プロローグ
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モブ顔高校生とTS魔女の現代ダンジョン  作者: たろっぺ
第二章 変化を強制された世界
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第二章 プロローグ

第二章 プロローグ




 5月も折り返しとなった今日この頃。社会は、世論は大きな変化を見せていた。



『だからですね!ダンジョン対策庁への動員についてもっと議論を重ねなければならないと────』


『それで犠牲者が増えたら一体どう責任をとるんですか!今は一刻も早く、魔物関連の事件を防ぐ存在がですねぇ────』


『やっぱ魔物って恐いんだなぁって……むしろ今までなんで大丈夫だったのか不思議なぐらいですよ』


『これまで既存の霊能組織?とかいうののおかげで国が安全でしたからね。そこに今後は、正式な予算をつけるという形でいいんじゃないでしょうか?』


『───教授のお話では、魔物の最も恐ろしい所はその姿が見えない事だとか。どうにかして、一般人でも見える様にする手段はないんですかね?』


『研究を進めていかないとわからないでしょう。ただ、天使が言っていたタイムリミットも気になります。それまで間に合うかどうか……』


『ダンジョン対策庁の活躍に期待ですね。ただ、その件に関して木下元総理に協力要請が政府からあったという話があるのですが』


『はい。木下元総理は体調不良を理由に断ったとの事です。現在木下元総理は地元愛知の病院に通っているという情報が────』


『テレビを見ている、異能者という存在になった皆さん。貴方達の協力が必要です。どうか、ダンジョン対策庁へいらっしゃって下さい』



 ダンジョン対策庁への見方は、ゴールデンウイークに起きた魔物の侵攻により180度変わったらしい。


 テレビは勿論、ネットでも如何にダンジョン対策庁が必要かについて語られていた。もっとも、ネットの方だと色々な意見が飛び交っているけど。


 ただ心配なのは、『天使の降臨によって異能者となったのにダンジョン対策庁に協力しない異能者は非国民だー』、なんていう書き込みも目立つ。


 この前まではあれだけ『徴兵じゃないのか』と騒いでいたのに、と思うも……あの光景を見た身としては、彼らがそう言うのも否定はしきれなかった。


 だが、ダンジョン対策庁の裏に『残り火』がいるのが問題である。正直、信用できない。実力も、倫理観も。せめてどっちか片方でも信じられるのなら、なぁ……。


 とりあえず、巴君も市役所に異能について申告する事になったが、15歳という事で対策庁に入らないといけないなんて事はなかった。


 ……今後、急な年齢の引き下げとか、強引な勧誘がない事を祈るばかりである。


 そんな感じで社会は変わっているのだが、自分の日常に大きな変化はない。


 ゴールデンウイーク中に覚醒修行とやらをしていたクラスメイト達がその思い出話に花を咲かせているのを、スマホを眺めるふりして聞いていたぐらいだ。


 少し。本当にほんの少しだけ寂しい高校生活を送りながら、土曜日。


 自分達は、ヴァイオレットさんの店に来ていた。


「バロンの巨剣……500万円の値段をつけさせて頂きまーす」


「おおおおお!」


 巴君と2人して、雄叫びを上げてガッツポーズをする。


 この前売った大太刀の倍以上の値段だ。これは本当にありがたい。


 なんせ、


「これで装備が新調できる……!」


「帰ってからまぁじで焦ったぜ……」


 ドラウグル達との戦い。それにより、巴君が使っていたサーベルは酷い刃こぼれと歪みを刀身に生じさせてしまったとか。


 自分に至っては、盾と警棒は完全に修復不可能。防弾チョッキもいつの間についたのか、傷と穴だらけ。ヘルメットは割れていたし、軍服もあっちこっち破れてしまっていた。


 これはもう暫く初期装備でいるしかないかと、頭を悩ませたものである。


「それと、川内様が持ち込んでくださったこちらの鉈。50万円で買い取らせて頂きます」


「え、いいんですか!?」


 その鉈、近所のホームセンターで買った農作業用ですよ!?


