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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ− - SS.3 慟哭
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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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SS.3 慟哭

錐揉みするように吹き飛ばされて行くアーネス。

直後に同じように宙を舞うジェス。


その光景がミリアの中にある、苦味が強い思い出を呼び起こし、全く違う光景なのにダブって見えた。


現場が収まり、仲間の死を悼む慟哭や苦悶の呻きはまだ響いていたが、片付けられて行く中でミリアは、そっと溜息を吐き治療の為に運ばれて行く二人の後を追った。

「ウラ。」

彼女の口から零れた声は、誰にも、彼女自身の耳にも届いては居なかった。


今でこそ、この協会支部で人気の冒険者の一人となったミリアだが、当然のように駆け出しの頃はあった。

今回のムカデ騒動で久しぶりに組んだ獣人の兄弟、ザラの二つ下で、鼻っ柱が強いミリア、それにもう一人、彼女と同い年で兄弟の三男坊のウラは、売り出し中の若手の中でも頭半分ほど抜け出した存在だった。

何故三人と組む事になったのかは、いまいち覚えていなかったが、何度か組んでいるうちにいつの間にか固定のパーティのようになっていった、彼女はそう認識していた。

三兄弟の中でもウラとは何故か気が合った。

上二人とは違ってパッチリとした二重の目と、いつもにこやかに笑う出会った頃の表情が今でも、心に残っている。


ミリアは幼い頃から腕っぷしには自信があった。喧嘩は負け無し。

近所の女ガキ大将。

そんな彼女が初めて喧嘩で負けたのは、頭一つ小さなウラだった。

きっかけは些細なもので取り巻きと遊んでいたミリアが、通り掛かったウラとぶつかったとか、そんな感じだった。

「悪いな。」

と顔も見ずに言ったミリアに、

「女のくせにデカい顔すんな、ブス。」

とウラが返したのが、開戦のゴングとなった。

「誰がブスだ、コラァ。」

と叫び、綺麗に顔面に拳を入れて勝ったと思ったが、倒れず踏み止まったウラに、直後に足を掛けられてひっくり返され、後ろ手に組み敷かれた。

悔しさと恥ずかしさで顔から火が出そうだったが、不思議と恨みは持たなかった。

「こないだは俺もブスは言い過ぎだった、ゴメンな。

てかお前、黙ってたら可愛いな。」

とわざわざやって来て謝ってくれたのも、言われ慣れてない可愛いって言葉に動揺したのもあったが。


なんだかんだで仲良くなり、色々話をするようになって、ウラに兄弟がいる事も知った。

「兄貴達さ、冒険者やってるんだ。

俺もこないだ登録してさ。

お前もやんない?

よかったら、一緒にさ。」

ある日そう言われ、ミリアも冒険者をやる事に決めた。

祝祭を一年半後に控え、成人してからどうするか悩んでいたので丁度よかった。


体が周りの同年代より大きく、腕っぷしにも自信があった。

女騎士の鎧姿や制服姿にちょっとした憧れもあったが、字が読めないわけではないが、得意ではなかったので書類仕事がある事を両親に言われ諦めていた。

その両親は前年と今年に入って、パタパタと病気に掛かって亡くなっていた。

早くから実家の酒場を手伝っていた、五つ上の兄が店を引き継ぎ、ミリアも手伝いに出ていたが性に合わないと感じていたし、何より兄が好きにしてイイと言ってくれていたので、乗っかる事に決めた。

