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日本を未来へと導く者 ~陸上自衛官、江戸に立つ - 久々に発明に没頭する 硫酸と画期的なアレ
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日本を未来へと導く者 ~陸上自衛官、江戸に立つ  作者: はぐれ火星人
徳川家宣政権…翔馬、伸び伸びとやりたい放題する

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久々に発明に没頭する 硫酸と画期的なアレ

翔馬が江戸へ戻るや否や、真っ先に取り掛かったのは「化学の母」と呼ばれる物質…硫酸の製造だった。

硫酸は、鉱石の精製、肥料、染料、爆薬、そして蓄電池に至るまで、あらゆる化学反応の基盤を成す。これなくして近代化は始まらない。そして、九十九里で作成されたアンモニアも利用すれば、念願のタングステンの抽出が可能になる。


翔馬は、大江戸未来館の裏手に新たな実験棟を建てた。幅五メートル、高さ二・五メートルの鉛製反応室…鉛室法による硫酸生成のための設備である。


燃焼室では硫黄を燃やし、そこに硝石(硝酸ナトリウム)を加えて二酸化窒素を発生させる。それを鉛室へ導き、水蒸気と反応させることで、ゆっくりと硫酸が形成される仕組みだった。

硝石は言い訳をつけ、火薬奉行よりかなり多めに融通してもらった。


「上手くいってくれ!成功すれば、化学の大きな一歩になる。」

翔馬はその光景を見つめながら、注意事項を散々教えながら助手たちに硫酸の偉大さを語った。


夜通し交代で反応を維持し、翌朝にはようやく透明な液体が滴り落ち始めた。

一日に得られるのは100リットルほどの希硫酸。計算では、濃度は70%くらい。濃硫酸として使いたければ必要に応じて加熱濃縮する必要がある。濃縮するのにはたいした技術は必要ない。

希硫酸でも今では十分だ。むしろ希硫酸が欲しかった。

翔馬にとっては歴史を動かす第一歩だった。


精製を終えた硫酸は、厚手のガラス瓶に詰め、毒物の印と品名を添えて薬品庫に厳重に保管した。


すでに次の準備は進められていた。

電気の時代を幕府に根付かせるための、最初の“蓄電装置”…鉛蓄電池である。

発見からの歴史は長いが、その信頼性から21世紀でも車のバッテリーとして使われている馴染みの深いものだ。

抽出されたばかりの希硫酸は、この電解液として必須になるのだ。


電気絶縁用に開発した柔軟ガラス「ガラスワニス」を薄板に加工し、正極と負極を仕切るセパレーターに使用。

電極には、鉛をニッケル合金の網へ塗布して焼き付け、耐久性を高めた。

筐体は耐酸性の高いセラミック製。内部には適正濃度に薄めた希硫酸を満たす。

翔馬がいない間に、これらの見たこともない道具を指示のもと生産させていた。


最初の試作機は幾度も失敗した。

セパレーターの取り付けが甘く、電解液が漏れた。また、厚さの調整と均質化で苦労した。

電極の鉛層が剥がれ、短絡を起こしたこともある。

何度も焼き直しで時間を食った。

それでも、数十回の改良を経て、ついに小さな光がともった。


「……ついた。やった!やったぞ!」

翔馬はガッツポーズをし、派手に喜ぶ。


いかに偉大な発明かを実感できない助手たちはその光景を見て息を呑む。

翔馬は、思わず両手でその光を包み込んだ。

「これが、夜を照らす力だ。」

電圧計はまだ作られていない。だが、原理からすればおおよそ12~13ボルト…現代の自動車用バッテリーに匹敵する電力が蓄えられている計算になる。


わずか一つの電池が、灯をともす。やがて百、千と並べば、町も工場も照らすことができる。

翔馬はその瞬間、確信した。

「文明は、光と共に歩むのだ」と。

まだ大量に電力を要する機械は実用化されていない。しかし、蓄電池があることで、無線の電源として、『声の箱』ラジオの電源として、そして、電灯へと使えるのだ。ここから派生できる技術は無限大に広がる。まずは、携帯無線機を手回し発電で蓄電し、モシリの各村に設置することを目的とする。


それと、小田原タイルの製造工場に、硫酸と塩酸を持ち込み、火山灰を化学還元する仕組みを作るよう、早速指示をする。それにより、火山灰からケイ素を抽出できる。二酸化ケイ素、いわば水晶の粉のようなものだ。これを素にタイルとして錬成すると、透明に近い乳白色のものができるはず。既にできた国道は仕方ないが、今後はこの乳白色タイルを道路の白線として利用できるようにしたい。化学処置の副産物でアルミニウム化合物も手に入るし、夢は膨らむ。


助手たちに性能試験を任せ、翔馬は次の段階へと進む。

「発電の汎用化だ。」


火力発電の基盤がまだ整っていない今、蓄電池を生かすには、小規模でもどこでも電力を得られる仕組みが必要だった。

川の水流を利用した小型水力発電を標準化し、各地に展開する。風の強い地には風力発電機を…それも、21世紀で試みられていた「螺旋翼型」のものを小型化して再現させる。


そして翔馬は命じた。

「ガラスワニスを使った絶縁電線を大量生産せよ。これからの時代は、電線が血管となる。」

助手たちは一斉に走り出した。

硫黄の匂いがまだ漂う実験棟の片隅で、翔馬は静かに目を閉じた。


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