 この前の包丁は20万だったのに、かなりの値上がりである。包丁より鉈の方が武器として使いやすいからだろうか。


「その、どうして倍以上に……?」


「需要が高まっているのもありますが、何よりエンチャントの質が向上している事ですね」


「え?……あ、ほんとだ」


「おい生産者」


「いや生産はしてねぇよ。付与しただけで」


 巴君にツッコまれながら、ヴァイオレットさんが握る鉈を改めて見る。確かに纏っている魔力の量が倍近く増えていた。


 これもレベルアップの影響だろう。異能の出力やできる事も、レベルに比例して増えているし。


「時に幸太朗」


 ぽんと、巴君が笑顔でこちらの肩を叩いてくる。


「この前の約束、忘れてないよな?」


「あ、はい」


 恐らく、ドラウグルの時散々迷惑をかけたのでスイーツを奢れという話だろう。


 自分も冷静になって反省していたので、異論はない。


「奢らせて頂きまーす……」


「おう。滅茶苦茶高いの買わせるから覚悟しておけ……!」


 わぁ、笑顔がこんなに怖いって思ったの初めてー。


 現実逃避してもいいじゃない。命が懸かっていないんだから。


 遠い目をする自分に、ヴァイオレットさんが笑みを浮かべる。不思議だ。魔物である彼女の笑顔はとても綺麗である。


「それで、本日はお買い物をされていきますか?」


 営業スマイルだった。



*    *     *



「お買い上げありがとうございまーす!」


 そんなこんなで、無事ドラウグル戦で使用したのと同じ装備を確保できた。


 買いたい物は買えたし、物は後で例の転移使いの業者さんが運んでくれるらしいのでそのまま帰る事に。


 だが、踵を返した所でヴァイオレットさんに呼び止められる。


「あ、そうそう。2つ、お伝え忘れがございました」


「はい?」


 疑問符を浮かべて振り返れば、ヴァイオレットさんがニコリと笑みを浮かべる。


「まず1つ目。本日の午後1時に『マギアストア』のアップデートが終了するのですが」


「ああ、そう言えば12時から1時間メンテナンスがとか書いていましたね」


「え、そうだっけ?」


 ギョッとする巴君。いや、サイトのメッセージに書いてあっただろう。


「ですです。メンテナンス終了後、とってもお役に立つ機能が実装されたので是非ご活用下さい」


「はあ……ちなみに、どういう機能なんですか?」


「それはぁ……秘密でーす☆」


 わーい、と両手を上げるヴァイオレットさん。


 何故ここで言ってくれないのかと思うが、その乳揺れでこれは無粋な質問だなと思った。


 巴君と頷き合い、『ナイスおっぱい』と思いを共有する。巴、マイフレンド。


「まあ、警戒はしなくて大丈夫ですよ~?なんせ天使さんのお墨付きを貰っているので~」


「天使さんから?」


 あの国会議事堂の上で、今も羽にくるまっている天使さんを思い出す。


 自分にとっては色々と恩のある存在だが、世間にとってはそうでもないらしい。現在、質問に答えろとか、魔物を何とかしろとか。そういうデモが国会の上にいる天使さんに向けられている。


 それに対し天使さんは沈黙。他の天使達も同様で、ずっと羽にくるまったままだ。


「はい~。ですから害になる事は~……たぶん、恐らく、ない……と、思いますよ?」


「滅茶苦茶不安になったんですけど……?」


 垂れ目がちな三白眼を逸らすヴァイオレットさんに、冷や汗を垂らす。


「いやぁ。これについては『使う人次第』なので。まあ、倫理と礼節を持っていれば大丈夫なものですから」


「は、はあ……」


「そぉんな事よりですねぇ!」


 勢いよく手を打ち合わせ、ギザ歯を見せながら笑うヴァイオレットさん。


 あ、この件これ以上聞いても答えてくれないやつだな?


「お2人とも、自分専用の『異界』を作ってはみませんか?」


「「……は?」」


 なんて?