「好きにしてイイとは言ったけど、冒険者になるのは成人してからにしなよ。

登録はしていいし依頼を受けてもいいけど、そのまま冒険者を続けて行くかどうかは、成人してから改めて決めな。

他に気になる事や、やりたい事が出来たら、そっちを目指すのも悪く無いし、加護がわかってからやりたい事が変わる事もあるかもしれないだろ?」

兄に言われ、それもそうかと思っていた。


騎士を諦めてから、孤児院での仕事にも興味があった。

院で働くには役人としての試験を受ける必要があるとわかって、それはすぐに諦めた。

近所のばあちゃんに教わった簡単な治癒魔法を使って、治療院で働く事にも興味があった。

それほど重くない病気をおして店に出ていたのが原因で亡くなった両親を見て、もっと腕が立つ治癒術師になればそんな人を救えるかもしれないと思ったからだ。

だが、ウラに誘われてとりあえず冒険者をやってみる事にした。

加護がわかるまでの腰掛けくらいの気持ちで、ミリアの冒険者としての生活は始まったのだった。


兄の加護が「料理人」だったのもあって、代替わりしても古びたあまり大きくもない店は、変わらず繁盛していた。

中古の装備を兄が揃えてくれたのもあって出だしから、ウラと二人で順調に依頼をこなしていけた。

いつしかウラの二人の兄も加わり、ランクもトントン拍子に上がっていった。

祝祭を前にあと一つの依頼で三に上がる事が出来ると、仲がよかった二つ上の職員のマイラに言われ、このまま冒険者を続けて行くのも悪く無いと思い始めていた。


そんなある日。

その日はミラ、ザラの二人は南のウォリッシュ男爵領へ、手紙の配達と商人の護衛という、別々に出ていた依頼をどちらも受けて領都から出ていた。

手紙の配達の依頼料が少し安かったのもあって、受ける者がいなかったようで三日程放置されていたのを、商人の護衛という割と割のいい依頼が出たのを見て、行き掛けの駄賃としてミラが受けた。

「行ってくるけど、あんまり無茶な依頼は受けるなよ。

まあ、二の内なら討伐系の依頼は受けられないから、無茶もクソもないけどな。」

そう言ってウラの頭の上の耳をひとしきり揉んでから、ミラ達は出発して行った。


本当はミリアも行きたかったのだが、成人前の女の子を一泊とはいえ男だらけの現場に連れて行くのを、ザラが嫌がった。

女扱いはまだしも、子供扱いにむくれたミリアだったがウラに、

「じゃあ、二人で採取の依頼でも受けて、終わったら何か甘い物でも買って食べようぜ。」

と言われて機嫌を直していた。

見ていたマイラにチョロいとか思われていたが、当の本人は依頼の後の甘い物を何にしようかソワソワしていた。


二人は出ていた依頼からウワバミの実とも呼ばれる、カザリアの実の採取を受けて、協会を後にした。

ウラがよく生っているという場所を、兄達に聞いて知っていたからだが、ミリアは後になって後悔する。

何故ウワバミと呼ばれているか、それをちゃんと考えていれば、何故今までミラとザラが、ウラとミリアを連れて行かなかったのかを考えていればと。


東の門を出て、領都を流れるオルゼイム川に沿い北東に二時間ほど藪の中を進むと、その場所は直ぐに見つかった。

「あったぜ、あそこだ。」

ウラに言われた方を見ると藪から少し頭を出した低木が、何本も固まるようにして生えているのが見えた。

ブッシュナイフを使い、周りの草を刈り取ると親指の爪程の小さな赤紫の実が、腰より少し高い位の所に房のように生っているのが見えた。

ミネアも食べた事はあったが、生っているのは初めて見た。


食べても甘酸っぱくて美味しいが、潰すとトロリとした汁が出て、それが擦り傷や虫刺され等に効く効能を持つので、今回の依頼では薬の材料としての依頼だった。

二人して背負いカゴを降ろし、摘んで行く。

潰してしまわないように、丁寧にカゴに入れていた。


「ミリア、蛇だ!

