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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ− - 白パンはちょっと塩味で………
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今はただ「この」己に掛けて −複数の加護と前世の「知識」を持つ俺は、親友勇者と離れアイデンティティを保つ−  作者: ダメ親父
第一章 追憶の中の旅立ち、秘密を共に

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白パンはちょっと塩味で………

「ありがとう、ディディ。大切にするよ。」

ちょっと鼻声でアーネスが言った。

俺も鼻の奥が、ちょっとツンとする。

「喜んで頂けたようで、何よりです。」

微笑んだままそう言うと、桶に湯を張って下がって行った。

俺達はいそいそと体を拭いた。

お互いに背中を拭いてもらっている時、自分の首筋や脇を拭く。

温かいタオルが気持ちいい。


体を拭き終わって一息付いている時に、他の買い物に付いても話した。

「ダガーとか、何か、サブの武器を買おうかなって思ってるよ。

あと、投げナイフも何本か欲しいね。」

「あぁ~、ダガーは俺も思ってた。

姐さんみたいに両側に吊るしたいよね。

あとジェスは何か似合うな、こう、シュッと。」

姐さんね。

初めてお邪魔した時の格好は、かなりカッコよかった。

てかそう?

似合うかな、投げナイフ。

「俺達って魔法がいい感じに伸びそうだから、弓とかはいらないよな?」

確かに。

ディディの講義で、半日撃ち続けて殆ど疲れなかった。

余程デカい魔法でも覚えない限り、魔力切れはしなさそうだし投擲ならまだしも、射撃系の武器はいらないと思う。

射程も魔力でどうにでもできそうだし。


「武器防具以外で持っておいた方がいいのって、あるのかな?」

う〜ん。

大小のベルトポーチとかか。

「ベルトに付ける小物入れみたいなのが、何個かあると便利かな?

あとは靴と水袋は予備を買おうぜ。

あの時、駄目になったからさ。」

アーネスにそう言ったら、思い出したのかションボリ顔だ。

靴は消耗品だと割り切っていたが、履き慣れた方が駄目になったのは、仕方ないけど正直悲しかった。

水袋はよりによって、新品の方だ。

クソ。


ああでもないこうでもないとグダグダ言っていたら、ディディが昼を用意して持って来てくれた。

今日のラスクは別として、このところ柔らかい白パンを食べる事が多い。

ちょっと前には考えられなかった。

食べながら、少し複雑な気分になった。


「どうかした、ジェス?じっとパンを見つめて。」

「ん?イヤ、この何日かは、ずっと白パンだろ?