*    *     *



 ヴァイオレットさんのお店から帰り、家で家族と昼食を済ませて。


 自分は部屋のタンスを開いていた。クローゼットの上の方には上着とか制服がかかっていて、下の方に木製の少し古いタンスが入っているのである。


 タンスの方は小さい頃から使っているので少し年季が入っているが、造りはしっかりしていた。少しがたつくも、一番下の引き出しを開ける。


 中に入っていた下着や靴下を取り出し、帰り道で買った100均の収納ケースに移していく。


 そして、空っぽになった引き出しを少しだけ戻して、半開き状態で中に宝石の原石を置いた。


 特に加工もされていないし、形が良いわけでもないあまり価値のない原石。


 しかしそれが、今は妙な存在感を持っていた。


 というのも……直前で、自分が全力で魔力を籠めてみたのである。エンチャントをかけたわけではなく、本当にただ魔力をぶち込んだだけ。


 その状態で引き出しの中にいれた後、完全に閉じてから今度は外側から魔力を流し込んだ。


 中々の量を持っていかれるのを感じながら、ふと、それが途絶えた。


 ヴァイオレットさんの説明では、これで『完成』のはず。そう思い、ゆっくりと引き出しを開ける。


「おおお……!?」


 半開きの引き出しから覗く『景色』に、驚きを隠せない。


 上から見下ろす様な形で、柔らかそうな土が3メートルほど下に見えているのである。


 思わず横から確認するも、そこにはタンスの引き出しと床があるだけ。土の地面なんてない。


「マジかぁ……すっげぇ……」


 そう呟きながら、ダンジョン用の靴を取り出して床に敷いた新聞紙の上で履く。


 引き出しをもう少し開いた後、思い切って中に飛び込んだ。


「エクレール」


 守護騎士を顕現し、キャッチしてもらう。この高さなら無傷かもしれないが、念のためだ。


 ゆっくりと地面に卸してもらい、小さくお礼を言ってから周囲を見回す。


「これが、僕の異界」


 空に広がる青空に、サンサンと輝く太陽。遠くには美しい山々が見え、足元は色の濃い柔らかな土が敷き詰められていた。


 少し歩いて手を伸ばすと、やはりというか『壁』に突き当たる。


 そう、遠くに見える山々も空に輝く太陽もまやかしだ。張りぼてと言っていい。


 実際の広さは1辺3メーターちょっとの立方体。それがこの異界である。


 だが、こうして直に目にすると感慨深いというか、何というか……。


『人工異界』


 その名の通り、人が作り出した疑似的な異界である。


 要石となる宝石、あるいは魔道具を中心に魔力を『箱』の中で渦巻かせ、中の魔力濃度をこの世ならざるものにして異界を生み出す……らしい。


 正直、詳しい理屈はさっぱりだ。巴君が持っているバッグと違って遠距離を移動させる事はできないが、家の中にこうして自分だけの秘密基地を作れるのは非常に嬉しい。


 単純に心が躍ると言うのもあるが、実益も大きいのだ。


 要石を追加すれば、異界の広さも変わるだろう。ここで何をするのか、それを想像するだけでワクワクしてきた。


 それにしても……。


「栄養豊富そうな土だな……いや、農業の事は詳しくないけど」


 地面を触ってみたが、黒くて柔らかい。しかし柔らかすぎるという事もなく、指を押し込んだら少しズブズブといく程度。


 エンチャントで出来る事も増えたし、畑を作るのもいいかも?


 でもなぁ……農作業って、絶対大変だし。親戚に農家さんがいるからわかるのだ。正直、なりたいとは思えない。


 人工異界は、作った人間の性質に影響されて中身が変化するとか。自分の場合『固有異能』が影響したのかもしれない。


 まあ、一端保留でいいだろう。エクレールに手伝ってもらって異界から出て、靴を脱ぐ。


 今度、ヴァイオレットさんのお店で何か攻略に使えそうな植物の種でも買おうかな。と、考え、もうアプリのメンテが終わっている事に気づいた。


 人工異界に夢中で、完全に頭から抜け落ちていたらしい。スマホを手に取り、『マギアストア』を開く。


 さてはて、いったいどんな機能が追加されたのやら。


「ん……?」


 端の方に『NEW』と書かれたアイコンを見つけ、タップする。そして、その内容は。



「新規異能者専用掲示板、『アビス』?」



 ……魔物なのに現代文明に適応しすぎじゃないですか、ヴァイオレットさん。





読んでいただきありがとうございます。

感想、評価、ブックマーク。創作の励みとなっております。どうか今後とも今作をよろしくお願いします。


※掲示板サイトが出てきましたが、掲示板そのものが描写されるのは今作だと少ないと思います。



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― 新着の感想 ―
…やはりメ◯テンでは?ワイは訝しんだ。
[良い点] 残り火って名前が自虐的過ぎて(笑)
[一言] バケツ頭「プライベートラブホのことを人工異界って呼ぶのはやめたまえ」
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