気を付けろ!」

もう一房採ろうと手を伸ばしかけたところで、ウラに声を掛けられ慌てて手を引っ込めた。

枝に絡みつくようにして小さな蛇の魔物が、ミリアの手元のすぐ近くにいた。

直ぐに腰のブッシュナイフで首を切り落とし、ホッとしたのもつかの間、

「おい、マズい。

いっぱいいる。

寄って来てる。」

とウラが怯えたように、そう言った。


ミリアも慌てて周りを見ると、刈った藪の中から何匹もの小型の蛇の魔物が、首をもたげなから這い出して来ていた。

シュルシュルと威嚇音を出しながら近付いて来るのを見て、二人はそれ以上の採取を止めてカゴを掴むと駆け出した。

踏み潰せるような小さめの蛇だったが、数が多すぎる。

毒があったらとゾッとした。

「痛え!」

後ろを走るウラが、そう悲鳴を上げた。

慌てて駆け寄ると一匹に、踵に近いふくらはぎの下の辺に噛みつかれていた。

すぐに頭を切り落とし、頭を取って藪の中に放った。

小さく藪がカサカサと鳴っている。

追って来ているとわかって二人して青褪めたが、直ぐにミリアはウラの手を引いて駆け出した。


少しでも走り易いようにと近くのオルゼイム川まで出た。

そのまま川に沿って走る。

小一時間程走ったところで、急に手を引いていたウラに強く引っ張られバランスを崩した。

慌ててウラを見る。

ウラは手を引っ張ったわけではなく、ミリアの手を掴んだまま倒れ込んでいた。


「どうしたのさ!?ウラ?ウラっ!?」

「体が、動かねえ。

ミリア、荷物を持って先に行けよ。

もう来てないみたいだから、ここで待つ。

誰か呼んで………。」

そこまで言って、ウラは気を失った。

手を掴んだまま、ビクビクと痙攣を始めた。

またも慌てて、手を剥ぎ取るように離すと、荷物を投げ捨て肩を貸すように担ぎ上げた。

「置いてなんか行けるかよ、アタシが連れて帰る。

帰るんだ。」

片手はベルトを掴み引きずるようにして、領都の門を目指した。


涼しくなり始めた時期だったが、汗が吹き出した。

対してウラはどんどん青褪めて行く。

歩きながら何度も回復魔法をかけた。

魔力切れも考えず、何度も、何度も。

傷は塞がらない。

顔色も良くならない。

それでもミリアは何度も、繰り返し、繰り返し魔法を使った。

そうして行きの倍近い時間が掛かって領都の門が見えた頃には、ウラのその顔色は土気色になっていた。


門番の姿がかろうじて見えた時、荒い息を押し殺してミリアは叫んだ。

「助けて!

助けて!

誰か、ウラが、ウラが死んじゃう、誰か、助けて!」

叫び声を聞きつけた、門を守っていた警備隊が駆け寄って来た。

「何があった!」

「蛇に噛まれた。

もう意識が無いんだ、お願い、助けて。

ウラを、助けて!」


駆け付けた警備隊の男は、何も言わずむしり取るようにミリアの肩からウラを引き取り、肩に担ぎ上げて駆け出して行った。

別の警備隊の男がミリアに手を差し伸べた。

自分が座り込んでいた事に、その時に始めて気付いた。


「君も大変だったね。

行こう、教会に運ぶ。

一緒に行くんだ。」

ウラが死んでしまうのではないかと思うと、恐ろしくてたまらなかった。

殆ど無意識で掴んだ手に引き上げられて、ヨロヨロと歩き出した。


警備隊が用意した荷車に乗せられ、ウラは教会に運ばれた。

ミリアも後ろから押した。

無理せずゆっくり後を行けばいいと言われたが、無視して押した。


教会に着いて出て来たのは、やたら背の高い髭面の男だった。

「アイザックさん、見てやって下さい。

蛇に噛まれたらしく、意識を失っているので、毒にやられたんだと思います。」

アイザックと呼ばれた男は中に運び込む事もせず、傷口を見るなり解毒魔法を使った。

続けてかなり高度な治癒魔法を使うと、ようやく中のベッドへと運び込んだ。


すぐ側でジリジリしながらミリアは見ていた。

ぐったりとベッドに寝かされ、装備を解かれたウラから目が離せなかった。


意識が戻る様子はない。

顔色も土気色のままだった。

それなのに治療を終えた様子の大男は、こちらを向いて話し掛けて来た。

「君はこの子の仲間ですか?」

「ああ。」

少しイラッとしてぶっきらぼうな答え方になった。

「家族に伝えて下さい。

ここに運ばれた事を。」

「アタシが、伝える?」

何を言われたか、一瞬飲み込めなかったが、直ぐに怖くなった。

「そうです、仲間なんでしょう?」

「どうやって?

なんて言えばいいのさ、こんな、こんな!」

言いながら知らずに涙を流していたミリアの顔を、アイザックは細くゴツゴツとした、やたらと大きな両手で覆うように掴むと、

「落ち着きなさい。

今あなたが取り乱しても、彼が目覚めるわけじゃない。

いいですか、蛇に噛まれて毒をもらった、教会に運んだ。

ただそれだけを伝えて来なさい。

仲間ならそれぐらいの責任は果たせ。」

そう言われた。

じっと目を見詰め、優しげな口調で言い始めたが、最後だけは恫喝するような口調にだった。

その声にビクリとしたミリアは、

「わかった。」

とだけ返して立ち去った。


ウラの家は壁際に近い所にあった。

何度かウラを迎えに来た事があって知っていた。

ドアの前に立ちノックをしようとした手が、彷徨うようにフラフラと揺れる。

俯き加減でしばらくそうしていたが、中からドアが開けられた。

「どうしました?