ちょっと前じゃ、考えられなかったからさ、何かこうさ。」

「お気に召しませんでしたか?」

「違うよ、ディディ。

ありがたいけど、何て言えばいいのかな。

そう現実感が薄いって言うか、変わって行くこの何日が、ちょっと怖いって言うかそんな気分って言えばいいのかな。

よくわからない感覚になったんだ。」

「それは、ちょっとわかる。

俺も院を出た後の生活がこんなになるなんて思ってなかったから。

伯爵様の城とか、近寄る事さえ考えなかったし、泊めて貰えるなんて有り得なかった。

想像さえしてなかったしさ。

まだ院のベッドで夢の中なんじゃないかとか、思ったもん。

元々の予定ではジェスと二人で採取とかしながら、ヒィヒィ言って生活してたハズだしさ。」

「そうそう、さっきも言ったけど、なんだか現実味が薄いんだよな、今。」

それもこれも、俺達の加護に対する周りの、特に上の方の人達の期待の表れなんだろう。

応える義務なんて無いんだろうけど、受け入れつつある自分がちょっと信じられなくもある。

これもアーネスが言っていた、「こんなだった」かに繋がっているのだろうか。


「お二人は、祝祭の後でゆっくりと、自分の加護と向き合う時間が無かったのですね。

普通であれば家族と話し、将来を模索するものですが。」

確かにそれもあるだろう。

祝祭からこっち、ただ流されて来ただけだしな、俺達は。


「ディディはどんな感じだったの?祝祭の後って。」

「私は、母が魔術師、父が騎士で、私が伯爵様の元で勤めるようになってからは、よく二人で組んで、部隊を率いて各地を飛び回っております。

母は私が小さかった頃、蒼槍城の警護に回してもらっていたようです。

母が私の素養を色々試し、体力は並以下ですが、魔法に関しての素養の高さがわかってからは、色々と仕込まれました。

五歳くらいからです。」

氷水をぶっかけたっていう、お母さんか。

しかし五歳て。

「私に兄弟姉妹がいないのもあったのでしょうが、それはもう、厳しく仕込まれました。

普段はどちらも甘いと言っていいくらいでしたが。

十で魔術師団に入れられ、体力が付かず、ずっと見習いだったのですが、祝祭で私の加護がネートの祝福だとわかり、正式に団員となりました。

何度かの任務の後で、蒼槍城内の護衛兼メイドとして配属となったのです。」

なるほどね。

ディディもそれなりに苦労してきたんだな。


「加護が判明する前から、関連する何らかの素養が高いのは一般に知られております。

ですがその才が完全に花開くのは祝祭で加護が判明した後。

父も母も喜んでくれましたが、どちらも頭を悩ませたようです。

母は魔法巧者の加護をもち、父は騎士団では珍しい加護無しですが、努力のみで小隊長になった人。

高い加護を持つ私の将来を期待してくれましたが、体力付かないのは、完全に個人の才能の部分ですので。

実は私は父を見て騎士団の方に憧れがあったのですが、二人と相談して、その命を受け入れる事にしたのです。

領都で冒険者になる事も、頭をよぎりはしたのですが、生活の安定を考えると選択の内には入りませんでした。」

しかしディディのお父さん、凄いな。

加護無しって表立って差別こそされないけれど、低く見られる事も多いのに。


「ありがとう。

参考にさせてもらうよ。

確かに加護と向き合うってしてなかった。

相談する相手がいないって言うのもあるけど、ジェスと一緒に考えてみるよ。」

「お二人の加護については、ガスリー様より伺っております。

同格と呼べるのは恩寵系の加護持ちか、お二人同士となるでしょう。

ですが無理に高みを目指す必要は無いと、僭越ながら私は考えます。

努力は大事な事ですが、無理をして期待に応えようとしても、やがてはそれに潰されてしまう事もあるかもしれません。

今、出来る事を見極め、無理なら無理と割り切る事も大事ですよ。

自分に出来ない事を押し付けようとする輩は、どこにでもいるものです。

持つ者の義務なんて物は、本来なら他人が口にしていいものではないと、私は考えますので。」

アーネスが少し驚いたような顔をした後、少し真面目な顔で頷いた。

確かにそうだ。

期待されたら応えたくなるけど、無理しては意味がない。

やっぱりディディはお姉さんだな。

食後、改めてディディには贈り物のお礼を言った。

特に何も言われなかったけど、嬉しそうに微笑んでくれた。


一息付いてから、

「行ってみようぜ。」

とアーネスが言った。

という事で、バルの部屋に行ってノックすると、

「どうぞ〜。」

と何だか気の抜けた返事が返って来て、とりあえず中に入った。

全裸だった。


「何でだよ。」

「あ?着替えてたんだよ。」

「そうじゃなくて、終わってから入れるだろ、普通。」

「あん?気にしてどうすんだよ、男の来客に。」

「イヤ、そこは気にしてよ。」

