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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした - 08 ブネーゼ魔山へ
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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私の能力が試されているのは、賢者の孫馬鹿のせいらしい
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08 ブネーゼ魔山へ

 明日の集合時間や入山場所を決めて、私たちの話し合いは終わりました。

 あたりは暗くなっていましたが、所々にランプが灯っているので、自分たちのコテージに戻ることは問題なさそうです。

 そうでなければ、深夜にトイレにいきたくなった時、光魔法が使えない人は困りますしね。


 ちなみに、この周辺は高さ二、三メートルほどの外壁が何重にも造られていて、魔獣が入り込むのを防いでいるので比較的安全だそうです。それでも、何かあった時のために、新人はもとより、指導官、職員の全員が緊急連絡用の魔道具を渡されています。

 それは小さな筒状の金属で、空に向けて魔力を込めると爆発音と色のついた煙が出ます。咄嗟の場合、魔獣に向けて威嚇用としても有効だそうです。


 ブネーゼ魔山で遭難したり、問題が発生した際にも使用するようにと言われていて、それは駐在している魔法師団の方たちも同じ目的で常備しているとのこと。



「ちょっといいかしら」


 私がA-7のコテージに向かおうとしていた時、メルンローゼ様に呼び止められました。


「あなた、サメアのルームメイトよね」

「はい。そうです」


 やっぱりメルンローゼ様は気になっていたようです。


「ムリュムリーヌとも仲良くしているわよね」

「はい。彼女とは部署が同じです」


「そう……先に言っておくけど、これからチームメイトとして過ごす以上、私は私情を挟むつもりはないわ。ブネーゼ魔山では常に警戒が必要なのよ。魔獣以外のことに神経を使っていたら事故を起こす恐れがあるわ。これは、仕事の一環なのだから、あたなもそう思っていて」


 それだけ言うと踵を返し、反対側に歩いて行ってしまいました。


「あ、待ってください」

「なに?」


 追いかけて、後ろから声を掛けた私に対して不信感を持ったのか、低い声で振り返るメルンローゼ様。


「私もメルンローゼ様の仲間として頑張りたいと思っています。チームで動くことやブネーゼ魔山での歩き方が不慣れで、いたらないことが多いと思いますが、明日からよろしくお願いします」


 頭を下げる私に、メルンローゼ様は「わかったわ」とだけ言って、また歩き出しました。


 王都にいる時は、公爵令嬢として取り巻きも連れて横柄に振舞っていましたけど、今は、ブネーゼ魔山に接する領地を預かる領主の娘としての雰囲気が強いです。


 今は無視されていても、ムームがいまだにメルンローゼ様を友達だというのは、こういう態度を知っているからでしょうか。

 もし、ムームとメルンローゼ様が同じチームだったらわだかまりが解けたかもしれません。そう思うと残念です。


「あ、もしかしたら、サメア様との間に挟まれてしまったムームのことを気遣って、わざと、そういう態度をしているのかもしれませんね」


 私が自分の部屋に戻ると、カンナさんのベッドには、すでにカーテンが引かれていました。明日、出掛けるのが早いかもしれません。起こさないように私は静かに上段のベッドへ上がりました。


 すぐに眠りついた私は十分睡眠をとってから、次の朝も、こっそりコテージから抜け出し、赤縞チームの待ち合わせ場所へ急ぎました。


 まだ誰も来ていないかと思ったら、またも、ジルさんに先を越されました。ジルさんっていつも待ち合わせ時間より早く来ているような気がします。


「おはようございます」

「イリーか」

「今日はよろしくお願いします」

「ああ。そうだ、おまえに言っておきたいことがある」

「なんでしょうか?」


 ジルさんから話したいことって、忠告でしょうか。また皆とズレていることでもあるのかもしれません。


「絶対にスイルバー伯爵家と関係があることは悟らるな」

「はい? それってどういうことでしょうか」

「二人とも早いね、おはよう」

「あ、ダニエルさん。おはようございます。今日はよろしくお願いします」


 私が聞き返した時に、ダニエルさんがやってきてしまったので、ジルさんはそのまま口を閉じてしまって、理由を教えてくれませんでした。


「ダニエルも早いな」

「なんだか目が覚めちゃったんだよね」


 たぶんあれですよね。

 ヴェルリッタ領の人たちの『爺の孫』の件だと思います。ムームが言っていましたけど、ジルさんはすでに絡まれてしまったんでしょうか?


 そのあと、オルガさんとメルンローゼ様がやってきて出掛ける準備が整いました。


 今は、迎えに来た馬車の中で、私たちは朝食用のパンを齧りながら、目的地へと進んでいます。


「山の中にはヴェルリッタ領の人や、魔法師団、騎士団の魔獣討伐隊も入山しているらしい。そういった人たちと鉢合わせた時は間違って攻撃しないようにな」

「だったら、僕たちの移動するところには、来ないでほしいよね」

「それは、俺たちの判断力を高めるためにわざとそうするそうだ。あと、人と会ったからと言って全面的に信用するな。犯罪者や敵国が侵入している可能性がないとは言えないからな」

「オルガさんって、すごいですね。そういうことって警備部で学んだんですか?」

「いや、おまえたちと合流する前に指導官から連絡がきただけだ」


 研修というだけあって、ただ魔獣討伐だけをしていればいいというわけではないようです。


「メルンはどこか目星がついたか?」

「ええ。一個か二個は、わかりやすいところにあると思うの」

「そうかもしれないな」

「そうだとしたら、この辺り。岩場が多くてカラーボールが目立つと思うわ。あとはここ。谷があってその向かい側が怪しいと思うの。置いてあって見つけやすいのはその二ヶ所よ。あとは泉がある場所ね。魔獣が集まりやすいのよ」


 メルンローゼ様が広げた地図に三つの丸を付けて説明してくれました。


「泉の方は魔獣の討伐も兼ねてということか」

「すごいや。説得力があるし、うまくいけば三つも見つかるかもしれないよね」


「とりあえず、まずは近い岩場を目指そうと思う。ジルとイリーはどう思う?」

「そうだな。時間があれば、その泉まで遠征してもいいしな」

「私も賛成です」

「決定だな。よし、今日はまず最低一個でも手に入れることを目標にするぞ」


 その後、馬車の中で昼食分のパンとドライフルーツを各自渡され、一時間くらいたってから馬車が停車して、私たちは入山口へ降り立ちました。


 さあ、ここからが本番です。

 私はみんなを守ることしかできませんから、魔獣に出会ってしまった時にすぐに防御できるようにしておかなければいけません。

 神経を研ぎ澄ませたいと思います。


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