気配を感じて開けたのだけど。

あら、あなた泣いてるの?

何かあったの?」

声に顔を向けると、ウラによく似た獣人の女の人が、心配そうにこちらを見ていた。

「ウラが、ウラが。」

「ウラに何かあったの?

落ち着いて、話してちょうだい。」

「蛇に噛まれて、倒れた。

教会に、運び、ました。」

ミリアが途切れ途切れに伝えると、彼女はそのまま押しのけるように走り出した。

その背中を、見えなくなるまでぼんやりと見ていたが、開けられたままのドアに気付いてそっと閉めると、ノロノロと歩き出した。


その後の事はあまり覚えていない。

家に帰って寝た事はわかっているが、どうやって、どこを歩いて帰ったのか、いつ装備を解いてベッドに入ったのか、はっきりしなかった。

そもそも寝たような気がするが、明るくなった事に気付いて起き上がったので、寝たかどうかも定かではなかった。

床に散らばった装備を見て、ベッドから降りると着たままだった服を替える事もせず、教会に向った。

足取りは重かったが、気付けばウラが寝かされた部屋の前に立っていた。


そこから足が踏み出せなかった。

何で帰ったのか。

付いていようと思ったのに。

何でここにいるのか。

どんな顔でウラに会えばいいのか。

何で、何で、何で。


答えが出ない事をグルグルと頭の中で思っていたが、気が付けば誰かに手を握られていた。

「あなた、ミリアさんね。

ウラから話を聞いてました。

さっ、入って。」

昨日、ウラの家に居た女性。

顔が似ているからおそらく母親か。

ぼんやりそんな事を思いながら手を引かれ、部屋の中に入った。


清潔そうな白いシャツに替えられ、ベッドに横たわるウラの顔色は、昨日よりは幾分良くなっていた。

少しだけホッとして、また涙が溢れた。

「よくこの子が言ってたの、あなたの事を。

それは楽しそうに。

昨日は気付けなかったけど、聞いてた通り美人さんね。」

そう言って獣人特有の鋭い爪が当たらないように、優しくウラの顔を撫でる彼女を見て、反応しないウラを見て、心がざわめいた。

「大丈夫、そんな顔をしないで。

私の子だもの、きっと目覚めるわ。」

そう微笑みながら言った彼女は、ウラにとても似ていて優しげだった。


「おや、昨日の。」

そう言って入って来たのは、昨日治癒魔法をウラに施したアイザックだった。

「ウラは、ウラは目覚めるの?

大丈夫だよな?

大丈夫だろ?」

「命は繋ぎ留めました。

あなたが回復魔法を使っていたのでしょう?

それがよかった。

目覚めるかどうかは、彼の生命力と精神力次第です。」

「そんな、治してやってくれよ。

金なら払う、一生掛けても払うからさ。

お願いだよ、ウラを、ウラを助けてよ。」

叫ぶようにミリアが言ったが、返って来たのは深い溜息だった。

「私に出来るのは、この後は時々、回復魔法を掛ける事だけです。

身体は九分九厘まで治してあります。

ただ身体の組織は治せても、精神を治すのは時間が掛かる。

彼は精神まで壊れてしまった。

回復するかは神のみぞ知る事です。」


急に視線が低くなった。

自分が座り込んでしまった事に気付かず、そのまま振り向くとウラに取り縋るようにして泣き声を上げた。

「ゴメン、ウラ。

ゴメンよ、アタシ、アタシどうしたら。」

誰にも憚らず、慟哭と言ってもいいくらい、悲痛な泣き声を上げるミリアのその肩に、ウラの母はそっと手を置いた。

「あなたは悪くないわ、誰も悪くない。

ちょっと運が悪かっただけよ。

それに言ったでしょう?