アーネスの言葉に面倒臭いって顔をして、こっちを見て来る。

「冒険者やってくなら、気にしてたら切がねえよ。

下手すりゃ男も女も一緒に川で水浴び、一つのテントや洞窟で雑魚寝とか割とザラだぜ?」

いや、だからってフルチンで仁王立ちはやめてくれ。

ゴツいのよ、どこもかしこも。

スンゲェな。

とりあえず、下着は履いてもらって、装備について聞いてみた。

「本当なら、相手に合わせて替えた方がいいんだけどな。

確かにお前達の戦闘スタイルを考えると、悩ましいな。」

「相手に合わせてってどういう感じ?」

アーネスが素直に疑問を口にする。


「騎士団や警備隊の装備が参考になるだろ。」

言われてみれば確かにそうだ。

騎士団は戦闘する相手に合わせて装備を替える。

魔物相手の時は、毒対策や末端を咬まれたりするので、全身をフルプレートで固める。

対して白兵戦も行うが、魔法も飛び交う人間相手の戦争等では、逆に軽装になる。

アイツの知識では、銃器の登場でフルプレートアーマーが廃れたとある。

実際、俺達の世界でも戦争では騎士は滅多に騎乗しないと聞く。

魔法の直撃は致命傷にならなくても、落馬の危険性が高いからだ。

むしろそれが原因で命を落とす騎士が多く、馬は戦場への足としての役割に留まっているらしい。


「お前達は魔法をぶっ放した後、接近して仕留めるスタイルになって行くハズだから、軽装でもいいんだよな。

俺は近接戦闘にほぼ特化だから、俺を参考にしてもあんまり意味がない。

ん〜、そうだな、手足を金属製の部分鎧で固めて、胴体は昨日までと同じ感じの、補強入りの革鎧とかでいいんじゃないか。

今日のクラウディアみたいな感じでさ。

チェインメイルも有りだけど、手入れが面倒なんだよ。

物によっちゃ直ぐ錆びるし。」

なるほどね。


「予算はなんぼだよ。それによっても変わるぜ。」

金貨七枚。

やっぱり金貨一枚は残しておきたい。

それを伝えると、バルはちょっと驚いた顔をした。

「結構持ってんのな。

院育ちって言ってたから、素寒貧に近いのかと思ってたぜ。

そういやムカデのバケモンとやって稼いだんだっけか。」

「バルが出張ってくれてたら、死にかける事も無かったんだけどな。」

「それを言うなよ。

騎士団に犠牲が出たって聞いて、俺も申し訳なく思ってんだからよ。」

そう言いながらワシワシ頭を掻くバルの顔は、本当に申し訳なさそうだった。


「まあ、それだけの予算があるなら、悪くない装備が揃えられるぜ。

何なら飯に行くついでに、俺が見繕ってやろうか?

俺は王都の出身だから、そっちもいい店知ってるぜ。」

それは正直有難いし、ちょっと期待もしてた。

てか、王都の出身なんだ。

食客ってくらいだから、他領の人間なのはわかってたけど。

「冒険者って人気商売ってとこもあるからよ、装備の見栄えも大事になってくるんだ。

指名依頼が増える四くらいから、派手って言うか立派な装備になるヤツが増えんのは、稼ぎ以外ではそんな理由なんだわ。

俺がよく使ってた店は、見た目と機能がいい感じの塩梅なんだよ。」

ああ、金があるから立派になるだけじゃなくて、稼ぐ為でもあるのか。

現場で目立つって意味も有るんだろう。


「武器防具以外で買っておいた方がいいのってある?

靴の予備と水袋の予備は買う。」

「討伐も受けて行くつもりなら、ベルトポーチを何個か買っておくといい。

小さい魔石が何個か入るくらいのヤツ。

今後組む相手によっては魔法薬を何本か持って歩くのにも使うしな。

後はランタンか、火を使わない魔道具の。

結構、高いけど、迷宮とか洞窟に入るならほぼ必須だ。

お前らは魔法を覚えりゃ済むかもだけど、それでも有るに越したことはない。」

「魔道具を扱う店って興味あるよ。」

「ジェスはそうかもな。

アーネスはどっちかって言うと武具屋の方が興味ありそうだな。」

「そうかも。

無い訳じゃないけど剣とか、鎧の方が見ててワクワクするのはそうだね。

ジェスはとにかく珍しい実用品に目が行きがちだし。

祭りとか、胡散臭い魔道具屋とかは必ず覗いてたもんね。」

ぐっ、言い返せない。

しかしこの短い付き合いで何故わかる、バルよ。

ディディの発言は私の私見に近いです。

それ自体はイイとして、努力してない人が努力している人に言うのは、やっぱりダメだと思うんです


しかし話が進まない(汗)

本編開幕以降、まだ20日もたってないと言うね(泣)


最後までお読みくださった方々、ありがとうございます

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「こりゃ、駄目だ、ダメ親父だけに」とか思ったら、切ってくださって結構ですので………


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