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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる - 第45話 止められない理由
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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 蒼野湊


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第45話 止められない理由

 間違っている。


 そう言い切るには、

 数字が良すぎた。


「……成果は、

 確実に出ています」


 評議会の席で、

 誰かが言う。


「一部に負担はあるが、

 全体としては成功だ」


 その言葉に、

 反論できる者はいない。


 俺も、

 例外じゃない。


 数字は、

 確かに改善を示している。


 削減率。

 進捗。

 評価。


 どれも、

 嘘じゃない。


「……止めるべきだと

 思われますか?」


 会議後、

 若い事務官が、

 小さな声で聞いた。


「思う」


 俺は、

 即答した。


「では、

 なぜ――」


「止める権限がない」


 それだけじゃない。


「そして、

 止めれば

 俺も同じになる」


 事務官が、

 顔を上げる。


「同じ……?」


「政治になる」


 数字を根拠に

 誰かを止める。


 それは、

 俺が今まで

 避けてきた行為だ。


 午後。


 模倣者の最新説明資料。


 以前より、

 文字が多い。


 言葉で、

 補っている。


「……苦しくなってきていますね」


「そうだな」


 だが、

 それでも。


 まだ崩れていない。


 止めれば、

 「嫉妬」

 「保身」

 「前任者の反発」


 そう解釈される。


 正しさが、

 正しさとして

 受け取られない。


 夕方。


 ヴァルドの言葉を、

 思い出す。


人は、

数字の使い手を選ぶ


 今、

 選ばれているのは、

 俺じゃない。


 夜。


 帳簿を閉じる。


 俺の役目は、

 正解を叫ぶことじゃない。


 正解が壊れる条件を、

 見逃さないことだ。


 止めるのは、

 今じゃない。


 数字が、

 自分で耐えられなくなる瞬間だ。


 成り上がりは、

 動くことじゃない。


 動かないことで、

 意味を持つ瞬間を

 待てるかどうかだ。


 そして今。


 王都の改革は、

 まだ成功している。


 だが――

 その成功は、

 すでに

 期限付きだった。

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