この子はあたしの子よ。

強い子だから必ず起きてまた笑ってくれるわ。

わたしにも、ミリアさんにも。

泣いてちゃ、起きてきたこの子に笑われちゃうわよ。」

そう言ってミネアの肩を撫でるウラの母の顔は、ウラの事を撫でていた時と同じくらい優しい表情をしていた。

それを見てミリアは泣くのを止めた。

無理矢理、涙を堪えた。

ウラの母が辛くないわけがなかった。

なのに情け無くも泣く事しか出来ない自分を気遣ってくれている。

それに気付いて、今の自分を恥じた。


午後になり、帰還の報告を終えたミラとザラが駆け付けた。

どうやらアイザックが使いを出し、協会に報告を入れていたようで、二人は慌てた様子で駆け込んで来た。

ウラの様子を見てショックを隠せない二人だったが、そんな二人をウラの母が怒鳴り付けた。

「シャンとしな!

あんたらも冒険者の端くれだろうさ、何を打ち上げられたナマズみたいな顔をしてるんだい。

ちったあ、漢を見せてこいつの治療費は俺達が稼ぐくらいの事は言えないのか、情けないたらありゃしない。

それでもこの母ちゃんの息子なのかい!」

全身を震わせて、ビクリとした二人を尻目に、ミリアは場違いだとわかりながらも、ウラの母親に憧れた目を向けた。


そうだよ、治療費はあたしが稼げばいい。

断られようが関係ない。

あたしがそうしたいんだから、そうすりゃいいんだ。

何なら直接、教会に払っちまおう。

そう決めたミリアは椅子から立ち上がると、一人、領都の門の外へと足を向けた。

手始めに昨日捨ててきた、カゴを取りに戻ろう。

二人分だから重いかもしれないけど、関係ない。

そう思って駆け出した。

捨ててきた場所に着くと、他の魔物に荒される事もなく、そのまま打ち捨てられていたカゴを持って、協会に向った。

マイラから酷く心配されたが、依頼自体は問題なく達成になった。


ランクもウラと共に三に上がった。


それ以来、ミリアは新人の面倒を見ながら、精力的に依頼をこなし続けた。

新人の面倒を見るのは、ウラのような犠牲を出さない為。

依頼を頻繁に受け続けるのは、ウラの治療費を稼ぐ為。

その事を知っているのは、マイラや獣人の兄弟、その母。

知っているかはまだ意識が戻らないのでわからないが、ウラの五人だけ。


いつしか、「姐さん」と呼ばれるようになっていた。

その事にミリアもいつの間にか慣れていた。

そうしているうちに、成人して直ぐにウラをおいて、四に上がった。


全身を黒い模様が刻まれた包帯でグルグル巻きにされた、ジェスとアーネスの側に付きながらミリアはウラの事を思い出していた。


あれ以来、ウラは目覚めていない。

教会には足を運んで治療費を払っているが、悲しくなるので顔は見なくなっていた。

眠り続ける二人の顔を見ていると、ふとウラに会いたくなった。

戻ったら一番に顔を見に行こう。

そう決めたミリアは、少しだけ涙を流した。

誰かに見られないように直ぐに拭うと、そっと溜息を吐いて外の空気を吸うために腰を上げた。


目覚めた二人と領都に戻り、別れた後で教会に向ったミリアを待っていたのは、すっかり懐かしくなった優しげな笑顔だった。

久しぶりにミリアは誰にも憚る事なく、子供のように泣いた。

泣き続けた。


アーネスとジェスの前でボロボロ泣いた事は、彼女の中では無かった事になっている。


それでもその涙は、最初に教会に来て上げた慟哭とは違う、喜びの涙だった。


頭を撫でてくれたウラの手はとても温かく感じた。

いかがでしたか?

ミネア姐さんの若き日のお話は?


本編の方で、アイザックとの関係を匂わせていたのですが、こんな形でSSにするとは思ってませんでした

しかも本編より、1話が長い(汗)


書いていて、ミネアの気持ちに入り込み過ぎて、ちょっと泣いちゃったのは内緒です


もっと腕があれば、ミネアの感情をより強く表現出来たかもしれないのが、少しだけ心残りです


最後に、お読みくださった方々、ありがとうございます

モチベにつながるので、ブックマークを是非お願いします

感想を、こうポチッと評価やイイネで表して頂けたら幸いです


「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


次回 走れ!!

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