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日本を未来へと導く者 ~陸上自衛官、江戸に立つ - 蝦夷へ 決断の時
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日本を未来へと導く者 ~陸上自衛官、江戸に立つ  作者: はぐれ火星人
徳川家宣政権…翔馬、伸び伸びとやりたい放題する

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蝦夷へ 決断の時

秋の気配が江戸にも深まったころ、北からの報が静かに、しかし確かに翔馬の耳へと届いた。

蝦夷地発の情報に広範囲にアンテナを張っていた結果でもある。


北廻船の乗員が居合わせた幕府役人を通じて伝えたのは、松前藩領内で複数のアイヌ村が次々と抗議の声を上げ、それを藩が武力で押さえつけているという知らせだった。

聞けば、松前藩とアイヌとの間では、常に小さなトラブルが発生しているらしい。今回は、とりわけ大きな騒動に発展しているとのことだ。


詳報はまだ届いていない。だが、事態はすでに半月を経て膠着し、火種は広がりつつある…そんな空気だけは確実に伝わってきた。


翔馬は家宣を訪ね城に向かう。書院の障子越し、窓の外には色づき始めた庭木が揺れている。将軍は静かに顰め面を作り、問いかけた。


「翔馬、松前の一件、お主ならどう対処する?」

翔馬は一呼吸置いてから答えた。


「家宣さま。蝦夷地は、将来この国の北を守る要の地になります。百年先の話を申し上げれば、白人のルーシ帝国が我が国の北へ迫ることも予見されます。私の時代の歴史では、我々はルーシ人に樺太と千島を武力で取られ、蝦夷地が最前線となっております。逆を言えば、我々は未来を知っているからゆえ、今、適切に蝦夷を処置することで将来の憂いを払拭できると考えております。アイヌはぞんざいに扱ってはなりませぬ。私は、ここでアイヌと和人の衝突を鎮め、同時に北方の拠点を築くための基礎を作りたいのです。どうか全権を私に委ねていただけませんか。任された以上は、決して悪いようにはいたしません。」


家宣の目が鋭く光った。しばしの沈黙の後、将軍はゆっくりと頷く。


「お前の言葉に困惑はない。だがそれは大きな賭けだ。松前藩を揺るがせることにもなる。よいな、異論が出た場合は我が前で申し立てよ。だが、私の答えは変わらぬ。翔馬、アイヌと和人の衝突を回避せよ。全権の委任はここにする。ただし、万一のことがあれば、その責は重いぞ」


翔馬は深く一礼した。胸中の決意が、額に汗となって浮かぶ。


「御意。穏便には対処しますが、もし松前藩との騒動に発展したならば、私が責任をもってそれを鎮めます。私はすぐに出立いたします。まずは仲介と事実の確認を優先し、以後の策は現地の実情に合わせて臨機応変に練ります」


その日のうちに密の会合は終わり、翔馬は急ぎ未来館へ戻った。滞りなく、前部ハッチ型の最新揚陸艦に物資を積み上げる。毛布、医薬品、交易品、交渉で用いる贈答品、そして必要最低限の兵具と通信機器。同行は交渉の才に長けた岡部、そして信頼できる側近数名、幕府から派遣される武人集団である。皆、表情を引き締めていたが、翔馬の目には冷静な焦燥が灯っていた。


艦のタービンに火が入り、蒸気と鋼鉄の匂いが甲板を満たす。舷側の滑り出し板が下り、揚陸艦は桟橋を離れて北に向かう。周囲の見送りは最小限に抑えられ、出航の知らせは秘されている。それが家宣の望んだところだ。事を荒立てず、しかも迅速に事実を把握せよ──命は重い。


海上は秋の陽に薄く光り、波は低く穏やかだった。機関は調子よく唸り、揚陸艦はみるみる速度を上げる。計器は28ノットを指し、実速は時速50キロ。江戸を背にし、艦は北へ、函館へ向けてまっすぐに舵を取った。目指すは松前代官屋敷。

そこに事の発端と、これからの交渉の鍵がある。


翔馬は艦上で一枚の地図を広げ、指で北海の線を辿る。潮風が顔を撫で、同行の者たちはそれぞれに装備の最終確認をした。艦の奥では荷役夫が重い箱を納め、岡部は懐から小さな帳面を取り出してそっと頁をめくる。沈黙のなか、誰もがこれから起こる事態の重大さを噛みしめていた。


「行くぞ」と翔馬は淡々と言った。言葉に余韻はない。だがその声は、艦全体にぴんと張り詰めた緊張をもたらした。秋の北海へと走る揚陸艦は、小さな点のように水平線へ伸びていく。そこで翔馬が何を見、何を決断するのか…幕府の未来を左右する一駒が、いま動き始めたのだった。

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